山でホーホケキョを聞くことは案外多い。それは春先に、梅農家の店先に、梅の木を渡り歩きながら聞くものだと思っていた。いやそれは慣例だけで、あれはチュチュチュと鳴くから、メジロらしいが。いずれも、鳥の話などは大して気にしてもいなかった。それが樹林も無くなって、灌木帯の草原に入って、間もなくハイマツが出てきてもおかしくない高度で、秋田の和賀山塊で、ホーホケキョを聞くと、どうしてだ? と疑問になる。声はすれど姿が見えないものだが、しかし、そこは草原で、立木が全くない状況に見えた。せめてその中に低い立ち枯れが混ざっていて、だから声のする方向に集中できたとしたら、その幹のてっぺんに、キミはいたのだ。数回だけじゃなくて、続けざまに何度も鳴く。ホケキョのたびに、のどをしならせて、お腹を揺らせて、尻尾が左右に振れた。およそ春告げ鳥のはずなのに盛夏の8月にしかも高高度にどうしているんだ。私が歩ていたのが理由か。怒っているのか。
ウグイスは超縄張り族だという。繁殖期に(それは盛夏でも)、オスは縄張りを誇示して、他者を避ける。ライチョウ並みの鋭さか。もちろん集団で飛ぶことはまったくない。つまり今日も雨模様でもあったのに、ずっと下界のどこかにいて、晴れた拍子に単独短時間でここまで上がって、そしてクマのように騒がしい物体(私)に対して、その縄張りを誇示しつつ、どうもしばらくの間は私に付いてきたということなのか。ふーん、ホーホケキョも暇つぶしに鳴いているだけじゃないんだね。
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