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Yamareco

記録ID: 4456531
全員に公開
沢登り
北陸

【奥越】打波川・奥楢谷から小白山(橋立峠経由で下山)

2022年07月02日(土) [日帰り]
情報量の目安: S
都道府県 福井県 岐阜県
 - 拍手
GPS
--:--
距離
16.9km
登り
1,302m
下り
1,300m

コースタイム

日帰り
山行
10:30
休憩
0:00
合計
10:30
6:30
70
駐車地
7:40
280
奥楢谷に入渓
12:20
50
13:10
70
14:20
160
橋立峠
17:00
駐車地
奥楢谷では1290m二俣の右俣(結局,ルート放棄)で1時間ほど費やしているため,その分時間がかかっています。
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2022年07月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
福井県道173号線(上小池勝原線)から中村・中洞集落跡に通じる橋を渡って,打波川支流・美濃又川沿いの林道に入る。美濃又川沿いの林道は入って800mほど進んだところで大きく崩落しており,その手前に車止めがあるためそこに駐車(駐車余地はあまりなく,2〜3台くらい)。
コース状況/
危険箇所等
【美濃又川沿いの林道(アプローチ)】
・ 中洞集落跡から800mほど入ったところで大きな崩落があり,それ以降は崩壊やヤブ化がひどいが,釣り人などの出入りがあるらしく,シングルトラックが続いていて歩行可能。
・ なお,美濃又川は大きな堰堤がいくつもできており,本流を水線沿いに歩くのはなかなか骨なので,各枝谷に入る場合は,できる限り林道を歩いて出合の付近まで行ったほうが良い。

【奥楢谷】
・ 美濃又川の右俣である三ノ又谷の左岸から流入する枝谷のうち,最も奥にある枝谷で,小白山の北西に突き上げている。
・ 遡行記録が見つからなかったのと,一本手前の枝谷である水屋谷がゴルジュを擁するなかなかの険谷のため,何か出てくるのではと期待して入ったのだが,小滝が数個出てくるだけの穏やかな谷で,沢登りと言う意味では少し物足りない谷であった(小白山への登路と言う意味では理想的かもしれない)。それでも,源頭部は岩壁に挟まれたV字状の谷が続き,標高に似合わず高山的な雰囲気でなかなか気持ちがいい。
・ ただし,標高1290m二俣の右俣(小白山に直接突き上げている枝谷)は,雪崩に磨かれたスラブ状の枯滝が連続する困難な谷で,両側の尾根も急峻で薮もかなり濃いため,同二俣は左を進路に取ることをお勧めする。

【小白山〜橋立峠の稜線(無雪期)】
・ 小白山北峰〜小白山の区間は,概ね腰丈程度の笹薮で,藪漕ぎは大したことはなく,意外にスムーズに歩行可能。眺望も終始良好。小白山にある三角点(二等・石徹白)は藪に埋もれているが,藪の背が低いのですぐに見つかる。
・ 小白山北峰〜橋立峠の区間は,背丈を越える濃密な笹薮が続き,かなりきつい藪漕ぎとなる。

【橋立峠〜美濃又川沿いの林道(下山)】
・ 橋立峠は,かつて飛騨側の石徹白と越前側の上打波を結ぶ峠道があったと言われているが,現在は深い笹薮に覆われている。峠の直下まで林道が生きていたころの記録によると,峠には木製の記念碑が立ち,岐阜県側に峠道の掘り込みが残っていたようだが,現在ではそれを探す気も起らないほどの薮の状況である(秋に来ればもう少し印象が異なるかもしれない)。
・福井県側(美濃又川側)の林道は峠まで届いておらず,踏み跡などは一切ないため,とりあえず美濃又川源頭を藪をかき分けながら谷沿いに下っていくと,途中で路盤らしきわずかな平場がでてくるため,それを右岸側に辿っていくと林道に乗ることができる。とにかく藪が濃く,うまく林道に乗れない可能性もあるため,その場合は美濃又川(三ノ又谷)を谷沿いに下降することも選択肢に入れたほうが良い。林道は最初は崩壊や藪が激しいが,しばらく下ると次第にマシになっていく。
美濃又川沿いの林道は,5,6年前まではかなり奥まで車で入れたのだが,現在は中洞集落跡から800mほど入ったところで崩落している。工事関係者か釣り人か分からないが,誰かが張ってくれたロープを伝って崩壊箇所を越える。
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美濃又川沿いの林道は,5,6年前まではかなり奥まで車で入れたのだが,現在は中洞集落跡から800mほど入ったところで崩落している。工事関係者か釣り人か分からないが,誰かが張ってくれたロープを伝って崩壊箇所を越える。
それ以降は崩壊や藪化が進んでいるものの,釣り人の往来があるらしく(実際,今回の山行時にも三ノ又谷に釣りに入るという方に出会った),踏み跡が続いており概ねスムーズに歩ける。
それ以降は崩壊や藪化が進んでいるものの,釣り人の往来があるらしく(実際,今回の山行時にも三ノ又谷に釣りに入るという方に出会った),踏み跡が続いており概ねスムーズに歩ける。
途中の石仏。橋立峠が現役だったころの名残だろうか。
途中の石仏。橋立峠が現役だったころの名残だろうか。
中の水谷(左俣)と三ノ又谷(右俣)の二俣付近にある取水施設。5,6年前まではここまで車で入れた記憶があるのだが…。今日は右俣の三ノ又谷に入る。
中の水谷(左俣)と三ノ又谷(右俣)の二俣付近にある取水施設。5,6年前まではここまで車で入れた記憶があるのだが…。今日は右俣の三ノ又谷に入る。
おやおや? あれはこれから目指す小白山では?(写真右端の山)
小白山は積雪期にしか登りに来たことがないので,緑の山が見覚えのないものに感じられる。
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おやおや? あれはこれから目指す小白山では?(写真右端の山)
小白山は積雪期にしか登りに来たことがないので,緑の山が見覚えのないものに感じられる。
林道の連続ヘアピンが始まる箇所の最初のカーブに,谷沿いに平行に続く地図にない廃林道らしき踏み跡があるため,藪をかき分けてそちらを辿っていく。
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林道の連続ヘアピンが始まる箇所の最初のカーブに,谷沿いに平行に続く地図にない廃林道らしき踏み跡があるため,藪をかき分けてそちらを辿っていく。
目指す奥楢谷の出合が近づいてきた。(写真が奥楢谷)
目指す奥楢谷の出合が近づいてきた。(写真が奥楢谷)
適当なところで廃林道を離れて谷に降り立ち,奥楢谷に入る。地図にも記されているが,いきなり堰堤が出てくるので左岸から越える。
適当なところで廃林道を離れて谷に降り立ち,奥楢谷に入る。地図にも記されているが,いきなり堰堤が出てくるので左岸から越える。
ぽつぽつと小滝が出てきて,
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ぽつぽつと小滝が出てきて,
いい感じ! と思っていると…
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いい感じ! と思っていると…
あらら,また堰堤…。都合,3つの堰堤を越えることになった。
あらら,また堰堤…。都合,3つの堰堤を越えることになった。
その後は,ガレた感じの薮っぽい沢が続く。うーむ,ちょっと期待外れか…。
その後は,ガレた感じの薮っぽい沢が続く。うーむ,ちょっと期待外れか…。
両岸の緑が濃いのが救い。さすがにこの辺りは原生的な雰囲気がみなぎっている。
両岸の緑が濃いのが救い。さすがにこの辺りは原生的な雰囲気がみなぎっている。
振り向けば経ヶ岳。雪渓も残っているね。
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振り向けば経ヶ岳。雪渓も残っているね。
それでも標高を上げていくと,両岸に高い岩壁が出てきて,その下には広い草付き斜面が広がり,高山的な雰囲気となってきた。
それでも標高を上げていくと,両岸に高い岩壁が出てきて,その下には広い草付き斜面が広がり,高山的な雰囲気となってきた。
おっ,雪渓の残骸だ! 今冬は雪が多かったので,もしかしたら出てくるかな,と警戒していたのだが,やっぱり出てきた。
おっ,雪渓の残骸だ! 今冬は雪が多かったので,もしかしたら出てくるかな,と警戒していたのだが,やっぱり出てきた。
雪解けが遅かったせいか,雪渓の近くには,遅ればせながら生えてきたウドや,
雪解けが遅かったせいか,雪渓の近くには,遅ればせながら生えてきたウドや,
今さら花を咲かせているニリンソウの姿が目立った。
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今さら花を咲かせているニリンソウの姿が目立った。
さて,雪渓の残骸の残る1290m二俣から,まずは小白山山頂に直接続いている右俣に入る。小白山の険しい北面にダイレクトに突き上げる沢なので,おそらくここから急に困難になるだろうと予想していた。
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さて,雪渓の残骸の残る1290m二俣から,まずは小白山山頂に直接続いている右俣に入る。小白山の険しい北面にダイレクトに突き上げる沢なので,おそらくここから急に困難になるだろうと予想していた。
いきなり予想が的中! 右俣に入ってすぐ,行く手を手のつけようのないツルツルスラブと草付きに阻まれた。
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いきなり予想が的中! 右俣に入ってすぐ,行く手を手のつけようのないツルツルスラブと草付きに阻まれた。
ツルツルスラブにかかる枯滝。恐らく,この谷は雪崩の通り道なのだろう,どこを見回しても,手掛かりのないスラブか,急峻な草付きしか見当たらない…
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ツルツルスラブにかかる枯滝。恐らく,この谷は雪崩の通り道なのだろう,どこを見回しても,手掛かりのないスラブか,急峻な草付きしか見当たらない…
しかたなく右岸の泥壁を強引に登り,支尾根から巻きに入るが,これがかなり急峻なうえに,藪がかなり濃い。
しかたなく右岸の泥壁を強引に登り,支尾根から巻きに入るが,これがかなり急峻なうえに,藪がかなり濃い。
むせかえるような原生的な緑だ。さすがにこんな所には人は入らないだろう…。
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むせかえるような原生的な緑だ。さすがにこんな所には人は入らないだろう…。
しばらく支尾根を登ってみたが,急峻過ぎて谷に戻れないうえ,谷自体も小白山北面の岩壁に吸い込まれるように消えているのが望見され,このルートから稜線に至るのは時間がかかりすぎると判断,ルートを放棄して1290m二俣まで戻ることに。
しばらく支尾根を登ってみたが,急峻過ぎて谷に戻れないうえ,谷自体も小白山北面の岩壁に吸い込まれるように消えているのが望見され,このルートから稜線に至るのは時間がかかりすぎると判断,ルートを放棄して1290m二俣まで戻ることに。
今度は1290m二俣の左俣に望みをかける。しかしこっちも,いきなり雪渓くぐりから始まる。登山で最もやりたくないアトラクションの一つだ。
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今度は1290m二俣の左俣に望みをかける。しかしこっちも,いきなり雪渓くぐりから始まる。登山で最もやりたくないアトラクションの一つだ。
いつ崩壊するか分からない雪渓トンネルの内部に恐る恐る潜入。頭上から滴り落ちる雪解け水が冷たく,思わず首をすくめながら出口へと駆け抜ける。
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いつ崩壊するか分からない雪渓トンネルの内部に恐る恐る潜入。頭上から滴り落ちる雪解け水が冷たく,思わず首をすくめながら出口へと駆け抜ける。
雪渓トンネルを抜けた。振り返ってみると,結構薄くてヤバい雪渓だった。
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雪渓トンネルを抜けた。振り返ってみると,結構薄くてヤバい雪渓だった。
左俣も右俣と同じく急激に斜度が上がり,いくつか小滝が出てくるが,ありがたいことにどれも手掛かりが豊富で直登可能。
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左俣も右俣と同じく急激に斜度が上がり,いくつか小滝が出てくるが,ありがたいことにどれも手掛かりが豊富で直登可能。
水が細くなり,源頭が近づいてきた。両岸は高い岩壁と草付きのV字谷となり,まるで高山の谷のようだ。この稜線の豊富な積雪が,このような景観の谷を作るのだろう。
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水が細くなり,源頭が近づいてきた。両岸は高い岩壁と草付きのV字谷となり,まるで高山の谷のようだ。この稜線の豊富な積雪が,このような景観の谷を作るのだろう。
登ってきた谷を振り返る。
登ってきた谷を振り返る。
稜線の直前で,ついに藪に突入。
稜線の直前で,ついに藪に突入。
稜線に上がるまでは,背丈を越える濃密な笹薮の急登で,かなり大変。薮尾根ではままあるように,稜線に上がれば藪がましになることを期待して,笹と格闘しながら登っていく。
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稜線に上がるまでは,背丈を越える濃密な笹薮の急登で,かなり大変。薮尾根ではままあるように,稜線に上がれば藪がましになることを期待して,笹と格闘しながら登っていく。
ついに稜線に立った。思った通り,稜線上は笹薮は腰丈程度で,急に楽になった。そしてこの大展望! 写真は小白山方面。
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ついに稜線に立った。思った通り,稜線上は笹薮は腰丈程度で,急に楽になった。そしてこの大展望! 写真は小白山方面。
岐阜側の山々。大日ヶ岳や鷲ヶ岳の姿がくっきりと。
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岐阜側の山々。大日ヶ岳や鷲ヶ岳の姿がくっきりと。
北側はすぐそこに小白山北峰。
2
北側はすぐそこに小白山北峰。
その更に北には,青々とした野伏ヶ岳と,残雪でまだらになった白山の姿が。
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その更に北には,青々とした野伏ヶ岳と,残雪でまだらになった白山の姿が。
そして足元では,開きかけたオオヤマレンゲのつぼみがひっそりと出迎えてくれた。
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そして足元では,開きかけたオオヤマレンゲのつぼみがひっそりと出迎えてくれた。
突然開けた360°の眺望に感動したのち,まずは小白山を目指す。笹薮は腰丈程度で歩きやすい。これまで,この稜線は積雪期にしか歩いたことがなかったので,見覚えがあるようなないような緑の稜線が不思議だ。
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突然開けた360°の眺望に感動したのち,まずは小白山を目指す。笹薮は腰丈程度で歩きやすい。これまで,この稜線は積雪期にしか歩いたことがなかったので,見覚えがあるようなないような緑の稜線が不思議だ。
振り返ると,野伏ヶ岳と白山が常に聳えている。
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振り返ると,野伏ヶ岳と白山が常に聳えている。
この稜線はササユリの花が多く,一面の笹の緑の中に時折清楚な白やピンクの色彩をちりばめていて,目を楽しませてくれた。
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この稜線はササユリの花が多く,一面の笹の緑の中に時折清楚な白やピンクの色彩をちりばめていて,目を楽しませてくれた。
ここにもササユリ。
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ここにもササユリ。
思った以上に速いペースで進むことができ,小白山の山頂はすぐに近づいてきた。
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思った以上に速いペースで進むことができ,小白山の山頂はすぐに近づいてきた。
そしてついに小白山山頂に到着。二等・石徹白の三角点にご挨拶。通常は積雪期に登られる山なので,けっこうレアな三角点と思われます。当然,山名板などは設置されていなかった。
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そしてついに小白山山頂に到着。二等・石徹白の三角点にご挨拶。通常は積雪期に登られる山なので,けっこうレアな三角点と思われます。当然,山名板などは設置されていなかった。
小白山山頂は藪の背が低く,360°の眺望を楽しめる。写真は東側の枇杷倉山方面。
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小白山山頂は藪の背が低く,360°の眺望を楽しめる。写真は東側の枇杷倉山方面。
冬季にはナイフリッジとなる小白山の西側直下の稜線。無雪期の今見ても,確かに北側斜面が切り立っており,険しそうな稜線だ。(登りで放棄した1290m二俣の右俣は,このナイフリッジ箇所に突き上げている。そりゃ険しいわけだ…)
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冬季にはナイフリッジとなる小白山の西側直下の稜線。無雪期の今見ても,確かに北側斜面が切り立っており,険しそうな稜線だ。(登りで放棄した1290m二俣の右俣は,このナイフリッジ箇所に突き上げている。そりゃ険しいわけだ…)
枇杷倉山遠望。2年前の3月に登ったなぁ。懐かしい…。
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枇杷倉山遠望。2年前の3月に登ったなぁ。懐かしい…。
更にその向こうの桂島山と木無山の姿。木無山ってこのあたりから見ると結構形がいい山なんだよなぁ。
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更にその向こうの桂島山と木無山の姿。木無山ってこのあたりから見ると結構形がいい山なんだよなぁ。
登ってきた奥楢谷と,その向こうに広がる経ヶ岳から赤兎山にかけての稜線。
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登ってきた奥楢谷と,その向こうに広がる経ヶ岳から赤兎山にかけての稜線。
北側の眺め。手前から,小白山北峰,野伏ヶ岳,そして遠景は白山。
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北側の眺め。手前から,小白山北峰,野伏ヶ岳,そして遠景は白山。
白山のアップ。別山と,その奥に御前ヶ峰。この時期でも残雪が多いのはさすが白山だ。
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白山のアップ。別山と,その奥に御前ヶ峰。この時期でも残雪が多いのはさすが白山だ。
梅雨明けの夏雲が藪の稜線の上を悠然と流れていく。炎天下になると思われたが,稜線上は涼しい風が吹き渡り,意外に快適。
梅雨明けの夏雲が藪の稜線の上を悠然と流れていく。炎天下になると思われたが,稜線上は涼しい風が吹き渡り,意外に快適。
この山頂でも,一輪のササユリの花が風に揺れていた。
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この山頂でも,一輪のササユリの花が風に揺れていた。
誰もいない(いるわけもない)静かな山頂で眺望を楽しんだのち,再び笹薮を分けて稜線を引き返す。
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誰もいない(いるわけもない)静かな山頂で眺望を楽しんだのち,再び笹薮を分けて稜線を引き返す。
当初計画では再び奥楢谷を下降して往路をピストンするつもりでいたが,意外に藪が低く歩きやすいので,橋立峠まで足を延ばすことにした(この判断に,このあとちょっと後悔することになる…)。小白山北峰はすぐに近づいてきた。
当初計画では再び奥楢谷を下降して往路をピストンするつもりでいたが,意外に藪が低く歩きやすいので,橋立峠まで足を延ばすことにした(この判断に,このあとちょっと後悔することになる…)。小白山北峰はすぐに近づいてきた。
小白山北峰。一面の笹薮以外には何もない山頂。
小白山北峰。一面の笹薮以外には何もない山頂。
北峰直下の草原で何かが動いたと思ったら,カモシカだった。カモシカはその場に佇んだまま,突然現れた妙な人間を長いこと見つめていた。
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北峰直下の草原で何かが動いたと思ったら,カモシカだった。カモシカはその場に佇んだまま,突然現れた妙な人間を長いこと見つめていた。
ここから眼下に見える橋立峠へと急降下していく。
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ここから眼下に見える橋立峠へと急降下していく。
んん? なんか急に笹薮の背が高くなってきたぞ…
んん? なんか急に笹薮の背が高くなってきたぞ…
下降を続けるうち,藪が急激に濃くなり,背丈を越える濃密な笹の海となった。どうやら藪が薄いのは,小白山付近だけらしい。こんな状況なら大人しく往路の奥楢谷を下降すればよかったと軽く後悔したが,もう遅い。腹を決めて橋立峠へと藪漕ぎを続ける。
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下降を続けるうち,藪が急激に濃くなり,背丈を越える濃密な笹の海となった。どうやら藪が薄いのは,小白山付近だけらしい。こんな状況なら大人しく往路の奥楢谷を下降すればよかったと軽く後悔したが,もう遅い。腹を決めて橋立峠へと藪漕ぎを続ける。
笹でアップアップの状態。わずかに頭だけ見える野伏ヶ岳の南峰を目印に進む。
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笹でアップアップの状態。わずかに頭だけ見える野伏ヶ岳の南峰を目印に進む。
橋立峠がだいぶ近づいてきた。下り基調にもかかわらず,笹を押しのけるのにかなり体力を使う。それほどの頑強な笹薮だ。
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橋立峠がだいぶ近づいてきた。下り基調にもかかわらず,笹を押しのけるのにかなり体力を使う。それほどの頑強な笹薮だ。
岐阜県側には,積雪期に野伏ヶ岳への登路となる和田山牧場跡が見える。
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岐阜県側には,積雪期に野伏ヶ岳への登路となる和田山牧場跡が見える。
福井県側の美濃又川沿源頭の様子。急峻なガレ谷が広がっている。谷の右岸に付いている林道跡(かつて治山工事のために付けられたもの)に峠から直接乗れないか期待していたのだが,林道跡は明らかに峠のかなり手前で途切れているように見える。これは美濃又川(三ノ又谷)の下降も覚悟したほうがよさそうだな…。
福井県側の美濃又川沿源頭の様子。急峻なガレ谷が広がっている。谷の右岸に付いている林道跡(かつて治山工事のために付けられたもの)に峠から直接乗れないか期待していたのだが,林道跡は明らかに峠のかなり手前で途切れているように見える。これは美濃又川(三ノ又谷)の下降も覚悟したほうがよさそうだな…。
橋立峠に到着。往時は飛騨の石徹白と越前の上打波を結んでいた古い峠だ。何か峠の痕跡が残っていないか期待していたのだが,目の前には一面の深い笹薮が揺れているだけだ。
(20年ほど前の古い記録では,木製の記念碑や峠道の掘り込みが残っていることが記されているが,それを探す気にもなれないほどの薮であった。)
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橋立峠に到着。往時は飛騨の石徹白と越前の上打波を結んでいた古い峠だ。何か峠の痕跡が残っていないか期待していたのだが,目の前には一面の深い笹薮が揺れているだけだ。
(20年ほど前の古い記録では,木製の記念碑や峠道の掘り込みが残っていることが記されているが,それを探す気にもなれないほどの薮であった。)
残念ながら,林道跡は峠に達していないことが明らかになったため,林道経由の下山をあきらめ,美濃又川(三ノ又谷)を直接下降すべく,深い藪をかき分けて谷の源頭部を下降していく。
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残念ながら,林道跡は峠に達していないことが明らかになったため,林道経由の下山をあきらめ,美濃又川(三ノ又谷)を直接下降すべく,深い藪をかき分けて谷の源頭部を下降していく。
しばらく谷沿いに下降していくと,途中でわずかな平場に行き当たった。これは怪しい…まさか路盤跡では? その平場に沿って右岸方向に巻いていくと…
しばらく谷沿いに下降していくと,途中でわずかな平場に行き当たった。これは怪しい…まさか路盤跡では? その平場に沿って右岸方向に巻いていくと…
藪の中からひょっこりカーブミラーが出現! 推測は的中,やはりヤブに埋もれた林道跡だったのだ。
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藪の中からひょっこりカーブミラーが出現! 推測は的中,やはりヤブに埋もれた林道跡だったのだ。
その後は藪をかき分けつつ林道跡をたどっていくと,次第に路盤も復活し始めて,一安心。
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その後は藪をかき分けつつ林道跡をたどっていくと,次第に路盤も復活し始めて,一安心。
荒れ果てた林道跡が続くが,皮肉にも周囲の緑は美しい。
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荒れ果てた林道跡が続くが,皮肉にも周囲の緑は美しい。
振り返ると,今日辿ってきた小白山の稜線が,夏空の下,眩しいほどの緑に輝いていた。
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振り返ると,今日辿ってきた小白山の稜線が,夏空の下,眩しいほどの緑に輝いていた。

装備

備考 ・沢足袋使用。ロープなど沢登りの基本装備は携行したが,使う機会はなかった。

感想

 奥越の中でも,打波川流域の山々は特に奥深いイメージがある。その稜線が遙か白山までつながっているという意識が,そのように感じさせるのだろうか。また,左岸側の願教寺山から木無山にかけての稜線は,深い藪に包まれ,まともな登山道すらないという事実も,遠い山々という感を深めているのだろう(特に,願教寺山から枇杷倉山にかけては,藪の埋まる積雪期ですら福井県側から登る人がほとんどないので,岐阜の山・石徹白の山としてのイメージのほうが強いかもしれない)。
 この流域の谷として沢登りの記録をコンスタントに見るのは,三ノ峰付近に突き上げる剣ヶ岩谷や,源流のカサバノ谷,ナメ床が美しい桧谷・よろぐろ谷ぐらいだろうか。他には支流の美濃又川の枝谷である草池谷や水屋谷がゴルジュや連瀑を擁する険谷として紹介されている。今回歩いたのも,この美濃又川の右俣である三ノ又谷の一番奥の枝谷である奥楢谷で,ネット上はもちろん,福井県の主な谷をほぼ網羅していると言ってもいい福井岳人倶楽部の「越の谷」にも記録がないことに惹かれて入渓したものだった。通常は積雪期に登られる奥深い山である小白山に,ほぼ直接詰め上げることができるというのも魅力的に思われた。
 藪に呑まれつつある廃林道を延々と辿って入渓した奥楢谷は,残念ながら小滝がわずかに出てくるだけの穏やかな谷で,沢登りと言う点では少し物足りない谷であった(登攀力のある人なら1290m右俣は面白いかもしれないが,水の枯れた藪の壁のような谷で,わざわざ登る価値があるかは微妙)。それでも源頭部は岩壁と草付きに挟まれたV字谷となり,雪渓トンネルも出現するなど,標高に似合わない高山的な表情を見せる。乗り上げた小白山の稜線は意外にも藪の背が低く,360°の素晴らしい眺望を楽しみながら歩くことができた。小白山にはこれまで2回ほど登っているがいずれも積雪期で,一面の笹薮が風に波打つ緑の稜線は,夢の中に時々出てくるよく知っているはずなのになかなか思い出せない場所のような,不思議な眺めに感じられた。
 夏雲がながれる青空の下,ササユリやオオヤマレンゲの花咲く藪の山頂に立って四囲の山々をただぼんやりと眺めていると,少しだけ幸福感を感じている自分に気づく。深い藪の中でひとり佇んでいるときに感じる幸福感,そういう奇妙な幸せをどう名付けたらよいのか,私にはよく分からないけれど。

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コメント

こちらにも入ってはったんすね

すごっ
2023/6/26 12:41
ちゅきさん
沢自体はちょっと残念でしたが、小白山の周辺の稜線は笹が低くて割と普通に歩けることが分かっただけでもめっけ物でした!
2023/6/26 23:15
hillwandererさん 小白山山頂付近の稜線は無雪期にも行ったことありますけど…、笹の高さは腹か胸くらいまでヤったかな。まぁ確かに頭まであるところよりは歩き易いすね。普通に…、さすがっすー。おみそれしやしたー
2023/6/27 7:58
ちゅきさん
俵谷から登られてたんですね〜。さすが!
小白山のヤブ、山頂に近づくとちょっと濃くなるんですが、北峰と南峰の間の稜線は腰丈で結構歩きやすかった記憶があります。もちろん、登山道に比べたらめちゃ歩きにくいですけどね〜😅
2023/6/27 22:41
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