先日の北岳、間ノ岳での失敗についての総括である。経緯については、以下のレコと日記を参照願いたい。
北岳、間ノ岳 〜夢にまで見た稜線のはずが…〜
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-3409681.html
熱中症の恐怖
https://www.yamareco.com/modules/diary/67928-detail-246637
あれからほぼ1週間経ち、熱は下がったが相変わらず微妙に頭痛があるのと、食事もまだ少量しか食べられない。体調としては50%ぐらいだろうか。あれからずっと何が悪かったのかを考えていたが、検討の結果「初心者が慣れない南アルプスに単独で登ったから」という当たり前の結論に行き着いた。
以下、考察。
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1.気候に関する誤算
南アルプス市の2021/8/1 , 8/2の気温は、最高気温が33℃、34℃で非常に暑かったようだ。登山口の広河原は標高約1500mでもっと気温は低かったのかもしれないが、それでも(当たり前だが)標高の低い場所は暑かった。自分は「南アルプスは自分のホームである奥多摩や奥武蔵よりも涼しい」と思っていたが、盛夏においては十分暑かった。
2.登山計画の甘さ
自分がよく登っている奥多摩・奥武蔵の登山だと、上り3時間、下り2.5時間ぐらいの登山が普通で、朝7時から登山を開始すると、昼過ぎには下山できる。つまり、涼しい時間帯に山頂まで登り、余裕を持って降りてくることができていた。
しかし、今回の登山(2日目)は前日の疲れも溜まっていたことからペースが上がらなかった。5時半から行動を開始し、北岳山荘ー間ノ岳を3時間往復してきたので、北岳山荘をたったのが9時頃。大樺沢二俣についたのが12時頃だった。
元の計画では、午前中には広河原に下山している予定だったので、計画が甘かった。その結果、一番暑い時間帯に標高の低い場所を長時間歩かなければならなくなった。
3.高度障害の影響(2021/8/9追記)
前日の車中泊ではあまり寝られなかった。また、北岳への道のりは思いの外厳しく、北岳山荘になんとか到着した時には眠気が酷く、17時の夕飯時とその後ストレッチをした以外は翌朝の4時まで殆ど寝ていた。
しかし、睡眠時の呼吸が浅くなったためと思われるが2時間毎ぐらいに軽い頭痛がして目が覚めた。そのたびに深呼吸をすると頭痛が治ったが、高度障害の影響はあったと思われる。
翌日の間ノ岳ピストンの際に異常に息が切れて、ペースが上がらず、計画に対して遅れをとる結果に繋がった。
上記1〜3は熱中症のリスクを高めた要因だが、山行の最中に計画とのずれを認識することができなかった。
4.公共交通機関の利用に関する誤算
上記の通り、当初の登山計画では12時前に下山できる予定と考えていたので、帰りの広河原からのバスの時刻は気にも留めていなかったが、大樺沢二俣でかなり計画から遅れていたので、バスの時刻が気になり出した。携帯に保存していたバス時刻表のPDFを見ると、14:00の次は16:40(最終)となっており、2:40も間があいていることがこの時初めてわかった。ギリギリ急げば14:00のバス間に合うかもしれないと思い急いで下ったのが、道迷いにつながる最大の原因だった。普段マイカー登山している自分は帰りの公共交通機関の時間に関する意識が低かった。
5.総括
(2022/8/9追記)
2.計画の甘さと3.高度障害の影響から遅延が発生。帰りのバスに無理に間に合わせようとした事から、4.ルートミスが発生。正常ルートになんとか復帰したが、1.想定外の暑さとアフターケアを怠った事から、熱中症を発症、といった流れが見えて来た。
事前の研究はこれまで以上にしてきた。
にっぽん100名山のDVDを購入して、北岳・間ノ岳の回を何度も見てシミュレーションした。獲得標高が2000m以上になるため、5月頃からそれに耐えられるだけの体力をつけて来たつもりだった。山レコの最近の山行記録は全てチェックした。
では、なぜ1.〜4.が起きたのか。
結局のところ夏の南アルプス登山に不慣れだったという事に尽きると思う。本などの情報でどれだけ勉強しても、山レコでどんなにシミュレーションしても、どんなに最近の山行記録を見ても、経験していない事はわからないということだ。
上記のような問題は、登った事がある人と一緒に登るだけでほぼ解決できる。残念ながら私は今回「単独の登山者はリスクが高い」ということを体現しただけだ。
少なくとも自分は今後初めての山域に単独で登ることは無いと思う。
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山行をしっかり振り返られていて素晴らしいです。
もうひとつ要因があったように思います。
3,000m超の高山ですから、高山病とまではいかないまでも心身に負荷がかかっていたのかもしれません。
初めての山域の単独行は、プランニングが難しいですね。
当日の体調や天候に応じてプランA, B, Cとか準備できればよいのでしょうけれど。
コメントありがとうございました。
たしかに夜中北岳山荘に宿泊中に頭が痛くて何度か目が覚めました。軽い高山病かと思い深呼吸したら改善しましたが。また北岳山荘と間ノ岳のピストンをしている最中は異常に息が切れて自分の体じゃないみたいでしたので、少なからずダメージはあったのだと思います。
こういうのは山行計画に織り込んでいませんでしたので、遅れが発生する原因になっていたと思いますね。
ご指摘ありがとうございました。
同じ山域をひとりで登る機会が今後あるか分かりませんが、似たような状況に遭遇する可能性はゼロではないと思うので勉強になります
もし私がアルプスを登るとしたら(南北等を問わず)事前準備は当然としてゆとりある行程を組むつもりでいます
アクシデントに見舞われた時、時間的余裕が無ければ対処不可能で最悪の事態を招くやもしれないと思うからです
このように考えられるのもMoriMoriMoriさんのレコをはじめとして多くの方の記録を拝見したからです、ありがとうございます
今は近場の奥多摩でステップアップを図りいずれ3000m峰にも登りたいと思います
コメントありがとうございます。
この「ゆとりある工程」というのがポイントなんでしょうね。あれ?こんなに緩くていいんだっけ?ぐらいが良かったんでしょうね。
往路すれ違ったご年配のパーティーに伺ったら白根小池小屋2泊だと言っていて、たしかに2泊なら余裕があるなと思いました。少なくとも私の頭には2泊というのは無かったのですが、後から考えるとそれもありだったのかな、とも思います。
しかしながら、それもこれも同行者がいればこそ、だとは思います。
小生は公共交通利用の単独ハイカーです。余計なお節介と思いますが、バスに乗り遅れないために次のことを実施しています。
行先のコースをヤマレコマップでプリントします。
スタート地点、通過する各地点、ゴール地点の時刻をマップに記載します。
ゴール地点からの帰りのバス時刻を上記のマップに記載します。
バスは最終便を含め予定ゴール時刻の前後1〜2時間に利用できるバス時刻を記載します。
このマップを小生は胸ポケットに入れ直ぐに見れるようにしています(汗で濡れると印刷がにじみますので小さなビニールの袋に入れています)。
登山中に通過地点での予定時刻と実際の時刻を時々確認します。
もし予定時刻より遅れているなら、次のバスに変更か、ピストンなら引き返すか、エスケープ(ができるなら)するかを決めます。
スマホでバスの時刻をチェックできますが、面倒ですし時間がかかりますので上述のようにしています。
長文で失礼いたしました。
コメントありがとうございます。
なるほど、山レコの山行ログもいいですが、バスや電車の時刻との関係までは分かりませんので、これはいい案ですね。参考になります。
(そもそも私は帰りの時刻のことを考えてもいませんでしたけどw)
私もfujikitaさんと同じく、下山予定時刻前後のバス時刻をあらかじめ調べていますが、メモ方法はヤマレコの計画書です。
直近の山行だとこんな感じです。
https://www.yamareco.com/modules/yr_plan/detail-875811.html
計画ルートをダウンロードすると計画書も同時にダウンロードされ、オフラインで見ることができます。(山行中は「計画書を見る」ボタンで閲覧できます。)
この場合、スマホ電源は命綱なので日帰りであっても必ずモバイルバッテリーを持参しています。
コメントありがとうございます。
なるほど、こんな方法もあるんですね。当たり前ですが、普段から公共交通機関を利用されている方は、時刻表を調べているのですね。私は午前中に下山できそうだからいいかな、と思ってあまり深く考えていなかったのですが、いっその事そのまま最後まで考えない方が良かったかなと。
無理に時間に間に合わせようとするとそれもトラブルの原因になるのだなと思いました。
まずは、何よりもご無事で良かったです。
レコと日記を拝読させていただきました。まるでヤマケイ文庫のドキュメント道迷い遭難を読んだような気分になりました。私も改めて気を引き締めて登山しようと思います。
コメントありがとうございました。
私の拙い記録が何かのお役に立てば幸甚です。道迷い遭難を読んだ気分になられたとの事ですが、多分私が羽根田治さんの本をよく読んでいるから、文体が影響を受けているのだと思いますw。
反省点を色々と検証されて素晴らしいと思います。
夜間に頭痛、そして息切れをされたとの事ですが、やはり軽い高度障害にかかっていたと思われます。
私も経験ありますが、車中泊での睡眠不足、そして翌日に一気に高度を上げたのが要因になったのではないかと。
初日の睡眠不足は後々まで尾を引きますので、車中泊は避けて初日は広河原または御池に泊まり、翌日ゆっくりと身体を慣らしながら北岳に登るのが良いと思います。
自分自身の経験から恐縮ですが、熱中症対策にはスポーツ飲料がかなり効果がありました。塩飴も良いようです。
蛇足かもですが「初心者が慣れない・・・」とありますが、天候の良い時に余裕ある計画で歩けば決してそんな事はなく、充分楽しめると思います。
コメントありがとうございます。
高度障害の件はtetsumaro さんからもご指摘がありましたので、考察に追記させていただきました。
因みにスポーツドリンクはハイドレーションで飲んでました。飲んでましたが、沢を下ったり登ったりしている時に、冷や汗も混じって尋常じゃない汗の量だったので、発汗量に対する供給が追いつかなかったものと思われます。
私は元々極度の汗かきで、学生時代のサッカー部で、上に着るカラフルなやつ(ビブス)を交代で切るのですが、汗でヒタヒタになるので、お前の後は着たくないと言われてましたw
また、余裕ある計画のところは、体力にはある程度自信があっただけにそれが仇となったのかも知れないです。私は奥多摩なら一日に移動距離20km、累積標高差1500mぐらい(鴨沢から雲取山ピストン)は日帰り圏内でしたので、今回の山行は一泊で十分に「余裕がある計画」の筈でしたが1.〜4.により計画が狂ってしまったのはやはり経験不足かと思った次第です。
私も単独でしかも無理な計画をしますので少し考えさせられました。
登山はいろいろなスキルが必要となっていると思います。
地図読み、天候の判断、体調、時間管理、補給計画(水分、食べ物)、その他諸々。
そのため私自身が以下のことを参考にして学習しています。
https://www.jpnsport.go.jp/tozanken/tabid/82/Default.aspx
上記URLの映像資料
【安全登山オンラインセミナーR3.5.22〜5.23】
「20分で学ぶファーストエイド!基本編 熱中症・高山病・低体温症」
社会医療法人孝仁会北海道大野記念病院:大城 和恵 氏
熱中症予防
登山前 500mlの水分補給
排尿を2回してから出発
登山中 20分ごとに100〜250mlの塩分を含む水分補給
登山後 500ml以上水分(塩分)をとる
今日の水分を補い老廃物を洗い流すには、多くの水分が必要
高山病については睡眠不足もありますが、水分不足も一つの要素です。
(高山病のうちの72%が脱水、脱水になった人の87%が高山病)
teizan-hikerさんのwebセミナーの動画も参考になります。
https://www.youtube.com/teizanhiker
https://www.youtube.com/watch?v=pZwboCYZqNE [熱中症対策] 無知と無理が引きおこすスポーツにおける熱中症。正しい予防と対策を知って安全に登山を楽しもう!
ココヘリ主催 高体連登山専門部安全対策支援プロジェクト 安全登山講習会 11回分
2021年 ココヘリ安全登山学校 2回分
https://www.youtube.com/channel/UCKRLB7YdexcTsx0-zWVPDwg/videos
以下の動画で行動体力と防衛体力の話をされています。防衛体力も重要。
(ココヘリ主催 高体連登山専門部安全対策支援プロジェクト 安全登山講習会 第3回目(全11回)2020年7月30日開催)22:53/1:24:26〜
余計なお節介かも知れませんが、もし御参考になれば幸いです。
長文失礼しました。
コメントありがとうございました。
また有益な情報を多く提供いただきありがとうございました。
取り急ぎ大城医師の熱中症の動画を見てきました。考えてみたら低体温症の事例はよく読んだけど(トムラウシ大量遭難事件など)熱中症の事例ってあまりみた事がなかったかもしれません。知らなかった事が多く大変ためになりました。後ほど他の情報も見させていただきます。
また、ファーストエイドの知識は必須だなと思いました。今度講習会などに参加してみたいと思います。
時節柄1人でも私のような失敗をなさる方が減れば幸甚です。
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