茶臼岳-易老岳-光岳-加加森山-池口岳
- GPS
- 72:00
- 距離
- 29.0km
- 登り
- 2,785m
- 下り
- 2,873m
コースタイム
21日 横窪沢小屋5:30-茶臼小屋7:20(休憩)-茶臼岳8:55-易老岳11:50-光小屋13:50
22日 荒天のため光小屋に停滞 光岳往復、イザルガ岳往復
23日 光小屋4:50-光岳5:10-加加森山7:45-ジャンクション9:25-池口岳(北峰)9:45-ジャンクション10:05-池口岳登山口13:45-池口集落14:00
天候 | 20日 晴れ 21日 霧 22日 雨と強風、夕方に晴れ間 23日 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2009年08月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
■ 20日 畑薙第一ダムつり橋 〜 横窪沢小屋 ・この区間で危険な箇所や分かり難い箇所はありません。 ・畑薙第一ダムで静鉄バスを降りて、そこからつり橋まで車道を歩きます。 ・畑薙第一ダムのつり橋に登山ポストがあります。 ・茶臼小屋までの道には、数箇所に水場があり、水には不自由しません。 ・ウソッコ沢の避難小屋は、使えないことはないと思いますがボロです。 ・1泊目は、横窪沢小屋のテント場を利用しました。この日は利用者が他に1人しかいなかったこともあり、とても静かで快適でした ■ 21日 横窪沢小屋 〜 光小屋 ・この区間で危険な箇所や分かり難い箇所はありません。 ・この日は天気が下り坂だったため、茶臼小屋に立ち寄り情報収集しました。茶臼岳の稜線に出ると強風だがその先の樹林帯に入れば風は弱くなるので問題ないだろうとのことでした。実際そのとおりで、稜線に出た途端、強い風と霧でびしょびしょに。 ・茶臼岳から下って、樹林帯のゆるやかな道を行きます。南アルプスらしい森の中の道です。 ・光岳方面へは、最後にゴーロの登りが待っています。ここを登りきったあたりに水場があります。エアリアでは枯れていることがあると記載されていますが、十分に湧き出ていました。 ・水場の先からは、木道が敷かれており、イザルガ岳の分岐を過ぎると光小屋が見えてきます。このあたりは日本で最南端の森林限界だそうで、緩やかな斜面に広がるハイマツの風景がこれまでの疲れを消し飛ばしてくれます。 ・光小屋は、このハイマツを見下ろすように建っており、実際、小屋の窓からは木道を歩いて小屋に向かってくる登山者が良く見えます。 ・光小屋には水場はありません。下り5分、登り15分のところに水場があるそうですが、最近はそこまで行く人は少数で道も荒れ気味だそうです。小屋はポンプで水を汲み上げており、その水を塩素消毒して使用しているそうです。小屋の食料(カップめんなど)を購入した人は分けてもらえるみたいです。 ・小屋のトイレ事情はちょっと複雑ですが、小屋のご主人が1人1人丁寧に説明してくれます。 ・私はテント縦走なので関係無かったのですが、小屋に泊まる場合、食事付には条件があるので注意が必要です。50歳以上の3人以下のパーティで午後3時までに申し出た人に権利があるそうです。 ・小屋のすぐそばにあるテント場は狭くて、6張程度でいっぱいになります。ただし、もう少し下に広い場所があり、トイレ利用は不便になるもののゆったりしたテント泊ができそうです。 ■ 22日 光小屋に停滞 ・午後には雨が止んだので、光石までの往復とイザルガ岳までの往復をしました。霧でほとんど何も見えませんでした。 ■ 23日 光小屋 〜 池口集落 ・この日がハイライトなので、好天を期待して出発。光岳までは昨日も往復しているので朝の薄暗い中でもだいじょうぶ。 ・光岳山頂から少し先に <「テカリ石」 | 「加加森山、池口岳」 > という手書きの標識を見て、「加加森山、池口岳」のほうへ進みます。ここからは、一般の登山道とは様相が少し変わってきます。 ・道を覆うハイマツをかき分け下り道を進みます。光小屋のご主人から、この先に迷いやすい箇所があるというアドバイスをもらっていたので注意しながら進みます。そこを過ぎればあとは尾根伝いに進めばよいとのことでした。 ・ときおり踏み跡が不明瞭になりますが、アドバイスどおりに尾根をはずさないように進みます。この日は好天に恵まれ、その先のピークや近隣の地形も見て取れたため、特に難しくはありませんでした。 ・加加森山は、木に覆われ展望の利かない山頂で目立たない存在です。ただし、このピークに到達したら、直進せずに南へ進路を変えなければいけません。標識があるのでわかりますが、霧が濃いときなどは注意が必要でしょう。 ・加加森山からジャンクションまでの道も懐の深さを感じさせるとても良い道です。 ・以前難所とされていた大倒木帯は、すでに倒木を切断するなどの処置が施されており、すんなり通過することができます。 ・ジャンクションの手前にやせ尾根がありますが、それほど危険な感じではありません。 ・ジャンクションには標識があります。そのまま進むと池口集落への道、左に上っていく道に進むと池口岳です。 ・ジャンクションから池口岳(北峰)へは20分ほどで到着します。ザックを置いてカラ身なので足取りも軽くあっという間に山頂です。山頂は展望こそ無いものの、明るく穏やかな雰囲気です。南側にちょっと下ると、南峰が見えます。 ・ジャンクションからは、長い下りになります。ここからは不明瞭な箇所はありません。 ・はじめのほうに急な下りもありますが、危険ではありません。 ・長いけど快適な下りのため、ついつい飛ばしてしまいます。飛ばしすぎには注意が必要でしょう。 ・登山口は、林道におりたったところにあります。ここから集落へは約15分の道のりです。 ・集落にたどり着くと、そこに登山ポストがあります。携帯がつながるので、ここでタクシーを呼びました。行き先は「かぐらの湯」です。 |
写真
感想
北アルプスは岩の山。南アルプスは森の山。明るく開放的な北に比べて南は深淵な雰囲気が漂う。生命感が溢れている。そうした南アルプスの中でもアプローチが悪いせいか南部、特に光岳には神聖なイメージがある。勝手な思い込みかもしれない。でも行って確かめてみたい。そうした思いから、長いこと光岳に強い関心を持っていた。
問題は3つ。体力・工程・天候。体力は、ここ半年強、自宅近隣の山々を歩くことにより徐々に付けていった。工程の問題は、一般登山道のみで見ると、易老渡または畑薙第一ダムからのピストンしかないように見えたことであったが、各種情報を収集したところ光岳の先に魅力的なルートがあることがわかった。あとは天候だけだ。
そして条件は整った。
長らく夢見ていた光岳にこの夏、足を踏み入れることを決意した。
体力はある程度付いてきてはいたものの、4日間のテント縦走ともなれば、荷物の重さも気にかかる。できるだけコンパクトにまとめ、MAX15キロ以内に収めた。
南アルプスはアプローチが長い。自宅のある横浜からは、電車で3時間バスで3時間かけ、ようやく畑薙第一ダムに到着である。そこからつり橋までは、約1時間の徒歩を覚悟していたが、たまたま通りかかった観光協会の方がマイクロバスに乗せてくださり、時間と体力の消耗を抑えることができた。出だしから幸運に恵まれ、大変感謝である。
約20年前、同様のアプローチで、茶臼岳から赤石岳方面へ縦走したことがある。しかし、つり橋から茶臼岳の工程は、すっかりアタマから消えうせている。今回はよく噛み締めながら歩くことにした。さすが南アルプス。とても良い道である。
1泊目は、横窪沢小屋でテント泊することに決めていた。ここは水が豊富で距離的にもちょうど良い。小屋に出向きテント泊の料金500円を支払い早速テントを設営した。よく考えてみれば、テントを張るのも約20年ぶりだ。
この日は日の入りとともに一度は眠りに付いたが、22時ごろふと目を覚まし、テントの外を見やると、満天の星空が山を覆っていた。テントから顔を出し、時間が経つのも忘れ星を眺めた。天の川を見るのは何年ぶりだろう。どの星も明るいので星座が読み取りにくいが、慣れてくると頭上に白鳥の姿が浮かんだ。2〜3分に1度、流れ星が流れる。こうして幸運に恵まれ続けた初日の工程が終った。
朝目が覚めると期待していた快晴は無くなっていた。
それでも特に問題は無い。茶臼小屋まで行けば水場があるので今日は1Lだけ水筒に水を入れ歩き始める。徐々に霧が濃くなり風が出てくる。茶臼小屋に行くといくつかのテントが風にあおられ、なびいている。
小屋に立寄り情報を収集すると、稜線に出ると風当たりはかなり強くなるが、茶臼岳山頂から下っていくと樹林帯に入り風は治まるとのこと。せっかくの茶臼岳からの展望は期待できないが仕方が無い。仁田岳もあきらめた。水筒を満タンにして出発する。
稜線に出ると、強風が霧をたたきつけてきて、レインパーカがバタバタと音をたてる。
山頂付近で、そんな状況を慰めるかのように雷鳥が出迎えてくれた。親子3羽の雷鳥は登山道を山頂に向かってトコトコと歩いていく。ときどき岩の上に止まりポーズをとる。雷鳥にとっては荒天のうちに入らないのだろう。
茶臼岳山頂から下っていくと樹林帯に入り風はうそのように治まる。
ここからは森のなかの散歩道だ。霧が深層の趣きをさらに深める。雰囲気は良いのだが、これでは写真がうまく写らない。
三吉平というところからは、ゴーロの登りが始まる。谷間の薄暗さからはすぐに抜け出す。トリカブトの花が美しい。登り終えるあたりに水場がある。はじめに表れる水場標識のところには、水は出ていない。さらに先に進むと、しっかり湧き出ている水場がある。良い水場だ。
水場のすぐ先から木道となり、イザルガ岳への分岐に出る。相変わらずの霧なのでイザルガ岳もパスする。ハイマツの覆うゆるりとした地形のセンジガ原を木道にのって進む。また雷鳥がいる。しかも木道を歩いている。1mくらいまで近づいても逃げない。
霧の向こうに光小屋が見えてきた。
小屋に入りテント泊であるとこを告げる。こちらは400円だった。テントを張る場所やトイレの使い方を教わる。翌日の行き先が池口岳であることを伝えると、小屋のご主人が注意箇所などを詳しく教えてくれた。
とりあえずテントを張り、くつろぐ。また星空を見る事ができるだろうか。淡い期待を抱きながら眠りに付くが、この夜から天気がさらに悪化することになる。
星空どころか強風と雨だ。テントでこの状況はつらい。テント撤収が大変だからだ。
朝になっても状況は変わらなかった。むしろひどくなっている。時々雨が止むので、そのわずかな間隙をぬってテントを撤収する。撤収するや否やまた雨が降り出した。急いで小屋に避難する。
結局、この日は小屋に停滞。午前中は窓から暴風雨を眺めていた。光岳から池口岳は、今回の山行のハイライトであり、このような天候の中進むのはあまりにも惜しい。昨日、茶臼岳の展望を諦めたこともあるので、ここは諦めきれない。
午後からは、雨が止んだので光石まで往復した。霧は相変わらずなので展望は無い。
続いてイザルガ岳を往復した。このあたりから北の方面が明るくなってきた。風は相変わらず強く、低い雲が勢いよく流れていく。
夕方になり晴れ間が見えてきた。明日はいけそうだ。
当初予定では、ザラナギ平でもう1泊して池口集落へ下山しようと考えていた。ところが昨日停滞してしまったので、いっきに池口集落まで下山するよう工程を変更することにした。今日は晴天だ。
ます、光岳の展望台から昨日はまったく見えなかった光石を見る。今日は良く見える。しかし、朝早すぎのため日の光が反射することはなく印象が薄い。
光石には向かわず、加加森山・池口岳方面へ向かう。ここからは一般登山道から外れたルートになる。踏み跡は概ねあるのだが、所々でハイマツが道を覆い隠し、それを掻き分けて進むことになる。長袖の服と手袋が必要だ。
光小屋のご主人から聞いた注意箇所を通り過ぎると明瞭な尾根に乗る。ここからは尾根を外さないように歩けばよい。ただし小さなアップダウンがあるので下りのときに次のピークを目指しながら進むようにする。
雰囲気は最高だ。樹間の先には、どこを見ても山々々・・・。深いところだ。
一人だけだと予想していたのだが、M大学の山岳部が同じルートで下山することを昨日知った。きっと彼らのほうが早く出発し、どんどん先に行くだろうと踏んで、あとからゆっくり行くことに決めていた。
ところが、M大山岳部の進みが思いのほか遅い。ときどき先方で大きな声が聞こえる。せっかくの静寂が失われる。1年生を叱咤しているようだ。そちらは訓練なのかもしれないが、こちらは今日が本番なのだ。もうちょっと静かにしてほしかった。
ジャンクションで池口岳から降りてきたM大山岳部に出会う。自分も池口岳をカラ身でピストンする。池口岳は北峰と南峰があるが、今回は時間的な都合上、北峰だけにする。北峰は展望こそ無いものの明るくゆったりとした山頂だ。北側に少し下りると南峰が見える。笹の平らしきところも見える。あそこでビバークして星空を眺めるのが、今後の目標の一つになった。
ジャンクションからの下りは長いと聞いていた。実際長かったが、南アルプスらしい森の雰囲気は十分に楽しめ、退屈することは無い。途中、休憩していたM大山岳部を追い越し、快適な山道をスピードアップして下っていく。思ったより早く登山口まで降りてきた。
集落のあたりでタクシーを呼ぶ。電話番号は光小屋で教えてもらっておいた。
行き先は「かぐらの湯」。ゆっくり温泉につかり、明日の朝帰路に着こう。
念願だった光岳。奥深い南アルプスの深部にあり、簡単にいけるところではないが、ぜひ、また訪れたい。
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