竜ヶ岳西尾根〜釈迦ヶ岳〜羽鳥峰〜瀬戸峠☆大周回のツケは最後に
- GPS
- 15:29
- 距離
- 30.2km
- 上り
- 2,233m
- 下り
- 2,199m
コースタイム
- 山行
- 4:13
- 休憩
- 0:53
- 合計
- 5:06
- 山行
- 9:11
- 休憩
- 1:20
- 合計
- 10:31
天候 | 1日目:曇りのち晴れ 2日目:晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
【山行前】
この週末は久しぶりのテン泊山行を計画していたのだった。土曜日は朝のうちに京都で用事があるので、登山開始は近場でも昼過ぎにならざろう得ない。土曜日は午後からは晴れの予報なので都合がよい。一方、日曜日は数日前までは雨の予報ではあったが、午前中は晴天の予報となり、雨の降り出しの時間は遅い時間にずれ込んでゆくようだ。
まずは竜ヶ岳から釈迦ヶ岳への縦走を決める。竜ヶ岳の笹原の中に疎らに生えるシロヤシオツツジの霧氷と釈迦ヶ岳への展望ルートを期待してのことだ。問題は登山ルートと下山ルートだ。滋賀県側から登るか三重県側から登るか。茨川林道からは太尾を経由する西尾根はなんとなく魅力を感じる。家内に双方の可能性を提示した上で、滋賀県側からのルートに惹かれることを伝えると、意外とすんなりと同意が得られる。
【1日目】
八風街道を車を東に走らせると、正面の山々は雲がかかっている。午後からは晴天との予報を信じたいところだ。八風街道から茨川林道に入ったところですぐに広い空き地が見つかる。車を停めるのには十分すぎるほどの広さがある。林道を歩き始めると林道の奥から走行してくる軽トラックと擦れ違う。未舗装の路面はかなり凸凹があるが、走行には問題がないのだろう。30分程歩いたところで焼野の登山口に辿り着く。
山の斜面につけられた林道から入るが、すぐに尾根に乗る。杉林を登り、最初のピーク533m峰に辿り着く。空には薄曇り空が広がるが、雲の下は相当に風が強そうである。まだ青空が広がる気配は感じられない。
このピークからはながらかな尾根となり、北側は植林地、南側は自然林が広がる。ca700mのピークで尾根が東向きに進路を大きく変えの辺りから地面には薄雪を目立つようになる。ピークからは北側に薄く冠雪した御池岳を望む。このピークで杉の植林地も終わり、自然林の明るい林となる。
ブナの樹が目立ち始めた広い尾根はいつしか二重尾根となり、尾根の間には小さな水溜まりが現れる。やがて二重山稜の間に細長い池が現れる。これが地図に記載されている長池かとすぐに合点する。池の端に近づくと、気をつけていたつもりではあるが、落葉で覆われた泥濘のなかにズブズブと片足を突っ込む。毎度のように繰り返されるミスをまたやらかしてしまった。池の表面には中途半端に氷がついている。巻き寿司を頬張りながら池の写真を撮っているうちに空には急に青空が広がり始めた。
なだらかな尾根を辿るうちに太尾につく。あたり一帯が細長く平らな台地状の尾根であり、最高点と書いてあるのでそうなのかと思う程度である。標識の東にはまた小さな池が現れる。この池を過ぎると太尾の平らなピークも終わりである。このあたりからは足元の雪はほとんど見られなくなる。急にヤセ尾根となり、小さなピークを挟んでキレット状の白谷越への急降となる。白谷越の向こう側には間近に大きく聳える竜ヶ岳の斜面に大きなザレ地が否が応でも視界に飛び込んでくる。
ザレ地の下端に辿り着くと驚いたことに真新しいステンレスの鉄の杭が打ち込んであり、さらにロープが渡してある。ロープの真新しさから判断すると、どう考えてもつい最近、整備されてまだ日が浅そうである。扇状のザレ地の上部はナイフリッジとなるが、南側の斜面をトラバースする道が整備されている。こちらでも新設されたロープがつけられている。
竜ヶ岳にかけての急斜面の樹林となる。風の通り道なのだろう。すっかり落葉した樹林になるとかなりの風が吹き付ける。樹林の中には随所にピンクのテープが付けられているが、歩きやすい鹿道に誘われて斜面を左手に進むうちに気がついたらピンクテープが途切れる。この斜面においてはピンクテープを頼るのはよくないのだろう。そのまま斜面を登り続ける。雪がほとんどない状態だったのが良かったと思われる。雪が薄く積もった状態では登りは難儀したことだろう。
樹林を抜けると、潅木の見晴らしの良い尾根となる。空はすっかり晴れているのだが、風はますます勢いを増す。風に煽られてよろけそうになるほどの強風が時折、吹きつける。やがて竜ヶ岳特有のなだらかな笹原となる。しかし、笹原の中に点在する躑躅の樹に期待した霧氷は全くない。
普段は人が多い筈の竜ヶ岳山頂も当然ながら誰もいない。この山頂からの景色を堪能したいところではあるが、風衝草原を吹き渡る風の強さは半端ではない。あまりの強風に指先もかじかんでくる始末。この日の夕方には高気圧に覆われ、テントを張ることが出来るほどに天気が落ち着くだろうと読んだが、タイミングが早すぎたようだ。この風では今回携行したテントを張るのも至難である。仕方がない・・・石榑峠まで下ることにしよう。
石榑峠を目指して尾根から南の斜面に降りた途端、風の影に入ったのであろう、風の勢いが弱まる。重ね岩では少しでも早く石榑峠に下りたいところである。この日は岩に攀じ登りたい気持ちを我慢する。重ね岩を見上げると半月が中空に登ってくるところだった。
重ね岩を通過し、辺りが急に暗くなり始めた頃、登山路脇にテント一張り分の平らな適地を見つける。ワンポール・テントなので地面にペグを打って四隅を固定しようとするのだが、山頂とは比べ物にならないほど風はマシではあるが、それでも時折、吹いてくる強風に煽られてペグが抜ける。何度かペグを打ち直して、ようやくテントを張る。
この日の食材は多様だ。鶏肉、牛肉、焼豚、椎茸、しめじ、菜の花、ミニトマト・・・これらを適当に入れてソテーまたは蒸し焼きにする。料理をするうちに急に風がなくなったことに気がつく。それまでは微風がテントを揺らしていたのだが、そよとも風がふく気配がない。山頂についた時にこのくらい風がおさまってくれていればいいものを・・・と願っても風が相手では仕方がない。道中で仕入れてきた八風街道沿いの喜楽長の純米酒を傾けるうちに早々に眠りにつくのだった。
【二日目】
朝は4時過ぎに起床、アルファ米の牛めしで軽く朝食を済ましてテントを撤収するが、出発は5時半過ぎとなる。幕営地からは東の方角に四日市の夜景が綺麗に見える。わずかに東の地平線の方向に雲があるばかりである。東の空にまだ朝の暁光の気配はない。
石榑峠に下るにつれて緞帳をゆっくりと引き上げるように東の空の端からオレンジ色に染まってゆく。石榑峠まで下りると人の声がする。峠の道路脇に一張りのテントが張られており、丁度テントから女性が一人、外に出て来られたところだった。すでにあたりは十分に明るくなり、ヘッデンの明かりを消すところであった。向こうからもヘッデンのライトが下ってくるのが見えていたようだ。昨日は釈迦ヶ岳から来られたとのことであった。
三池岳への長い登りにつく。樹林の中でご来迎は拝めないことだろうと諦めていたが、丁度、ザレ地に差しかかり、東への展望が大きく開けたところで朝陽が東にかかる雲の上から顔を出した。振り返ると尾根上の葉を落とした樹々が朝陽をうけて蜜柑色に輝いている。
雪の上についている足跡はわずかである。石榑峠でテン泊されていた方達のものだろう。北斜面のせいだろうか、竜ヶ岳の南斜面よりも心なしか雪が多い。三池岳までは小さなピークのアップダウンの繰り返しが続く。昨夜、テントでかなり消費したつもりであったが、背中のザックはまだまだ重く感じられる。
冬枯れの稜線は随所に好展望が開けており、縦走路を展望することが出来るのが嬉しい。東の方角では伊勢湾に朝陽が反射する。西には日本コバの上に白く冠雪した比良山系が顔を覗かせる。竜ヶ岳を振り返る度に太尾を越えて山頂に至る長い西尾根を視線で辿る。
三池岳に辿り着くと釈迦ヶ岳への縦走路が視界に飛び込んでくる。まずは山頂の南東にある三角点ピークを往復する。まだ朝が早いせいだろうか、縦走路には人の気配がない。八風峠、中峠、南峠と小さなピークを挟んで、再びアップダウンを繰り返しながら好展望の尾根を緩やかに登ってゆく。
釈迦ヶ岳に辿り着くと、すぐ後からソロの男性が現れる。八風キャンプ場から八風峠に上がって縦走して来られたらしい。ここで焼売を蒸して簡単にブランチとする。料理をしている間にもう一人、ソロの男性の方が山頂を訪れるが、すぐに折り返して行かれる。この日、山の中で見かけたのはこの二人のみであった。
釈迦ヶ岳からは猫の耳を思い起こさせるような形のよい猫岳はすぐである。猫岳からの下りは霜柱が溶けたためだろう。非常に泥濘んでおり、幾度か滑りかける。
鞍部に下るとヤセ尾根ではあるがなだらかな道が続き、歩きやすい。このあたりになると登山路には雪はほとんど見当たらなくなった。快適な尾根道を辿り羽鳥峰を経て羽鳥峰峠に着く。気がついたら空は高曇りとなり、太陽は空の一角で鈍い光を放つ斑点となっている。
ここからはいよいよ鈴鹿主脈の縦走路を離れて下山路に着く。丁度12時である。コースタイム通りであれば、3時半には車を停めたあたりに帰り着いて、八風の湯に浸かりたいという家内の希望を叶えることが出来るのではないかと皮算用をする。
白滝谷はなだらかで歩きやすい源頭から始まる。小さな渡渉はあるが、頻繁にテープがついており、ルート・ファインディングに苦慮することもない。渡渉点を過ぎると谷から離れて左岸のトラバース道となる。白滝の道標が目に入るので、ここでザックを下ろし、谷に降りてみる。家内は急に眠くなったとやらで小休止のようだ。
白滝谷の下りの最後は杉林となり、まもまく神崎川の岸辺に降り立つ。対岸に登山道の続きが見えるが、足を濡らさずに渡れそうな箇所が見当たらない。私は靴の中が濡れることを厭わず浅瀬を渡渉する。家内は先週の奥山谷に続いて濡れた靴で歩くのを嫌ったのだろう、しばらく躊躇った後におもむろに靴を脱ぎ、冷たい川に裸足を浸しながら渡る。
ここから瀬戸峠越えであった。登山路にはピンクテープも頻繁に現れ、歩きやすい道が続く。しかし、かなり歩いている筈なのに峠の手前で横切るはずの神崎川林道になかなかたどり着かない。しかも道はかなり斜面の上の方に上がっていくようだ。これはどうしたことかと思ってGPSを確認すると、なんと本来の神崎川に沿ったルートからかなり斜面の上のあたりを歩いているではないか。杣道に迷い込んだのだろうか。あくまでも明瞭な踏み跡の道が続いていたのでよもやコースアウトをしているとは思っていなかった。どうやらこのまま進むと神崎川林道の終点のあたりに出そうだ。道が林道に出ることを信じて先に進むと、ほどなくして予想通り、林道に飛び出す。林道からは見晴らしがよく、彼方に釈迦ヶ岳と猫岳が顔を覗かせる。ご丁寧に林道脇には「釈迦ヶ岳、神崎川→」と真新しく立派な道標が立てられている。果たして誰が林道をここまで登ってくるのだろうか。
林道を下り、瀬戸峠への本来の道を見出す・・・それが道と呼べるならばであるが。「杠葉尾→」の道標があるから、道は間違いないのだが、先程まで辿ってきた道とは大違いで、こちらはかなり荒廃しているようだ。林道から白滝谷出合方面への下降点にも道標も何もない。道をたどり始めると、家内がすぐに「本当にこの道であっているの?」と訝るほど、最近はほとんど、人が歩いていないような雰囲気だ。勿論、踏み跡が薄いというだけで、歩行に難儀するようなところではない。薄い踏み跡を辿って瀬戸峠に辿りつくが、やはりここからも踏み跡はほとんどない。鈴鹿においては山と高原地図では実線で記されていもルートが不明瞭だったり廃道だったりすることがあるが、どうやらここもそうした道の一つのようだ。少なくともれっきとしたヴァリエーション・ルートに思われる。
瀬戸峠からは谷筋に沿って急斜面を下ると、突然、真新しいピンクのテープが現れ、左岸に踏み跡が現れる。道はそのまま左岸の斜面をトラバースしていくようだ。一方、谷にはまったく踏み跡がない。重たいリュックを担いだ状態で踏み跡のない沢道を下降する危険は冒したくはない。踏み跡を辿ると、間もなく植林地の急斜面の下に風越谷の林道が見えるのだった。林道に出る斜面の上には「瀬戸峠」と記された道標が辛うじてたっているのだった。最近、知遇を得たF氏に報告すると、この道標をF氏が治したのは5年ほど前のことだったとのこと。
時計を見ると既に15時20分過ぎ、この瀬戸峠越に2時間近くを費やしてしまったことになる。あとは延々と林道を歩き、最後は八風街道を緩やかに登る。車を停めた茨川林道の入り口に帰り着くと、林道の奥から大きな音がするかと思えば、荷台には数多くの杉の木が山と積んだ大きなトラックが出てくるところだった。
結局、誕生日を迎えたばかりの家内の温泉に入りたいという願いは叶えられぬまま帰路に着くのだった。車に乗り込むとすぐに本降りの雨が降り始めた。雨に祟られなかっただけでもよしとしよう。この雨は鈴鹿のなけなしの雪を融かしてしまうことだろう。今年の鈴鹿の冬はまだまだ足踏み状態が続くようだ。
コメント
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こんにちは
この時期に温泉どころか
冷たい川の水に足をつけるなんて
奥様はどれだけ辛抱強い方なんでしょう。
修行のような山行は
やまねこさんへの信頼のなせるわざ、ですね。
美味しそうなお食事には惹きつけられましたが
コメント有難うございます。
家内は単に先週に引き続いて足を水に浸けるのを嫌がっただけに過ぎません。
私の山行計画への信頼は皆無です。温泉 に入れなかったのも、「やっぱり〜」 ということで許容範囲内だったので、赦してくれたのだと思います。
今度、ご一緒させて頂く折には美味しいランチを考えたいと思います。
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