先日、曽爾(そに)高原へ行った。私同様、長らく山から足が遠のいていたカミさんのリハビリ山歩きを兼ねてで、いま彼女がどれぐらい歩けるのか把握するために出かけた。
曽爾高原は標高700メートルの小さな盆地状の高原の周りを半円状に山壁が取り巻いているところで、登りは盆地の底から山壁の稜線までの部分に限られる。山壁への取りつきから稜線まで15〜20分ほどと、それほど長い距離ではないし、稜線へ向かわず盆地を歩いている分には水平移動となるので、山歩きというほどでもない山行なのだった。
リハビリ山歩きなので、いきなり厳しい山道は無理だろうということで曽爾高原を選んだのだったが、カミさんにはそれでも十分だったようである。
山壁の稜線まで登ったところが亀山峠で、そこからものの10分もしないうちに亀山の頂上に立てるのにもかかわらず、亀山峠に着いたところでカミさんは「もうここでいい」とギブアップしたのである。そして、翌日には足の筋肉痛に顔をしかめるのであった。
私自身もまだリハビリ中というべき身なのだが、そんな私でも全然歩き足りないぐらいの道のりにもかかわらず、カミさんはギブしたのである。表には出さなかったが、私はかなり驚いた。こんなに衰えていたのか、と。
若い頃のカミさんは健脚といってもいい足の持ち主だった。体は小さいのだけれど馬力とスタミナがあり、登りは私より速いくらいだった。穂高や槍を余裕で登り、合戦尾根なんかもどうということなく平気で登った。常念では途中でバテてしまった私の面倒を見てくれたぐらいである。
そのカミさんがこの程度の登りでギブするとは。昔のことを思えば、私には信じられない思いがあった。こんな里山で一杯一杯になるんか? が、それがいまのカミさんの現実なのだった。
カミさんは体が小さいため、ちょっと年齢不詳のところがあり、そのせいでか、実年齢より若く見られることがよくある。ときには30代と間違われることもあり、そんなことがあると自慢気に私に話すのである。私のほうも口では「そんな社交辞令を真に受けて、アホやなぁ」とかいいつつ、いつまでも若くいてくれる伴侶が嬉しく、内心満更でもなかったのだ。
しかし、カミさんもやはり年相応に老いていたのだ。外側は若く見えても、内側は「老い」という人間にとって不可避の現象がしっかりと訪れていたのだ。見た目の若さのため、これまで私はずっと同じ調子でカミさんに接してきたが、私の知らないところでしんどい思いをしていたのかもしれない。いまさらながらではあるが、そのように察せられるのである。
思えば、もし今回、曽爾高原へ行っていなければ、私は従来通りの眼でしかカミさんを見なかっただろう。そういう意味では、山歩きが気づかなかったことを可視化してくれたといえる。なるほど、山歩きにはそういうメリットもあるのか。
これから、少しずつふたたびカミさんと一緒に山へ行って、二人ともども少しでも若さを取り戻し維持したいと思う。そして、カミさんをいままでより大事にしないといけないな、とも。
(追記)
曽爾高原へ行った翌週、二上山を少し登りました。50分ほど登り続けましたが、こんどはカミさんも平気でした。ちょっとずつ昔のチカラを取り戻してくれつつあるようでホッとしました。ありがたや、ありがたや。
早速ですが私の奥さんは、私62歳と一回り離れている今年生誕半世紀を迎える私より年配の元気に山に行かれている女性の方々から見るとまだまだ若い方ですが、スタイリングは年齢と比べ私が言うのも何ですがカッコいいと言うか行けてます?だけど元来体幹が強く無いのと遺伝を色濃く受けている彼女の父が色々な成人病の併発の上、癌まで患い60代半ばと言う今では若過ぎる年齢で逝ってしまった事も有り。身体動かそう!と嗾けて本来山をやらない彼女を初級コースですが連れ出し少しづつ負荷をかけていかないと体幹強くならないよとか言ってついついオーバーワーク気味に…其れでも今年自分でも些細な事で骨折して年齢や見た目のとは違い身体が衰えている事に驚いた様で怪我が完治したらまた山に(丘の様な)歩きに行くと…後は私がレイナラさんの様に優しく急がずゆっくりと彼女に接してあげれるかだとレイナラさんの日記を拝見して反省しております。では何時迄もご夫婦で山行きできる事を祈念しております。
こんにちは、コメントありがとうございました。
tsutsumipapaさんもご夫婦で山歩きされてるんですね。ご同慶の至りです。
奥様骨折されたんですか、心よりお見舞い申し上げます。でもお若いですから、すぐ治りますよね。復活されたら、また山歩きですね。
私もついつい自分の行きたいところ、自分のペースで歩いてしまいがちだったんですが、もし逆の身だったら・・・・・・と思ったら、やっぱりそれは辛いなと。山が嫌になってしまったら元も子もないですから、カミさんのペースを尊重するようにしたいと思っています。tsutsumipapaさんも、どうぞお気をつけあれ(笑)。
ではでは、お二人で楽しい山の思い出をたくさんつくってくださいね!
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