武尊山
- GPS
- 80:00
- 距離
- 28.7km
- 登り
- 1,044m
- 下り
- 1,709m
アクセス |
---|
感想
12/29 快晴 武尊田代へ
2001年も暮れにさしかかり何かと忙しかったこの年焚火でもしながらひとり優雅に振り返ろうと思い山へと向かった。上毛高原駅からローカルバスに乗り土出温泉のバス停に降り立つ。尾瀬岩倉スキー場までは一般車の排ガスに苦しみながらすきーを担いで黙々と歩く。ゴンドラに乗車しスキー場のてっぺんまで(10:30)。シールを着けてすぐ隣の尾根に取り付く。快晴。左に武尊山、右に燧ヶ岳、尾瀬ヶ原、背後には皇海山、日光白根山がみえている。
針葉樹の密な尾根をシール利かせて登り切り、西山からの尾根の分岐を確認した。そこからテレマークで武尊田代へと滑る。久しぶりのスキーだったので何度も転倒した。
武尊田代は大学時代に行き慣れた十勝の山裾のような樹林帯の広がりをイメージしていたが実際には針葉樹が1本も無く灌木が密生していた。上部の尾根筋には針葉樹のコロニーが確認できたので今宵の天場はそこに決めた。磁石で方向を確かめながら延々とラッセルをすすめる。反対側に落ち込む崖を確認し一人用のツエルトを張る。正面に武尊山を望みながら予定通りの焚火を愉しめて満足。武尊山には次第に傘雲がかかり明日からの荒天を告げている。
12/30 曇りのち雪 武尊山アタック
1時間のラッセルで避難小屋に着いた。避難小屋には3人のパーティが宿泊していた。彼らは悪天の為この日の行動は取りやめるそうだ。小屋のある場所からは緩い傾斜の尾根をスキーで快調に登る。登るにつれて尾根ははっきりしなくなりオニギリ型の岩峰の基部に着く。細かい板状節理の発達した溶岩流だ。この基部にスキーをデポしアイゼンにはき替え武尊山の西峰を目指す。小雪で視界は利かない。ルートはバリズボの所が多く苦労したがまもなく西峰(11:30)。避難小屋から4時間かかった。天気は弱い地吹雪。視界は相変わらず利かない。
帰りのスキーは岩塔の基部からやや先まで行ったところまでは快調だったが後半はアップダウンが続きあまり快調とは言えない。いきしに木にくくりつけておいた寝袋等のデポを回収し小屋で珈琲を飲んだ後再び武尊田代へ滑り降りた。明日は一気に至仏まで行ってしまおうと考えて西山をねぐり奈良俣側への林道へ滑り込む。今宵は林道脇の灌木斜面。
12/31 雪 終日ラッセル
昨晩から雪がしんしんと降り積もった。なんと1m積もった。ここからスキー場へ引き返す選択肢もあったが林道沿いに進めば今日中になんとか峠を越え下山も可能であろうと考えた。しかし甘い見通しであった。そもそもテレマークスキーはいつも使っていた山スキーのビンディングと比べて踵の上がりが悪く深雪のラッセル特に重たい雪のラッセルにはまるで不向きだった。荷物を背負っての深いラッセルは足腰にはなはだ堪えた。いったん空身でラッセルしトレースをつけ引き返して荷物を背負ってまた登り返すという一人ビーコンを延々と繰り返した。時間は進むが距離は一向に稼げない。2km位しかない林道に半日費やし愕然となった。この時点で本日最終下山日の帰着時間が大幅に遅れることを自覚した。日暮れ近くなりようやく峠に着いた。ヘッドランプのバッテリーも尽きてしまった。身体も疲れていたので峠にあった建設省観測施設の軒下に潜り込んでビバーク。非常食のサラミをかじりながら温かい珈琲をすする。幸いなことに燃料の予備と砂糖が余分にあった。シュラフに潜り込む。夜中ふと目覚めてラヂヲをつける。紅白のトリの最中だった。流れる除夜の鐘をききながら再びうつらうつらする。新年を祝う花火の音が雪崩の音のように遠くから響いてきた。
1/1 快晴 帰還
3時頃寒さで目が覚めると外は煌々と月が照っていた。急いで支度を整え3時半に出発。片品側は奈良俣側と比べて積雪量が少ない。荷を背負っていてもラッセルが可能。深雪をかき分けるようにしてナメ沢、井戸沢の合流点付近に滑り込む。スノーブリッジを使って渡渉。これで一安心といったところだ。あとは長い林道のラッセルが待っている。津奈木橋5時半着。林道のラッセルは脛下程度。林道上で2002年の初日を拝んだ。波乱の幕開けだ。
イシゴネ沢を過ぎたあたりで突如静寂を破るヘリの爆音を聞く。嫌な予感。稜線付近で私の名前を呼びながら旋回している。そうだ空中に吊り上げられるより前に下山を急ごう。猛ダッシュ。しかしながらしばらく行ったところでヘリから発見されたようだ。ヘリに向かって手を振った。身振り手振りで一人でも下山が可能なことを伝えたつもりだったが、戸倉の最終林道ゲート1km手前で警官2名に保護された。余力は十分にあったが警察の立場では捜索願が出された以上保護しないわけにはいかないらしい。スノーモービルに乗せられてゲート着(9:30)。さらに沼田警察署までパトカーで移送。沼田警察署ではいはらとこくらが待機していた。簡単な事情徴収の後、3人で帰途につく。
周りの素早い対応に驚いた。AACHばばあ氏じじい氏いはらこくらしゃなりそれに高校山岳部の大谷氏半沢氏佐藤氏国府田氏沼田警察署の方々最後に心配をかけた家族に感謝したい。
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