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2014年06月16日 16:36山の思い出話全体に公開

82年10月明星山南壁

ヤマレコユーザーにとっては、「明星山ってどこ??」っていう人は多いと思います。
北アルプスが標高を落としながら北に伸び、最後は親知の断崖で日本海に落ち込む稜線から少し東に外れたあたりにある、標高1000mレベルの石灰岩の岩山です。標高が低いわりに、その南壁はP6から小滝川まで400m以上の落差を持っており、クライマーの間では有名な岩壁です。
冬は豪雪、夏場は低い標高で南向きのため灼熱地獄となるため、クライミングの対象としては秋が最適となります。当時の自分にとっては「気になる」岩壁で、やっと友人を誘って訪れることが出来ました。

P6南壁は小滝川から直接そそり立っていますが、アプローチとなる林道が対岸の山の中腹につけられており、壁の様子を良く観察することが出来ます。今回登る予定の左岩稜は、実質6ピッチ、V級-A2で、明星山の中では入門的なルート。写真1は南璧の全景ですが、左手の顕著なすっきりとしたラインが左岩稜です。石灰岩に不慣れなので手ごろなルートです。
1日目は南璧とりつきのやや上流にある小滝川河原にツェルトを張りました。このあたり、今は小滝川ヒスイ峡というきれいな公園になっているようです。

翌日、最小限の荷物とクライミングギアをもって登攀開始。最初の数ピッチがフリーと人工登攀交じりなので、あぶみをぶら下げてのクライミングです(写真2)。石灰岩は慣れ親しんだ花崗岩とは違い、水流で侵食されて岩の表面がナイフの様に尖っています。「こういう所にザイルを引っ掛けてショックを与えると、スパッと切れちゃうんだろうなあ」とか、「もし落ちて岩肌にぶつかると、皮膚や肉がえぐられるかも」とか考えると、ゾクゾクしてきます。

一方で石灰岩は侵食による穴なんかもあり、つかみやすいホールドが豊富でした。この時はクライミング自体は特に問題なく終了し、そのままやさしい岩場をP6南璧の頭まで登りつめました。

さて、ここからは踏み跡を探して西側の斜面を降りることになりますが、ここから後の下降路がわからず、大変苦労しました。途中でいきなり岩場の上に出てしまいました。
太い木の幹を持って下を覗き込むと、どうやら下の壁はえぐれていてオーバーハングになっているようで、下の地面まで見えません。かといってこの岩場を巻いて下りることも出来ないようです。

壁がどれくらいの高さなのか、ダブルにしたロープの先端が下まで届いているのかどうかわからない状態での懸垂下降を余儀なくされました。えぐれたオーバーハング状の岩場なので、ロープにぶら下がった空中懸垂での下降になります。もし下に安定な地面が無かったり、ロープが空中で途切れていたりしたら、すぐにロープを登り返す必要があります。しかしアッセンダーなどは手元にありません。仕方なしに細いロープスリングを出して、プルージックでいつでも登り返せるように準備をしてから懸垂下降をしました。ロープに体重を預けてからの数mが緊張の一瞬でした。幸いにしてすぐにロープが下まで届いているのが見えて事なきを得ましたが、クライミングそのものよりも緊張した出来事でした。

この後も藪の中を右往左往して、日がとっぷり暮れた頃にやっとビバークサイトに戻ることが出来ました。
下降路で苦労した思い出深い岩登りでした。


写真1:対岸の山の中腹にある林道から見た南璧全景。
2:4P目の登攀 この終了点は「失神テラス」と名づけられている。
3:暗くなってからようやくビバークサイトに戻り、登攀具の整理をしているところ。
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コメント

こんばんは
漠然とした夢のようでしかありませんが、
この明星山の南壁は登ってみたいと思っています。
このように、先輩の貴重な体験談を聞かせていただくのは、とても参考になりますし、あの絶壁があらためて現実味を帯びて迫ってきます。

真剣に技術の習得とパワーアップに励もうと思います。
2014/6/16 21:23
Re: こんばんは
DSAさん、こんばんは。
もう30年近く前の記録ですので、今はどうなってるのかまったくわかりません。
ネットで調べてみると、小滝川周辺は公園として整備されてるようですが。。。
ルートはどうなってるのでしょう。
また登られたときは、記録を楽しみにしています。
2014/6/16 22:04
RE: 82年10月明星山南壁
こんばんは!
82年10月なら丁度、フリースピリッツに続きマニフェストが初登された翌年だから評判だったのでは?
流石!凄い行動力に脱帽です。
関西からは運転も核心で、脆さも、下降路も核心ですね。
3枚目のCross-hillさん、おやつれの様相?
2014/6/16 21:57
RE: 82年10月明星山南壁
「フリースピリッツ」や「マニフェスト」を知ってるとは、dejavuさんも相当の通ですね!
当時の自分たちには、それが登れるほどの力量はありませんでしたが。。。
石灰岩は花崗岩と違って、かなり勝手が違いました。おそらく慣れたら快適に登れるんでしょうが。。。あれ以来、明星山に登りに行くことはなかったです。
2014/6/16 22:07
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