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Yamareco

記録ID: 2380574
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沢登り
大峰山脈

【大峰】火吹谷遡行(白川又川)

2020年06月06日(土) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
8.6km
登り
1,340m
下り
1,340m

コースタイム

日帰り
山行
10:40
休憩
0:00
合計
10:40
5:00
5:00
150
7:30
7:30
110
火吹谷出合
9:20
9:20
280
60m大滝
14:00
14:00
50
稜線
天候 曇り
過去天気図(気象庁) 2020年06月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
行者還トンネル西口駐車場に駐車(四輪1,000円/1日)。4時時点で十分空きあり。
コース状況/
危険箇所等
【弁天の森南東尾根(アプローチ)】
・登山道や踏み跡はないが,藪はなく問題なく歩ける。途中,何か所か岩峰や急斜面が現れ進路を阻まれるが,適宜左右に巻けば通過可能。
・白川又川本流と火吹谷の出合にぴったり出るには,分岐する枝尾根を正確に辿る必要があるため,読図が必要。また,尾根末端はかなりの急傾斜のため注意(ルート取りを慎重にすれば懸垂下降は必要なく,歩いて降りられる。)

【火吹谷】
・核心は火吹谷大滝(60m大滝)の後に出てくる12m滝の右岸巻き。滝手前の右岸側にあるチョックストーンの詰まるルンゼの途中から岩壁に走るバンドを辿ってトラバースするが,終始垂直に近い岩場が続き高度感があるうえ,靴幅サイズの足場に泥が載っているような個所が多く,木の根を頼りに一段上のバンドに強引に這い上がったりしなければいけない箇所もあり,かなり悪い内容。個人的には,終盤に現れる,今にも折れそうな枯れ木を頼りに靴幅サイズのバンドを下降トラバースする箇所が一番怖かった(結局,フリーで安全に通過できる確信が持てず,途中でハーケンを1枚打ってスリングを通し,手掛かりにしました。ハーケンは回収済)。この箇所は,少し手前から左岸を大きめに高巻いてスキップすることもできそうなので,慎重な判断を。
・なお,上記の12m滝のすぐ手前の7m滝は左手のスラブ状の部分を登るが,下部はホールドが少なくフリクション勝負なうえに,かなりぬめっているので,特にラバーの沢靴の場合は注意してください(タワシが効果的)。上部はそれほど難しくありません。
・この谷は序盤で大きめの釜や淵が連続し,結構泳がされるため,盛夏に遡行したほうが楽しめるかもしれません。
まだ夜が明けやらぬ中をヘッデンを頼りに登山道を辿っていく。ホトトギスやジュウイチの声が方々の暗い谷の底から寂しく響いてくる。
まだ夜が明けやらぬ中をヘッデンを頼りに登山道を辿っていく。ホトトギスやジュウイチの声が方々の暗い谷の底から寂しく響いてくる。
弁天の森着。ここから登山道を外れ,南東尾根を辿る。
朝日が差したとたんに,ミソサザイやコマドリ,コルリやヒガラのさえずりが一斉に沸き起こったが印象的だった。
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弁天の森着。ここから登山道を外れ,南東尾根を辿る。
朝日が差したとたんに,ミソサザイやコマドリ,コルリやヒガラのさえずりが一斉に沸き起こったが印象的だった。
南東尾根は相変わらず藪が少なく,気持ちのいい尾根だ。
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南東尾根は相変わらず藪が少なく,気持ちのいい尾根だ。
途中,興奮したカモシカが走り回っている場面に何度か出くわした。繁殖期か何かなのだろうか?
そのほかにも,とことこ走ってきた小鹿にきょとんと見つめられたりと,とにかく動物の多い尾根だ。
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途中,興奮したカモシカが走り回っている場面に何度か出くわした。繁殖期か何かなのだろうか?
そのほかにも,とことこ走ってきた小鹿にきょとんと見つめられたりと,とにかく動物の多い尾根だ。
慎重に読図を重ねて,ほぼぴったりと白川又川本流と火吹谷の出合に降りることができた。(昨年8月に奥剣又谷を遡行した際は,誤って火吹谷側に降りてしまい難渋した…。)
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慎重に読図を重ねて,ほぼぴったりと白川又川本流と火吹谷の出合に降りることができた。(昨年8月に奥剣又谷を遡行した際は,誤って火吹谷側に降りてしまい難渋した…。)
約一年ぶりの白川又川本流。やはり美しい谷だ。
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約一年ぶりの白川又川本流。やはり美しい谷だ。
さて,火吹谷の遡行を開始する。火吹谷は出合から両岸が立ってゴルジュ状となっており,陰鬱なダンジョンの入り口のような雰囲気。しかもいきなり大きな淵に阻まれる。
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さて,火吹谷の遡行を開始する。火吹谷は出合から両岸が立ってゴルジュ状となっており,陰鬱なダンジョンの入り口のような雰囲気。しかもいきなり大きな淵に阻まれる。
まだ6月なので水が非常に冷たく,少し躊躇したが,意を決して泳ぐ。淵を泳ぎ渡った後は斜滝に取りつき,そのまま登る(ごく簡単)。いきなり白川又川の極冷水の洗礼を受けてしまった…。
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まだ6月なので水が非常に冷たく,少し躊躇したが,意を決して泳ぐ。淵を泳ぎ渡った後は斜滝に取りつき,そのまま登る(ごく簡単)。いきなり白川又川の極冷水の洗礼を受けてしまった…。
その後も小滝と大きな釜が続き,連続で泳がされる。ここは右手の壁沿いに少し泳いだ後に上陸してへつり。
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その後も小滝と大きな釜が続き,連続で泳がされる。ここは右手の壁沿いに少し泳いだ後に上陸してへつり。
ここは滝に向かって泳いでいく途中,左手の壁に登れる箇所を見つけて乗り越した。
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ここは滝に向かって泳いでいく途中,左手の壁に登れる箇所を見つけて乗り越した。
両岸の壁が極端に狭まった「行合」と呼ばれる箇所。神童子谷の「へっついさん」に似ている。過去の記録には「腰までの渡渉」とあったが,水量が多いのか川底の砂利が流されたのか,足が立たず普通に泳がされた。泳ぎの連続で,さすがに寒くなってきた…。
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両岸の壁が極端に狭まった「行合」と呼ばれる箇所。神童子谷の「へっついさん」に似ている。過去の記録には「腰までの渡渉」とあったが,水量が多いのか川底の砂利が流されたのか,足が立たず普通に泳がされた。泳ぎの連続で,さすがに寒くなってきた…。
美しい18m直瀑。滝も美しいが,この滝の右手上方の斜面にかなりの巨木(遠くてよく見えなかったが,おそらくサワグルミ)があり,ちょっとびっくりした。
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美しい18m直瀑。滝も美しいが,この滝の右手上方の斜面にかなりの巨木(遠くてよく見えなかったが,おそらくサワグルミ)があり,ちょっとびっくりした。
この滝は右岸から高巻いた(写真が取りつき箇所)。かなり岩がちな急斜面で見た目は不安になるが,取りついてみると意外に安定した高巻きができる。谷に戻る際も懸垂不要で歩いて降りられる。
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この滝は右岸から高巻いた(写真が取りつき箇所)。かなり岩がちな急斜面で見た目は不安になるが,取りついてみると意外に安定した高巻きができる。谷に戻る際も懸垂不要で歩いて降りられる。
これも形の良い5m直瀑。左岸のガレたルンゼから高巻いた。
これも形の良い5m直瀑。左岸のガレたルンゼから高巻いた。
滝は小さくても,釜が大きい滝が多い。
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滝は小さくても,釜が大きい滝が多い。
と,前方奥に巨大な明るい空間が見えてきた。大滝が近づいてきたようだ。
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と,前方奥に巨大な明るい空間が見えてきた。大滝が近づいてきたようだ。
5mほどの前衛滝に阻まれる。登れそうに見えるが,この滝を登った先に20mほどの大きな滝が見えており,行き詰まる可能性があるため,左岸から高巻くことにした。
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5mほどの前衛滝に阻まれる。登れそうに見えるが,この滝を登った先に20mほどの大きな滝が見えており,行き詰まる可能性があるため,左岸から高巻くことにした。
左岸側のガレたルンゼを登り,適当なところで上流側にトラバースしていく。
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左岸側のガレたルンゼを登り,適当なところで上流側にトラバースしていく。
高巻きながら撮影した前衛の20m滝と,その奥の60m大滝。息を呑む眺めだ。
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高巻きながら撮影した前衛の20m滝と,その奥の60m大滝。息を呑む眺めだ。
高巻きを終えて谷に降り立つと,ついに目の前に60m大滝の全容が現れた。
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高巻きを終えて谷に降り立つと,ついに目の前に60m大滝の全容が現れた。
大岩壁を縦にかち割った中にどうどうと落ちる異形の大滝。こんな形の滝はあまり見たことがない。滝自体もド迫力だが,それを取り囲む岩壁も100m位の高さがありそうで,言葉を失う豪宕な空間である。
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大岩壁を縦にかち割った中にどうどうと落ちる異形の大滝。こんな形の滝はあまり見たことがない。滝自体もド迫力だが,それを取り囲む岩壁も100m位の高さがありそうで,言葉を失う豪宕な空間である。
滝の直下から撮影。轟々となだれ落ちる瀑水が岩壁の割れ目の中に暴風雨を作り出している。
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滝の直下から撮影。轟々となだれ落ちる瀑水が岩壁の割れ目の中に暴風雨を作り出している。
大滝の下に連なる前衛滝を上から眺めたところ。大滝と合わせて豪快な連瀑を形成しており,壮観である。
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大滝の下に連なる前衛滝を上から眺めたところ。大滝と合わせて豪快な連瀑を形成しており,壮観である。
しばらく大滝の下に立ち尽くしたあと,我に返って左岸から大滝を巻きにかかる。かなりの急傾斜だが,何とか通れそうなバンドをつないで,上流側にトラバースしていく。
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しばらく大滝の下に立ち尽くしたあと,我に返って左岸から大滝を巻きにかかる。かなりの急傾斜だが,何とか通れそうなバンドをつないで,上流側にトラバースしていく。
すると,写真の枝谷にぶつかる。足場をつないで慎重に枝谷に降り立つ。(懸垂下降しなくても,歩いて降りられる。)
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すると,写真の枝谷にぶつかる。足場をつないで慎重に枝谷に降り立つ。(懸垂下降しなくても,歩いて降りられる。)
枝谷の下流方向。この下に大滝の大空間が広がっているはずだが,大きな水音が聞こえてくるだけで,姿は望むことはできない。
枝谷の下流方向。この下に大滝の大空間が広がっているはずだが,大きな水音が聞こえてくるだけで,姿は望むことはできない。
枝谷を少し登ると左手の斜面が緩くなるため,そこから取り付いてさらに本流の上流方向へトラバースを継続。
枝谷を少し登ると左手の斜面が緩くなるため,そこから取り付いてさらに本流の上流方向へトラバースを継続。
もう大滝を越えたかな,というあたりで適当なルンゼを選んで火吹谷の谷底に復帰。谷は険悪なゴルジュの様相を呈しており,写真の7mほどの滝に進路を阻まれる。
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もう大滝を越えたかな,というあたりで適当なルンゼを選んで火吹谷の谷底に復帰。谷は険悪なゴルジュの様相を呈しており,写真の7mほどの滝に進路を阻まれる。
この滝の左手にスラブ状の岩場があり,傾斜も緩いため登れるだろうと取り付いてみたが,いざ登り始めるとかなりぬめりが強くラバーの沢靴との相性が最悪であることが判明。軽い気持ちで取り付いてしまったことをじんわり後悔しはじめたが,蝉になっていても仕方がない。ハーネスにぶら下げていたタワシで足の置き場をこすり出しつつ,思い切って登り切った。(写真は登り切ってから見下ろして撮影)
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この滝の左手にスラブ状の岩場があり,傾斜も緩いため登れるだろうと取り付いてみたが,いざ登り始めるとかなりぬめりが強くラバーの沢靴との相性が最悪であることが判明。軽い気持ちで取り付いてしまったことをじんわり後悔しはじめたが,蝉になっていても仕方がない。ハーネスにぶら下げていたタワシで足の置き場をこすり出しつつ,思い切って登り切った。(写真は登り切ってから見下ろして撮影)
7m滝を乗り越すと,険悪なゴルジュの中にかかる12m滝が出現。この滝のクリアが核心となった。
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7m滝を乗り越すと,険悪なゴルジュの中にかかる12m滝が出現。この滝のクリアが核心となった。
滝の手前の右岸側に写真のルンゼがあり取り付くが,巨大なチョックストーンが挟まっており,直進は不可能。
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滝の手前の右岸側に写真のルンゼがあり取り付くが,巨大なチョックストーンが挟まっており,直進は不可能。
ルンゼの右手の岩壁の中に走る一筋のバンドに活路を見出し,辿っていく。写真では草木が写っており穏やかに見えるかもしれないが,実際には信頼できる足の置き場は靴幅より少し広いくらいしかなく,しかも外傾している。下は滝つぼまで切れ落ちており,滑落したら無事では済まない。
ルンゼの右手の岩壁の中に走る一筋のバンドに活路を見出し,辿っていく。写真では草木が写っており穏やかに見えるかもしれないが,実際には信頼できる足の置き場は靴幅より少し広いくらいしかなく,しかも外傾している。下は滝つぼまで切れ落ちており,滑落したら無事では済まない。
今にも切れそうな細い木の根や抜けかけた灌木を手掛かりにそろそろとバンドを辿っていくが,途中で途切れてしまった。進路を探って周囲を観察するが,どうやら3mほど上に走っている別のバンドに乗り移るしか手はなさそうだ。写真の木の根をつかんで,上方のバンドに強引に這い上がる。
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今にも切れそうな細い木の根や抜けかけた灌木を手掛かりにそろそろとバンドを辿っていくが,途中で途切れてしまった。進路を探って周囲を観察するが,どうやら3mほど上に走っている別のバンドに乗り移るしか手はなさそうだ。写真の木の根をつかんで,上方のバンドに強引に這い上がる。
何とか無事,上のバンドに乗ったが,垂直に近い岩場に靴幅サイズの足場という苦境に変わりはない。これまでやったことのある高巻きの中でもトップ5には確実に入る悪いトラバースを続けていく。
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何とか無事,上のバンドに乗ったが,垂直に近い岩場に靴幅サイズの足場という苦境に変わりはない。これまでやったことのある高巻きの中でもトップ5には確実に入る悪いトラバースを続けていく。
最も苦労したのが写真の箇所。奥から手前に進んできたのだが,手前の木は枯れ木でぐらぐらしており,これしか手掛かりがないという最悪の状況。結局,フリーで安全に通過できる確信が持てず,岩に張り付いた苦しい体勢のまま運良く目の前にあったリスにハーケンを打ち込み,スリングを通して手掛かりにして通過した。(通過後,ハーケンはちゃんと回収しました。)
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最も苦労したのが写真の箇所。奥から手前に進んできたのだが,手前の木は枯れ木でぐらぐらしており,これしか手掛かりがないという最悪の状況。結局,フリーで安全に通過できる確信が持てず,岩に張り付いた苦しい体勢のまま運良く目の前にあったリスにハーケンを打ち込み,スリングを通して手掛かりにして通過した。(通過後,ハーケンはちゃんと回収しました。)
苦しいトラバースを続けたあと,太い木を見つけて谷底へ懸垂下降(17mくらい)し,12m滝の高巻きを終了した。
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苦しいトラバースを続けたあと,太い木を見つけて谷底へ懸垂下降(17mくらい)し,12m滝の高巻きを終了した。
12m滝の落ち口。見事なゴルジュ。
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12m滝の落ち口。見事なゴルジュ。
12m滝の上はまだ両岸は立っているものの,少し穏やかな様相となる。
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12m滝の上はまだ両岸は立っているものの,少し穏やかな様相となる。
ゴルジュ最後の5m滝。長い淵に守られており,直登は難しそうなので,左岸の急斜面から高巻きした。
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ゴルジュ最後の5m滝。長い淵に守られており,直登は難しそうなので,左岸の急斜面から高巻きした。
5m滝を越えると,打って変わって穏やかな渓相となる。
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5m滝を越えると,打って変わって穏やかな渓相となる。
美しいナメがひたすら続き,悪場を越えてここまで遡行してきたものをやさしく歓迎してくれているかのよう。
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美しいナメがひたすら続き,悪場を越えてここまで遡行してきたものをやさしく歓迎してくれているかのよう。
周囲の緑が水面に移り込み,美しい。
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周囲の緑が水面に移り込み,美しい。
滝場での緊張も忘れて,美しいナメに酔いしれながら,ゆっくり歩を進めていく。どこかでクロツグミの美しい声がする。
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滝場での緊張も忘れて,美しいナメに酔いしれながら,ゆっくり歩を進めていく。どこかでクロツグミの美しい声がする。
次第に水量が少なくなるが,周囲は巨樹も混じる美しい自然林に包まれ,楽しい散歩ができる。
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次第に水量が少なくなるが,周囲は巨樹も混じる美しい自然林に包まれ,楽しい散歩ができる。
途中,古い石垣が残っている箇所があった。現在では人の気配がほとんど感じられないこの谷でも,昔は植林小屋が立っていたのだろうか。
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途中,古い石垣が残っている箇所があった。現在では人の気配がほとんど感じられないこの谷でも,昔は植林小屋が立っていたのだろうか。
源頭に近いところで小さな連瀑帯が現れるが,これを最後に滝の姿は見えなくなる。
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源頭に近いところで小さな連瀑帯が現れるが,これを最後に滝の姿は見えなくなる。
谷のど真ん中に一軒家くらいある巨大な岩が一つだけ鎮座していた。
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谷のど真ん中に一軒家くらいある巨大な岩が一つだけ鎮座していた。
ついに水切れ。稜線が近い。
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ついに水切れ。稜線が近い。
無事,稜線に乗り上げた。沢装備を解除。
ところどころに咲き残るシロヤシオを眺めながら悠々と駐車地に戻り,山行終了。
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無事,稜線に乗り上げた。沢装備を解除。
ところどころに咲き残るシロヤシオを眺めながら悠々と駐車地に戻り,山行終了。

装備

備考 ・40mロープを携行。60m滝の後に出てくる12m滝の右岸巻きを終えて沢床に戻る際に1回懸垂下降しました(17mくらい)。
・岩がちで高巻きも多い谷なのでラバーの沢靴が効果的だが,ぬめっている岩が結構多いので注意。

感想

 都道府県をまたいだ往来の自粛要請が解除されたため,沢登りシーズン入りしてから行きたくて仕方がなかった大峰・白川又川へ。
 火吹谷は,そのいかにも悪そうな迫力ある谷名のイメージ(ダンジョンの奥で竜が火を噴いているような…)から,どれほど壮絶な険谷なのだろうと,こわごわながらも覗いてみたかった谷である。実際,火吹谷は出合からずっと両岸の立った険悪な渓相が続き,何となく暗く陰鬱な雰囲気で,明るく豪快な流れが続く白川又川本谷(奥剣又谷)とは好対照を成している。
 しかし,そのダンジョンめいた暗い谷を延々とたどった末,60m大滝の下に立った途端,谷は壮麗で開放的な空間にがらりと変貌する。この場面転換の鮮やかさが非常に印象的な谷だった。60m滝は姿自体が美しいのはもちろん,岩壁を縦に割ったような中にかかる異形の姿や,周囲の岩壁の圧倒的な巨大さなど,一見の価値がある滝だと思う。
 火吹谷は,当初抱いていたイメージと比べると遡行難度の面では意外に与し易い谷だったが,例外は大滝の後に待ち構えている12m滝の右岸巻きで,ここの高巻きは本当に悪かった。その分,ゴルジュを抜けきったところで現れる穏やかなナメの連続が山の神様からの恩恵のように思え,その美しさに感謝しつつ遡行のフィナーレを迎えることができた。
 泳ぎに厳しい高巻き、豪快な大滝、そして最後の穏やかで美しいナメ床と,鮮やかな物語性のある楽しい谷であった。

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