三角点には周囲を・から見渡せるように櫓を立てました。書物によれば、場合によっては20m近い高さの櫓を立てたケースもあったようです。これはかなり遠くからも見えないといけない一等三角点の場合でしょうね。では、普通はどれ位の高さの櫓を立てたのでしょう？。明治の二等三角点の記には櫓の高さも記載されています。
2.0m〜3.0m；2点
3.0m〜4.0m；1点
4.0m〜5.0m；11点、双六岳、笊ヶ岳、沢口山など。
5.0m〜5.5m；16点、塩見岳、上河内岳、霞沢岳など。
5.5m〜6.0m；35点、千頭星山、野口五郎岳、仙ノ倉山、竜喰山など。
6.0m〜6.5m；44点、燧ヶ岳、浅間山(前掛山)、木賊峠など。
6.5m〜7.0m；44点、奥武蔵豆口山、奥多摩酉谷山など。
7.0m〜8.0m；5点、苧巻岳、青薙山、奥秩父和名倉山など。
8.0m〜9.0m；2点
5mから7m位の高さの櫓を立てるのが普通だったようですね。
建てるための丸太は、御料林などの国有林では現地調達だったようです。
「御料林障碍倒木使用。」(西股、長野県西筑摩郡大滝村、明治35年)
「御料林ノ特賣ヲ便トス。板ハ溝口ヨリ搬上。」(白岩、長野県諏訪郡落合村、明治35年)
現地あるいは麓から至る途中で調達した例も見かけます。
「本点ニ於テ視通障碍伐倒木ヲ使用ス。」(東鐘釣、富山県下新川郡愛本村、明治37年)
「測站近傍ニテ購入セル�粘歛整賈楸盻集涸�。横川ニテ購入セル杉六分板一枚金五銭。」(横川、長野県西筑摩郡神坂村、明治35年)
「丸山区ノ総代ニ談シ、白山社近傍ニテ伐除セリ。杉丸太一本金五十銭。椹六分板飯田町ニテ一枚金拾銭。」(権現山、長野県下伊那郡上飯田村)
順路によれば白山社は麓の村から一里半、三角点は白山社から四町。
ですが、多く目にするのは麓で購入して担ぎ上げた例です。特に板材は麓で購入しているのがほとんどです。現場で製材するのは無理でしょう。
「氷川村大字氷川ニアリ。柊老太末口二寸五分、長四間一本金五拾銭。柊板厚六分一枚金九銭ヲ支拂ヒタリ。」(長澤、奥多摩鷹ノ巣山、6.6mの櫓)
「大字日原ニテ買収ス。柊丸太末口二寸五分、長五間一本金弐拾五銭。柊六分板一枚金九銭（板ハ氷川ニテ買収セリ)」(小川、奥多摩酉谷山、6.9mの櫓)
購入した丸太のサイズ(特に長さ)を記載した例は余り多くはないのですが、上記の四間〜五間程度が代表例です。長さ7.2〜9m、直径10cm弱の丸太を使用した模様。長い方が半値なのは日原〜氷川の運搬賃かな？。これを麓から現地まで最低4本は担ぎ上げたのですから、結構な労力ですね。また、このサイズを支柱に使ったなら櫓の高さと大体合います。
一間は家の柱の間隔が基本で、畳の長辺の長さ位。家を建てる時に使う材木のサイズが四〜五間位までで、それに合わせて売っていたのではないでしょうか？。普通の二階建て民家の柱がそれ位の長さになるように思え、それ以上の長さが必要な例は限られるように思えます。余り長いと消費地への運搬も面倒でしょう。櫓の高さもそこから決まったように見るのは穿ち過ぎ？。4本の木で7mの櫓を立てる作業でも大変で、現地で継ぎ合わせてさらに高くするのは困難だったのではないかな？。7.0mを越える高さの櫓が極端に減るのはそういう事情のような気がします。
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