南アルプスだけではなく北アルプスの地名山名も少し出て来る。
通勤途上や会社の昼休み時間に上下巻を一気に読み終えた。読んでいた期間は一週間もかかっていない。
帯には警察小説の金字塔とあるが、秋山駿の解説にある通り、この小説はミステリーでもなく、ましてや警察小説でもなく、本格小説なのである。
本格小説には、例えればスタンダール、バルザック、トルストイ、ドストエフスキーらの小説とあるが、私は彼らの小説を全く読んだことがない。
人間とは何か、人はどう生きるのか、社会とは何か、社会で生きる人生とはどんなものか、世界とは何か、世界の動きが運命を刻むのかといった人間についての全てが描かれている、人間の全容を描く壮大な壁画のようなものが「本格小説」だという。
思わず私は深く首肯した。
山に関する記述も、ペラペラな薄っぺらいものではなく、実際にその山に登り、その寒さに耐えた登山者のみがわかる腹落ちする文章が続く。
描写は緻密であり、登山経験者ならわかるその時の意識、登山者ならではのその時の判断や山の常識が表現されていて、変な衒いや違和感はなく自然だ。
例えばザックと呼んでいてリュックではない。思わずニヤッとした。
その山腹を這うように切り拓かれた林道の途中に夜叉神峠はあり、そこから広河原の登山口まで下る途中、彼方に浮かぶように横たわる山塊は、標高三千百九十二メートルの北岳だ。
(下巻p163)
北岳の標高が3,192メートルと出て来るのは標高訂正される前の作品だからだ。
描写は硬派、硬質な文体、重厚な文体であり、とても私の好みの文体だ。
上巻の出だしを読みながら、自分もこういった文章が書きたいのだ、と思わず唸った。
但し多くは警察や地検がらみの犯罪や捜査の記述であり、山の描写は全体のほんの一部である。
犯人が北岳山頂で発見されたときの描写も素敵だ。
空気を裂くような一陣の突風が最後のガスを吹き払ったとき、東の空いっぱいに正三角形の巨大な山影が浮かび上がった。雲海の上には茫々たるその山しかなく、その稜線には中腹まで登ってきた太陽の、臙脂色の光輪が広がっているだけだった。
手前にもその向こうにも何もない。
天空に浮かぶ富士山一つの姿を、水沢は今、見ていた。
直木賞受賞作品であり、また映画化もされている。
明日にでもその映画をNetflixかYouTube当たりで探して観てみたい。
主人公の一人である合田雄一郎(ごうだゆういちろう)シリーズの嚆矢の一冊でもある。
すぐにシリーズ二冊目を思わず購入してしまった。
(写真3は今年白峰三山を歩いたときに撮った夏の北岳)
こんばんは〜 (^^)
私は、買ってはみたものの、
1ページも 読んでいなかったりしますけれど…
もう、30年くらい前になると思いますけれど
ある山岳会に属しておりました頃
映画の撮影に、山梨の山岳連盟も
完全なるバックアップをする… 的な感じで
山梨の 各 山岳会員も、
エキストラで 協力、参加 しまして
未明に、広河原の小屋で、
警察官の衣装を着て
ショルダーの無線機みたいなのを 肩にかけたりして
大樺沢を、広がって 捜索しているように
何度も 登ったモノであります
その日は、肩の小屋に泊まったのですが
時間があったので、
警察官の カッコのまま
北岳山頂まで行って、記念の写真 撮ったりして
… で、実際の映画では、
山岳連盟の おじさん が、ちょっと映ったくらいで
結局、
映画の撮影に 何億円 かけた… っていう
名目? が ほしかったような 感じ でしたね
何度か映画化されているようですが、主演は誰でしょうか。中井貴一さんかな。
いずれにしても映画を観てみたくなりました。当該の無線機を肩にかけている警察官を探してみます。
読みたくなって、図書館で借りて読みました!
日曜から読み始め、翌週は寝る前に呼んだので寝不足の毎日でしたが昨日読み終わりました。
引き込まれて寝不足になるまで本を読むのは久しぶり、読み応えがありました。
ほんの少ししか現れない加納兄弟が印象的です。
そして精神を病むということについて考えてしまいました。苦しくなりました。
結末の描写、いいですね。北岳からの富士山を見たいと思いました。
小説を読むのは久しぶり、やはり本はいいですね。
マークスの山、読まれましたか!
読みごたえを感じていただき何故か私も嬉しいです。
私も上巻の最初から、高村薫の硬質な文体に引き込まれていきました。
精神を病むことについては私も同感で、自分も含めて自分の身の回りの人間について色々考えてしまいました。
その後映画化されているのを知り、DVDを探したのですが、図書館やアマゾンプライムでは入手することができず、YahooでDVDを購入し観ました。上川隆也主演の新しい方の映画です。
それなりに面白いし、原作本に8割方忠実に作られていましたが、一番の違いは表現の重厚さ、作品の重さでした。
映画は警察物・刑事物として作られていて軽い作品に感じてしまいました。
何と言っても北岳が違うのです。嘘です。中白根山から見える北岳に似ていると言えば似ていますが・・・。
北岳の山容が作られた架空の山ですし、山頂も全く違う場所でした。広河原から白根御池までの斜面辺りは実際の山のようでしたが、山頂へ続く斜面や山頂の景色は絶対に北岳ではありません。斜面は北沢峠から仙水峠の途中のゴーロ帯かなと、山頂は栗沢山か駒津峰辺りかなと思いました。
それでも映画もそれなりに面白かったです。
週刊誌の記者が女性に変わっているのは映画の設定の方が良いと感じました。もし、映画にご興味があればDVDをご提供しますのでご連絡ください。
ありがとうございました。
24cさんにもお目にかかりたい。近畿に来られるときがあればお願いしたいです。
小説と映画、難しいですね。
どちらも面白い作品でも、やはり別の作品でしょうか。小説で気付かないうちに想像している部分を、映画では描き出される。思い入れのある作品であれば必然と思うよりないのでしょうが。でも、逆に小説では漠然としていたものが映画ではとてもリアル。
映画「点の記」でそう思いました。案内人が重い荷物を背負った時に背負子がギシギシときしむ音、重さと案内人の人柄が伝わってきました。映画っていいなと思いました。でも主人公の奥さんが可愛すぎて違和感がありました。総じて、どちらも面白い、忘れられない作品です。
話題作を読んで面白ければ、その作家を何冊か読みますが、この作家も読んでみようかな。
24cさん、最新の山行記録で御巣鷹山のことを書かれていましたね。「沈まぬ太陽」が読みたくなりました。山崎豊子の文章が読みたくなりました。
24cさんの、ヤマレコ日記にあげられた紀行文もとても良かったです😊
自分の山行ですが、今週末は遠路はるばる自家用車を運転して三重まで行きます。
その次は奈良や兵庫まで自分の車で行ってみたいので、手前の三重まででどれだけ運転が大変かを試してみるためでもあります。
それから引退する予定の私に会っても面白いことはありませよ。でもまあ、近畿の二百名山や三百名山には来年に行けたら行こうと思っていますので、Kayokosさんの愛車を見にいきましょうか。
別件ですがマークスの山の映画DVDをお送りしましょうか。プロフィールのアドレスにご連絡いただければ対応します。
紀行文は、雑誌「山と渓谷」に投稿して没になったものが何本かあるので、気が向いたらヤマレコの日記に投稿するつもりです。
紀行文までお読みいただき有難うございました。
今週末は三重ですか!
残念、今週末は和歌山と京都です。
三重ですか、どこだろう?
先週末、鎌ヶ岳に登りました。
引退されるご予定はどこかで拝見して存じております。近畿にお越しのこと、楽しみです。autobianchi a112はますますボロですがかわいいです。車ともどもお待ちしております。
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