鳳凰三山 道迷いで撤退
- GPS
- 12:50
- 距離
- 16.5km
- 登り
- 2,331m
- 下り
- 2,320m
コースタイム
7:03 南精進ヶ滝
8:05 白糸の滝
8:42 五色の滝
9:50 鳳凰小屋
10:47 地蔵ヶ岳
11:09 アカヌケ沢の頭
天候 | 曇り時々晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
1日700円です。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
危険箇所はありません。 五色滝に向かう沢沿いルートはフジアザミが多く、 刺が刺さりやすいです。 |
その他周辺情報 | 青木鉱泉は1000円で日帰り入浴できます。 |
写真
感想
今回の南アルプスは、多くの条件で不安のある山行でした。
8月は天候により全ての予定をキャンセルし、
結果今回はほぼ一月半ぶりとなってしまいました。
体力不足の懸念は予想通りの結果。
経験がいくら豊富でも、
こういう要素で生かすことができなくては意味がありませんね。
加えて、精神的な不安。
何となくですが、怖かったです。怖いという感覚はこれまでにも沢山ありましたが、
明確なものでなく漠然としていて、よくわからなかったんです。
今はそれが何だったのかはっきりわかりますが、それは後でお話しします。
そして体調。
実はここ数ヵ月、血圧を気にして減塩生活を実践していました。
血圧が平常値に落ち着くと、物凄く体調が良くなりました。
これはすごいと、普段の塩分量を徹底的に控える生活をしていたのですが、
山行前の数日間の塩分量を振り返ってみて気がつきました。
塩分を控えすぎて危ない状態だったのです。
寝不足ながら朝5時に青木鉱泉に到着。
天気予報は約一日ずれる形となり、当たりは翌日以降になってしまったようですが、
雨の心配はなさそうです。
準備を整えいざ出発。
地図を見ると顕かですが、かなり長いアプローチです。
しかも標高差は1700mあります。私の日帰り山行としては限界的な数字です。
しかしこれまでにも北岳でほぼ同じ数字をこなしていますから、多分大丈夫。
快調にドンドコ沢ルートを進みます。
が、どうにも快調とは程遠い発汗。大量の汗が止まりません。
暑いわけではないです。ペース配分の問題でもなく。
脈を測ると、異常に速いです。
長袖のシャツが問題だったのか、一月半のブランクのせいか、血糖値が低いのか、
思えば思うほど気分まで重くなります。
塩分と水分の不足を補うため、ポカリと塩熱サプリで補給。
発汗が治まってきたのは、標高が一気に上がる白糸の滝の辺りからでした。
五色の滝で恒例のスマホ強制終了で再起動。
GPSは最早重要なライフラインですから、可能な限り動かしたい。
このスマホのロギングも不安要素のひとつです。
安定したGPS搭載のスマホにしたいんですけど。
急登をクリアすると、涸れ沢に沢山の高山植物が花を咲かせていました。
写真を撮りまくり。
山小屋で小休止の後、待望の賽の河原。同名の大菩薩嶺のそれとは違い、
むしろ富士山の砂の斜面に似ています。
しかしこの、あの世に向かうような絶景と不安定な足場、心臓を破るようなきつさ。
目の前のオベリスクといい、裾野の景色といい、まだ見ぬ絶景に心も奪われます。
この時間だけ、晴れ間となっていました。
地蔵岳。
子宝を願い、
叶ったら恩返しにお地蔵さんを一体奉納するという習わしがあると聞きました。
私は子宝に恵まれませんでしたが、無心で手を合わせます。
オベリスクとお地蔵様との、まさに天界のような世界に佇んでいると、
何だか本当にあの世にいるような心地でした。
しかしその後、最大の凡ミスを招いてしまいます。
稜線を登り詰めず、左の脇道から詰めたところ、突き当たりの稜線に出ました。
道標はなし。
ガスに包まれ観音岳は見えません。
右手に、小ピークが見えます。ひとまず腹拵えで観音岳に備えようと、
そちらで昼食とすることにしました。
赤抜沢ノ頭。人も少なく、快適に食事を済ませました。
ところがこのピーク。鳳凰三山のルートからは既に外れていたんですね。
人の行き交う稜線の道へ、何の疑いもなく進んでしまいました。
かつて初めての北岳で犯した、凡ミスの再現です。
白い岩肌の岩嶺が続き、ちょっと手強いと思いながらも進みました。
それにしても人が少ない。
30分ほど進み、やっぱりおかしいとGPSを確認して、ようやく気が付きました。
いえ、むしろここで気が付いたのは幸運でした。
30分ならまだ全然余裕がある。そう信じて戻りました。
相変わらずのガスの中、不安と迷いが溢れてきます。
観音岳に登って大丈夫か、体力はあるか、エスケープするべきか。
観音岳の手前。静寂の中冷静に考えました。
偶々スマホに、
ヤマレコからダウンロードした幾つかのGPXファイルがありました。
観音岳経由の山行時間を確認します。
やっぱりどう見積もっても日没に間に合いません。
とはいえ、登ってきたドンドコ沢ルートを戻るのも楽ではありませんが、
日没後でも勝手を知った道の方が、絶対安全です。
ここで観音岳を諦めて、撤退を決断しました。
悔しかったです。道を誤ったこと、観音岳を目の前に撤退すること。
以前の北岳では、下り道での間違いでしたから悔しくありませんでしたが、
今回は本当に悔しかったです。
さて、ドンドコ沢ルートを選んだにしても、時間が厳しいのは同じです。
降りは自信がありましたが、あの険しい道を降りるのはやはり心が折れます。
焦りが気を走らせ、体力を消耗させます。滲み出る汗、減り続ける水。
渡河の多い道だったことは幸いでした。ペットボトルに何度も水を汲み入れました。
それでも足は確実に疲労が蓄積して、ついに膝ガクに陥りました。
もう何年ぶりかの膝笑い。心は泣きそうでした。
とにかく砂防ダムまで辿り着けば何とかなる。
ダムからは道もなだらかになる、そう言い聞かせて歯を食い縛り、
休み休みながら無事、ダムに着きました。
色んな意味で、久々の過酷山行となってしまいました。
そもそも不安が少しでもあるなら、やっぱり止めるべきでした。
でも、矛盾しますが行って良かったと思っています。
こうした経験こそ、本当に必要なことを教えてくれます。
体力が不安なら、ブランクがあるなら、低山で予行するくらいの前準備も必要です。
経験則で語ってしまえば、同レベルの山行経験はあります。
でもそんな経験も、体力があっての話です。
それをあらかじめ、教えてくれていたのが、あの得体の知れない不安だったのです。
私はそれを、体力不足と考えず、経験則を優先し、可能だと判断してしまいました。
ギリギリの体力で克服することも可能です。でもそれでは危険すぎます。
万が一の際、どうにもならなくなります。
それこそ、不安の正体だったんですね。
余分な体力は、実は余分でも何でもなく、
万が一の保険だったと気がつかされました。
だから十二分に体力を付ける必要があるし、
余裕を持った山行を組まなければいけないのだと。
つい最近まで、友人を連れての登山が多く、
安全の尺度が狂ってしまいました。全て友人が基準でしたので。
久しぶりの単独行で、自分の基準がまやかしだったこともわかりました。
過信せず低山でも登っておけば、塩分不足など気が付いたことはあったはずです。
そして道間違いの恐ろしさ。小ピークには数名居合わせていました。
そこで会話を交わし、ルートを確認していれば、
撤退せずに予定ルートを廻れました。それもまた、心の余裕というものでしょう。
情報交換の必要性を知っていながらのこの愚行。そういう悔しさでもありました。
無事に下山できたことが、無類の喜びとなった今回の登山。
道迷いは、やっぱり避けられないものなんでしょうね。
回数を重ねれば、少なくなりながらも、いつかは必ず犯します。
道に迷わないのは、運がいいだけです。
だからこそ、時間の余裕、心の余裕、体力の余裕が必要なんだと悟りました。
これはある意味で、限界に挑んだからこそ得られた収穫です。
危険な行為なので推奨はしません。しかし、危険に挑む勇気は、
撤退する勇気にも繋がる気がします。
そうした判断力は、結局全てが経験だからです。
どんな保険も充分に満たすことはできないものです。
でも、ないよりは絶対あった方がいい。
お地蔵様が教えてくれた、貴重な登山経験。山に感謝せずにはいられません。
本当にありがとうございました。
お疲れ様〜
本当におつかれさまでした(^_^;)
なんとなくですが、行かれてると思ってました。
今回私はストーカーの疑いがかけられぬよう白根三山に行って参りました。
路迷いの撤退はさぞ悔しかったと思います。レコを読んでて胸が痛くなりました。
kunadonoさんのことですから、いつかリベンジされると思いますが。
限界に挑んだからこそ得られた収穫は何よりも代え難いと思います。
矛盾していてもそれにより先に進めるのだなといつも思います。
次はきっと登頂できるでしょう。間違いなく近いうちに(笑)
白峰三山はいかがでしたか?
間ノ岳も農鳥岳も、私もいつか登ってみたいですね。日本一高い天空の尾根道。道に迷って少しだけ歩きましたが、ガスの中でも心地よい道でした。またいつか挑戦したいですね(*^^*)
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