へその緒を切る

2024年02月03日 21:52山仕事全体に公開

四国土佐は高知の城下まで行った甲斐あって、宗石の共枝鉈を手に入れることができた。本当がどうかわからないが、宗石の後継ぎさんは包丁造りに移行してもう鉈は作らないと、店の人に聞いた。そうだとするとかなり希少な鉈を購入できたことになる。
共枝鉈は市場では、たいてい細いロープを柄に巻き付けて売られている。(写真①)これは好みにもよるけれども、少し滑りやすいし、衝撃も吸収しにくい。
いつものように、5ミリほどの金剛打ちの綿ロープで柄を巻き直す。何度かやっているうちに身に着いた巻き方だ。(写真②)手首が痛くなるほど強く巻き締めて編んでゆく。末端部を引くのには細めのペンチが適しているし、狭いところを通して締め上げるのにはマリンスパイク状の物が必需品だ。私はレザーマンのペンチとパラトルーパーナイフ付属のスパイクを使っている。
作業の都合で、ロープは余りが出るほど長めにして巻く。力が入るからだ。
固い結び目を作り抜け止めにして完成。余りを切るときは、まるでへその緒を切るようなものだと思った。
研ぎおろしと鞘の製作、世話を尽くして使用できる状態にする。(写真③)
使って研いで研いで使って。手の内に馴染んで、初めて自分のものになると思う。山で役立ってからが、道具が命を持って生まれたことになる。コレクションだけが目的ならば、とうの昔に飽きてしまっただろう、山林道具との付き合いだ。
使用価値を理解してから、人に譲渡することもある。山での活躍を願うような気持になるのだ。でもほれ込んだものは人には渡さない。ここで初めて自分の欲に気が付いたりする。