特定の作家さんの本を連続して読むのは10年以上前にハマった東野圭吾氏以来です。今回もまた笹本稜平氏の作品、今年10月にリリースされたばかりです。
あらすじは亡き父の跡を継いだ山岳カメラマン(風間)が、絶滅したとされるエゾオオカミとの再会に生涯をささげる男(田沢)と出会い、過去の事件を紐解きながらもお互いの生涯の目標を追うというものです。
謎解きに関してはさすがミステリー作家ともあって、とてもうまく構成されていました(犯人の行動と動機付けに少々違和感がありましたが)。以前読んだ作品にもちょっとした謎解き要素はありましたが、今回は殺人事件の謎解きということもあり、そちらの比重も多かったような気がします。
山岳写真ということに関して言えば、プロカメラマンのフィールドワークのリアルな実態というものを知らないので、作者の描写が現実的なものなのかどうはわかりませんが、それをそのまま受け入れるとすると、所詮僕が山で撮っている写真なんて、まだまだ世界の入り口に足を踏み入れかけたところなのだろうなーなどと実感いたしました。でもまぁそれでも僕はいいんです。楽しければ。・・・脱線しました。
以前のブックレビューにも書きましたが、山岳小説における冒険的要素というものには僕はあまり興味がありません。ただ、山という時に過酷な状況を余儀なくされる環境においての人の生き方というものにはとても暖かい(時には熱い)ものを感じ、それを見事に描写している氏の作品だからこそ好きなのかもしれません。
氏の作品が好きな理由の一つは「親と子の繋がり」というところ。本作にしても、今まで読んだ他の作品にしても、主人公と父親の関係が自分と酷似していて感情移入が半端ないです。本作のように父親は存命ではなく、田沢という仲介者によって違った側面から父を知ることになります(『春を背負って』で言えばゴロさんのような存在ですね)。僕にはそんな存在がいないので羨ましく思いますが、亡くした後に他人から、自分の知らなかった父の一面を知るということに関する描写がとても好きです。
もう一つ、こちらも氏の作品で一貫している(と勝手に僕は思っている)のが、人がより良く生きるための「魂の糧」を常に意識しているところ。2008年の氏の作品『還るべき場所』でも使われていた表現です。人にとって本当の幸せが何なのかをテーマにした作品は多数ありますが、「魂の糧」としてその要素がどういうものなのかを物語の中でわかりやすく実感することができる描写は、読後これ以上にない爽快感を与えてくれます。
奈落の上の綱渡りのような人生の中で、迷わず臆せず進むことを辞さない力を与えてくれる宝とは自分にとって何なのか、ということを改めて考えさせられる作品でした。
評価:★★★★☆(星4つ)
分水嶺と聞いて・・・週末はアノ山のアノ場所に行こうと思いました。
こんにちは!
「分水嶺」面白いみたいですね。
前作「その峰の彼方」がいまいちだったので、本屋で買おうかいつも悩んでました。読んでみようと思います。それにしてもいつもながら分厚いですね。通勤電車に持ち込めません
ちなみに僕は「駐在刑事」がお気に入りです。では。
hk10さん、こんにちは^^
コメントありがとうございます!
「分水嶺」、そのタイトルからして、笹本さんの作品の事ですからきっと人生観が込められた作品なんだろうとなぁと期待値を上げていましたが、それに応えてくれる良作でした。
(個人的には満点をあげられるほどでは無かったのですが・・・
僕もそろそろ、ハードカバーへのこだわりを捨てなければと思うことがあります
「駐在刑事」シリーズは僕もまだ読んだことが無いんです
いつか読んでみたいですね。
おはようございます。
私も笹本稜平好きです。
今、図書館で予約待ちでもうすぐ順番まわってきます。その峰の彼方はハードな山行すぎて飛ばし読みしましたが、分水嶺はちょっと期待しています。
還るべき場所が一番かな!山の話ではないですが、遺産も、お勧めです。
kitausagiさん こんにちは。
コメントありがとうございます^^
僕はあまり図書館を利用する習慣が無かったのですが、発売後間もなくでも借りれるんですね
予約待ちということは、やはり人気なんですね
分水嶺の山行ハードさは還るべき場所よりは若干マイルドな印象でした。
笹本ワールドはまだまだ初心者なので、山に限らずじっくり読んでみたいです
機会があれば、kitausagiさんなりの『分水嶺』感想も聞かせて下さい
しょいともさん
こんばんは。(^-^)/
素晴らしいレビューに脱帽です!m(__)m
感じることは多々あっても
こんなに上手く言葉に変換できないワ。
俄然、興味が湧いて早速予約入れましたが
何と11番目でした。気長に待ちます。
アノ山のアノ場所とは。。。
やはり奥秩父のアノ辺りでしょうか??
上げ過ぎてしまったかな〜
まぁ、ご参考まで
レビューへのレビュー(?)ありがとうございます^^
僕はレコを読んで、sionさんの気持ちがコトバ以上のものとしてしっかり伝わってきてますよ。
想いは言葉を超越、です
さすがsionさん、行動を起こすのが早いですね
しかし11番目とは
やはり人気作家となると、注目度も高いようですね。
ぜひsionさんの感想も聞かせてくださいね
ふふふ〜♪
そうです、カノ地です。少し東側ですが。
雪の状況に合わせた楽しみ方をしてこようと思っています
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