中村天風さんが、当時不治の病とされた結核を患い、救いを求めて欧米を彷徨った挙げ句、何も成果を得ることなしに故郷の地、日本に帰ろうとした時、偶然、船の中でヨガの聖者カリアッパ師と出会いヒマラヤの山奥の滝の脇でひたすら瞑想の修行をすることになる。
「あの場所では、水の流れる音で集中ができず瞑想などできません」という天風に対し、カリアッパ師匠は言う。「まず地の声を聞け。そして天の声を聞け。」と。
ゴウゴウと流れ落ちる滝の音の中にも、鳥のさえずる声、動物の遠吠えなどが混じっており、次第にはっきりと聞こえる様になる。これが地の声である。だが、天の声は一向に聞こえてこない。聴きたい聞きたいと念ずれば念じるほどに、マインドを働かせることになり、天の声は聞こえない。
散々努力した挙げ句、もう半ば諦めて、どうにでもなれと聞きたい欲望を手放した時、一瞬、天の声が聞こえた。それは音のない世界、だが空(くう)と繋がりエネルギーの満たされる世界。無心になって、ようやく神様とのチャネルが開いたのだ。カリアッパ師匠が天風にうなずいた。「ようやく聞こえたな」と。
自分の中に宿る仏性を信じ祈る。歩こうと思えば、誰にでもその道は開いている。ただ、普通の生活をしていると気付くことなく多くの人は通り過ぎてしまう道でもある。
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