若干減ってはしまったものの、相変わらずのペースで本は読んでいましたが、山岳系の小説はしばらく離れていたので、気付けばブックレビューも1年振りです。9月に入って偶然書店で見かけた笹本稜平氏の新書。見かけたのがちょうど発売されて間もない頃でしたので、即買いしてしまいました。読了してから1か月近く経ってしまいました・・・。
『ソロ -SOLO-』笹本稜平著。
ソロのアルパインクライマー奈良原和志が、8000m級の世界第四位のローツェ、しかも最難関の南壁ルートに挑みます。ヤマレコユーザであれば多くの方がご存知かと思いますが、伝説的な登山家トモ・チェセンの「疑惑の登頂」の舞台として、今も世界の登山界で語り継がれる因縁の壁でもあります。和志にとって心の師でもあるトモの登頂の真実を証明すべく、この難壁に立ち向かいます。
人がまともに活動することを許されない8000m越えのデスゾーン。ストローで呼吸をするかのような息苦しさと抑圧感の描写はさすが山岳小説の第一人者といえる笹本山岳小説の醍醐味で、一度読み始めると止まらないある種の中毒性を感じます。
タイトルとは裏腹に、"ソロ"の部分は登攀描写全体の2〜3割程度しかありません。が、この物語の主題はそこではなく、むしろ複数人パーティ(といっても2〜4人程度)での視点から、「ソロ」というもの位置づけを行っているように思えました。単独登山の長短はもはやこの場ではいわずもがなですが、本書でいう「ソロ」とは登山に留まらず人生においての「ソロ」という生き方についても触れています。と同時に、世の中における「ソロ」の限界、「自分以外の人間」の存在を受け入れることで初めて得られるもの、見えてくる世界と素晴らしさを教えてくれます。
会社勤めが極端に短いうちに独立してしまったという意味では自分も「ソロ」のとしての生き方にどっぷり浸かってしまう気持ちはとても共感できました。そしてそこから一歩踏み出すことに極端なまでに慎重になる主人公奈良原の姿は以前の自分を見ているようで歯がゆい気分にもなれました。
「ソロ」という生き方をどう受け止めるかは読者次第ですが、色々な面で考えさせられた一冊でした。
評価:★★★★☆(星4つ)
shoytomoさんこんばんは!
久々のブックレビュー、お待ちしておりました。
文章が上手な人がうらやましいです。
私もこの本を読みたくて、ただ今図書館に予約中です。笹本稜平氏のことだから登攀の描写が多いのかとおもったらそんなことはないのですね。
本が来るのが待ち遠しくなりました
もう一つの日記に書かれていた「神の涙」も早速図書館に予約を入れました。
乃南アサ著の「ニサッタニサッタ」もアイヌについて書かれており興味を持ちました。
私も山に行けないので読書の秋をしていますよ。
読み始 めると止まらなくなってしまうところが問題ですが。
kitausagiさん、おはようございます
嬉しいコメントありがとうございます<m(_ _)m>
秋の夜長は本当に読書に適していますね
すみません、コメント読んで気付いたのですが、ちょっと誤解を与えてしまう書き方をしておりました 登攀描写自体はたっぷりあるのですが、タイトルのわりに"ソロ"の登攀という描写は少なかったかな、という意図でした。失礼しました
(コッソリ訂正しました。。。)
本作に限りませんが、笹本山岳本はスリルがありすぎて脳と心臓への負担が大きすぎですので(笑)、個人的には『神の涙』のほうがオススメだったりします。アイヌについては詳しく知らなかったのですが、この本を読んでもっと知りたくなりましたね。ご紹介いただいた『ニサッタ、ニサッタ』もいずれ読んでみたいと思います。
良書に出会うと、小説家さんたちの素晴らしい想像力には本当に敬服しますね。『神の涙』レビューで少々触れましたが、『サピエンス全史』では我々人類(ホモ・サピエンス)の歴史的発展はすべて"想像力"によるものだと論じられています(読まれましたか?)。物語を紡ぐというのもこの想像力の賜物ですが、改めてそれを実感しその恩恵の一片を享受しているなぁという気持ちで一杯になります。
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