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作品について少し。ネタバレなしで。
「ウィズ・ザ・ビートルズ」そういうアルバムあったっけと思ったが、これは「ミート・ザ・ビートルズ」のイギリス本国でのアルバムタイトル、コアなファンならご存じのことのようだ。お話はビートルズとはあまり関係がないのだが、いつものよう音楽の小ネタがあちこちにあって、ああ、それ聞いてみたいと思わせる。短編一つ読み終わると、ネットで演奏の動画を探したりする。
作品「一人称単数」は、「ここで終わり?」と思ういつもの展開で、この後のストーリーを長編にしてほしいような作品。「恥を知りなさい」は強烈でした。
この短編集でベストと思ったのは「品川猿の告白」で、これは奇想天外で、わくわくしながらページをめくった。猿と主人公の会話は秀逸でシュールで、村上の面目躍如。「でも品川猿って…」と思った方は結構なファンの方でしょう。実は、「品川猿」というキャラクター、2005年の「東京奇譚集」にすでにある。ストーリーは別だが、品川猿の設定もモチーフも似てる。村上春樹は結構短編を長編に書き直したりする作家で、本人もそのことを書いたりしてる。でもこの「猿」のことは、どこかに書かれたのか、過分にして知らない。また短編を再度短編にというのもどうなのか。
「謝肉祭」はシューマンの「カルナバル」をモチーフにしている。音楽の話はいつも面白いのだが、この作品は女性の美醜について書かれていて、話のメインの筋ではないのだけど、そこがどうしても気になって今一つ好きになれない。
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ところで、「東京奇譚集」を読み返したのは、たまたま内田樹さんのブログで「ハナレイベイ」の映画評が再掲されていて、どんな小説だったかなあと思いハナレイベイの入っている「奇譚集」を再度手に取ってみた、というのもある。映画のほうは2018年の公開で吉田羊さんが主演だったとか。見ていないし、多分ビデオ屋さんにもないだろうな。
改めて「東京奇譚集」全部読みなおしたけど、これはかなり優れた短編集だと思った。
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ついでにもう一冊図書館で借りた。もうちょっと古い短編集「レキシントンの幽霊」。ここにはその後の春樹の長編のモチーフになる様々な事件、アイディア、キャラクターがあったのにびっくり。「氷男」も「めくらやなぎ」も「緑色の獣」も、どれもが村上春樹の不思議な世界を形作るキャラクターたちのプロトタイプだ、と思った。90年代の作品群ですが、まずどれも面白い。
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