明治の一二等点の点の記には「観測スベキ方向」という欄があります。その三角点から観測した他点が、点名か”冠字(選点番号)”で書かれています。それがどのような順で書かれているか、ご存じでしょうか?。例外はありますが(特に一等点)、基本的には、その三角点の北から時計回りの方向に見える順で書かれています。これは、単なるウンチク話ではなく、廃点三角点を探すのに使えます。
「閲覧サービス」で同一地域の同一冠字の三角点を検索し、リストを表示させて抜けている選点番号(一等点なら今はない点名)の三角点があれば、その三角点が有った筈だと解ります。で、一二等点なら、その辺りの点の記を調べ、その抜けている選点番号の三角点を観測した他点がないか探します。見つけられれば、その三角点から見て、「観測スベキ方向」の前後に書かれている三角点を挟む角の間のどこかにあった筈と解ります。複数点から観測されていれば、更に絞り込めるでしょう。(ちなみに三等点の場合は、一枚に二点記載されているので、両方が廃点になっていなければ、廃点三角点の点の記も読めます。)
平野部では地形の特徴に乏しく、設置場所を絞り込むのは結構大変ですが、山岳地域なら、設置されただろうピークを絞る事は比較的容易です。あとは、地理院地図でその場所の三次メッシュコードを調べ、基準点コードを推定して「閲覧サービス」で試して見るだけ。上手く行けば点の記が表示されます。ヤッタァ!って感じ。(当然、ハズレの場合が多いですが。)
と言う事をやっていると、これで見えて来ることもありまして、
二等三角点、暑-12(石川県)
この選点番号は抜けています。で、暑-13,14,15,16の「観測スベキ方向」に登場し、消し込み線で消されています。書かれている順番から場所を推定すると、河北湖の辺りが該当すると思われます。ですが「閲覧サービス」でその辺りの三次メッシュコードを使って片っ端から試しても見ても「server error」が出てくるだけ。消し込み線で消されている記載から見るに、観測後に廃点になった訳ではなく、どうやら計画はされたけれども実際には設置されなかった様子。設置されていたなら、他点から全く観測されない事はないでしょう。消し込み線で消される事はなかった筈です。
計画された場所近くと思われる三等点「室」の点の記を見るに、
備考:砂丘移動ノタメ永久性ナキニ付キ(昭和十四年度再設)、点名中濱ハ室ニ変更。
と書かれています。元々の「中濱」がどこにあって「室」に移されたのかわかりませんが、砂丘地帯で条件が悪すぎ、移されたようです。三等点「大根布」にも同様の記載あり。暑-12も条件が悪すぎて設置を断念したんでしょうか?。附近の二等点の配置を見るに、確かにもう一点あった方が好ましいように思われるのですけれど。
と言う訳で、どうやら廃点以前に、現場で計画倒れに終わった三角点もあるようだ、というお話しでした。選点番号に抜けがあるからって、必ずその番号の三角点があった訳でも無いようです。言い換えると、一旦計画したからには何が何でも設置!って訳でもなかったようです。(まぁ、個人的な推定ですが。)
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