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さて。
防災対策を大きく分けると2種類あって、それはいわば、まず1階部分をしっかり準備した上に2階部分がある、という関係だと私は考えております(左図)。ニュースの防災報道はこれを区別すべきところ、混ぜこぜにして「人の命を救う」という本来の究極の目的を果たしきれずにいるのでは?と日々疑問を抱く次第です。
1階部分は「平常時に済ませておくべきこと」で、実施タイミングは内容によって
・人生に数回
・数年に1回
・毎年1回
…程度、といったメリハリがあります。ポイントは「ここ数日内に災害が近づきつつある」という短期的な予測・予報情報とは無関係に、定期的/継続的に済ませておくということです。
2階部分は、「ここ数日内に災害が近づきつつある」という短期的な予測・予報情報が発令された時だけ、すなわち「ここぞの時」限定の【行動変容】です。風水害や火山噴火ならある程度実用化が進んでおり、発動を受けて「さあ大変だ、これから何をしよう」と考え始めるのではなく、地域や住宅の特性に応じてあらかじめ「◯◯が発令されたら、◯◯を発動する」というパターンを想定しておき、そのトリガーを受信しだい、即発動あるのみ、と計画しておくことが望ましいです。
問題は、地震災害については、2階部分の発動に使えるレベルの予測技術が存在しない(※1)ことです。
地震災害を想定した場合の1階部分とは何か?地域や住宅の特性によって中身が違ってきますので、しっかりした資料(※2)を参照して、上に並べたようなタイミング毎に準備すれば「来るならいつでも来い」といえる地震防災レベルにまで高めることができます。こうなれば2階部分の欠損への不安もなければ、占い漫画のXデーや、ネットのデタラメ情報も気にならなくなるでしょう。
これに対して、地震防災上危険なのは
・2階部分の情報はSNSやネットから拾えるから大丈夫という誤解
・1階部分として具体的にどんな準備が必要かの周知不足
という2点です(右図)。今後これらの解消が進めば、災害クラスの地震発生時の被害軽減に直結するはずです。
※1:2024/8/8日向灘で発生したM7.1の地震後、気象庁から「南海トラフ地震臨時情報」発表され、多くの地域の官民が【どんな行動変容をすればよいのか?】と右往左往したのは記憶に新しいですが、これが現状で予測っぽい精一杯の最前線ですが、これとて実績ゼロです。なお、地震予測を謳う有償メルマガも存在しますが、これは「いつ」「どこで」「どんな規模」という予測の必須三要素を「2階部分の発動」という用途に全く使えないユルユルに拡げることで的中実績があるかのように騙すトリックと某国立大学名誉教授という肩書きを悪用したインチキ商法です。
※2:参考資料を紹介します。平成27(2015)年に東京都が発行した「東京防災(貼った図の1階部分はこの資料から抜粋)」が令和5(2023)年に以下の2分冊として改訂されました。ちょっと分量過多で、手にした時点でお腹いっぱい感はありますが…
東京くらし防災
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1028036/1028051/1028233.html
東京防災(2023年改訂版)
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1028036/1028051/1028234.html
地震の予言がどうこうと言う人の中には「これで防災意識が高まるならいいじゃないか」みたいなことを平気で宣う人がいますが、こういうオカルトや陰謀論は「実際に使えるわけがない2階部分の対策」を求めて狼狽する人を生み出すだけで、本来やっておくべき1階部分はむしろ蔑ろにされるきらいすらあると思うんですよね。
インチキメルマガでは、「先生の地震予測のおかげで、防災グッズの見直しができた。だからこの有償メルマガに値打ちがある」みたいに持ち上げる流れをよく見かけましたが、「予測とは無関係にやるべきことを怠ってきた」という核心に気づけず安心してしまえるぶん危険ですね。
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