長次郎谷から剱岳
- GPS
- 15:12
- 距離
- 26.9km
- 登り
- 3,223m
- 下り
- 3,155m
コースタイム
8:30 室堂発
10:40 剣御前小屋着(15分休憩)
13:05 真砂沢ロッジ着
7/19 雨
8:35 真砂沢ロッジ発
10:50 剱沢小屋着
7/20 晴れ
3:50 剱沢小屋発
4:35 長次郎谷出合い着(10分休憩)
6:00 熊の岩上部着(10分休憩)
6:55 長次郎のコル着
7:20 剱岳着(15分休憩)
9:15 剱沢小屋着
9:50 剱沢小屋発
10:40 剣御前小屋着(5分休憩)
12:30 室堂着
過去天気図(気象庁) | 2009年07月の天気図 |
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アクセス | |
予約できる山小屋 |
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写真
感想
金曜日、新宿発の深夜バスで扇沢へ移動。
一般ルートにチャレンジする四人組は、同じ駐車場発のバスで直接室堂へ向かう。Wさんと自分の我々バリエーション組は、黒部ダムからハシゴ谷乗越経由で真砂沢に入る予定だ。
7/18
扇沢に着くと、雨。
予報どおり今日は一日中悪いようで、明日の天気もあまり期待できないようだ。ハシゴ谷乗越経由のルートは沢の増水が怖いので、アルペンルートに高いお布施を払って室堂まで移動して行動を開始。
雷鳥坂の登山道は、“道”というよりも“川”。ザンザンと降り続く雨は容赦なく背中を叩き、剣御前が近づくと風も出てきて傘が吹き飛ばされそうになる。剣御前小屋の休憩室に入れてもらうと、先行していた一般ルート組の四人に出会う。小屋の混雑や、明日の天気について会話をし、グッドラックを言い交わして真砂沢ロッジを目指す我々が先行する。
剱沢に入ってしばらくすると、雨脚が弱まって気持ちが少しだけ楽になる。真砂沢ロッジに到着すると、二年前にもお世話になった小屋のご主人が親切に迎えてくれた。
テントを設営してからのんびり昼寝をし、ちょっと遅めの夕食。
6時頃になってからテント場に到着したパーティーがいた・・・と思ったら、黒部ダムからハシゴ谷乗越経由のルートを10時間かけてたどり着いたとのこと。予想通り、沢では膝上まで水が出ていて、なかなか危険な状態だったようだ。
食後に天気予報を聞いたところ、翌日の降水確率は80%/90%とのことだったので、停滞することを決定。回復するといわれている翌々日にアタックするとして、所要時間の読めないハシゴ谷乗越経由のルートは避けて、室堂経由から帰るために翌日は剱沢にベースを移すことにして眠りについた。
7/19
夜は周期的にやってくる強風で何度も目が覚めた。
パサパサという雨の音が鳴り止むことはないものの、雨はまだそこまで強くないようだ。6時過ぎまでのんびり寝てから朝食。朝食後にお茶を飲んでくつろいでいたところ、小屋のご主人が今日は午後から天気が荒れると教えてくれる。移動日とはいえ、冷たい雨に打たれるのは御免なので、テントを撤収して出発準備にかかる。
小屋のご主人に礼を行って出発し、昨日下ってきた剱沢を登り返していく。運よく雨がほとんど降っていないタイミングで出発できたものの、剱沢小屋まで半分くらいまで来たあたりで強い風が吹いてきて、豆鉄砲のような雨が顔を打つ。
雪渓の脇の岩の上に乗っている二人組がいたので、近づいて話を聞いてみると、なんと剱沢小屋から剣御前に行くところを間違えて、沢に迷い込んでしまっていたようだ。ガスっているとはいえ、180度違う方向で、登るべきところを下ってきてしまうとは・・・。アイゼンもないようなので、雪渓の脇の夏道で苦戦していたようだけど、我々にできることも少ないので後ろを振り返って無事を確認しながら、強くなってきた雨の中を歩いて剱沢小屋に到着。
今年から昔あった場所に戻り、規模を小さくして営業している剱沢小屋には、休憩場所がない。入り口を入ったところでザックをおろして休ませてもらい、テントを張る気力と天気が回復するのを待つ。
雨脚が弱まる気配がなかったので、試しに「この小屋に泊まって明日に備えるのもアリですねぇ」と提案してみたところ、強力な支持が得られたのであっさり小屋泊に切り替え。剱沢小屋は予約なしの宿泊客は泊まれないと聞いていたのだけど、お父さんの友邦さんから小屋を受け継いだばかりの3代目のご主人、新平さんの「どうにかしてみます」という優しいお言葉に甘えさせていただいた。
乾燥室で装備を乾かして受付を済ませ、お茶を飲んでのんびりしていると身体に元気が戻ってくる。暖かく、乾燥した小屋の中で、お茶を飲みながら漫画を読んでいるのは実に快適。狭く湿ったテントの中で雨の音を聞きながら明日の天気の心配をしていることを考えると、小屋に泊まることにしてよかったなぁ、としみじみ思う。
小屋に泊まることには、
- 装備を乾かす
- ゆっくり休める
- テントの撤収作業をスキップできる
といったテクニカルなメリットがあるわけだけど、一番のメリットは「英気を養える」ことに尽きるのではないかと思う。こんな天気の時は特にそうだ。
去年までの小屋と同じように、新生剱沢小屋にもシャワーがあったので、気分よく汗を流してサッパリし、夕食を食べてから眠りに着いた。今日の剱沢小屋は、一気に16,7人規模のキャンセルが出たとのことで、人も少なく快適な小屋泊まりとなった。
7/20
今日は長い一日。
長次郎谷を登って剱に登り、室堂まで戻ってから東京まで帰らねばならない。
3時に起きて、食堂で朝食を摂る。
窓を開けて空を見上げると、満天の星!
3:50に行動開始。剱沢小屋から出発する人はまだいないものの、剣山荘から出発した人であろう登山者のライトが別山尾根にチラチラと光っている。剱沢の下りをサクサクとこなして、1時間足らずで長次郎谷の出合に到着。
ここでヘルメットとピッケルを装備し、アイゼンの状態を確認してから長い登りをスタート。しばらく登っていくと、目指すべき熊の岩と左股のコルが見えてくる。傾斜が急なので、自分はジグザグに蛇行しながら高度を稼ぐ。雪が割れている箇所や、落石が集中している箇所があるので、これらは注意して迂回していく。谷と岩のスケールが日本離れしていて、前後左右を見回しては「ウ〜ム」と唸ってしまう。圧倒的な風景。
熊の岩の左側の雪渓はまだギリギリ繋がっているものの、左右が切れ落ちていて見るからに危険。右側から回り込んで、熊の岩の上部で小休止。ここは八つ峰六峰のフェース群が目と鼻の先で、クライミングノベースとして実に理想的な場所・・・なのだけど、幕営指定地ではないのでテントを張ることはできない。
快適な熊の岩上部を離れ、トラバース気味に左俣のほうへ左上していく。このあたりから雪渓の斜度が急になるので、一歩一歩注意して高度を稼ぐ。当然ながらピッケルは必須で、雪上歩行に不慣れなパーティーであれば、10本爪以上のアイゼンが欲しくなるかもしれない。長次郎のコルの手前の左側には、大きなシュルンドが口をあけていたので、右側から回り込んで長い長い雪渓登りを終了。
コルから反対側を覗くとなかなか爽快な景色。稜線の上は風が出ている。アイゼンを外し、そこそこ歩かれている北方稜線を辿っていくと剱本峰に着く。今朝出発したばかりの剱沢のカールが実に見事。槍ヶ岳や八ヶ岳、それに富士山まで見える。昨日まで我慢した分がおまけつきで返ってきたような気分。
今日登ることができて、本当によかった。
夏山シーズンの三連休にしては驚異的な人の少なさだったので、サクサクと下山して剱沢小屋で装備をピックアップして室堂まで移動。アルペンルート〜バス〜列車の乗り換えでは待たされることもなく、運よく信濃大町からのあずさに座ることもできたので、スムーズかつ快適に東京まで戻ることができた。
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明治40年に陸軍の測量隊が登頂を果たしたのも、今回と同じ7月の中ごろ。奇しくも今回と同じように、梅雨の中休みの一日だけの晴天を突いての登頂だったのだそうだ。記録に残っている初登頂と似たようなシチュエーションで登れたと思うと、なかなか感慨深いものがある。
山登りは天気や体調、登山路のコンディションやパーティーの調子などなど、様々な要素が複雑に絡んで様々な結果を生む。今回は、二日目の停滞と三日目の行動を決めて、さらに剱沢小屋に泊まったことが最終的には「吉」と出た。
剱岳、天気、頼りになるパートナーのWさんに感謝!
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