銀杏峰〜部子山周回☆無垢の雪稜の彼方に


- GPS
- 08:18
- 距離
- 14.4km
- 登り
- 1,264m
- 下り
- 1,267m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
銀杏峰までは踏み固められたトレースあり、アイゼンは使用せず 銀杏峰〜部子山までトレースはあるもツボ足ではかなり踏み抜くのでスノーシュー装着 部子山から先はトレースはなくスノーシュー 途中ca850mでスノーシューが壊れるがツボ足では股下まで沈む |
写真
感想
コロナウイルスの感染による影響で、今週も週末に予定されていた大きな会合がキャンセルとなり、今週も快晴が見込まれる週末に山行の機会が転がりこむ。山行先は先週の荒島岳に引き続き、再び奥越の銀杏峰・部子山を考える。当初、奥美濃の山を考えていたのだが、家内は是非、銀杏峰から部子山への稜線を歩いてみたいという。
先週の荒島岳の下山途中で眺めた様子からすると、今年がいくら雪が少ないとはいえ銀杏峰から部子山への稜線には十分に雪がありそうだ。上手くすれば前日の朝に着氷した樹々の霧氷がこの日はまだ残っているかもしれない。来週からは再び気温も上昇し、霧氷すら期待できないかもしれない。
日の出前に越前大野にたどり着くと、大野盆地の南には冠雪した銀杏峰から部子山への稜線が目に入る。薄曇りを背景にした銀嶺の稜線は淡い朝焼けを反映して淡いローズ色に染まっており、灰白色の雲とのコントラストが美しい。
宝慶寺に向かうと前方には信号待ちをしている数台の車はいずれも同じ場所を目指しているようだ。いこいの森を目指して走る車の後尾を辿る。駐車場にたどり着いたのは7時前であったが既に10台ほどの車が停められている。
早々に準備を整え、梯子を登って登山路に入るとすぐにも雪が現れ始める。登り始めの植林地を抜けて自然林に入ると徐々に雪が深くなる。先週の荒島岳のような泥濘を心配していたが、どうやらそれは杞憂であった。
降雪直後を期待して前日の訪れた野坂の大御影山では山頂に近くなるまで新たな積雪は見られたなかったが、この奥越地方では山麓部でも一昨日には新雪が降ったようだ。新雪の上につけられた先行者の踏み跡やアイゼンの跡が明瞭だ。新雪の上をミシミシと歩く感触が心地よい。しかし、既に多くの登山者が登っているのだろう。登山路は十分にトレースが踏み固められている箇所が多い。
登山道は自然林の尾根を登ってゆく。急勾配もなく登りやすいが、長男がすぐにも吐き気と腹痛による体調不良を訴える。仁王の松で少し休憩したところで腹痛は少しよくなったようだ。なんとか登れそうだということで先に進むが、いつになく長男のペースは遅いようだ。
なだらかだった自然林の尾根の斜度が徐々にきつくなるが、斜面からは越前大野の盆地の向こうには荒島岳から白山にかけての眺望が大きく広がるようになる。ジグザグと急登を登りきると、樹木のない小さな広場に出る。銀杏峰前山との山名標がある。丁度、父娘連れが休憩しておられた。我々が駐車場に到着した時に隣の車から出発されたお二人だ。
前山を後にすると再び山毛欅の樹林に入る。尾根の上部に登るにつれ、あたりの山毛欅の樹々の枝は霧氷を纏うようになり、久しぶりに白い樹林の中を歩く悦びに浸る。霧氷の樹林・・・例年であればこの時期、雪山に行けばそれなりの頻度で霧氷の樹林を歩くことが出来るものと思っていたが、今年は中々のそのような機会に恵まれない。思い返してみると、年始の台高の山以来だ。
霧氷の山毛欅の枝の間からは右手に純白の部子山が姿を表す。部子山の西の方角には薄曇りはすっかり消失し、澄みきった蒼空が部子山の白さを際立たせる。
稜線の上部に近づくにつれ傾斜は緩やかになり、樹々も疎らになってゆく。やがて銀杏峰の山頂部の広大な雪原に飛び出した。視界を遮る樹木のない広大な雪原からは荒島岳の右手に広がる雲海の彼方に浮かび上がる御嶽山が目に入る。その右手に広がる山々は中央アルプスと南アルプスのシルエットのようだ。
銀杏峰の山頂部は広々とした台地状であり、一面に白銀のなだらかな雪原が広がっている。トレースに導かれて山頂にたどり着くと、南に大きく能郷白山が視界に飛び込んでくる。その右手には奥美濃の重畳たら山並みが続く。一際鋭い鋭鋒は蕎麦粒山と小蕎麦粒と判別することが出来る。蕎麦粒の左遠方の見憶えのあるドーム状の山は伊吹山だろう。
銀杏峰の山頂を後にするといよいよ部子山へのなだらかな稜線に入る。左右にパノラマが広がる雪稜を歩く贅沢を味わう。稜線上にはトレースは続いてはいるが、歩く人が少ないせいだろうか、銀杏峰までのしっかりと踏み固められたトレースと異なり、凹凸がかなり激しい。早々にスノーシューを装着する。トレースの上をスノーシューで歩くのは困難なので、トレースのない雪の上を歩かせていただく。
部子山にかけては部子山の手前の鞍部に至るまでなだらかな雪原が続いているのかと思っていたが、雪原が続くのは最初のうちだけで、小さなアップダウンを繰り返しながら下降してゆく。やがて稜線には密集する低木が現れる。レコでは雪が少ないので藪が煩わしいという情報があったが、樹々の間隔は十分に広く、通行に難儀するような藪はない。
低木の樹林の中では途中で大人数のパーティーが休憩しておられるようだ。樹間の通りやすいところを通り、パーティーから離れたところを通過する。ここまでのトレースは木曜日の積雪にしてはトレースがはっきりしすぎているように思われたが、このパーティーのお陰かもしれない。
部子山が近づくにつれて遠目にはなだらかに思われた山が意外と斜度があるように思えてくる。もちろん、これは全ての山に共通して言えることで、山に近づけば近づくほど山は高く、斜面は急に見えるものだ。地図を見る限りにおいても銀杏峰から緩やかに下ってきた稜線は部子山への登りで一気に高度を上げるので、それなりの急登があるのは一目瞭然だ。
部子山の手前のコルでも別の三人組のパーティーが休憩しておられた。部子山の登りに差し掛かるところで山頂から降りてこられた二人連れが目の前を通り過ぎる。なんと親子連れであり、子供さんは小学生だろう。果たして何時に出発したかと考えると驚くばかりだ。
ここから部子山の登りに差し掛かると風がきつそうなので、風のない樹林の中で行動食で休憩する。長男は相変わらず気持ちが悪いとかで食べ物が喉を通らないらしいが、ぶどうは入るようだ。休憩している間に先ほどの親娘とコルで休憩しておられた三人組が通過してゆく。
休憩を済ますと先行するパーティーを抜いて部子山の山頂に向かう。ここでも霧氷を纏う山毛欅の樹林が広がっているが、わずかな風が吹く度に乾いた音を立てて霧氷が樹々から落下してゆく。
尾根の上部では樹林帯を抜けて広い雪原が広がる。振り返ると北斜面には広がる霧氷の樹林の光景が美しい。部子山の山頂にたどり着くと再び能郷白山から冠山、金草岳、笹ヶ峰と続く越美国境、そして奥美濃の山々の彼方には金糞岳、伊吹山といった江美国境の山々が視界に飛び込んでくる。何よりも目を惹くのは西側の広い雪原に向かって続いていゆくトレースのついていない広い純白の尾根だ。
下山は往路を辿るつもりであったのだが、事前に山行計画を家内と長男に話をしていなかったせいだろう。家内と長男は口を揃えて、往路を辿りたくないという。山頂からの周回ルートは今年は雪が少ないので藪漕ぎを強いられることが必定であり、今年は諦めていたのだった。つい一週間前にもgreenriver128さんによる周回のレコが上がっていたのだが、かなり酷い藪漕ぎを強いられたことが報告されていた。しかし、確かに目の前に広がる尾根の魅力には抗いがたいものがある。
今回は地図読みの必要もないだろうと思い、ここまでスマホを取り出すこともなかったのだが、地図を読もうと思ってスマホを取り出すと、快晴の天気ではあるもののそれなりの風があるせいか、スマホのバッテリーはみるみるうちに減ってゆく。greenriver128さんや以前のflatwellさん、blackさんの周回レコを読んで、コース取りを考えておかなかったことが悔やまれる。
コース取りは後で考えるとして、とりあえず純白の尾根へと足を踏み出す。まずは避難小屋を目指すことにする。なだらかな尾根に広がる霧氷の樹林の中を緩やかに下る。部子山は銀杏峰の方からみるのと西側から見るのとではかなり山の風景が異なる。こちらからは緩斜面に広がる霧氷の樹林が陽光に煌めく様がなんとも印象的だ。
避難小屋にたどり着くと避難小屋の中には祠が設けられている。先週のgreenriver128さんのレコで私は知っていたので驚きはしなかったが、家内と長男はこの光景にかなり驚いたようだ。長男は雑炊なら食べることが出来そうだというので、小屋の中で湯を沸かしてドライフードの鮭雑炊、トマトスープ、鮭粕汁を用意する。
小屋の中でスマホでルートを確認すると越前大野市と今立群の間の尾根を宝慶寺まで辿るか、あるいはp1087を越えたところから東に伸びる尾根を下り、あとは延々と林道を歩くという方法が考えられる。郡界尾根を延々と辿るよりも途中で林道に下る方が藪漕ぎがあったとしてもその区間は短いだろうと考え、後者のルートを選択する。ところで越前大野市のこのあたりはかつては大野郡であり、今立郡との間の尾根は郡界尾根と呼んでも良いのかもしれない。
避難小屋を出るとまずは西の広大な雪原に出る。樹木が全くない広大な雪原の下にあるのは能楽の里牧場の牧草地だろう。雪原の端を辿り大きな反射板のあるピークに出る。
郡界尾根に入ると山毛欅の幼木の中を降ってゆく。林床には灌木の枝が頻繁に顔を打つ。尾根上の小さなピークに達すると樹林の間に小さな広場があり、降ってきた部子山と銀杏峰を振り返ることができる。
やがて左手の斜面に広い林道が見えてくる。山毛欅の林の中を下降してゆくが、林道のすぐ手前で突然、左足のスノーシューが壊れる。足を載せる板と靴を留めるゴムバンドとをつなげるボルトが外れてしまったようだ。まずは林道に降り立ち、使えなくなったスノーシューをバンドでリュックに固定する。
この林道は1/25,000地図には記されてはいないが、部子山から銀杏峰の北斜面をほぼ水平に走った後、宝慶寺いこいの森へと下る長い経路が遠くからでもはっきりと認識できる。スノーシューが壊れた現状においてはこの林道を辿るのも一法なのだが、道のりが長すぎる。予定していた林道に降りるための尾根まではそう長くはないので、林道を横切ると再び郡界尾根を辿る。
スノーシューが使えなくなったので片足はツボ足で歩くが、途端に片足は一足ごとに膝上まで沈みこむ。部子山の手前でこの状態であれば躊躇なくピストン往復を選択しただろう。この状態で先に進むのはかなり難儀だ。林道まで戻って長い林道を歩く可能性が脳裏をよぎったところで、ふとスノーシューをリュックに括り付けているバンドで靴をスノーシューに固定させることを思いつく。試してみるとなんとか普通に歩くことが出来そうだ。
p1087の尾根の先、ca1040mで東に伸びる尾根に入ると林道を目指す。林道に向かって緩やかに下る尾根を直進しようとしてca1010mのあたりで唖然とする。尾根の先は灌木の藪がまるで垣根かバリケードのように密集しており、到底、通過出来そうもない。仕方がない、左手の杉の樹が目立つ急な尾根を下降することを目論みる。
杉の樹の下は下生も少ないだろうと期待したが、期待はすぐにも裏切られ、灌木が密生している。灌木の藪を抜けて急斜面を下降するが、まもなくこの尾根でも先ほどと同様の垣根のような藪に行き手を阻まれる。致し方ない。密集した藪の間を無理やり通過する他ない。GPSでは林道までの距離が300mほどと短いことが救いだ。しかし、この密生した藪では極端にスピードが落ちる。藪をかき分けて進むうちに右手に樹々の間隔が空いた谷が目に入る。幸い谷は雪ですっかり埋まっているので下るには問題なさそうだ。谷沿いに下降するとなんとか無事に林道に着地することが出来た。
最後は長い林道歩きだ。とはいえ1時間半ほどの距離は長いとはいえないだろう。下りの林道の足取りは早い。林道に着地した時点では限りなく広がっていた蒼空もみるみるうちに乳液を流し込んだような曇り空に変わっていった。
この林道は最後はいこいの森の駐車場の下に出てしまうので、私一人で植林地の斜面を登っていこいの森に向かう。駐車場ではまだ多くの車が停められており、下山してこられた多くの人で賑やかだ。車に乗り込み林道の入口に向かうと丁度、家内と長男が林道を下ってくるところだった。
私が駐車場に向かうために林道を離れたところから下では蕗の薹が咲いていたらしい。家内がいくばくかの蕗の薹のお土産を携えてきてくれる。帰宅後、先週手に入れ越前大野の味噌と合わせるとなんとも美味な蕗味噌が出来上った。
そうか、うちに寄っていただいたのはここの帰りだったんですね。報告を聞きたかったなぁ。銀杏峰〜部子山は3回、部子山には5回行ったけど、何度行ってもいい山ですよね。部子山の牧場も気持ちいいので次回は西尾根をどうぞ。
ところで、部子山にある小屋は避難小屋ではなくて神社ですよ。火器はまずいかも。たしかに避難小屋としても使えそうですが。鳥居のある崩れかけた小屋(神社)を見たと思いますが、建て替えられました。ちなみに、新しい小屋(神社)の前は広い駐車場です。
4年前の周回では同じところから林道に下りたんですが、林道は歩かずにまっすぐ下の林道に下りました。かなり急でしたが藪はそれほどでもありませんでした。おかげで下山は速かったですよ。
さて、チャンスがなくて今年はまだ奥越へ行っていません。今週末も曇り予報だし、今年はもう無理かも。山日和さんおすすめのマイナーな山へ行きたいのになぁ。
最後に、これを見て感動の余韻にひたってくださいな。
https://youtu.be/iHBpBQxfRWU
ではでは
素敵な動画、有難うございます。これを見たら行きたくなる人は多いでしょう。私も以前いただいたDVDでその魅力を知ったのですが。
部子山の西尾根も魅力的ですが、今回眺めた南尾根も魅力的で、次回は南の巣原峠から部子山への周回という山行計画を温めることになりそうです。
小屋は中に寝るためのマットがあったので、避難小屋かと思っておりました。落雷で山頂の小屋(神社)が崩壊したので、避難小屋に避難したとか。
林道は着地点からそのまま下に降りることを提案したのですが、ここまでの藪漕ぎで難儀したせいか家内に猛反対されまして・・・私一人であれば間違いなくそのまま下降したのですが。
🚙 はいつの間にかエンジン・オイルが漏れていたせいか、その後、葛川のあたりで完全にエンジンがいかれてしまい、動かなくなりました。昨日、廃車にしたところです。
山猫さん、おはようございます。
銀杏峰〜部子山はakinomさんと一度だけ行きましたが、あの雪原稜線は何度見てもいいですね。ほれぼれします。
部子山からは遠望もきき、海まで見えるまっさらな白い稜線が続いてたら、ご家族も行きたくなりますよね。私もいつか牧場への稜線歩いてみたいです。蕗味噌もいいですね。
ペワさん コメント有難うございます。
flatwellさんへのレスにも書いたのですが、南尾根〜西尾根という周回をtryしてみたくなりました。来年に機会を伺うことになりそうです。
しかし周回ルートはファミリー・ハイクにはあまり向いていなかったようです
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