明通沢下降〜葛根田川遡行


- GPS
- 80:00
- 距離
- 44.0km
- 登り
- 2,214m
- 下り
- 1,709m
コースタイム
- 山行
- 4:55
- 休憩
- 1:00
- 合計
- 5:55
- 山行
- 9:00
- 休憩
- 0:35
- 合計
- 9:35
- 山行
- 7:35
- 休憩
- 2:15
- 合計
- 9:50
天候 | 9月6日:晴れ 9月7日:晴れ 9月8日:快晴 9月9日:曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2019年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
https://www.town.shizukuishi.iwate.jp/docs/2018040300019/ ※以前は雫石駅〜網張温泉までの路線バスが運行されていたが、現在は廃止され、代わりに雫石駅〜ありね山荘の区間を一律料金200円の「あねっこバス」が運行している。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
沢区間:特段困難な箇所はありません。ただし、今回のルートで明通沢を上部から下降する場合、少なくとも1箇所懸垂が必要な滝が出てきます。 登山道:葛根田川の終了点から1283mの区間がかなり藪を被っており、また景色もほぼ無いため、精神的に辛いところです。その他は基本的に歩きやすい登山道です。 |
その他周辺情報 | 下山口に一番近い松川温泉「峡雲荘」の温泉を日帰りで利用。 |
写真
感想
GW以来仕事が忙しく、ほとんどまともな山に行けていない状態だった。ようやく仕事がひと段落して遅めの夏休みを取ることにしたが、体調がずっと芳しなく厳しい沢に行けるような状態ではないため、王道中の王道ではあるが、兼ねてから行きたかった癒しの名渓、葛根田川を遡行する事にした。
もともとの予定では葛根田川遡行〜関東沢下降〜大深沢(北ノ又沢)遡行〜(夏道縦走)〜岩手山という贅沢なプランだったのだが…
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9月6日(金)
雫石駅を降り立つと、既にあねっこバスが待機していた。バスとは言いつつ、車両も利用方法もほぼタクシーと変わらない。ただし、料金だけはどれだけ乗っても200円/人という破格の安さだ。むしろ申し訳なくなるくらい。
葛根田川の入渓点に一番近い玄武温泉で下車。
一番近いと言ってもここから地熱発電所まで約10キロの車道歩きとなる。準備運動にしては少々長い。
「葛根田の大岩屋」以外特段の見所もない車道を2時間延々と歩き、ようやく滝ノ上温泉着。
予定ではこの先の地熱発電所を過ぎたところから入渓するはずだったが、地熱発電所のゲートが思いのほか入りづらい雰囲気だったため、迷った挙句ここからの入渓を断念し、一度三ツ石山荘まで登り、明通沢経由で葛根田に入渓するという計画に急遽変更。
いきなり出鼻をくじかれた形だが、とにかく決めたのだから、三ツ石山荘までの登山道に取り付いて登っていく。相変わらず体調が悪い上にとにかく暑く、初っ端からなかなか辛い状況だ。
三ツ石山荘の水場は涸れていることも多いそうで、標高1050mの水場で今晩必要な分の水を補給する。
1180mで登山道が右手から合流するまでは誰にも会わなかったが、この分岐を過ぎると人通りが増える。特に今日は地元の中学生の60人くらいの団体(!)が登っていて、すれ違うのにだいぶん時間がかかった。
三ツ石山荘の水場は山荘手前にあるが、幸いちゃんと水が出ていたので汲みなおす。
三ツ石山荘はなかなか素晴らしい場所だ。目前にはアキアカネの舞う湿原が広がり、東に目をやると岩手山へと続く縦走路を望むことができる。小屋自体も避難小屋としては非常に良く整備されている。
山荘のテラスで寛いでいると、三石山方面から年配のご夫婦が到着。今日中に下山されるということで、休憩されている間しばらく談笑。
お二人が出発された後、単独行の男性が到着される。今日は小屋泊まりということだったので、食事を作ったりしながらまた色々話をする。
考えると、単独行の時はほとんどツェルト泊かテント泊なので、こんなに人と話をするのは久しぶりな気がした。
ということで、今晩は非常に快適な環境で就寝。
9月7日(土)
今日からいよいよ沢旅の始まり。最初から沢装備で気を引き締めて行く。
どこから明通沢に下降しようか迷ったが、比較的すぐに沢形が現れそうな1447.9mピークから下降する事にした。
読み通り15分も藪を漕ぐと沢形が現れたが、水が出てきてもかなり藪を被っており快適とは程遠い状況が暫く続く。
しばらく進み、まだ藪っぽさが抜けきらない中、滝が現れる。
明通沢はメジャーではあるものの、ほぼ全ての記録はまず葛根田川を遡行して大白森の湿原から枝沢を経て本流を下降している記録であり、今回自分が行くルートの標高930m以上の区間の記録は皆無である。
そのため、悪いゴルジュなどが出て来ないかが不安だったが、幸い最初の滝は30メートルロープでの1回の懸垂で済んだ。(しかも下から見るとうまくやればクライムダウン出来そうな感じだった)
その次の滝はもう少し厄介で、右岸の藪を懸垂しようとしたが、30メートル1本では届かなかった。そのため、途中のテラスの立木でピッチを切り2段で懸垂したところ、無事に下まで降りられた。
運良くこれ以上顕著な滝は現れず、順調に下降し、記録のある区間に到達した。
ちなみにこの明通沢、あちこちで硫黄の臭いが漂っており、水も飲めないほどではないが、明らかに鉄の味がする。
一方で、岩床と側壁の景観はなかなかで(しかも下流に行けば行くほど渓相が良くなる)、これだけの地形でいやらしい箇所が現れないのが、奇跡的に思えるほどだ。
大分足が疲れてきた頃、ようやく葛根田川に到着。元の予定より1日以上遅れての入渓となってしまったが、感慨も一入だ。
しばらく休憩したのち、定番のドクロ滝などを眺めながら、美しい渓谷を進んでいく。
ちなみに、これまで釣りの経験はほぼ無く釣果も無かったが、葛根田で釣りをしないのは流石に勿体ないと思って竿を持ってきたので、何度か出してみる。が、特に当たりなし。
そうこうしているうちに、意外とあっけなくお函に到着。
ここは、昔大学のワンゲル部だった頃に良くお世話になった先輩が命を落とされた場所。
柔らかい日差しの中、滔々と流れる水の音、虫の鳴く声だけが聞こえ、とても悲惨な事故が起きそうには思えない。
静かに手を合わせたのち、お函を通過。
日本の渓谷美を凝縮したような場所。
先輩の魂は今もこの場所に眠っているのでしょうか?
定番の幕営地は滝ノ又沢出合だが、明通沢の長大な下りで既に結構足にきていたため、今日は中ノ又沢出合に泊まることにする。
葛根田に入ってから新鮮な足跡が付いていたので他の遡行者に会うかと思っていたが、結局今日は誰にも会わなかった。
中ノ又沢出合に着き、どこにツェルトを張ろうかと思って見渡すと、手前右岸の一段高い所に向かって何となく人工的な登り口っぽいものが付けられていたため、覗いてみると、ツェルト1張分の快適なテン場があり、ここで泊まることに決定!
唯一の難点は若干湿っぽいことで、細い巻きを集めて焚き火を試みるもなかなか持続しない。頑張って何度も着火しようとしたところ、しまいにはライターが高温になり上部が爆発してしまった(・_・;)
予備のライターを持ち出し、若干反則な気もするが今度は着火剤を使用してみたところ、すぐに火が付き燃え上がった。
着火剤最強。
虫も少なく、今日もなかなか快適な夜だった。
9月8日(日)
昨日に続き美しい渓相の中を進む。
歩き始めてすぐスリップし、左手の皮が剥がれて血が沢山出てくる。絆創膏で処置。
ほどなく葛根田大滝着。高さはさほどでないが、かなかな風格のある滝だ。(高さで言えばすぐ手前の左岸から流入する滝の方がよほどデカイ)
巻き道は左岸で明瞭。特に問題なし。
この先の小滝で魚影が見えたため、何度か竿を出したところイワナが掛かる!小ぶりだが人生初イワナなので嬉しい。
しかし、イワナが釣れて浮かれていたためか、滝ノ又沢出合の先の分岐で折れて左に入らなければならないところ、そのまま直進してしまい、大きな滝にぶち当たってしまう。
ここで気づくべきなのだが、まあ葛根田なので明瞭な巻き道があるだろうと思い、右岸の踏み跡っぽい藪を登っていく。しかし、行けども行けども登り続けで、しかも踏み跡は不明瞭になる一方なので、ここでようやくおかしいと感じよくよく地形を考えると完全に間違った場所にいることに気づき、元の場所まで引き返す。
とんだ大ポカをしてしまった。そして1時間近くロスしてしまった。
気をとりなおして、予定のルートの遡行を続ける。標高920mあたりは大分穏やかな流れで、少し単調なきらいもあるが、930m二俣を越すと特異な岩床が現れ、飽きさせない。
標高1020m二俣の右俣には顕著な滝があり、右岸を巻いて登る。踏み跡があるが、1箇所若干いやらしいトラバースがあり、念のため空身でスリングの手すりを作ってから通過する。
その後は、稜線に出た後の縦走を少しでも短くするため、分岐を右へ右へと進んでいく。滝らしい滝はあと2つ出てくるがら1つ目は同じく右岸巻き、2つ目はフリクションを効かせて直登してわりと容易に突破できた。
最後は若干の藪漕ぎで稜線登山道に飛び出した。
あとは快適な縦走だけだと思っていたのだが、この登山道が一般道としては結構酷いレベルで藪を被っており、景色の無さと暑さも加わり結構心が折れたのは誤算だった。
エアリア上で「湿原」と書かれたあたりまでこの状態が続いたが、この先はわりと快適になり、そのうち本格的な刈り払いのエリアとなり、あとはひたすらダラダラと登っていくと八瀬森分岐でようやくメインの縦走路と合流。
この時点でなかり足が疲れていた。
あとは本当に快適な縦走路を辿って大深岳を越えて、大深山荘に到着した。
大深山荘の水場は少々離れているものの、水量豊富。
さて、今日の同泊者は自分含めて3人。
八幡平方面から縦走して来られた方と、自分と同じく沢登りで来られた方。沢登りに来られた方は同じく葛根田を先行して遡行されていたということが分かり、自分が見た新鮮な足跡はこちらの方のものだったと判明。(その後、色々過去の山行の話などをお聞きして、もの凄い方だと知る事になるのだが…。)
明日は台風が近づき天気が崩れそうなので、早めに出る事にして就寝。
9月9日(月)
4時台に出発。
下るだけなので気が楽。
わずかな時間だけだったが、源太ヶ岳の山腹をトラバースする木道より雲海の上に顔を覗かせる朝日と岩手山のシルエットを望むことができた。
あとは筆すべき事なく淡々と下り、松川温泉峡雲荘に7時前に到着。
温泉は本来8:00からだが、先に到着していた昨日の沢登りの方が旅館の人と交渉されて、清掃前の短時間なら本来の営業時間より前に良いことになった。大変助かりました。
白濁した湯と施設の佇まいがとても良い雰囲気を醸し出しており、また来たいと思わせる温泉だった。
最後に、温泉前で昨日一緒に小屋に泊まった3人で記念撮影をして、本山行の締めくくりとなった。
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いろいろと想定外もありましたが、東北の自然を存分に味わったうえに、色々な人との出会いもあった、とても密度の濃い4日間になりました。
冬は学生時代に来たし、今回夏に来たので、次は紅葉の時期に来てみたいけれど…混むんだろうなぁ…
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この記録に関連する登山ルート
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どんな字をかくのだろうと検索してこのページに辿り着きました。
葛根田〜あたり!葛根湯から想像してた漢字でした。
写真を見て、記録を読んでひょっとしたら?と思ったら、最後でピンポンでした。その節はお世話になりました。八幡平方面からの縦走者です(笑)
調子に乗ってFBも探してみたら彼の記録も見つけました。
私もいつも単独行、テン張るのもソロなので大深山荘の一夜はなかなか楽しかったです。また、どこかで…
見つけていただきありがとうございます^ ^
大深山荘ではこちらこそいろいろお世話になりました!じっくり話せるのは山小屋ならではの楽しみですよね(営業小屋にはまず泊まらないですが汗)
そう、葛根湯のかっこんです。独特の響きがありますよね〜。全国の沢登りをする人達の憧れる渓谷です。
ちなみに、あの日は鈍行で帰っていたのですが、台風のせいで途中から電車が運休になってしまい大変でした。。そういう意味でも松川温泉に泊まられて良かったかもしれませんね。
また、機会がありましたら(^^)
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