蔵王 屏風岳(白石スキー場発)


- GPS
- --:--
- 距離
- 15.9km
- 登り
- 1,488m
- 下り
- 1,479m
コースタイム
8:30白石スキー場-13:30不忘山-15:00鎖場-16:00幕営地
3月4日
8:00幕営地出発-8:45不忘山-9:45南屏風岳-10:50屏風岳
12:00屏風岳発-13:30不忘山-13:45幕営地(テント撤収)
15:00幕営地出発-16:00白石スキー場着
天候 | 3日:曇り/晴れ 4日:快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
○白石スキー場第2リフト終点〜不忘山 不忘山山頂までラッセル道あり(3月4日時点) ○不忘山〜屏風岳 2日に降った雪の大部分は飛散しており、稜線上は歩きやすい状態。 東面側に雪庇多数。一部崩落も見られた。 |
写真
感想
当初は、3月3日〜4日の2日間で南蔵王を縦走する予定であった。
しかし、登山前日に大雪となり、計画変更。
結果的としては、白石蔵王スキー場から屏風岳までの往復となった。
【3月3日】
前日の雪の影響で登山口の白石スキー場には一時間遅れの到着となる。
天候は曇りで、スキー場上部はガスがかかった状態。
8時30分、スキー場を出発し、登山開始。
リフトが動き始めていたが、利用せず、最短ルートで第2リフト終点を目指した。
1時間後、第2リフト終点に到着。
登山道入り口周辺を探ってみたが、まだ入山者は居ないようで、登山者の踏み跡は無し。
今日の最初の入山者は自分のようである。
以前の記憶を頼りにピンクリボンを探し、見つけた後はそれを目印に進んでいった。
雪の深さは、ワカンを履いた状態で膝まで埋まる程度であるが、この時期にしては深い方。
予定では、屏風岳の樹氷原、もしくはその先にある芝草平まで行って幕営するつもりだった。
しかし、幕営用具一式を背負った上でのラッセルとなり、ペースは遅い。
この調子では、不忘山へ行くだけで限界になりそうな予感。
だが、そこで天の助け。
2時間ほどラッセルが続いた後、別方面からのラッセル道を見つける事が出来た。
かなり大人数でのラッセルで、踏み痕はしっかりしている。
自分より後に入山したグループが、森の中で追い抜いて行ったようだ。
早速そちらラッセルに便乗し、後を追わせて頂く。
足の速いグループのようで、いくら歩いても追いつかない。
先行者は8人くらいのスキーヤー達で、彼らが尾根上を進む様が遠方から見えたが、
結局追いつく事は出来なかった。
整地されたラッセル道を歩くとはいえ、今回は大荷物なので結構きつい。
ようやく尾根上に乗った頃で、大休止。
その間、2名のスキーヤーが通り過ぎてゆく。
その後、登ってくる者はおらず、自分が最後尾を行く形となる。
一番最初に入山したはずの自分であったが、
不忘山山頂に着いたのは一番最後となった…
不忘山の山頂に着いたのは13:00。
さて、これからどうするか。
不忘山の山頂から先の稜線上は強風域となるので、例年であれば雪は浅く、
固く締まっているはずである。
ここまでの道に比べればかなり歩きやすくなり、
また、今日は風も強くないので、屏風岳までの道はさほど困難ではなさそうだ。
今の所持重量/天候から考えて約3時間くらいかかるだろうが、
日が暮れる前には到着できそうだと判断し、先へと進むことにした。
不忘山から北に進み、細尾根の下降部へと差し掛かる・・・が、
その途端、判断は甘かった事に気づく。
下降部には予想以上に雪が積もっていた。
この下降部は細尾根で傾斜もある為、若干通過に注意を要するが、
強風域なので、大概の雪は吹き飛ばされて地形は明瞭。
足場はしっかりしており、特に問題なく通過できる箇所である。
・・・はずなのだが、この時は雪が深過ぎて、地形が全く見えない状態だった。
どうやら、昨日は相当量の降雪だったらしく、悪いことに風は弱かった模様。
こんもりと積もる雪が風に晒された形跡は見られなく、試しに足を踏み入れてみたら、
腰まで埋まる有様で。。。
これはやばいと、青ざめて、一旦、安全な場所へ引き返す。
そして、ザックに括り付けてあったピッケルを取り出し、再度、下降部へと突入。
そこから長い雪との格闘が始まった。
道なのか、断崖なのかが判別できないので巻き道は利用できず、進路は尾根上のみ。
ピッケルを足元に突き刺しセルフビレイを取りつつ、両手で雪を突き崩し、
ひざくらいまで崩したら、足場を確認しつつ前進、という地味な作業の繰り返し。
尾根は細く、傾斜もあるので緊張感のある作業となった。
なんとか下降部を下りきり、鞍部へ降り立った時は一安心、
であるが、この先の雪の深さを考えると気が重くなる。
この下降部は、高さにしてせいぜい30m程度で、積雪期であっても10分程度あれば下れる箇所である。
しかし、今回はその通過に1時間も費やしたのだった。
鞍部で休憩しつつ、これからどうするかを考える。
大幅な時間遅れ、そしてこの先の積雪量を考えると、日が暮れる前に屏風岳まで行くのは不可能。
この先の稜線上は強風域なので、不忘山から屏風岳間で安全に幕営できる箇所は無いに等しい。
実際、この1時間の間に風は強まりつつあった。
選択肢はただ一つ。今日は撤退、しかなかった。
縦走は諦め、明日の好天を狙って屏風岳の往復登山に計画変更。
来た道を引き返し、森林限界付近で幕営することにした。
その前に・・・
この先の道の状況を掴んでおきたいので、一旦荷物をデポし、偵察へ。
身軽になったところで、鞍部の先にある鎖場まで進んでみた。
鞍部の先は思ったより雪が深くなく、膝まで埋まる程度。
稜線上の積雪量としては多い方だが、気合があればなんとかなるレベル。
徐々に風が強まってきており、周囲には地吹雪が舞い始めていたが、これは良い傾向だった。
このまま稜線上に強風が吹けば新雪同然の積雪は、ある程度吹き飛ばされる。
予報では、明日の風は極めて弱くなる為、今夜のどこかのタイミングで風は止むのであろうが、
この調子でしばらく吹いてくれれば、明日の行程はかなり楽になりそうだ。
本来であれば、稜線上での強風は登山者にとって忌み嫌われるものであろうが、このときばかりはありがたく思えた。
先ほど通過に苦しんだ下降部も、危険な部位の雪はあらかた除去し、ルートは確保したので次回の通過は容易いであろう。
明日1日あれば、屏風岳まで行って、その後下山することは出来そうだ。
計画は変更となったものの、安心材料を得て、再び不忘山へと戻る。
不忘山通過後は、来た道を引き返し、そして森林限界付近の平地にてテントを張った。
テントを張り終えた頃には風はかなり強まっており、稜線上からは時折、唸る様な風の音が聞こえてくる。
そして唸り音から数秒のタイムラグを置いて、幕営地に風が吹き降ろされる。
その度に地面の雪が地吹雪となって吹き付けられ、頭上の空は晴天なれど、目の前の視界は吹雪、
という不思議な景色に包まれた。
この幕営地は位置的に不忘山の東尾根を下った場所にあり、南蔵王の主稜線が壁となるので、
この時期特有の強い西風の直撃は避けられる。
森林限界付近なので、背の高い樹木はあまりないが、過去に幾度か幕営地として利用しており、
風防については安心できる場所であった。
・・・が、地吹雪は思っていたより激しく、その雪は夜になるとテント全周を覆うように堆積し始めた。
雪の重みで次第にテントが圧迫されてきたので、たまらず雪掻き。
積雪量にしたら相当なもので、こまめにテント周りの雪掻きをしないとテントが破損しそうだった。
結局、1時間おきに雪掻きするはめになり、このままでは風が収まるまで寝れそうにあらず。
稜線上の雪を削ってくれるのはありがたいが、そろそろ寝かせてくれんかね、と願う心。
幸い、21時頃には風が弱まり始め、22時を過ぎると、全くの無風となった。
風が途絶えたのを確認し、ようやく安眠する。
【3月4日】
5時半に起床。
早朝のテント室内は-3度、外気は-8度くらい。
放射冷却でかなり冷え込むかな、と思っていたが、意外に暖かい冬山の朝だった。
(下界に比べれば十分寒いが…)
予想通りの晴天で、風も殆ど無い。
絶好の登山日和となりそうだった。
朝日を拝んでから、朝食と登山準備。
風穏やかなので、テントは張りっぱなしにし、8時には幕営地を出発した。
再び、不忘山へ登り始める。
昨日はラッセル道があったが、夜間の地吹雪で消えており、
早朝なので、当然ながら先行者は居ない。
不忘山までは自力でラッセルとなった。
朝っぱらからのラッセルは辛いものがあるが、幕営地から不忘山山頂まではさほど距離はなく、
9時前には頂上に立つことが出来た。
だが、問題はここから。
屏風岳へと続く稜線上の雪の状況は如何なものか?
昨日は、通過するのに1時間かかった不忘山からの下降部、
であるが…
ルート工作と、強風のお陰ですっかり雪は削れており、難なく通過。
もはや難所ではなくなっていた。
10分程度で下降し、鞍部を経由し、鎖場へと進む。
この区間、昨日は膝までの雪であったが、その深雪は風で吹き飛んでおり、
場所によっては雪が残っている箇所もあるが、全体的に非常に歩きやすい状態だった。
一晩でここまで変わるものかと驚いた。
前日通った際、雪庇が張り出していたが、今日になると所々欠けており、
一部崩落していた。
今日は気温が上がりそうだから、崩壊は更に進みそう。
気をつけた方が良さそうである。
鎖場を通過した頃、先程まで自分が立っていた不忘山に人影が2つあるのに気がついた。
2人組のスキーヤーらしく、彼らは不忘山を下降し、更に先へ、
私と同じく屏風岳方面へと歩を進める。
屏風岳の東面を滑走するのだろうか。
だとしたら、ぜひ拝見したいものだ。
後続の彼らがどこを滑走するか気になって、ちょくちょく後方を振り返りながら先へと進む。
鎖場以降は、急斜面は殆ど無く、穏やかな尾根道が続く。
時々、潅木上を踏み抜くのが気になる程度で、心地よい稜線歩きが続く。
東面には雪庇が張り出しているので、近づいたら危険であるが、尾根上は広いので歩く箇所には困らない。
不忘山から一時間ほどで、南屏風岳の山頂に到着した。
南屏風岳山頂からは先は更に尾根は広くなり、進行方向には屏風岳の樹氷原が広がる。
地表はザラメ状の荒れた雪となり、その表面は硬くウィンドクラストしている。
ところどころに、強風で切りだされたであろう、雪のオブジェが立ち並び、これまでの登山道とは明らかに様相が変わってくる。
それらは風の強さを物語るものであり、実際この付近は蔵王連峰の中でも有数の強風域である。
過去に幾度か、積雪期の屏風岳登頂を行ったことがあるが、その大半は撤退の記録であり、
撤退理由の殆どが南屏風岳の風の強さであった。
樹林帯を辿って不忘山へと登り、稜線上に立った途端に風は一気に強くなり、
南屏風岳に近づくにつれて、風は更に強まる傾向にある。
1月〜2月の厳寒期には、立っていられない程の強風に遭遇する事も珍しくない。
更にはガスでの道迷い、強風での体温低下・・・etc
穏やかな山容に騙されてうっかり足を踏み入れれば、
ここはとんでもない状況に陥る危険性を秘めた山域でもある。
・・・
・・・はい、全部私の経験談です。
数多くの過ちを、この南屏風岳で犯してきたものであるよ。。。
雪庇踏み抜きと滑落が無いだけ、まだマシかもしれんが、
今思い返すと恥ずかしいものがあるなぁ。
幸い、この日は風は穏やか。
事前に調べた限りでは、午後から風が強まる兆しも無い。
これほどまで穏やかな冬の南屏風岳は、今回が初めてだった。
先へ進むにつれて、屏風岳の樹氷原が視界を占有し始め、
樹氷原の側面をなぞるようにして、屏風岳への最後の登りへ取りかかる。
今回の登山のクライマックス・・・
にしては穏やか過ぎて拍子抜けな登り道ではあるが、東面には雪庇が発達している。
雪がこれまでの稜線上に比べて深めなので、雪の浅そうな東面側へ寄りたくなるが、
そこは我慢し、樹氷原から離れないようにしつつ、屏風岳山頂へと進んだ。
そして、山頂着。
山頂を示す1817mの看板が立っており、長かった屏風岳への道が、遂に終わりを迎えた。
・・・と、思うのはまだ早い。
実は、屏風岳の標高は1825mであり、本当のピークはもう少し先にある。
実に紛らわしい看板であり、初めて屏風岳に登った人だったら、
ここを山頂と勘違いして引き返してしまうのではなかろうか。
・・・うん、これも私の経験談だ。
地理的には、ここを山頂としているらしいけど、その理由詳細はよく覚えてない。
確か、三角点がここにある、とかそんな理由だった気がするけど…
ま、なにはともあれ、地理上の頂上着。
時間は11時で丁度腹もすいてきたので、ここで昼食をとった。
見晴らしも良く、付近の樹氷が背もたれにもなるので、休憩に最適。
気温は-5度くらいだが、日差しがあるので仄かに温かい。
いつもだったら強風の寒さに耐えかねて5分も立たずに下山してしまうところだが、
のんびりと30分くらい休憩した。
休憩後、せっかくだから真のピークまで行ってみることに。
荷物はデポし、身軽な状態で標高1825m地点へと行ってみた。
1825ピーク付近から眺めるから東面は、実に見事。
すっぱりと切れ落ちており、ここから見る東面が最も急斜面で、
ある種の凄みが感じられる。
斜面・・・というより壁に近い。
刈田岳方面も良く見えた。
・・・そういえば、当初は刈田岳まで行って、澄川スキー場へ下山、という計画だった。
雪が深すぎてそれは叶わなかったが、まぁ、ここまでこれただけでも良しとするか、
と気分は晴れやかであった。
12時には、荷物をデポした1817m山頂へと戻り、下山へ取りかかる。
同じ道を辿り、不忘山方面へと引き返す。
戻る途中、東面にスキーの滑走跡を発見する。
登ってくる時は見当たらなかったものだ。
あ、そういえば!
私の後続のスキーヤーはどうされた?
滑走するところを見たかったので、途中まで気にしていたのだが・・・
すっかり忘れてしまってた^^;
滑走跡は南屏風岳手前から権現沢方面へと続いており、
周囲のシェカブラと調和した美しいトレースを描いていた。
滑走する様は、さぞかし絵になっただろう。
見れなかったのは、誠に残念。
2人のスキーヤーは、それぞれ分かれて滑走しており、
一方は東面から権現沢、もう一方は水引入道へ続く尾根を辿って滑走したようだ。
その姿は、もはや無く、それぞれの方面へのトレースだけが残っていた。
13:30、再び不忘山山頂。
この2日間で、この山頂を4回通ったことになるが、これでようやく最後。
最後に、ここから見える屏風岳を撮影して下山についた。
不忘山-屏風岳間は誰とも擦れ違わなかったが、今日は晴天だったので、
不忘山へは登山者やスキーヤーが訪れていたようだ。
朝には無かった踏み跡が多数残されている。
白石スキー場方面へはしっかりとしたラッセル道が出来ており、下山するのは極めて楽。
幕営地へと戻り、テントを撤収し、足早に下山。
登山者の姿は無く、自分が今日の最後の登山者となりそうだ。
一番最初で、一番最後の登山者ってのも悪くない。
山を満喫出来た気がするからだ。
その分、日焼けも酷いがね…
今日は特に日差しが強かった。
日焼け止めを塗っておけば良かった、と後になって後悔す。
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