これで昔の日記の記録は終わりである。この後、3回、沢登りに行っているが記録は残っていない。因みにそれは源次郎沢と葛葉川(2回)である。いずれも20年以上前のことであり、昨年の葛葉川(講習会参加)とモミジ谷は除く。この3回についてもいずれ気が向いたら書くかもしれない。
1974/12/1 新茅ノ沢・表尾根
渋沢駅に着いたのは6時20分頃、あまりにも早過ぎて大倉行きの次のバスは7時15分までない。仕方ないので大秦野行きに乗り、戸川で降りて戸川林道を歩くことにする。登山者は私の他にたった一人。彼は大倉口で降りた。
戸川で降りる。周りは畑、家などで表尾根は遠く見える。うんざりするがとにかく歩き出す。途中、日立の寮があった。こんな所に住んでいたら毎週沢登りに行けるのにと思うと少々羨ましくなる。12月だというのに歩いているうちに暑くなって汗が出てくる。ジャンパーを脱いで手に持って見たり腰に縛りつけてみたり。
新茅橋には1時間30分くらいで着いた。石垣を飛び降りて沢に入る。暗い感じである。F1を簡単に越えると暗い谷の中に堂々たるF2が姿を現した。一見垂直のようであるが左隅にクラック状のところがあり、そこを登る。この靴で岩を登るのは初めてなので、なんとなくバランスが悪く、何度も立ち止まる。ふと、下を見ると単独行の登山者が見上げている。見っともないのでさっさと登る。かえって早く登った方がリズムに乗ってうまく登れるようだ。
まだ朝食を十分に摂ってなかったので、F2上で荷物を下ろし、握り飯を食べた。さっきの登山者がやはり同じルートから登ってきた。「こんちわ」と声をかけたが返事もせずにさっさと上の方へ行ってしまう。少々ムッとした。しかし中々良いバランスで次の小棚を越え、握り飯を食べ終わる頃にはもう見えなくなってしまった。
ザックを背負って立ち上がり、小棚を越えていくと、F2に勝るとも劣らないF3が現れた。やはり左に取り付くが、シャワーを頭から浴びてしまい退却する。右のガレ沢から右壁上部をトラバースして落口に立った。さっきの登山者はF3の下から見たときF4を登っていた。F4、F5は小さなものでしばらくゴーロを行くと、この沢の大棚、F6である。F2、F3よりさらに大きく、垂直の岩壁の中央に水を落としている。さっきの登山者が滝下に立って見上げている。この棚は初めから登る気などないので左のガレ沢に入って高巻きする。
しかしここは正規の高巻きルートではなかったようで岩場になっており少し苦労した。滝の上に出ると驚いたことにさっきの登山者はどこにも姿が見えない。まだ滝の下にいるのだろうか?
またゴーロを歩いて行くと岩の上に登山靴の足跡があり、彼は先行しているのだとわかる。それではあのF6を直登したのだろうか?
小さな滝を2つくらい越えて行く。もうここまでに1時間かかっている。さらに滝一つ登ると堰堤が現れる。右隅を登るとさらに堰堤が4つ出てくる。もうこの辺りまでにかなり疲れていた。ので堰堤を抜けた所で一休みしてコンビーフを食べたり水筒に水を入れたりする。9時30分に出発した。小さなナメを登ってしばらく行くと何段にもなったナメ滝があった。登るに従って岩は脆くなったが大体快適に登って行くことができた。その先で水はなくなり大岩が積み重なったような滝が現れた。ここは右手のバンドを4つんばいになって登った。だんだん荒涼とした感じになり、やがてチョックストーンのある涸滝に前方は遮られた。
チョックストーンの下を潜ってみたがホールド、スタンスは全くないので引き返し左壁に取り付く。ところが垂直な上に岩が脆く、2歩ほど上がるとスタンスが崩れてしまった。これはダメだと再度チョックストーンの下を潜り、真上の穴からザックを滝の上に放り投げ、バックアンドフットのチムニー登りでやっと上に出た。
右手斜面を見ると灌木に赤いテープが巻いてあり、それに従って踏み跡を行くと烏尾尾根に出た。そこから烏尾山までの登りは疲れた体には堪えた。それでも何とか表尾根を縦走し、3時30分には大倉バス停に着いていた。大倉は人が多くて驚いた。
(終わり)
50年後のコメント
・体力不足気味ではあるが、やっと難度と実力が釣り合いだし、沢登りを楽しめるようになってきたようだ。
・この時代まで今の秦野は「大秦野」という駅名であった。渋沢駅に駅ビルはなく小田原行きホームに小さな木造の駅舎があり、南側に出るようになっていた。駅の外の売店でワラジを売っていた。100円か200円であったと思う。大倉行きバスも南口から出て、踏切で小田急を渡って北へ行っていた。「大秦野」行きも最初の部分は同じ。
・前回も履いた怪しい?革製登山靴を履いて行った。沢で会った他の登山者も大体革製登山靴を履いていたと思う。
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