岳沢から奥穂高
- GPS
- 32:00
- 距離
- 14.1km
- 登り
- 1,887m
- 下り
- 1,885m
コースタイム
18日 6:50穂高山荘-8:00奥穂高-10:40紀美子平-12:30岳沢-14:05上高地
天候 | 17日 曇りのち雪 18日 晴れのち時々雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2009年10月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
沢渡駐車場1日500円。数箇所あり、十分スペースはあると思います。 上高地までバス1,200円。往復2,000円。タクシー1台4,000円 帰りのことを考えるとバスの往復券は問題。この時期、夕方の上高地ではバス乗車の列が河童橋まで並ぶことが珍しくないそうです。タクシーも午後3時を過ぎると1時間待ちになるそうです。それでもタクシーのほうが早いとのこと。 上高地発最終18:05新島々行定期バス。タクシー18:30まで。あとは釜トンネルのゲートが閉まるので出られません。 登山届けのポストは上高地のバスターミナルに有り。 上高地、岳沢間は問題なし。岳沢ヒュッテは再建中。トイレ、水有り。テント泊はできると思います。 岳沢、前穂、奥穂間もマークが頻繁のあり問題ないでしょう。鎖場も数箇所ありますが、鎖を使うほどではありません。 奥穂、穂高山荘間は山荘前の鎖場が問題ですが、ホールドも多く岩なれた方なら鎖を使わなくても下れます。ただ高度感はあります。 これはあくまで無雪期の話です。この日は午後から雪になり、翌日は完全に冬山になりました。 山荘の夕食は午後5:00 朝食はこの時期、午前6時になります。ちなみに、この日、夕食は17〜18人。朝食は10人ぐらいでした。どちらも山小屋としては最高レベルです。 トイレも清潔で、臭いもありませんでした。 午後7時前に天気予報のテレビ中継あり。その後、この日は穂高山荘80周年記念のビデオを放映。 |
写真
感想
先週ジャンダルムで撤退した雪辱をはらすため再度、奥穂高を目指しました。先週は天狗のコルから奥穂高を目指しましたが、今回は安全策をとり前穂高経由で穂高山荘に入り、状態がよければ西穂高に縦走する計画でした。
沢渡の駐車場に午前5:20に到着。タクシーに乗り込む、三人の家族に便乗をお願いしました。
上高地に6:00着。河童橋からは穂高連峰も望めました。雪もありませんでしたので、これならいけると思いました。
岳沢まで来たとき、また天狗のコルからとも考えました。今夕から天気が崩れそうなので、明日の縦走は無理かもしれないのです。今日の内にジャンと奥穂高をつなげておいた方がいいかなとも思ったのです。しかし登山計画書と違うコースをとることは自重しました。
岳沢と紀美子平の中間あたりで最初の下山者とすれ違いました。顔を見ると、額に血がにじんでいます。ズボンもすそのあたりが破れています。どうしたのかと聞くと、落ちたとのこと。大丈夫か、と聞くと。左手が利かないが大丈夫だとの返事。たいへん気になりましたが、足はなんとも無い、平気だから行ってくれと言われ、後ろ髪を引かれる思いで登り始めました。一緒に岳沢まで戻れば良かったかとの思いがつのります。
紀美子平の手前で、下りて来た若者の二人に、怪我をした先行者がいるので様子を見てくれるよう頼みました。この二人が今日の山行の最後の人となりました。またこの頃から雪が降ってきました。
紀美子平に着く頃には、けっこう白くなってしまいました。一時は本降りの雪となり、あまりの降りに引き返そうと思ったほどです。しかし、その後は降ったり止んだりの小康状態が続きました。
たいへん乾いた雪で、岩を濡らすことも無く、マークを隠すほどの積雪でもなかったので、奥穂高山頂まではなんの問題も無く登ることが出来ました。
山頂から穂高山荘までは飛騨側に登山道があり、雪がべったりと着いていました。また、風をもろに受けます。この時はすでに吹雪となっていて、まともに目を開けていることもできませんでした。ここでアイゼンを装着。天狗のコルから奥穂高を目指していれば先週の二の舞になったところでした。
奥穂から山荘までは、今夏歩いたばかりなのでマークが消えても難なく進むことができました。ただ最後の鎖場は恐かった。鎖は役に立ちません。滑ってしまうのです。バランスの補助にはなりますが、体重を支えるのは無理です。
慎重に足場を決め、手でホールドをしっかりつかんでゆっくりと降りていきました。眼下にはガスの中、うっすらと山荘が見えます。山荘前の広場にはひとっこひとりいません。
山荘には午後1時半頃に着くことができましたが、ガスと雪のため夕方のように薄暗くなっていました。
山荘にはすでに、十数人の宿泊がいました。私の部屋にも7人の先客がいました。夕食まで、だいぶ間があります。先客の人達はストーブのある談話室等にいるようです。私は、睡眠不足と疲れをとるため、すぐに蒲団にもぐり込みました。しかし、疲労のためか寒くてしかたないのです。部屋は冷蔵庫のようです。これでは誰も部屋にいられません。雨具以外は全部着込み丸まっていました。やっとうとうとした頃、食事の放送がありました。
食事は、けっこう豪華で美味しいものでした。また、宿泊者が少ないせいか、皆さんアットホームな感じで、楽しくいただくことができました。ただ、外は吹雪です。風が唸っています。どなたも明日のことを心配しています。私同様、西穂高までの縦走を計画していた方も多くいましたが、それどころではありません。アイゼンを持っていない方も多く、明日、無事に下山出来るか心配していました。
私はアイゼンもピッケルもあり、完全な冬装備できていたのですが、ザイテングラードを下った経験がないのでちょっと不安でした。
食後は冷たい部屋に戻るがいやでストーブにあたりコーヒーを飲んですごしました。近くにいた女性の方とお話をしていたのですが、私と同じコースを歩いてきたことが知れました。
気になっていたさきの登山者、落ちた方のことをたずねてみました。確かに単独の男の方とすれ違ったが、怪我をしているとは気づかなかったそうです。あとから下りて来た二人連れに怪我をした登山者がいなかったかと聞かれたそうです。最初の人が落ちた人であることは間違いないでしょう。すでに岳沢近くにいたそうですし、私が頼んだ二人連れの方達も気づかってくれているようなので安心しました。
天気予報では、明日は晴れ、今夜は雷雨とのことでした。 穂高山荘80周年記念映画を見ていると予報どおり雷が鳴り始め、時々外が白く光ります。もちろん雨ではなく雪です。
上映が終わり、午後8時になったので寝ることにしました。ほとんどの方が部屋に戻っていきました。
翌日は素晴らしい天気になりました。こうなると、このまま涸沢に下りる気にはなりませんでした。西穂高への縦走は無理としても、昨日のルートで下ることにしました。正面の鎖場さえクリアーすれば後は簡単と考えたのです。未知のザイテングラードより昨日歩いたばかりのルートの方が私には安心感もありました。時間的にも速いと思ったのです。しかし、これは大きな間違えでした。
朝食後、直ちに身仕度をととのえ出発。アイゼンだけではなくピッケルも使います。正面の鎖場、下部は雪が吹き溜っていて、ふとももまで埋まりましたが、新雪のため、ほとんど抵抗がありません。鎖場も昨日の下りに比べれば、恐いものではありませんでした。鎖場を抜けた雪の急斜面の方が恐ろしいものでした。ホールドは完全に埋まり、さらさらの雪にアイゼンは効きません。先行者の足跡を忠実に踏むのですが、なだれそうで恐ろしいものでした。
奥穂山頂が近づく頃、奥穂をピストンしてきた女性単独者と会い、三人ほど先行者がいることが知れました。ほどなくして山頂に着いたのですが、すでに誰もいません。天気は良いのですが、風が強くゆっくりなどしていられない状況です。私も写真だけを撮り前穂を目指します。
ここから見るジャンダルムでは遠すぎて、先週私が行き詰まり、ヘリの残骸を足下に見た場所の特定は無理でした。新聞記事や山渓11月号の写真から、わたしの撮った写真は、やはりヘリのテール部分であること分かりました。この残骸はロバの耳の斜面に残されているとあるので、私は巻くはずのロバの耳に登ってしまい、ルートを見失ったのかもしれません。 とにかく無事にもどれて幸いでした。
さて、ここから吊尾根の降下にかかります。昨日は簡単に登れたのですが、雪が着いた尾根は別物でした。この吊尾根、涸沢側は垂直に切れ落ちています。岳沢側はいくらか傾斜があり、ここをトラバース気味に登山道がつけられているのですが、登山道から下はやはり垂直に切れ落ちていて下が見えません。
急な斜面は雪も飛ばされてあまり着いていないので、十分足場の確保ができるのですが、なまじ傾斜のあるところでは、雪が吹き溜まっていて厄介です。
奥穂を出ていくらも行かないうちにしびれるようなトラバースになりました。45度位の雪の斜面です。ちょうど窪地になっており雪が吹き溜まっているのです。数メートル下は垂直に切れ落ちています。先行者の足跡が深く残っているのですが、その通り足を運ぶと、股まで潜り、それでも足下に地面を感じないのです。ピッケルを刺すと、なんの抵抗を無くヘッドまで潜り、石突きが当たらない。足元の雪が流れ出したら止めるすべがありません。すぐ上も垂直に切り立っており、どうしてもここを通るしかありません。仕方なく、雪をかき落とし、アイゼンが岩を噛むことを確認しながら一歩一歩進みました。雪はさらさらで簡単に落とせるのですが、大変時間のかかる作業となりました。
登りには簡単に越えられた鎖場も恐ろしいものでした。30メートルほどの滑り台になっており、その先は岳沢に落ちています。鎖は滑り、あてに出来ません。スタンスが雪に埋まり分からないのです。足で探りながらの下降となり神経を使いました。
厳冬期の八ヶ岳にはけっこう通いましたが、恐ろしいと思ったことはありませんでした。しかし、今回は恐ろしかった。足を滑らせただけで、そのまま落下するようなところばかりなのです。
結局、登りに2時間ほどかかた、紀美子平まで3時間近くもついやしました。もう前穂に登る元気も無く、そのまま岳沢へ降りて行きました。この頃から天気が崩れ出し、雨が降ってきました。穂高連峰も雲の中です。
下ってきた上高地はものすごい人で、数時間まえの世界がうそのようでした。バスターミナルにはすでに人の行列が出来ていました。すぐにタクシー乗り場に行き、7人グループが2台に分乗するのに混ぜてもらい待ち時間もなく沢渡に戻ることができました。
またもや臨場感あふれる長文のレポートで読み応えがありました。恐ろしさがひしひしと伝わってきました
もう北アルプスはすっかり冬ですね
低山で楽しみましょう。
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