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2024年01月07日 03:03未分類全体に公開

山(沢)登り事始め(9)登山靴の話+玄倉川本流

10/15のセドの沢で苦労したのに、すぐ次の山行を考えてトレーニングをしようと次の日の日記には書いてある。滝郷沢左俣を計画していた。最近の記録を見ると岩が脆いため相当崩壊しているらしいが、当時は割と一般的な沢で、ガイドを見ると遡行時間、滝の大きさともセドの沢以上のレベルのようであった。また水無川ほど人の入っていない寄沢流域ということもあり、難しさはある程度理解していたと思う。

そして、次の日記は2週間後の10/29であるが、「上に書いたトレーニングは全然やってない、滝郷沢は危ないかな?」なんて書いている笑。実は次の山行は11/4なのだが、滝郷沢をやめて雨山峠越えでユーシンに入り、玄倉川本流を下降する計画に切り替えた。それには実力不足を認識したこともあるが、寄沢流域の概念を掴むこと、(中学時代から憧れていた)玄倉川に入って、同角沢、モチコシ沢などの滝を眺めて見ようという目的があった。

それ以外にこの間に起こったことは新しい登山靴の購入である。それまで登山靴は例のキャラバンデラックス、沢では地下足袋にワラジで、今考えても全然不自由はなかったのだが、革製のいわゆる本格的登山靴が欲しくなってきた。当時は岩登りをするのに底の硬いそのような靴が一般的と思われていて、滝の直登にはその方が向いていると思った。もちろん見栄もあったろう。
山岳雑誌の値引きセールの広告を見てどこか覚えていないが神田の登山用具店に靴を買いに行った。良さそうなものが当時としてもかなり安くたしか8000円で買えて嬉しかったのだが、この靴を以後の沢登りに使って行くことになる。
ところがこの靴、家に帰ってよく見てみると、ちょっと変な部分がある。左右の靴底が違っているのだ。それで次の日、店まで行って問い合わせたのだが、特に問題はないと言いくるめ?られてしまった。この値段でそのレベルの靴は他にないこともあり、そのまま持って帰るという無駄足をした。

当然、玄倉川にも履いて行ったのだが、結論を先に言うとこここそ地下足袋にワラジにすべきで、革製・硬底の靴とのマッチングは最悪であった。

以下、日記本文

宇津茂行きのバスは国鉄松田駅の表口から出る。これは少しわかりにくい。7時25分のに乗り、8時頃終点についた。田圃の真中で山までかなり遠く見える。しかし歩き出すとそれほどのこともなく、すぐに山懐に入った。1時間ほどで中津川の河原に出た。ここまでの間に赤い美しい鉄橋があった。河原に出ると道はたちまちわからなくなる。赤ペンキや靴の跡を探しながら歩く。所々仮橋やハシゴがかかっているので、それを目印に行く。途中、道がわからなくなってしまい、大きな堰堤の下に出てしまったが右岸のガレを登って上に出、そこで休憩をとって握り飯一個を食べた。
水棚沢の出合のようである。

河原をまっすぐ上流へ行くと、また仮橋が見え、道標がいくつか立っていた。このあたり、沢はひどく荒れている感じで、山の神渡の沢出合などは完全にガレになっている。しかし、そこをすぎてしばらく行くと道は林の中に入り、歩きやすい山道となる。天気は上々である。
沢を渡ってしばらく行くと、雨山峠まで1kmの道標がある。あと0.3kmの道標が現れると道は真っ白で美しい沢に降りていて道と沢が一体になっている。花崗岩の河床で水の流れているところは比較的固い岩だがその側壁はザレていてすぐ崩れてしまう。急なルンゼ状の支沢が何本も入り、道は所々木橋でそれらを横切りながら九十九折りに高度をあげている。一箇所、頭上に見える木橋までルンゼを登ってショートカットしたがちょっと面白かった。そこから雨山峠まではすぐだった。

峠には男女4人のパーティがいて、寄へ下る道の状態を尋ねられてので、河原で何度も迷ったというと、諦めてユーシンまで戻ることに決めていた。(50年後の今から考えると迷ったのは私が未熟だったからで、余計な事を言って判断を迷わせたかもしれない)。つまり同じ方向だったが彼らよりずいぶん早く降り、玄倉川の河原についたのは11時30分頃であった。ヤシロ沢が正面に見える。大石山に食い込んでいる沢だ。ガイドブックによればずいぶん悪い沢のようだが、あまりにスケールが小さく見え、がっかりしてしまう。水無川流域の方がよほど山深い感じがする。

中学生の頃から玄倉川という名に憧れていたのだが全く拍子抜けしてしまう。大石山にしたって、1200mもあるように見えず、単なる小丘といった感じ。しかし今日は沢登りするわけではないので、河原で握り飯を食べるとすぐに上の林道に上がり、帰路につく。もうこれで帰るのかと思うとあまりに呆気ない。あとはモチコシ沢F1を見に行くだけ…ところがこれが今日最大の難物だった。同角沢F1を右手に見て仏岩トンベルの一つ手前のトンネル入口前の崩壊地を降って玄倉川渓谷に降りる。さすがにこのあたりは花崗岩の美しい渓谷でスケールもなかなか大したものだ。河原はなく全体が岩床で水流は所々深いトロを作っている。そのへつりが実に大変だった。今日初めて履いた登山靴は中々足に馴染まず、フリクションも効かない。岩は水流に磨かれた花崗岩でホールド、スタンスはほとんどなく、逆層である。こんなことならワラジを持ってくるんだったと後悔したがもう遅い。所々に打ってあるハーケンに縋り、主に右岸(下降なので右)を強引にトラバースする。格好に構っていられず、ズボンやシャツのフリクションまで使い、這いずって進まざるを得ない所もあった。

こんな苦闘を続けているうちにどうにもならない所に出てしまった。眼前にはトロがあり、水際までへつり降りてきたのだが、そこから先は全くホールド、スタンスはない。どう進もうかと考えているうちにズルズル滑って水中に落ちてしまった。背が立たないし、今までいた所には戻れない。仕方なく前方にある砂洲に向かって平泳ぎで泳いだ。5mくらいではあったが、あまりにも水が冷たく心臓マヒを起こすかと思ったほどである。もちろん全身濡れてしまったので、砂州に着くとしばらく休んで衣服を絞って乾かし、また歩き始めた。

そこから先はそれほどの困難もなくモチコシ沢出合に着いた。水量がかなり多く、F1の真下まで行くのは難しそうだったので、少し入って遠くから写真だけ撮ったが、さすがに丹沢では見たことないような大きな滝であった。出合まで戻ってさらに下流に進むと林道が高い崖の上に見えた。濡れた衣服で寒いこともあり、もう本流を下降する気力は無くなっていたので、かなり怖い思いをして崖を登り林道に這い上がった。 そこは仏岩トンネル入口だったが、

もう一つ問題があった。このトンネル、素掘りで照明などは全くない上に途中で曲がっているので昼でも中は真っ暗である。懐中電灯を持って来なかったので、一方の壁を手で触りながら一歩一歩慎重に歩いて抜けた。そこからは林道歩きで玄倉バス停についたのは3時半頃であった。小さな木造の休憩所ベンチで改めて下着まで脱いで絞って乾かしたが、バスが来るまで本当に寒かった。この時は丹沢湖のダムの工事中で、工事車両が何台も停まっていたような気がする。
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