塩見岳−39年ぶりの再挑戦− (鳥倉ルートをピストン)


- GPS
- 11:07
- 距離
- 23.8km
- 登り
- 2,105m
- 下り
- 2,121m
コースタイム
天候 | 曇りで,ガスりぎみ。 でも,11時ごろからかなりガスが切れた。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
(436K) |
コース状況/ 危険箇所等 |
塩見小屋から上,天狗岩の登り,本峰への登りは鎖やハシゴはないものの, 岩場もあり,かなり急。 落石に注意しないといけません。 「信州まつかわ温泉 清流苑」でお風呂に入って(400円), ソースカツ丼(900円)を食べて帰りました。 |
写真
感想
ちょっと前置きが長くなりますが,勘弁してください。
3年前の夏,ザックなど登山用品をそろえて,塩見小屋に予約を入れて,1泊2日で塩見岳に登ろうとしました。しかし,その少し前からトレーニングのために走ってみると,右ヒザの具合が思わしくなく,「まず最寄りの山で、日帰り登山をやってみてからにしよう」と弱気になって,結局行きませんでした。
なぜ,塩見岳なのか。それは,ボクには塩見岳に特別な思いがあったのです。それは39年前のこと‥‥。
高校生になって,登山部に入部したボクは,その年の7月末,4泊5日の夏山合宿に参加することになりました。行き先は南アルプス。
1日目 伊那大島駅〜塩川土場(泊)
2日目 塩川土場〜三伏峠〜塩見岳〜雪投沢源頭(泊)
3日目 雪投沢源頭〜仙塩尾根〜農鳥小屋(泊)
4日目 農鳥小屋〜農鳥岳〜間ノ岳〜北岳〜白根御池(泊)
5日目 白根御池〜広河原〜甲府駅
という行程でした。最大の難関は2日目。キスリングザックに25キロ前後の荷物を背負い,三伏峠への急登を登り,塩見岳を越える,標高差1700mのハードな1日になると思われました。
実際,三伏峠への登りで1年生が2〜3人バテて,行程が遅れ,結局,塩見小屋で幕営することとなりました。ところがその夜,仲良しだった子が高熱を出してしまいました。そのまま山行を続行するわけにもいかず,そこから退却することになったのです。ただし,塩見岳には早朝,ピストンする予定でした。でも,朝食の準備がもたもたして遅れたために,顧問の先生が怒って,すぐに撤収して,塩見岳に行くことなく,そのままもと来た道を戻ったのでした。その後も,塩見小屋から見えた塩見岳の岩峰をときどき思い出しました。
この夏,やはり1泊2日で「今度こそ塩見岳へ行こう」と考えていましたが,それだと行けるのはお盆の時期に限られるので,ヤマレコを見て「ボクでも塩見岳日帰りが可能?」という気になってきました。
そしてとうとう,塩見岳へ出かけるときがやってきました。鳥倉林道のゲート前駐車場で前夜泊して,4:30 まだ薄暗い中を出発。鳥倉登山口から,シダの生い茂るカラマツ林を登っていきます。空は曇っています。豊口山からの尾根にとりつき,次第にトラバース気味に歩いて,豊口山の東側の鞍部に到着しました。登山口から50分。
そこからは,豊口山から三伏峠につづく稜線の北側斜面を,徐々に登りながら高度を上げていきました。水場でのどを潤し,しばらく歩くと,塩川ルートと合流します。39年前には,ここを登ってきたのですが,今は通行止めになっていました。ここから先は,かつて歩いたことがある道のはずです。三伏峠までしばらくジグザグに登って,7:05 三伏峠に着きました。
三伏峠から烏帽子岳方面へしばらくゆるく下っていくと,お花畑があります。39年前にそこから見た塩見岳が忘れられなかったので,行ってみたのですが,塩見岳はガスの向こうでした。おまけに,シカの食害から高山植物を守るためでしょう,お花畑はネットで囲まれていました。残念な気持ちで,三伏峠へ戻りました。
さて,あらためて塩見岳へ向かうと,まもなく三伏山へ到着。背丈を超えるハイマツと低灌木の間を通る稜線の道を下って,鞍部へ出て,本谷山へ登り返します。39年前を思い出すような風景はないかと探しながら登ってきたのですが,考えてみれば,それだけの時間が経てば,小さかった木も大きくなっているだろうし,風景も変わっていることでしょう。それでも,この本谷山の登りでは「ここで休憩したような‥‥」という,ちょっと開けた草原を見つけました。
本谷山からは,北東に稜線をゆるく下りました。ところどころに立ち枯れた木が倒れていて,またいだり,くぐったり。権右衛門山の南まで下って,今度は塩見小屋へオオシラビソの林の中を登っていきます。樹林帯を抜けて,ハイマツ帯の登りになると,まもなく塩見小屋に着きました。39年前,ここまでやってきたのです。小屋の前で休もうと思いましたが,おじさん・おばさんの集団がお昼ごはんを食べていたので,少し先で小休止。ここから目の前に大きな塩見の岩峰が見えるはずですが,ガスで見えず残念です。
天狗岩へは最初ハイマツの間を登り,さらに岩場を登りました。天狗岩からは,最後の本峰の登り。鎖場やフィックスロープ,ハシゴなどはありませんが,かなり急な岩場の登りです。前後に人はいなかったのでちょっと安心でしたが,落石をしたり,されたりしたら,かなり危険な場所もありました。
そして,10:40 とうとう塩見岳山頂(西峰)に立ちました。名古屋から来たというお兄さん2人がいて,お話をして写真を撮ってもらいました。39年前からときどき思い出しては「いつかはあの頂に‥‥」と思い続けてきた塩見岳の山頂。
一人で山頂にいると,こみあげてくるものがあって,胸がいっぱいになりました。高校で山登りを始めて,10年間ぐらいは夢中で山に行きましたが,それから25年以上,山から遠ざかっていました。再びこうして山に魅了されるようになって,若かりしころに歩き回った山々にもう一度行ってみたいと強く思うようになったのですが,その中でもっとも登ってみたかった山へ,今やっと到達したのです。
山頂にいると,ガスが次第に晴れてきました。南には荒川三山,北には白峰三山。富士山もそのてっぺんをのぞかせました。
ちょっと後ろ髪を引かれる思いで,塩見小屋まで下りてくると,39年前にボクの目に焼きついた塩見岳の岩峰がくっきりと見えました。もうこれで満足です。本谷山で,そして三伏山で塩見岳にサヨナラしました。「ありがとう。39年ぶりに温かく迎えてくれてありがとう」と。
なんだかやけに感傷的な文章になってきましたが,ボクにとっては塩見岳はそんな特別な山だったのです。積年の願いがやっとかないました。
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