|
|
|
■森は、はつらつとした命の誕生と静かな命の終焉という、生態系の複雑なネットワークを目の当たりにできる場所。
■森に行ったとき、目の前に広がる光景は大げさにいうならば、宇宙開闢以来、137憶年っけて到達した姿であり、木々や草花はきのこは、地球に生物が誕生してから、38億年かけて進化した命の最新モデル。そういう世界に人間の時間を持ち込むのではなく、人間が森の時間に合わせるようにしたら、より深く自然のことが理解できるのではないか。
＜以上、おわりに（きのこと森と自然と人と）から＞
■樹木は明るい環境で育ち、成長が早いものの寿命がやや短い「陽樹」と、暗い環境でも育ち比較的寿命が長い「陰樹」の二つに、大きく分けることができます。火山の噴火や山火事などでぱっと空間が空いてしまうと、ハンノキやカンバなど、陽樹の種が風で運ばれるなどして、発芽し定着します。ところが、陽樹が成長すると、足元が日陰になるために、マツなどの陰樹が成長することになり、やがて寿命の短い陽樹と入れ替わることになり、長期安定的な、陰樹、すなわち針葉樹の森ができあがります。大きな木が倒れると、林床に陽が射しこむので、部分的に陽樹が育ち、森の木々の多様性もある程度は保たれています。
■きのこは、その胞子の作り方によって、担子菌門と子嚢菌門とにわかれます。担子菌門のうち、テングタケの仲間のきのこは、卵のような状態から、それを突き破るように子実体（＝きのこ）が伸びてきて、だんだん傘が開いていくので、傘・柄・ツボという、いかにもきのこらしいおなじみのパーツを備えています。一見きのこっぽい形をしていませんが、サルノコシカケの仲間や、キクラゲの仲間、ホコリタケの仲間、ホウキタケの仲間、ソウメンタケの仲間、マイタケの仲間も担子菌門。
■胞子が子嚢という袋の中に生じるのが子嚢菌門。いかにもキノコという感じの立派な子実体をつくるものは、あまり多くありませんが、小さくて色とりどりで不思議な形（変な形）をしているキノコが多いので、きのこファンなら要チェックのグループ。一番目にしやすいのは、お皿のような形をしているチャワンタケの仲間。顕微鏡で見ると、「茶碗」の内側にはこん棒のような細長い形をした子嚢がびっしり隙間なく並んでいる層があり、成熟すると、そこから煙のように胞子を飛ばします。子嚢菌門のきのこの胞子は裏の部分ではなく、表面から放出される。アミガサタケ、冬虫夏草なども子嚢菌門。
■森に出かけて、思うようにきのこが見つからないことは別に珍しいことではありません。そんな時は、まず立ち止まってみましょう。気づかないうちに、少し荒くなっていた息づかいをなだめ「ふう」と深呼吸をひとつ。何種類もの鳥の越えが聞こえてくることに気づいたり、マツの木肌の模様の美しさに感動したり、鼻につんとくるような森独特の香りを感じたり・・・きっと歩き回っている時とはまったく別といっていい風景が目の前に現れるはずです。
■この時期、ぼくはほぼ毎日、日の出前に川沿いの森に出かけます。朝霧がだんだん晴れて、太陽の光が差し込むと、森は金色に輝いて輪郭を取り戻し、川から盛んに立ち上る靄が、ヤマモミジやイタヤカエデの鮮やかな色をした葉の間からこぼれた光と混ざりあい、森の空間も赤や黄色に染まっていきます。少し湿ったような香りに混じって、カツラの葉が醸し出す、ほのかに甘酸っぱい香り。川のせせらぎ、木々の葉の間を通り抜ける風の音・・・
■朝、目覚めて窓を開け放ち、外の空気を吸い込んだ時、ふと前日とは匂いが変わっていることに気づいたことはありませんか。日差しは強いし、気温も高いけど、ああ、今日から秋になった、と思える日。
When talking about forests, people naturally become poets.
Hablar del bosque es volverse poeta.
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する