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「殺人出産」の産み人というアイディア、SFの分類になるかもしれないこの作品なのだが、さてこのエンディングちょっと参った。それにしても大した想像力でありちょっとへきえきとするところもある。たしかに少し「クレイジー」である。
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今村夏子は、「こちらあみ子」「星の子」「むらさきのスカートの女」を読んだ。異才と呼ぶべき人。デビュー作にして太宰治賞、三島由紀夫賞をとった「こちらあみ子」がいちばんいいけど、昨年の芥川賞「むらさきのスカートの女」も、ああこんな書き方あるのかと思わせる。登場人物が次第に作者のコントロールをはずれて勝手に動いていく、ちょっとした変身感覚。この作家の場合、書くテーマとか題材ではなくて、この変化していく「感覚」が、まさにこの人しか書けない世界。もっと売れていいと思う。
芦田愛菜が主演する「星の子」が楽しみだけど、10月は映画館に、自分は入れるだろうか。
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多和田葉子の「献灯使」が全米図書賞の翻訳部門での賞を取った。この小説、ちょっとアーサー・クラークの「地球幼年期の終わり」を思い出させる。どちらもいきなり進化を始めた「新人類」の話。
不思議な世界が描かれている。「厄災」のあと、子供は生まれにくく育ちにくく、老人はいつまでも死なない。今の日本のアナロジー。その子供たちももう体の自由もなくなってきているが、だが彼ら新しい人類こそこの汚染された地球を捨て「献灯使≒遣唐使」として旅立っていくのだろうか。
多和田は、デビュー作の「犬婿入り」が衝撃的だった。「容疑者の夜行列車」「雲をつかむ話」なども読んだが、まあ難解というかなんというか、読者を選ぶ作品であり作家だと思う。
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ブッカー賞の小川洋子と全米図書賞の多和田葉子、ノーベル賞に近いとか言われてるけど、どうかな。いわゆるポピュラリティという点で、国民的作家という位置にはいない。ただ多和田のように複数言語で書ける作家はそれはやはり有利なのだとか。イシグロがとってるので、しばらく日本人作家はなさそう。
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そういえば、「チェルノブイリの祈り」のアレクシェービッチ、混乱のベラルーシで反政府活動という名目で事情聴取されたようだが釈放されたのか。香港のことも、日本のマスメディアの関心は離れていったようだ。ひどい時代になった。
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