ニペソツ山 (山頂直下まで)
- GPS
- 11:07
- 距離
- 22.2km
- 登り
- 1,809m
- 下り
- 1,803m
コースタイム
- 山行
- 10:40
- 休憩
- 0:25
- 合計
- 11:05
06:10 前天狗
08:20 ニペの肩
10:05 前天狗
13:00 幌加温泉登山口
天候 | 快晴、爆風 →風はもっと弱いと思っていたが強かった |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ルート工作、体力、技術、装備など山スキーの要素がたくさん詰まっています。突風や超合金のような氷なども現場にはありました。事前準備を怠らず、気をつけてください。 |
写真
感想
北海道に高気圧が来るってよ。少し南寄りだけど嬉しい。シロさんとコンさんに、ニペソツ山へ行きたいと打診してみた。承諾を得た。ありがとうございます!前日のギリギリまで仕事して、家に帰って仮眠して、土曜日のうちに家を出発した。気持ちが昂る。車は速度は法定速度だけど、気持ちがはやり新幹線並みのスピードだよ。
夜2時ごろ、ヘッデン点けてスタート!おや、明るい。満月近いので月明かりがすごい。木々の月影がとても幻想的じゃん。緩い林道をひたすら歩く。ところどころショートカットするため、スノーブリッジや激坂を登る。闇と、かなりの斜度でめちゃ難儀した。
1350から稜線までの平らな区間はボクが先行する。闇と目標物がなく勾配も少ないので、真っ直ぐ線を引くのが難しい。常にGPSで方向性を確認しルートを伸ばして行った。ここで地獄組のすごい技術だと思ったのが、ファーストとセカンドヘッデンの明るさを上げて、いち早く周囲の状況を把握する。サードはバッテリーの減りを抑えるため最小限の明るさにする。それをローテーションする。効率が良く素晴らしい。みんなで一つの列車を運行してるかのようだ。でもボクは体力と技術が乏しいため、あまり役割を全うできなかったかも。経験値上げて頑張ります。
稜線に出ると寒風が顔面を襲ってきた。右の頬ぼねのあたりをえぐってくる。あら風強いな。こんな予報だったかな。稜線を乗っこして雪崩そうな斜面を突破したら沢地形に出た。目の前に白い山がぼんやりと浮かんでいる。東の空も赤く染まっている。このシチュエーション、最高だ。
再び稜線に戻るため結構な斜度を登る。太陽も出てきた。シロさんとコンさんはスキーを履いたまま突破。ボクは、、、ムリ!!板をザックに固定して登ろうとしたら、バコッと落とし穴にハマった。ハイマツのバリズボで腰まで埋まる。もがく、もがく。蟻地獄から逃れるアリのように、なんとか這い出て前天狗の稜線まで辿り着くとそこは強風ゾーンだった。穴だの風だのまったく飽きさせない山だね。
顔面を襲う強風に耐え、スキーをデポしてアイゼンに換装した。あの強風下での換装はシビアだった。さて、お目当てのニペソツ山は、ドン!ニペドン!出ましたっ!!すごい綺麗。冬のニペソツ山は他を寄せ付けないぐらい圧倒的だった。時間が遅くなってピンクのニペソツ山は見れなかったけど、赤く染まるニペソツ山を見れて感動した。夏も綺麗だけど冬は特に綺麗だ。
ゆっくり絶景を堪能したいところだけど、ここは強風デスゾーンです。動かないとやべーす。とりあえず行けるところまで行くことに。風で鍛えられた雪面は硬く、思ったよりバリズボは少なかった。さて山頂直下。シロさんが「ここからウィペットとアイゼンを駆使してピークを狙います!」と。ヨシ気合いが入る。
最初はサクサク進めたけど、徐々に氷化して硬くなり出した。先行しているコンさんシロさんも難儀していて横移動してる。ウィペットと爪の横移動すごい。もちろん僕の技術ではこの斜面は登れない。一息、二息ついて思考を張り巡らせる。今はつま先が埋まる程度で済んでる。アイゼンの前爪二本刺さる程度になったら危険だ。断面二時モーメントが低いプレス部品だと変形してしまう恐れもある。何より足を滑らしたら地獄のジェットコースターで谷底まで真っ逆様だ。登っても降りることを考えなければならない。手の届くところに山頂があるが、バックステップで降りることにした。案の定、降りる方が時間が掛かった。心配してくれたシロさんとコンさんが戻ってきてくれた。ピーク取れなくてすみませんでした。
さて下山。下山といっても登り返しがたくさんある。天狗平までの間で2人組と会う。バラクラバしていない。猛者だ。何回も振り返って景色を堪能してスキーデポ地点まで帰還。強風の中でのセットアップには閉口した。さてお楽しみの滑走は、ほとんど雪が腐っていたので重い。太腿がパンパンになって楽しめるはずもなかった。1662m峰のトラバースでは小規模ながら雪崩も起きた。あそこやばいな。次回も来ることがあったら気をつけよう。
その後は楽しいツリーラン、という訳でもなく、立木に当たらないように慎重に滑走した。それがボクにできる精一杯だ。夏道ゲートを越え、ぐったりしながら車まで戻ってきた。ゴール!その瞬間足から崩れ落ちた。完全燃焼だ。寝転び、青い空を見上げると何故か涙がでてきた。この涙はどこから湧いてきたんだろうか。思えば10年前は普通のおじさんだったのに、まさか冬のニペソツ山登るとはな。自分、頑張った。今までで一番厳しかった冬山でした。
パーティーの体力と技術が同レベルじゃないと一番遅い人に合わせる必要がある。緩い山だったらいいけど今回は難易度の高い山だ。ボクが悪い意味でのペースメーカーだった。もっと心技体を鍛えます。
10年前ぐらいかな、ヤマレコに白いニペソツ山のレコが上がるようになって、いつしか憧れとなっていました。やっと自分にも行けました。シロニペ見れました。すごい景色だった。なんか憑き物が落ちた感じです。このルートに付き合ってくれたシロさんとコンさんには感謝です。ありがとう。
ーーー
同日、羊蹄山の雪崩で亡くなられた方は何回かすれ違ったことがある人でした。本当に強い方でオーラがあったのを覚えています。今回の件は本当に残念です。ご冥福をお祈りします。
睡眠無し、長距離運転、長時間行動、強風、カチカチ氷で心身共に疲れたけど、ピンクの鋭峰を見れただけで僕は満足です。
皆んな本当にお疲れさまでした!
あの山を愛した彼の姿を絶対に忘れません。
どうか安らかに。
春の移動性高気圧が訪れる週末、僕達は景色選でニペソツへ向かうことにした。
今回はリョーさんが初挑戦で参加してくれる。冬季のニペには僕は4回目なので天気予報から山頂へのイメージは概ね出来ていた。
月明かりと星が輝くなか期待を胸に出発、林道は効率良くショートカットして難しい箇所は僕とコンさんで突破していく。平らな森は暗闇の中でも帰りを考えて真っ直ぐに線を引く必要がある。中々ない機会なのでこの仕事はリョーさんに任せたが実にエレガントで帰りはバッチリ自動運転だった。
シャクナゲ尾根のコルへ下降し前天狗まで詰めて行くが背後には暁が迫っている。最後の急登はいつもは右にトラバースしてなだらかな箇所から稜線に出るが、間に合わないので壁を強引に直登した。それでもピンクニペには1歩及ばず逃してしまった。プランニングが甘くて頑張った皆んなには申し訳ない。
稜線上は強風で周囲の高山は一様に雪煙が舞い上がっており予報が外れている事を物語っていた。フル装備して前天狗で写真を撮ったら爪を履いて山体へ向かう。
時折張り倒される様な突風が吹き付けてくるので、中盤の痩せた稜線で吹き飛ばされないか心配だったが天狗岳に着く頃には一定に変わった。しかし右から強風は止むことが無く常に叩きつけてくる。晴れている事だけが唯一の救いだ。
山頂下の風は暴風だが経験的にその先は凪ではないかと感じたので、耐えてその中をくぐり抜けると予想通り風が弱くなった。
山頂下の壁はウィペットの刃もアイゼンの爪も心地良く刺さる、リョーさんの眼も力強い。ピークを取れると思った。
しかし残り5mくらいから急にウィペットの刃が入らなくなり、1歩登る度に益々刃が入らない。危険なのでリョーさんとコンさんに速やかにクライムダウンする様に伝え、僕はウィペットが刺さる高度まで落としてトラバース気味に肩に乗り上げた。コンさんも無事に着いており安堵した。リョーさんの登ってくる姿が見えないが、自身のリスクマネジメントできる人なので無理せずに下で待機しているのだろう。
山頂標柱も見えておりこのままピクる事はできるが、今日は彼が居ない山頂に立っても1ミリも価値が無い。ここで終わりとした。
それよりも無事に肩を降りて3人が合流する事の方が優先課題だ。肩の下降はウィペットの刃が全く刺さらないので、刃を引っ掛ける様にして前爪を蹴り込んで無事に降りた。この時たった2本の前爪に自分の命が掛かっていると思うと心臓に悪かった。安全高度まで戻るとリョーさんが待っていてくれた。
帰路も強風に叩かれながら黙々と歩き前天狗まで戻って、名残惜しくもニペを見たら板を回収。
高度を落とし斜度の緩い所に移動し、強風に煽られながら物が飛ばされない様にシールを剥がして広大な斜面へ。
しかしここも雪崩リスクがあるので慎重にエントリーして短いお楽しみタイム。
コルで大休憩しシールを貼ったらシャクナゲ尾根へ登返しだが、高度があるのでシールを剥がしてトラバースで尾根に乗ろうしたが失敗。ここは雪崩れるので往路の下降でも気を付けていたが、気温が上がった復路では小規模な雪崩が多発し足元の雪がドロドロと流れていった。
安全地帯のシャクナゲ尾根まで戻れば立木に気を付けて心地よい森スキーで林道に合流し無事に車に帰還した。
4回の挑戦の中で今回が1番厳しくて反省点の方が多い。但し、1つだけ良かった点は前天狗から予想外の悪条件に変わった時、すぐに気持ちを切り替えて、ピークを取る事よりいつ撤退するか常に考えており刻々と変わる状況を冷静に分析しリスク回避し続けた。
とは言え肩下で風が止み、長時間に渡る強風の稜線歩きから解放され、ウィペットと爪が入ることで気が緩みピクれると安易に確信し、急激な変化に対応できなかった事は猛省すべきだ。
冬季の1dayニペには体力、暗闇で効率の良いルーファイ、雪崩リスク管理、スキー登攀および藪滑走技術など総合力が試される。好条件が揃い体力さえあれば力技でたまたまピクれる日もあるだろう。しかしそんな運試しを続けていたらいつか破綻する。何回やっても安全にピークを踏み無事に帰還するには心技体、装備、経験が必要だ。
この厳しい条件下であそこまで頑張ったリョーさんは自分を誇って下さい、そしてまた一緒にリクライムしましょう !!
thanks;コンさん、リョーさん
コメント
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夏場に登ってコテンパンに疲れた記憶がある所。ココを登って滑り降りる技術の高さと体力に敬服いたしました!
なかなかハードな山でしたが、冬のニペソツ山はとても美しかったです。
もちろん下山後はクタクタになりましたけどね(笑)
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