黒部横断 〜鹿島槍-S字峡-剱〜
- GPS
- 24:12
- 距離
- 30.1km
- 上り
- 5,278m
- 下り
- 4,449m
過去天気図(気象庁) | 2018年03月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
電車 タクシー 自家用車
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コース状況/ 危険箇所等 |
※主に谷筋でGPSの軌跡が乱れています。あくまで参考情報としてください |
写真
感想
3月13日から3日かけて、3人で黒部を横断した。ルートは大谷原〜鹿島槍〜S字峡〜剱岳〜馬場島。個人的には4年前の4月末に歩きで、3年前に女子と扇沢〜馬場島へスキーで横断したのに続く、3度目の黒部横断だった。目的は鹿島槍北西面の初滑降、鹿島槍と剱岳という2つの素晴らしいピークをつなぐラインの走破である。前者は「山スキー100山」の表紙に同斜面を発見してからの夢であり、後者は最初の横断で敗退(小窓から馬場島へエスケープ)して以来の目標だった。
山行前夜に諸々の準備を整え車で大谷原入りした。春とはいえ3月に3日続けて晴れることは少ない。今回の計画を達成するには少なくとも2日の晴れが必要だったが、今回は結果的に3日晴れた。メンバーはよく一緒に山スキーへ行く3名でお互いの技術と体力をよく理解しており、気心の知れた仲間である。
<3/13㈫ 大谷原〜鹿島槍〜東谷1,100m地点>
初日は大谷原から北股本谷を詰め、鎌尾根に取り付いて鹿島槍を目指す。朝4時に暗がりの中、林道を歩いていると左側に民家の明かりが見えた。一箇所堰堤越えが厄介だった以外はスキーで快適な歩行ができた。本谷にはデブリが散見される。鎌尾根取り付きからシートラでひたすら登る。基本歩きでたまに雪壁程度だが、クライマーズライト側に落ちると助からないので緊張する。ひたすら登り、最後は雪庇を崩し後立山の稜線へ出た。山頂まで少し歩く。
山頂では香港からのパーティに遭遇。北西面を観察し、ドロップポイントを決める。山頂で板を履いてスキーヤーズレフトから滑走を開始する。パウダーもあるが重く、所々アイスバーンが露出している。出だしの複雑な地形を2ピッチに分けて滑り、中間部で数本木の生えた尾根に乗り上げた。写真では明確にわからなかったが、尾根から見下ろした沢はルンゼ状で雪がしっかりとつながっていた。思い通りの展開に思わず歓声が漏れる。
その後はひたすら重パウ、カリカリ、ソフトデブリを越えて東谷へ。そのうちに沢は割れはじめ、標高1100mあたりでゴルジュに行き当たり、雪も切れ先に行くのが困難になった。登り返す予定の右岸尾根は西面で日射によりグズグズであるため、この日はここで幕営することにした。水のある快適な天場だった。
合計時間: 11時間32分
合計距離: 17.49km
累積標高(上り): 2347m
累積標高(下り): 2275m
<3/14㈬ 東谷1,100m地点〜S字峡〜平ノ池>
3時に起き4時半前より行動開始。この日は前日に確認したルンゼをひたすら詰める。上部で傾斜が落ちたあたりでクトーをつけてシール歩行。キックターンは緊張を強いられる。2003年3月ぶなの会による山行記録を参考に、計画では1314mPまでの300m弱の登り返しを予定していたが、1647m直下まで500m以上の登り返しとなった。できるだけ尾根沿いに滑降を開始する。1314m地点で一度板を脱ぎ再度滑降し、黒部川へ降り立つ。
仙人ダムの北側に出たため、ダムを渡り部分的に雪に覆われた夏道を歩いたが、雲切谷からのデブリでスノーブリッジが形成されていた。ここを渡れなかったのは少し心残り。前半の登り返しで時間を要したため、雲切谷に入ったのが10時。好天と高温を考慮するとかなりギリギリだったが、既に大きな雪は落ちたと判断し、足早に谷を詰める。途中ザラメラッセルとなったが、12時には尾根に乗ることができた。
剱や周囲の高峰を見渡しながら仙人山の手前まで気持ちの良い歩きとなる。当初雪崩のリスクを考え池ノ平小屋の位置にテントを張る予定で、このコルまで滑降した。が、整地の手間、雪崩発生の確率を比較考量し、最終的に平ノ池に幕を張った。これなら仙人山東面の快適な滑走が楽しめたに...というのが2つ目の心残り。
合計時間: 12時間41分
合計距離: 12.63km
累積標高(上り): 2103m
累積標高(下り): 1292m
<3/15㈭ 平ノ池〜剱岳〜伊折>
天候の悪化を懸念し2時に起き、4時前に出発。平ノ池から暗闇のアイスバーンを小窓まで滑り降りる。シールを貼りクトーを付けて小窓まで快適に歩いた。小窓雪渓はデブリがほとんどない面ツルバーン。シートラに切り替え小窓ノ王に向けて登り始める頃に太陽が上がった。池ノ谷ガリーへ下りる箇所(発射台)で念のため30mの懸垂下降を3回行った。ガリーは思ったより傾斜が無く問題なかったが、その後の稜線では傾斜もあり落ちられない雪壁があった。
11時頃ようやく剱岳の山頂に達した。遠く後立山の稜線に鹿島槍ヶ岳のピークを見る。雲は出始めたがまだ晴れている冬の北アルプス大展望を楽しんだ。写真を撮って帰途につくと途端に強風となる。早月尾根を経て安全なラインで馬場島まで下山した。馬場島では富山県警の方々にご挨拶し、カルピスをご馳走になる。その後、まだ除雪が終わっていない伊折までクロカンスタイルで下山。17時前には電話で依頼したタクシーが待っていてくれた(馬場島には3年前頃より携帯の電波があるとか)。
合計時間: 13時間56分
合計距離: 22.82km
累積標高(上り): 1366m
累積標高(下り): 2933m
※GPSログなし
上市駅からは終電(18:17発)でローカル列車の旅を満喫し、JR大糸線線・信濃木崎よりタクシーで大谷原へデポ車の回収に向かった。
まさに完全燃焼。自分で思いつく最高の滑降と横断ラインを引くことができた。今シーズンはもう山スキーはいいかな、と思えるくらいの満足感に浸っている。
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追記:「ROCK & SNOW」 082 冬号「山岳滑降2018」欄に掲載されました。
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17-18シーズン使用板カウンター
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FISCHER TRANSALP 80:5★
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合計:22日
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