地形萌えポイント・北八ヶ岳の稲子岳を訪ねて〜雪山テント泊
- GPS
- 26:03
- 距離
- 22.1km
- 登り
- 1,321m
- 下り
- 1,398m
コースタイム
渋の湯11:40―13:15黒百合ヒュッテ<テント設営・湯沸し2時間>15:14―15:46ニュウ―16:34黒百合ヒュッテ
<2日目>
黒百合ヒュッテ6:38―6:58天狗の奥庭分岐北―7:23黒百合ヒュッテ<朝食・テント撤収1時間30分>9:00―9:24中山―10:05高見石小屋―10:20丸山―10:47麦草ヒュッテ―11:44出逢いの辻―12:50ロープウェイ山頂駅―13:44ロープウェイ山麓駅
天候 | 2日:曇り 3日:晴れ 気温 3日 5:30ごろ:黒百合ヒュッテ テント内-11℃、テント外-19℃ 3日 9:30ごろ:中山付近-1℃ |
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過去天気図(気象庁) | 2012年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り:バス(北八ヶ岳ロープウェイ15:05<アルピコ交通・北八ヶ岳ロープウェイ線>16:00茅野駅)1200円 毎日運行 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・雪道のため、アイゼン必須。天狗岳に登るのでなければ、前爪がないタイプで問題ない。 ・ロープウェイ運休中だったため、縞枯山周辺にトレースなし。 ・登山道を行く限り、わかんは必要ない。中山で道から外れて膝上まで潜ったが、登山道上であれば踏み抜くこともほとんどない。 ・樹林帯なので、ピッケルも不要。トレッキングポールがあると楽。 |
予約できる山小屋 |
黒百合ヒュッテ
|
写真
感想
UTMFの抽選に外れました・・・。
傷心を癒すのは、やはり山。雪山に行こう。
今回の第一の目的は、積雪期のテント泊を経験すること。交通の便が良くて、行ったことがあるエリアということで、北八ヶ岳の黒百合ヒュッテのテント場を選択。
この近くには、稲子岳があります。最近発売された『山岳読図シミュレーションBOOK』で紹介されていた「地形萌え」ポイントで、平安時代の火山活動で山体が崩落してできた特殊な地形のようです。稲子岳と西側の窪地には道が通っていないので、眺めるだけ。北側の「ニュウ」と、南側の天狗岳付近から観察することにしました。
さらに、冬期登山靴+12本爪アイゼンではなく、靴底が曲がるミドルカットシューズに前爪のないアイゼンの組み合わせを試してみました。アイゼンの脱落を防ぐために、靴底が硬い冬期登山靴と合わせるのがセオリーですが、どんな種類の靴にも着けられるというKAHTOOLAのKTSクランポンを、サロモンのシナプスウィンターCS WPに合わせました。クランポンの前後を繋いでいるセンターバーが柔らかく、靴の屈曲に追随するので、走ることさえできるとか。前爪がない分登りには向かないので、なるべく平坦なコース取りを考えました。黒百合ヒュッテから茶臼岳・縞枯山の巻き道を通って北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅まで行くコース。これなら、前爪がなくても問題ない。
ところが、調べると北八ヶ岳ロープウェイは12月7日まで運休とか。それでも、ロープウェイに沿って登山道がある。山麓駅から茅野駅までのバスはロープウェイの運休に関わらず毎日運行していること、ロープウェイの運休中(スキー場の整備中)であっても登山道は通れることを確認し、決行です。
氷点下のテント泊は無雪期からは考えられない不便さ、厳しさでしたが、それがまた楽しい! 寒さで起きることもなく、9時間熟睡できました。山小屋の前という立地も、精神的に楽でした。
3日月曜日は、黒百合ヒュッテからロープウェイ山麓駅に至るまで、誰ともすれ違わない、静かな山行を楽しめました。丸山に登る道からトレースがなくなりましたが、登山道が隠れるほどの積雪ではなく、ラッセルはおろか踏み抜きもほとんどありませんでした。
■行程の詳細
<1日目>
茅野駅から路線バスに乗り、渋の湯へ。登山口の積雪・凍結は分かっていたので、最初からアイゼンを履く。茅野駅で買ったおにぎりなどを口にし、11:40に出発。黒百合ヒュッテへの道は2回目。下山する登山者10人ほどとすれ違う。
13:15、黒百合ヒュッテに到着。テント泊の受付をし(1000円)、テントタグを受け取る。テント泊の客向けに水が用意されているが、なるべく雪を溶かして水をつくるよう言われたので、この水には頼らないことにする。
翌日が月曜日のためか、テント場には1張もない。ロープの内側なら、好きな場所に張れる。すのこが敷いてある一等地(?)にテントを立てることに。今回のテントは、さすがにいつもの床なしワンポールテントではなく、ドーム型。マウンテンハードウェアのダイレクト2で、内側からポールを張るタイプ。テントの中に潜り込みながら組み立てるので、とりあえず風を防げる。設営時点で、少し風が出ていた。テントの一角をピッケルで確保し、テントを立ち上げ、四隅をMSRのブリザードステイクで固定する。固定力はよく分からないが、雪に食い込む感触はある。
続いてエアーマット(サーマレストのネオエア エクスサーム)を膨らませる。付属のポンプサックでは膨らませるのに気の遠くなる回数が必要だったので、別売りのポンプサックを買った。シュラフカバーをかけた冬季用の寝袋がまるまる入るサイズなので、みるみる内にマットが膨らんでいく。10回ほどで最大限膨らませられた。寝袋を取り出した後、このポンプサックを雪袋に転用。テント周辺の雪をスコップで掘り返し、なるべくきれいな雪を詰めていく。ちょっと草も入ってしまったが、仕方ない。
設営が完了したところで、水作り。下界からテルモスに入れてきたお湯を呼び水として、雪袋からマグカップでジェットボイルに投入。なるべく塊を砕き、蓋をしてときどき溶け具合を確認。ほどほど溶けたところで、コーヒーフィルターを当てたナルゲンのボトルに移していく。フィルターからちょろちょろ落ちていくのがじれったい。簡易浄水器でも持ってくればよかっただろうか? こうして1Lの水をつくるのに、かれこれ30分以上かかってしまった。
気がつくと15:14。ヒュッテ到着から、2時間経っている。今日のうちに、ニュウから稲子岳を見ておきたい。ザックにライト、テルモス、ダウンジャケットだけ突っ込んでニュウにアタック。このとき荷物の重量は、ザックの重量を含めて3kg程度。軽い。走れる。中山峠〜中山間の分岐からは下り基調。30分ほどでニュウに到着。アイゼンは足の屈曲に追随して、緩まなかった。
ニュウの頂は風の当たりが強く、岩から体を乗り出しているとバランスを崩しそうになるほど。稲子岳の東の絶壁は良く見えず、窪地は隠れている。ううん、今ひとつの展望。早々にテントへ戻る。帰りは延々と登りが続く(2011年版の山と高原地図では、ニュウに向かう方が短い時間とされているが、実際は逆)。太い枝が揺れる程度に風が強まり、積もった雪が流されて行きの足跡を消していた。16:34、ライトを点ける前に黒百合ヒュッテに戻ってきた。自分のテント1張のみ。風に煽られて、中に人が入って暴れているように、左右に揺れていた。
張綱を追加しようとしたが、自在を調節しようとしている間に指が冷えてしまった。あきらめて食事の支度に移る。
まずはアルファ米を戻す。その間に、シェルの上からダウンの上下を着込み、テントブーツを履く。凍らせたくないもの(靴、余った水、コンタクトレンズ、予備のガスカートリッジ)は寝袋に入れておく。外は強風といっていいくらいに荒れていて、とても外で調理ができる環境ではない。入り口を少し開けて、換気に気をつける。テントが大きく揺れるので、ジェットボイルを手で押さえながら鍋キューブのピリ辛キムチに車麩、ゆで豆、アルファ米を投入。氷結した結露が降り注ぐ中、煮えるまで耐え忍んだ。
少し辛い食べ物で体が温まったところで、就寝。時刻は20:00前後だろうか。2回ほど目が覚めたが、寒くはなく、翌朝5:30までしっかり眠れた。
<2日目>
5:37、テント内の気温は-11℃。トイレに行く途中、黒百合ヒュッテの玄関に掛けられている温度計を見ると・・・-19℃!? 寒さにも驚いたが、テントの内外でこんなにも温度差があるのにも驚いた。さすがドーム型テント。床なしワンポールテントでは、ここまでの保温力はない。
この日は早朝に天狗岳の北から稲子岳を見てテントに戻り、朝食後出発する予定。お湯を温めなおし、テルモスに移す。寝袋の外に出していたガスカートリッジ(ジェットパワー100G)は、こんなに寒くてもガスを出してくれた。むしろライターの方が息も絶え絶えだったが、火種にはなった。
明るくなった6:38にテント場を出て、中山峠経由で展望スポットに向かう。朝日を浴びながら、踏み跡が消えた道を進み、中山峠と東天狗の中間で道の角度が変わる地点から、稲子岳を望む。
中山峠からの稜線が東に向かって落ち込み、その東に稲子岳が盛り上がり、絶壁で切れ落ちている。窪みの奥には昨日登ったニュウの突起が見える。ううん、これはふしぎな地形だ。満足。東天狗の斜面に上がってもよかったが、木が展望の邪魔になりそうなので、これで下ることにする。
雲ひとつない快晴で、遠くには北アルプスの山々も望めた。
朝食をとり、テントを撤収する。ペグはしっかり刺さっていた・・・どころか、凍り付いて抜けなかったので、ピッケルで掘り起こす。テントタグを黒百合ヒュッテ受付の籠に返し、9:00出発。
この時点で、予定より40分遅れ。北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅に下山することにしているが、13:15のバスには間に合いそうにないことと、相当満足してしまったので、渋の湯から下山することも考えながら北上する。
茶臼山と縞枯山のピークは踏まず、巻けるところは巻く。斜度が急なのは丸山からの下りぐらいで、あとは緩やかな登り・下り。ロープウェイは運休中で、周辺の山小屋も予約制。人は少ないと予想していたが、本当に人っ子一人すれ違わない。自分の前に人間の踏み跡はなく、動物がトレースをつけているのみ。鹿、狐、兎?さまざまな動物が、登山道を通っていることが分かる。
五辻の辺りからは、縞枯山の横縞がよく見えた。道中の看板によると、木が横方向に枯れる縞枯現象は1000年以上前から起きていて、しかも100年周期で涸れている部分と茂っている部分が入れ替わるのだとか。地形図に表れない以上、地形萌えにはならないが、興味をそそられる現象だ。
それにしても、背中の荷物が重い。食料を消費した分軽くなっているが、それでも14kgはある。雪山テント泊の重量としては決して重い方ではないが、無雪期ならテント2泊でも9kg弱。その辺りが、快適に行動できる重量の限界だと感じている。トランスジャパンアルプスレースで、12kgを背負って完走した選手がいるが、真に尊敬する。
楽しみ・・・覚悟していたラッセルもなく、そうこうしている内にロープウェイ山頂駅に到着。時刻は12:50。13:15のバスには、今回の荷物では間に合わない。坪庭に上がってもよかったが、計画通りそのまま下山する。登山道に沿って、ゲレンデが伸びている。8日のオープン予定で準備を進めているようだが、見たところまだまだ。標高2000mを切ると雪も減り、地面の露出が目立つ。13:44、ロープウェイ山麓駅に到着。駅のトイレと自動販売機コーナーは開いていた。15:05のバスまで、余った水を沸かしてコーヒーを飲む。このときの気温は10℃。山の上の寒さに比べれば、暑いくらいだった。
■装備
荷物の重量は細かく計算していませんが、パックウェイトで14〜15kg。さすがに走る気は起こらない・・・
・足回り
シューズ:サロモンのシナプスウィンターCS WP(982g ペア、以下同じ)
アイゼン:KAHTOOLAのKTSクランポン スチール(686g)
ゲイター:GILLのB300 ネオプレーンオーバーシュー(176g)
冬期登山靴+12本爪アイゼンと比べて、両足で1kg軽い。GILLのB300はネオプレーン素材の自転車用ゲイターで、踵側のベルクロで留める。M/Lサイズが欠品だったのでS/Mサイズを頑張って引っ張って、かろうじて26cmのシューズに留められた。靴下はノースフェイスのアルパイン クライマー ソックスを使用。就寝前に裏返して汗を拭き、寝袋の外に出しておいたが、翌朝凍結もせず普通に履けた。
・アルミワカン
ロープウェイ運休中で縞枯山周辺にトレースがないことも予想でき、北横岳ヒュッテのHPで11月27日に「坪庭のラッセルに苦労した」旨が書かれていたので、念のためアルミワカンを用意した。結果的に必要なし。ちょっと残念。
・寝具
寝袋:ウエスタンマウンテニアリングのバーサライト(使用温度域-12℃)
マット:サーマレストのネオエア エクスサーム、山と道のMinimalist Pad・BackPad15
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