主に五大陸最高峰登頂の紀行文を中心として書かれている。
エッセイストでもなく小説家でもない植村直己という冒険家・探検家自身の筆による冒険記なので、文章は朴訥としてまったく熟れていない。全体に表現があっさりとしている。
それは本当に登山した人、冒険した人の文章だからだ。
そこには何の衒いもない。
だからこそ、文章の底辺に流れるその場面の厳しさや彼の強い信念を感じることが出来る。
冒険を始めた頃の話が凄い。言葉も通じない土地でアルバイトをしながら登山を始めている。ボーゲンしかできないのにスキー場でアルバイトを始めている。
スポンサーが最初からいたわけではないのだ。
286頁の一節
濡れたシュラフの中に身体を横たえているだけの雪洞での停滞は、話す相手もいない。
中略
私にとって、過去のできごとは、まったく心の宝であった。
そうなのだよな。
喘登が続き苦しかったあの急登、稜線からの素晴らしい風景、濡れた一輪の高山植物・・・すべての山での出会いや経験は、カメラに収めていなくとも自分にとって至上の「心の宝」なのだ。
昭和16年兵庫県生まれ
明治大学登山部OB 世界初の五大陸最高峰登頂者
昭和59年2月、北米マッキンリーで消息を絶ち死亡
その後国民栄誉賞受賞
探検家になるために必要な資質は何かとの問いに対する答えが「臆病者であること」
その植村直己ですら遭難死してしまうのだ。
自然は素晴らしいが、やはり怖い。臆病者の上村さんでも遭難してしまうのだ。
この本は全体に文章が素人くさいからこそ、深い感動を得られる素敵な一冊であった。
24cさんが読まれた「青春を山に賭けて」は永遠のバイブルだと思います。
現代のようにまだネットなどない時代に単身で現地の人たちと交渉し、アコンカグアに至っては軍隊まで納得させてしまうその行動力には本当に驚かされます。
ようやくお勧めいただいた「青春を山に賭けて」を読み終えました。
アコンカグアでの入山許可取得も含めて、植村直己さんの情熱というか人間性というか、ピュアな人柄は本当に驚きです。
少しだけ掲載されている写真を見ても、現在の山道具とは比較にならないお粗末な道具が写っていまして、その道具で極寒の中登攀したことの凄さが想像できます。
解説では加藤文太郎に繋がると書かれていました。確かに単独行という点やお金がなく粗末な道具で踏破した点は共通点があります。
挫折したり気持が折れたりしたときにはまた読み返してみたい本です。
最近話題のグレートトラバース田中陽希さんも明治大学山岳部出身でしたね。Meijiの根性が繋がっているのかもと思いました。
私、なんと植村さんのサイン入りの本を持っています。
1980年9月24日の日付です。
講演会に行って、この本と「北極点グリーンランド単独行」の二冊買いました。
数か月前にちょうど「植村直己物語」の映画をテレビで見て再読しました。
今の時代には出てこない人だろうな。
サインも羨ましいですが、講演会で実際に本人お話を聞かれたことがとても羨ましいです。
極北に駆ける も積読してあるのでそのうちに読むつもりです。
映画も見てみたいと思います。
ありがとうございました。
自分もこの本は読んで、とても面白かった。
ただし、登山家としての植村直己さんは尊敬できませんネ。山で死んでいるので。
ご指摘の通りだと私も思います。
冒険家は臆病者でなければいけないといいながら本人がマッキンリー、山の下山中に遭難していますから。
ただ、何かあったのだと勝手に推察しています。それは誰にもわからないでしょうが。
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