天城縦走路☆馬酔木のトンネルと山毛欅の回廊を縦走
- GPS
- 05:32
- 距離
- 16.1km
- 登り
- 928m
- 下り
- 1,357m
コースタイム
- 山行
- 5:03
- 休憩
- 0:29
- 合計
- 5:32
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
荻車庫から天城高原へ |
コース状況/ 危険箇所等 |
全般的に良好に整備された一般登山道 白田山を越える尾根コースはバリエーション・ルートで踏み跡は不明瞭 |
写真
感想
日曜日の山行先はかなり迷ったが天城山の縦走にしたのは前夜に宿泊する伊東温泉の露天風呂付きの温泉旅館の魅力もあってのことであった。朝、伊東駅から出発する天城高原行きのバスは7時55分だが、その前に7時15分に荻車庫から出発して天城高原に向かうバスがあるので、旅館から荻車庫までタクシーで移動する。
新緑の天城高原の道路からは随所に好展望が広がり、バスの車窓には雲ひとつない蒼空を背景に冠雪した美しい富士山が浮かび上がる。
登山口で降り立つと、駐車場には既に10台以上の車が停められている。かなり風が強く肌寒い。伊豆半島は暖かいだろうと思ってアウターを用意して来なかったのだが、寒冷前線が通り過ぎた後で、北風と共に寒気が流れ込む天気になることを全く考えていなかった。
それでも登れば暖かくなるだろうと期待して歩き始める。登山道の周囲では所々で特徴的な茶褐色の光沢のある樹肌を見せるヒメシャラの大木が現れる。山麓では新緑の若緑色が鮮やかであったが、天城山では樹々がようやく芽吹き始めたところのようだ。ところどころに馬酔木の花が咲いている。低木の間を縫って登る。
万二郎山は南側に眺望が開ける。風力発電の風車がずらりと並んでいるのは稲取・細野高原の風力発電だろう。その彼方で遠くにもかすかに風力発電が見えるのは石廊崎のあたりだろう。左手には茫洋と広がる太平洋が見える。
万二郎山の山頂の周辺に広がる低木の樹々はそのほとんどが真弓であることを樹にかけられたプレートが教えてくれる。秋には赤い実のお陰で樹を同定することが可能だが、それ以外の季節には同定が難しい樹だ。
万二郎山まで数組のパーティーを追い越すが、ここからは人影がない。馬の背からは右手後方に天城高原のゴルフ場を見下ろす。ゴルフ場の背後には遠笠山、その右手に若葉色をした大室山の綺麗な円錐形が見える。
周囲の山肌を見ると随所で白い花を咲かせた樹々が見える。馬酔木の花だ。京都の北山でも馬酔木の花はよく見るのだが、このあたりの馬酔木の花は印象が全く異なる。山肌を白く染める馬酔木の花は相当なボリュームがあるのだろ。
尾根を辿るとブナが現れるが、見栄えがしない樹形のものが多く、滋賀県の湖北や福井県で見かけるようなスッキリした箒状のブナの樹に比べるとどうも見劣りがするように思われる。馬の背のなだらかな尾根は馬酔木のトンネルとなる。ところどころにはシャクナゲの樹も散見するが、当然ながら花を咲かせているものはない。小さな鞍部を過ぎて万三郎山の山頂山頂が近くにつれ、ブナの大樹が目立ち始める。
万三郎山の山頂は樹林に囲まれて展望のないところであった。まだ新緑の芽吹きが見られない樹間からは辛うじて富士山を眺めることが出来るが、いつの間現れたのか、富士山の周りに群がるように雲が纏わり付いて山頂を覆い隠している。風が強いことを心配していたが、程よく涼しい感じであった。
万三郎岳の山頂には1組の男女がおられた。車一台を河津にデポして縦走されるご予定らしい。万三郎山から西に向かうと急に林相が変化する。ブナの高木が多くなり、下生えの少ない樹林が広がるようになる。
小岳を過ぎて、九十九折で斜面を下ると見事なブナの大樹が現れるようになる。万三郎山の手前のブナの印象とは大きく異なる。確かに湖北で見かけるブナとは異なり根元の近くから枝分かれした力強いブナが多いように思われる。石鎚山地や紀伊山地のブナも同様の印象だったことを思い出す。
ブナの樹林を辿って戸塚峠に到着する。案内標には天城峠まで9.7km 175分とコースタイムが記されている。時間は10時半なので、少しコースタイムを縮めることが出来れば天城峠の13時29分のバスに間に合うだろうと皮算用をする。
ここから次の白田峠に向かって縦走路は斜面の南側をトラバースすることになるが、尾根上も下生の少ない樹林が続いているようなので、尾根を辿って三角点のあるピークを踏むことにする。尾根を辿るとすぐに北側に大きく展望が開け、富士山を正面に望むことが出来る。随所に展望が開けており、秘かな展望スポットと言えるだろう。
三角点のあるピークは白田山と呼ばれるところらしい。山頂は馬酔木と樹林の殺風景なところであったが、尾根を先に進むと広々とした二重尾根にブナの大樹の疎林が広がる素晴らしい林相となった。尾根には踏み跡もないが、下生のない広い尾根はどこでも気儘に歩くことが出来る。
やがて左手の尾根を越えて植林の斜面を降りるとすぐに白田峠に到着した。ここからはなだらかな北側斜面のトラバース道が延々と続くが、登山道の周囲には気持ちい山毛欅の疎林が広がる。所々で豆桜の白い花が目立つ。白田峠から先は急に数組のパーティーに出会う。天城峠から出発されたのだろう。
八丁池に出る。案内板には古い時代の写真が載せられているが、池の上に多くの人が写っているのは凍った池の上でスケートを楽しんでいるのだろう。昭和30年の写真らしい。昔はこの池が凍るほど冬は冷え込んだ時代があったということか。池のほとりにはコンクリートの土台があるが、おそらくは写真に写っている小屋の跡と思われる。
ここで池を前にして20分近くランチ休憩をとるのだが、この長い休憩時間を後で後悔することになる。先に進むと下から登ってこられた1組のカップルのうち男性がこの見晴台は立ち寄った方がいいらしいと話しているのが聞こえた。カップルがトイレに行かれている間に見晴台に向かう。
見晴台からは確かに360度の展望が広がり、今回のルートの中で随一の展望地であった。生憎、池の北側のピークが富士山の山裾の眺望を遮っているのが残念であった。肝心の富士山の山頂には雲がかかっている。
八丁池から天城峠を目指す。道は緩やかな下りになる。登山道沿いには相変わらず山毛欅の大樹が次々と現れる。標高が下がるにつれ、周囲には木々の新緑が目立つようになり、若葉の透過光が目に鮮やかに移る。
家内は普段に比べると快足に歩いている筈なのだが、意外にもコースタイムを短縮出来ていない。どうも登山道に記されたコースタイムはかなり厳しいのではないかと思う。天城峠にたどり着いたのは13時20分。天城峠のバス停まではここから1km近くあるはずだ。家内はここからバス停まで九分では到底無理でしょうという。次のバスは50分後ではあるが、京都までの接続が悪い。
旧天城トンネルに降り立つと、苔むしたポータルを有するトンネルはなんとも趣のあるところだ。時間は26分。しかし、道標には天城峠のバス停まで0.3kmと数字が見える。0.3kmなら3分で到着出来るかもしれない。最後は日頃、走ったことのない家内も駆け足気味に坂を下る。家内がバス停に到着したのとトンネルを新天城トンネルからバスが出てきたのはほぼ同時であった。
天城峠を出発したバスは道の駅に停まるが、周囲ではシャクナゲが既に満開であった。伊豆ではこの季節でもシャクナゲが咲くのか、今年が早いのかはわからないが、関西でシャクナゲを見ることが出来るのは間違いなくもうしばらく先だろう。
修善寺の駅ではバスが少し遅れて踊り子号に間に合わなかったが、これは怪我の巧妙であった。新幹線を一本遅らせることになったせいで三島駅の駅前で美味しい生しらすやアジのたたきに舌鼓を打つことが出来たからだ。沼津港で水揚げされて間もないアジは身がしまっており、関西で食べるアジとはまるで違う魚のように思えるのだった。
ところで自分が若い頃に登った山は大概、覚えているのだが、この天城山は高校二年の時に父と登った最後の山行らしいのだが、全くに記憶にない。父親が以前の天城山の山行のことを話した時、勘違いか何か作り話をしているのではないかと疑ったのだが、父親の話は確かに辻褄があっており、どうやら私自身の記憶から天城山に登ったことがすっかり脱落しているらしい。
今回の山行で少しは以前の山行のことを思い出すかと期待していたが、その成果は全くなかった。山毛欅の樹林は期待をはるかに上回るものであったが。
私が天城山に登った時は、温暖な伊豆半島に雪が降った時でした。(-_-;)
それでも、、ピストンで何とか登って来ましたが、ペットボトルが凍り、思いで深い山行でした。
素晴らしい天気に恵まれて、良い山行でしたね。
伊豆半島で雪が降るとは何とも意外な気がしますが、そんなこともあるんですね。jionさんには失礼ながら、それは既に過去の時代の話かもしれませんが・・・
西伊豆トレッキングに続いて天城縦走路、興味深く読ませていただきました。
最終日は奥様と一緒だったのですね。
数年前に甲府の娘夫婦と孫の所へ行った帰りに、天城越えの歌詞の跡を辿った訳では無いのですが・( ´艸`)、浄蓮の滝・天城隧道・寒天橋を通り下田に宿泊し、西伊豆を廻って帰ったのを思い出しました。
記憶には残ってないけどお父様と歩いたであろう道、感慨深かったのではないでしょうか?
この日は四国の高い山も雪化粧でしたよ。
コメント有難うございます。
sea1020さんがまさか伊豆を訪れられているとは驚きですが、甲府のお嬢さんのところに行かれた帰りということであればなるほど・・・いい旅をされましたね。
伊豆は久しぶりで、西伊豆は土肥までしか訪れたことが無かったのですが、下田から西伊豆のあたりは実にいいですね。浄蓮の滝も訪れたことがないので、次は是非訪ねたいと思っております。
レコにも書きましたが、今回の天城縦走路の山毛欅の佇まいというか樹影を見て、石鎚で見た山毛欅を思い出しておりました。温暖で雨がふんだんに降る気候が共通しているせいでしょうか、石鎚と伊豆の山毛欅は似ているような気がします。
それにしてもこの季節に四国の高嶺が雪化粧とは驚きですね。それは美しいでしょうね。いつか雪の石鎚を訪れてみたいものです。
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