点名は地名から取ったのが原則と書きましたが、逆のケースもあります。つまり、測量官が付けた名前がそのまま山名になったケースもあります。多摩川源流域の丹波山村にある岩岳の点の記(三等三角点、明治37年設置)から。
「猟夫ノ或ル者ハ、本点附近ヲ「イワタケイワ」ト称スルヲ以テ、点名ヲ岩岳ト命名セリ」
この三角点は昭文社地図では赤点線ルートの脇にチョイと登った所にあります。現地は岩峰という風情ではなく、その先の前飛竜の方がよっぽど「岩岳」です。なんでこんな名前なんだろう??と思ったものですが、岩茸が取れる岩があったからなんですね。多分、奥多摩の高水三山の岩茸石山と同じ由来なんでしょう。
ですが、この名前が大正2年発行の五万分の一地図「丹波」初版に記載され、全国区の名前への道を歩み始めます。今ではどの地図を見ても”岩岳”です。
ちなみに命名者は村山唯一測量官(陸地測量手)。この辺りの多摩川源流域に三等点を設置された方です。岩岳に登るのには苦労されたようで、他の三角点の記より詳しく記載されています。(元々村山測量官は点の記を詳しく書かれる方のようです。)
「本点所在地ハ樹木繁ク猟夫ノ少数者ノ外、人跡ナキヲ以テ、道ナク且ツ危険ノ個所多シ。既ニ登リ口サヘ普通ノ者ニハ分ラズ。」
といった具合。今なら丹波山村から赤点線ルートを伝えば、この手のルートに慣れた方なら苦労せずに行けると思います。(村山測量官が点の記に記載しているルートは、今の大高巻から火打石谷、小常木谷の出合を経由する赤点線ルートではなく、青梅街道の羽根戸トンネル附近から北側尾根によじ登り、尾根伝いに岩岳に到達するルートです。)
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する