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Yamareco

記録ID: 557570
全員に公開
アルパインクライミング
赤城・榛名・荒船

表妙義・相馬岳北稜(リトライ)

2014年12月06日(土) [日帰り]
 - 拍手
体力度
4
1泊以上が適当
GPS
09:31
距離
9.8km
登り
1,364m
下り
1,379m
歩くペース
速い
0.70.8
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
8:04
休憩
0:51
合計
8:55
7:10
34
スタート地点(相馬岳北稜取付点)
7:44
7:44
38
P1
8:22
8:22
236
P5
12:18
12:37
13
12:50
12:50
7
12:57
13:10
48
仙人窟
13:58
14:11
47
14:58
15:04
28
15:32
15:32
33
16:05
ゴール地点(相馬岳北稜取付点)
軌跡はGPSロガーで取得していますが、場所柄地点の捕捉が乱れ気味です。
天候 9時まで 曇時々雪
12時まで 曇時々晴
13時まで 雪
13時から 概ね晴れ
過去天気図(気象庁) 2014年12月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
↓(上信越道)
松井田妙義IC

相馬岳北稜取付点脇車デポ地(写真参照)
コース状況/
危険箇所等
危険箇所があまりに多く、迂闊に触れると大しっぺ返しを食うので、
(自身がまさにそのクチ)文字による詳細の公開は控えます。
知りたい方はPMくだされば回答します。
下記に、ざっくりと。

■取付〜P1
ものすごい急登だが、二本足で立てる程度。
体力と脚力は必要。

■P1〜P5
比較的マシ。

■P5先
ルーファイを誤ると、懸垂下降を余儀なくされる
よく見れば避けられる。

■P6〜P10
核心1。基本は西(進路右)側を下巻くが、
危険地帯が長く続き、神経が磨り減る。
とどめに稜線への壁っぽい登り返し、
稜線直下には大量の落葉が詰まった上に凍結したルンゼが待っている。
気を抜けるところがなく、ルーファイが難しい。
2本の脚で立てる場所の方が少なく、懸垂は普通だと考えたほうが良い。

■P10〜P11
嵐の前の静けさ。

■P12(つづみ岩)
核心2というか、最大の核心。
ピークの10m直下の登りかかりがオーバハング。
普通はP11とのギャップから懸垂で西(進路右)側から大きく下巻いて
仙人窟へ上がることがほとんど。

■P12〜仙人窟
東(進路左)側を大きく下巻きをすればこれまでよりはマシ。

■仙人窟〜相馬岳
これまでに比べると天国。

■相馬岳コース
エアリアの破線ルート。これまでに比べると極楽。
往生しないように油断禁物。
中盤までは痩せ尾根、登り返し有。鎖多数。雪多少あり。

※登攀具について
途中、懸垂4回、単独登攀システム1回。
ナッツとハーケン&ハンマーは未使用、他はすべて使用。
ハーケン&ハンマーは使ってもいいと思える場面があったが、
ナッツは全く出番なし。カムは持参しなかったが、あってもいいかも。

※会った人
相馬岳山頂で1パーティ2名
その他周辺情報 【温泉】
もみじの湯 510円。11月〜3月は19時まで。
とても良い湯。露天風呂からの夜景もよい。地元の人が多い。
http://www.joy.hi-ho.ne.jp/ma0011/T-Gunma87.htm
朝、取付点、もう少し早く出発する予定でしたが、いろいろと手間取ってしまい、7時を過ぎてしまいました。7ヶ月前のことを思い出しながら気合い入れて臨みます。
4
朝、取付点、もう少し早く出発する予定でしたが、いろいろと手間取ってしまい、7時を過ぎてしまいました。7ヶ月前のことを思い出しながら気合い入れて臨みます。
ぐちゃぐちゃの藪。これぞ妙義です。
ぐちゃぐちゃの藪。これぞ妙義です。
ちらちらと小雪がついていました。
ちらちらと小雪がついていました。
真っ黒い雲。天候次第では早めにエスケープを決断しなければなりません。P6までなら遡行ができます。
真っ黒い雲。天候次第では早めにエスケープを決断しなければなりません。P6までなら遡行ができます。
P1。ここに登るまでが体力的になかなかしんどいところ。
4
P1。ここに登るまでが体力的になかなかしんどいところ。
P2。どれがどのピークだか判別が難しい相馬岳北稜の中で、最もはっきりしているピークのひとつです。
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P2。どれがどのピークだか判別が難しい相馬岳北稜の中で、最もはっきりしているピークのひとつです。
上空は真っ黒い雲ですが、前橋や高崎市街、遥か向こうの奥多摩、奥武蔵は快晴のようです。
上空は真っ黒い雲ですが、前橋や高崎市街、遥か向こうの奥多摩、奥武蔵は快晴のようです。
やはり藪が多い。藪好きとしてはゾクゾクします。
やはり藪が多い。藪好きとしてはゾクゾクします。
ところどころ落葉は深いです。場所によっては股下まで。
1
ところどころ落葉は深いです。場所によっては股下まで。
P4。P3からの登り返しが結構きつい。
1
P4。P3からの登り返しが結構きつい。
テープは時々ありますが、ヘンゼルとグレーテルのパン程度のものだと考えたほうがいいです。
3
テープは時々ありますが、ヘンゼルとグレーテルのパン程度のものだと考えたほうがいいです。
丁須。いつみても素敵な形。次第に天候が回復してきました。嬉しい。
3
丁須。いつみても素敵な形。次第に天候が回復してきました。嬉しい。
はるか前方のはさみ岩。直線距離にすれば近いけれど、ここから何時間もかかります。
3
はるか前方のはさみ岩。直線距離にすれば近いけれど、ここから何時間もかかります。
朽ち砕けた木。この狭い岩稜で風雨に晒されながら、力強く生き抜いてきたのでしょう。
朽ち砕けた木。この狭い岩稜で風雨に晒されながら、力強く生き抜いてきたのでしょう。
P4〜5間のギャップ。東側はすっぱりと切れ落ちています。この山域の大きな特徴です。
2
P4〜5間のギャップ。東側はすっぱりと切れ落ちています。この山域の大きな特徴です。
嵐の前の静けさ。ここからは覚悟を決めていかなければなりません。
1
嵐の前の静けさ。ここからは覚悟を決めていかなければなりません。
前方に聳える3峰。左から核心のP12(つづみ岩)、P11、P10。
前方に聳える3峰。左から核心のP12(つづみ岩)、P11、P10。
P5先の断崖にあるマーキング。ここから懸垂しろと言わんばかりです。前回はここから懸垂しましたが・・・。
P5先の断崖にあるマーキング。ここから懸垂しろと言わんばかりです。前回はここから懸垂しましたが・・・。
右手の藪を降りていくと、こちらにもマーキング。ここから行けば懸垂なしでP5〜P6のギャップに下りられます。
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右手の藪を降りていくと、こちらにもマーキング。ここから行けば懸垂なしでP5〜P6のギャップに下りられます。
P5〜P6のギャップ。ここからが本番です。
1
P5〜P6のギャップ。ここからが本番です。
P7への下降は激痩せトラバースでかなり危険。無理そうと思えば懸垂したほうが安全です。
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P7への下降は激痩せトラバースでかなり危険。無理そうと思えば懸垂したほうが安全です。
P6〜7ギャップの懸垂点。春に来た時はこの灌木にテープのシュリンゲがかかっていましたが、無くなっていました。誰か外したのかなあ。ここを支点にして西側の沢へ20mほど下ります。
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P6〜7ギャップの懸垂点。春に来た時はこの灌木にテープのシュリンゲがかかっていましたが、無くなっていました。誰か外したのかなあ。ここを支点にして西側の沢へ20mほど下ります。
降り切りました。
2
降り切りました。
降り切ったところが、春の山行での事故現場。このルンゼを詰めようとして、5mほど滑落し、腰椎を骨折しました。
2
降り切ったところが、春の山行での事故現場。このルンゼを詰めようとして、5mほど滑落し、腰椎を骨折しました。
このルンゼの向こうに、もう1つ小さなルンゼがあります。ここから詰めるのが正解。
1
このルンゼの向こうに、もう1つ小さなルンゼがあります。ここから詰めるのが正解。
先のルンゼより狭いので手掛かりが取りやすく、斜度も緩いです。
3
先のルンゼより狭いので手掛かりが取りやすく、斜度も緩いです。
P7からしばらくは西斜面を巻きますが、ぼちぼち凍結箇所が出てきました。凍結の合間を縫ってここを直登し、稜線に戻ります。パーティならロープ使用推奨。
1
P7からしばらくは西斜面を巻きますが、ぼちぼち凍結箇所が出てきました。凍結の合間を縫ってここを直登し、稜線に戻ります。パーティならロープ使用推奨。
稜線直下のルンゼ。落ち葉が股下あたりまで詰まっている上、葉の下は土ではなく岩で凍結しています。細心の注意を払って少しずつ詰めます。
3
稜線直下のルンゼ。落ち葉が股下あたりまで詰まっている上、葉の下は土ではなく岩で凍結しています。細心の注意を払って少しずつ詰めます。
ルンゼを登り切ったところで振り返り。P6〜P7ギャップからここまでが核心部1。
1
ルンゼを登り切ったところで振り返り。P6〜P7ギャップからここまでが核心部1。
灌木の向こうに核心部2が見えます。左からP12(つづみ岩)、P11、相馬沢から詰めると眼前に聳える裏つづみ岩、そしてP10。
灌木の向こうに核心部2が見えます。左からP12(つづみ岩)、P11、相馬沢から詰めると眼前に聳える裏つづみ岩、そしてP10。
ハサミ岩がだいぶ近づいてきました。天候は一時回復。
2
ハサミ岩がだいぶ近づいてきました。天候は一時回復。
P9、P8を振り返ります。遥か向こうには美しい榛名山が。ここも冬にスノーシュー履いてまったり歩いてみたいなー。
5
P9、P8を振り返ります。遥か向こうには美しい榛名山が。ここも冬にスノーシュー履いてまったり歩いてみたいなー。
裏妙義。
いよいよつづみ岩が眼前に迫ってきました。張り詰め続けてきた緊張感が、一気に最大値まで高まります。
いよいよつづみ岩が眼前に迫ってきました。張り詰め続けてきた緊張感が、一気に最大値まで高まります。
P11〜P12のギャップ。下にテープがある通り、ここがつづみ岩のエスケープです。20m×2ピッチ下り、西側からつづみ岩を巻くと仙人窟まで達します。また、そのまま下ると相馬沢経由で広河原に下山できます。
1
P11〜P12のギャップ。下にテープがある通り、ここがつづみ岩のエスケープです。20m×2ピッチ下り、西側からつづみ岩を巻くと仙人窟まで達します。また、そのまま下ると相馬沢経由で広河原に下山できます。
P12、つづみ岩を眼前に。ここが相馬岳北稜の最大最悪の難関です。さあ、正面から取り付きます。巻くつもりは最初から毛頭ありません。
1
P12、つづみ岩を眼前に。ここが相馬岳北稜の最大最悪の難関です。さあ、正面から取り付きます。巻くつもりは最初から毛頭ありません。
まずはザックを下ろして空荷でアプローチです。前回は背負ったままフリーで登りましたが、今回は万全を期します。ギャップはごく狭い場所なので、ザックは灌木に確保します。
2
まずはザックを下ろして空荷でアプローチです。前回は背負ったままフリーで登りましたが、今回は万全を期します。ギャップはごく狭い場所なので、ザックは灌木に確保します。
つづみ岩ピーク直下のオーバハング。ここに古いハーケンとその下に少し新しいハーケンがあります。いずれも軟鉄。打ち足してもよいかと思いましたが、下のハーケンはランニングが取れそうだったので、足しませんでした。残置するの嫌だし。
5
つづみ岩ピーク直下のオーバハング。ここに古いハーケンとその下に少し新しいハーケンがあります。いずれも軟鉄。打ち足してもよいかと思いましたが、下のハーケンはランニングが取れそうだったので、足しませんでした。残置するの嫌だし。
ハングを一気に登り詰め、つづみ岩ピーク直下の灌木に支点を取って、痺れるような緊張感から少し解放されます。
4
ハングを一気に登り詰め、つづみ岩ピーク直下の灌木に支点を取って、痺れるような緊張感から少し解放されます。
そしてランニングを回収しながらギャップまでの25mを懸垂で下り、ザックを背負って登り返すと、つづみ岩のピークに立ちました。と、同時に雪が舞い始めます。ぼくが登りきるのを待っていてくれたかのようです。
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そしてランニングを回収しながらギャップまでの25mを懸垂で下り、ザックを背負って登り返すと、つづみ岩のピークに立ちました。と、同時に雪が舞い始めます。ぼくが登りきるのを待っていてくれたかのようです。
心惹かれずにはおられない星穴の姿。いつか、逢いに往ってもよいですか?
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心惹かれずにはおられない星穴の姿。いつか、逢いに往ってもよいですか?
裏妙義も雪で霞みます。
1
裏妙義も雪で霞みます。
これがつづみ岩ピークにある唯一の印。道標はもちろんありません。
1
これがつづみ岩ピークにある唯一の印。道標はもちろんありません。
ハサミ岩が目前に。もうちょっとです。
3
ハサミ岩が目前に。もうちょっとです。
振り返ってつづみ岩。直接稜線を降りるには懸垂しないとなりません。東側の斜面から巻くと、何とか歩けます。
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振り返ってつづみ岩。直接稜線を降りるには懸垂しないとなりません。東側の斜面から巻くと、何とか歩けます。
ものすごい柱状節理の岩峰。こういう姿を見ると、妙義こそぼくの心のお山であって、想い続けずにはおれないと改めて実感します。
1
ものすごい柱状節理の岩峰。こういう姿を見ると、妙義こそぼくの心のお山であって、想い続けずにはおれないと改めて実感します。
ようやく仙人窟がそこに。長い緊張の時間から解放されます。
1
ようやく仙人窟がそこに。長い緊張の時間から解放されます。
仙人窟。ビバーク適地です。一時荒れた天候も回復し、ようやくふんぞり返って休むことができました。さすがにホッとしました。
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仙人窟。ビバーク適地です。一時荒れた天候も回復し、ようやくふんぞり返って休むことができました。さすがにホッとしました。
仙人窟の向こうは相馬沢から詰めてくるルート。以前に相馬沢から詰めた時にはこのルートを通らずにP11〜P12のギャップに上がってしまったので、未だ歩いたことがありません。
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仙人窟の向こうは相馬沢から詰めてくるルート。以前に相馬沢から詰めた時にはこのルートを通らずにP11〜P12のギャップに上がってしまったので、未だ歩いたことがありません。
ものすごい奇岩。地質学の知識がなくても、すごい地質なんだろうなあと想像します。
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ものすごい奇岩。地質学の知識がなくても、すごい地質なんだろうなあと想像します。
また振り返ってつづみ岩。再び歩かせてくれて本当にありがとう。
2
また振り返ってつづみ岩。再び歩かせてくれて本当にありがとう。
ハサミ岩を振り返ります。
3
ハサミ岩を振り返ります。
裏妙義連峰の全貌。左から谷急山、烏帽子岩、赤岩、丁須。
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裏妙義連峰の全貌。左から谷急山、烏帽子岩、赤岩、丁須。
万感の想いを込めて最後の登りを詰めていきます。
万感の想いを込めて最後の登りを詰めていきます。
そして相馬岳ピークに。無事に謝罪山行の目的を果たしました。
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そして相馬岳ピークに。無事に謝罪山行の目的を果たしました。
ここから見える茨尾根と星穴の姿は圧倒的です。
4
ここから見える茨尾根と星穴の姿は圧倒的です。
真っ白に冠雪した浅間、昨年は12月7日に相馬岳から見た時はほぼ無冠雪でした。今年は雪深い冬になりそうです。
昨年: http://www.yamareco.com/modules/yamareco/photodetail.php?did=379827&pid=3edca4e682706dab862fc9037575fd8e
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真っ白に冠雪した浅間、昨年は12月7日に相馬岳から見た時はほぼ無冠雪でした。今年は雪深い冬になりそうです。
昨年: http://www.yamareco.com/modules/yamareco/photodetail.php?did=379827&pid=3edca4e682706dab862fc9037575fd8e
相馬岳からはエアリアの破線ルートである相馬岳コースを下ります。北斜面なので、少し冠雪しています。慎重に慎重に。
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相馬岳からはエアリアの破線ルートである相馬岳コースを下ります。北斜面なので、少し冠雪しています。慎重に慎重に。
茨尾根との分岐。計画では鷹戻しの方へ歩くつもりでしたが、この時間(14:21)ではとても明るいうちに下りられないので、国民宿舎へ下山。また来ますね。
茨尾根との分岐。計画では鷹戻しの方へ歩くつもりでしたが、この時間(14:21)ではとても明るいうちに下りられないので、国民宿舎へ下山。また来ますね。
圧倒的な星穴。
歩いてきた相馬岳北稜の全貌。歩かせてくれて本当にありがとう。
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歩いてきた相馬岳北稜の全貌。歩かせてくれて本当にありがとう。
相馬岳コース名物ののぞき穴。相馬岳北稜がのぞき穴から見えます。
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相馬岳コース名物ののぞき穴。相馬岳北稜がのぞき穴から見えます。
下部は安らかな道です。この7ヶ月をいろいろと振り返るにはいい場所でした。
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下部は安らかな道です。この7ヶ月をいろいろと振り返るにはいい場所でした。
そして無事に国民宿舎へ下山。後は昨年の同時期に歩いた裏妙義の鶴峯山。ここも素晴らしい藪山です。
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そして無事に国民宿舎へ下山。後は昨年の同時期に歩いた裏妙義の鶴峯山。ここも素晴らしい藪山です。
相馬沢入渓点。昨年は工事中でしたが、今年は立派な堰堤の形になっていました。
昨年: http://www.yamareco.com/modules/yamareco/photodetail.php?did=379827&pid=5c365cba405ced87be5f646e1b330029
相馬沢入渓点。昨年は工事中でしたが、今年は立派な堰堤の形になっていました。
昨年: http://www.yamareco.com/modules/yamareco/photodetail.php?did=379827&pid=5c365cba405ced87be5f646e1b330029
中木川沿いから見る北稜。やっぱりいろいろ考えちゃいますね。
1
中木川沿いから見る北稜。やっぱりいろいろ考えちゃいますね。
暮れかかる空の袂にある妙義湖(中木ダム)は放水中。明るいうちに下山できてよかった。
暮れかかる空の袂にある妙義湖(中木ダム)は放水中。明るいうちに下山できてよかった。
そしてレンタカーをデポした取付点へ無事生還しました。日帰りでしたが、これまでの人生で最も大きな山行となったように思います。
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そしてレンタカーをデポした取付点へ無事生還しました。日帰りでしたが、これまでの人生で最も大きな山行となったように思います。

装備

個人装備
縦走用登山靴 クライミングシューズ ザイル10mm×50m アッセンダ左右1 ビナ安全環2+ナシ6 クイックドロー長2+短2 シュリンゲ適量 ナッツ3(10・12・13) ハーケン6(軟鉄4・クロモリ2) ハンマー ATC メット ハーネス 日帰り縦走装備一式 行動食 非常食

感想

この山行にあたり、妙義の数々のバリエーションルートを歩いていらっしゃる
treeappleさんの珠玉のレコを参考といたしました。
どうもありがとうございます。

-----

松井田妙義ICから取付点に向かって車を走らせると、
夜が明けかけた空の眼前に、その山群が姿を現す。
またここに戻ってくる日がやってきたことを実感し、
思わず涙が出そうになるけれど、言い聞かせる。
「泣くのは五体満足で下りてきてからにしろ」

7ヶ月前に、身も心も徹底的に痛めつけられたそのお山は、
ぼくにとって、どうしてももう一度会わなければならない場所だった。
勝ちとか負けとか、リベンジとか制覇とか、そんなことはどうでもよく、
ここで事故を起こしたことがただただ申し訳なくて仕方がなく、
直接訪れ、その顔を見て謝りたかった。
そして、もう一度ぼくはその山に問うてみたかった。
ぼくは、その中に存在するエレメントのひとつになり得る者なのか。
そうでなければ、ぼくはまた受け容れられず、追い払われてしまうのか。

-----

道具の点検は完璧にしたはずだけれど、
取付点でハーネスを装着することに戸惑い、時間を食う。
やはり、緊張しているな、と思う。
いや、平常心でいられる方がおかしいのだ、と言い聞かせる。

心がざわざわしているなかで、脚を踏み出した。
ものすごい急な登りだけれど、二本の脚で立って歩ける。
この急登は、ざわめいた心を見つめ直すにはちょうど良い。
1時間ばかりは、そんな時間を過ごした。

急登が終わり、前方に屹立する岩峰が切り立ってくるころには、
己を省みることより、これから先のことについて考えるようになった。
登ったり降りたりを幾度も繰り返す。
僅かでも不安感が襲えば、すぐにロープを出す。無理は決してしない。
いけそうかな?と思うと、ついいこうとしてしまうのがぼくの悪癖だが、
その気持ちをコントロールしなければ、お山はまたぼくに罰を下すだろう。
おまえは7ヶ月前に何を学んだのだ?と。

-----

標高が上がるにつれ、西側の斜面が凍結してきた。
だが、薄皮1枚の凍結だから、アイゼンは何の役にも立たない。
それは取付く前からよく分かっている。
あくまで、歩かせてもらえるところをぼくは歩くのだ。
ここは無理か?と思っても、よく見れば受け容れてくれる懐がある。
ぼくはそこに手をかけ、脚をかけて身体を押し上げていく。

7ヶ月前に事故を起こした場所も、そうやって通過した。





-----

緊張感を少しも緩められない時間が長く続く。
何か起きてからでは遅い。
何も起きないようにするには、
あくまで緊張感を高く持続させるしかない。
お山には「絶対」などないが、「必然」は存在する。
何か起こったとき、後になってそこから逆算すると、
要因となる「必然」に突き当たるのだ。

やがて、風が出てきた。
周りを見ると、西の空がどんよりと暗い。
分水嶺からの風が、雨雲と一緒に漏れてきているようだ。
最大の核心部に取り付く前に雪が降り出せば、
そこは避けなければならない。雪がある状態ではとても登れない。

辛うじて人が2人くらい立てる、狭いギャップに辿り着いた。
12個のピークが屹立するその尾根の、11個目と12個目の間。
核心部の基部だ。
ちょうど昨年の同時期、ぼくはその間に西側の沢から上がってきて、
12個目のピークを登っている。
けれど、今のぼくの身体は、あの時とはもはや別物。
同じやり方をすれば、おまえは何も分かっていないと罰を下すかもしれない。

持ってきたいくつかの道具を、ここでほとんどすべてハーネスに装着し、
まずは空荷で登りにかかる。
ランニングビレイを取り、万が一のときのために備える。
オーバハングした岩は、以前と同じようにためらわずに一気に通過する。
そうしないと、落とされてしまう。

やがて、12個目のピークのすぐ下にある、頑丈そうな灌木に支点を取った。
これで墜落の心配がなくなった。

ランニングを外しながら基部へ下降し、
ザックを背負ってもう一度登り返す。
ハングは先ほどよりも時間がかかったけれど、
アッセンダを使って乗り越す。

こうして、12個のピークの一番最後に立った。
そして同時に、雪が降り始めた。
ああ、貴女は漏れてきた雨雲から雪を降らせることを待っていてくれたのか。





12個目のピークには、つづみ岩という名がついている。
己の持ちうる最大限の感謝と謝意を込めて、パンパン!と手を叩くと、
つづみを叩くように、辺りに籠った音が響き渡る。

風は視界を遮るように雪を運ぶ。
道具を仕舞い、急いで下りにかかる。
緊張の時間はまだ緩めることができない。

ざっくりと切り立った斜面も、よく見ると歩ける場所がある。
灌木は豊富にあるので、その助けを借りて進む。
しばらく歩くと、岩のどてっぱらにぽっかりと穴が開いているのが見える。
その名を仙人窟と言って、どうやら昔の修験者がここで修行をしていたらしい。
ようやく、腰を下ろして休める場所まで辿り着いた。

まだ終わりではないけれど、少し緊張を緩め、行動食を口にする。
やがて、穴の向こうから明るい陽が差してきた。
谷の向こうの、Tの字の岩が立つ有名なピークも、
青空にくっきりと映っている。
そのとき、ようやくぼくは貴女への謝罪が通じたのかもしれない、
そして新しいお山を歩くことが許されたのかもしれない、そう思った。
また涙が出そうになるが、まだ終わっていないのでこらえる。

-----

そこから1時間ばかり歩くと、山頂に辿り着き、この稜線は終わりを告げる。
7ヶ月越しの謝罪山行は、こうして目的を果たすことができた。
誰もいない山頂で、思わず快哉を叫ぶ。





山頂でゆっくりと休んでいると、
夫婦らしき2人が上がってきた。この日、お山で見た初めての人だった。
彼らに、自分から写真を撮りましょうか、と言った。
このお山は、地図に載っているルートからでも立ち入る人は少ないからだ。
たぶん、ぼくが去ってしまえば、2人での写真を撮ることはできないだろう。
2人も多分、想いがあってこのお山に上がってきたはずだもの。

-----

山頂から下る。
まだ油断はならなかったけれども、
物想いに耽る時間を貰うことができた。

ぼくはこのお山に受け容れてもらえただろうか。
このお山のエレメントのひとつになることができただろうか。
それはまだ分からなかったけれども、
ひとまずはこれでまた新しいことを続けることができる。
ぼくの生き方を続けることが許されたとは思う。

人それぞれ、お山に対する考え方や接し方があると思う。
ヒマ人の道楽である、などという意見も聞いた。
それを否定するつもりはない。
確かに週末はヒマ人なのかもしれないから。
けれど、道楽では決してお山への想いを抱き続けることはできないし、
ここに再び戻ってくることもできなかった。
ぼくの考え方や接し方は、ある種の人から見れば荒唐無稽で、
馬鹿馬鹿しいものだと思われるかもしれないけれど、
ぼくはこういう風にお山と接してきたからこそ、
今の自分の人生があると考えている。

下山後、朝に想像していたような涙は出なかった。
むしろ、これからもお山を愛でていくことができるという、
感謝の気持ちで溢れていた。
本当にどうもありがとう。

-----

翌日の夜、なかなか寝付けなかった。
緊張やら興奮やらが未だに全身から抜けていないようだった。
身体の疲労はさほどでもないはずなのに、
重くて深い疲労感が心を覆っていた。
想い続けたひとに想いを伝え、それが通じた後のような気持ちだった。

7ヶ月前の事故山行レコ(自戒の意味を込めて、リンクを貼ります)
http://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-446419.html

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コメント

おめでとうございます!
motchさん こんばんは

ついに戻ってきて、やりきりましたね

motchさんがこのお山にいる必然性を感じます。
エレメントになっていますよ!
むしろ、渾然として一如となっているように思えます。

いいレコを読ませていただきました。
まずは、お疲れ様でした!
2014/12/10 1:59
Re: おめでとうございます!
doppoさん

ありがとうございます。
今回までのプロセスで、doppoさんがくださったコメントには
どれだけ勇気づけられたことか。

歩き切った時、もちろんうれしいと思いました。
けれど、今はただただ赦されたんだな、
という安堵の気持ちとともに、
また次に受け容れてもらえるために、
心身を磨かないと、という粛然たる思いがあります。
2014/12/10 19:12
努力が実りましたね。
よねやまさんの、書評「アルピニズムと死」を思い出しました。
野井泰史氏が、今日まで死ななかった理由として、
彼が凄い想像家であったこと。
山に入ったら研ぎすました五感ですべての気配を受け止め、判断するよろこびを満喫していること。
と書いています。
まさに、motchさんの、山との対峙そのものではないでしょうか。
私はmotchさんのようなクライミング技術もありませんし、地道に歩荷トレーニングする努力家でもありません。
でも、そんな姿勢に憧れ、自分もそのようになりたい、と思っています。

山がmotchさんを受け入れてくれた事を嬉しく思います。
2014/12/21 22:43
Re: 努力が実りましたね。
kihaさん

こんばんは。
コメント、どうもありがとうございます。

山野井さんと対比だなんて、僭越にもほどがありますけれども、
確かにそういうような接し方を無意識のうちにしているような気もします。

ぼくは、基本となる部分は大学生のときに教わったものの、
以後は多くのものが独学で、専門的に技術を教わったケースが少ないのですが、
今後、更にお山に受け入れてもらえるようになるには、
もっときちんと勉強していかなければならないと、
今回のお山を通じて思いを新たにした次第です。
2014/12/23 0:25
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