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霧ヶ峰高源車山肩にコロボックルヒュッテを創設し、苦難を乗り越え経営されてきた方です。
エッセイストとしても有名で、この一冊は八十一歳という高齢の時に上梓されたエッセイ集です。
手塚氏の文章は衒うところが全くなく、素朴で読みやすく温かみのある筆致で綴られています。
読むと何故か心がホッコリしてしまうのです。
手塚氏の人柄が滲み出ている珠玉のエッセイばかりでした。
同時期の友人である串田孫一さんの文章と比べると、過ぎた詩情を含んだ文章が少ないところも好ましく感じました。
松本の県ヶ丘高校登山分出身の彼が、八十を過ぎで遠い昔の山にまつわる記憶をもとに書かれたエッセイなので、「忘れてしまった」「断片的なことしか思い出せない」といった記述が良く出て来ますが、そこが逆に老境エッセイストが書いたエッセイの良さでもあります。
北アルプス・中央アルプス・南アルプスと呼ばずに、飛騨山脈・木曽山脈・赤石山脈と呼んでいるところなどもとても好感が持てて嬉しく読み進みました。
古くから地元で呼ばれていた昔の山名のことも沢山知ることができました。
焼岳←硫黄岳
穂高岳←御幣岳
鹿島槍ヶ岳←鶴ヶ岳
一人風雪吹きすさぶ荒涼とした霧ヶ峰の小さな山小屋で書かれた文章なのかなと、手塚氏が書いている後ろ姿を想像しその著述状況に勝手に想いを馳せると、この一冊に集められた小品がさらに愛おしく感じられ、私が未読の手塚氏の他の本を読んでみたくなる一冊でした。
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