一方、ビジネスマンとしても優れた才覚を発揮し、ヒマラヤやアンデス遠征に必要な資金や物資調達に多大の貢献をしたり、ベトナム戦争中はビジネスマンとして戦火のベトナムで赤井電機のテープレコーダーの売り上げを10倍に引き上げる商才を発揮している。また、1970年には、三浦雄一郎のエベレストスキー滑降を専従スタッフとして資金調達や登攀ルート開拓等で全面的にサポートし成功させた異色の登山家である。
この本は、2005年に講談社から発行されたもので、以下の7章から構成されている。
第1章; 氷壁をたたき続けた15時間
第2章; 困難は宝になる
第3章; 計画を成功させる鉄則
第4章; リーダーの本領
第5章; 限界に挑む
第6章; 転身して生きる
第7章; 挑戦心は死なず
この本の中で、「なぜ山に登るのか」と問われれば、「楽しいから」と答えるとし、「人がやらないことをやる」のが人生哲学とし、一貫して、「高い目標を設定し、その夢を実現するために様々な工夫を重ねるステップが楽しい」としている。また、登山にあたっては、「危険を回避して、困難を克服する」がモットーであるとし、楽をしようとして逆にトラブルを起こしてしまうような安易な選択を避けることが大切としている。このような人生訓に基づいて登山や冒険に挑戦してきたので、これまでの人生で失敗して撤退を余儀なくされたという経験はあまりないとしている。
1章から4章は、冬季の前穂高岳北尾根第4峰正面岩壁で吹雪にあってビバークを余儀なくされ、凍傷になるのを防ぐため、極限下で15時間氷壁を叩き続け、登頂を果たして生還するエピソードから始まり、ヒマラヤやアンデス遠征等の登山の苦労話や遠征隊長のあるべき姿論が展開されている。
5章から7章は、サラリーマンを辞めて三浦雄一郎のエベレスト大滑降のサポート役を引き受け、プロジェクトを成功させたことや、ベトナム戦争下のベトナムで赤井電機のテープレコーダーの売り上げを10倍増に引き上げた逸話等が紹介されている。
後半は、ちょっと自慢話が多い感じがしないでもないが、戦後のヒマラヤやアンデス等の登山で素晴らしい実績を上げ、常に先頭に立って難しい登山に挑戦してきたた登山家であり、優れたビジネスマンでもあった加藤氏の生き方は一読に値すると思う。
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