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Yamareco

記録ID: 72
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
北海道

北海道/大雪山〜トムラウシ

1995年08月17日(木) 〜 1995年08月22日(火)
 - 拍手
kamog その他2人
GPS
128:00
距離
40.6km
登り
2,070m
下り
3,017m

コースタイム

1日目
旭岳キャンプ場(10分)〜旭岳ロープウエイ駅(20分)
姿見駅(2時間)旭岳(1時間30分)白雲岳避難小屋<泊>
2日目
白雲岳避難小屋(2時間30分)忠別沼(3時間30分)化雲岳(1時間)
ヒサゴ沼避難小屋<泊>
3日目
ヒサゴ沼避難小屋(3時間40分)トムラウシ(7時間)トムラウシ温泉<泊>
天候 8/18 曇のち雨(風雨強し)
8/19 曇のち晴
8/20 曇のち雨
8/21 曇のち晴
8/22 晴
アクセス
化雲岳手前のお花畑
化雲岳手前のお花畑
初日は旭川空港から旭岳キャンプ場へ
砂地で整備されており過ごしやすかった
2008年08月07日 16:40撮影 by  CanoScan 8400F, Canon
8/7 16:40
初日は旭川空港から旭岳キャンプ場へ
砂地で整備されており過ごしやすかった
大雪山主峰・旭岳への登り
大雪山主峰・旭岳への登り
旭岳山頂
白雲岳避難小屋
夏休み期間中ともあり営業小屋になっていた
ここまで稜線上は西側からの風雨で凍えた
白雲岳避難小屋
夏休み期間中ともあり営業小屋になっていた
ここまで稜線上は西側からの風雨で凍えた
高根ケ原を歩く
五色岳あたりか
遠くにヒサゴ沼避難小屋
(遠い・・・)
2008年08月07日 16:59撮影 by  CanoScan 8400F, Canon
8/7 16:59
遠くにヒサゴ沼避難小屋
(遠い・・・)
ヒサゴ沼避難小屋
ヒサゴ沼避難小屋
北沼とトムラウシ
ヒサゴ沼から稜線に戻る途中、ナキウサギを見た
北沼とトムラウシ
ヒサゴ沼から稜線に戻る途中、ナキウサギを見た
トムラウシ山頂
この後、降雨が激しくなり、十勝岳への縦走は中止し、トムラウシ温泉へ泥沼の下山が・・・
トムラウシ山頂
この後、降雨が激しくなり、十勝岳への縦走は中止し、トムラウシ温泉へ泥沼の下山が・・・
トムラウシ温泉
国民宿舎「東大雪荘」
登山者用の入口あり、とてもきれい
トムラウシ温泉
国民宿舎「東大雪荘」
登山者用の入口あり、とてもきれい

感想

この夏北海道方面には前線が居座った。
風速20mを越す風雨は西から猛烈に吹き付け僕たちの右頬を凍てつかせた。
しかし...つかの間の好天の中に僕たちは見た。
トムラウシ山頂の岩場で遊ぶシマリス。
銃走路のど真ん中にタンポポのように無造作に咲くエゾゼンテイカ、そしてコマクサの
大群落。ヒサゴ沼上部の岩場に立つナキウサギ。
されされの前に立った2m50cmもある大ヒグマ(は旭岳温泉旅館にある剥製であっ
た)
北の大地の山々には、我々本州人の常識では計り知れない日常があった。


8月17日 羽田空港〜旭川空港〜旭川駅〜旭岳温泉キャンプ場

旭川空港に降り立つとさすが北の国。日差しがすっきりして気持ちの良い涼しさ。
気温23度。「北緯記録更新だ」そう、生まれて初めての北海道なのだ。
「カニだ!イクラだ!シャケだ!」という欲望を抑えて、旭川駅前から
旭岳温泉息のバスに乗る。天人峡経由のこの路線、旭岳温泉組合が乗車賃を負担してい
るため「えっと、3人分です」といって料金を払おうとしたらバスの運転手に笑われて
しまった。
麓はもう曇っていて大雪の山容は見えなかった


8月18日 旭岳キャンプ場〜姿見〜旭岳(大雪山主峰)〜白雲岳避難小屋

良く整備されたキャンプ場をあとに広い道路をロープウエイ駅まで歩く。
徐々に垂れ込めてきた雲の間から、とうとう冷たい粒が降ってきた。
「俺は晴れ男だからね!」責任を残り2人に転嫁するように藤田が笑った。
しかし私も過去の実績から晴天率は8割を超える。とすると雨男は...
ロープウエイを乗り継ぎ姿見駅に着く。期待していたが早速役立つレインウエア。
今も噴煙を上げる地獄谷を左手に見ながら旭岳の急登を行く。
硫黄の臭いがかすかに漂う火山特有の砂礫登り。
ガスが時折切れると遥か遥か彼方にトムラウシ、そして十勝連峰が見える。
「あんなに遠くまで歩くの?」怒声が響いた。
ちなみにトムラウシといっても「牛」の種類ではない。れっきとしたアイヌ語による山
の名前だ。
旭岳もアイヌ語で「ヌタクカムウシュペ」と呼ばれていたそうだ。
旭岳山頂には約二時間で着。「やった〜大雪踏んだぞ!」
北の山をはじめて登った感激はひとしおだ。
しかしいつの間にか風も強くなっていた。
「寒い!早いとこ行こう」皮下脂肪の一番少ない福山が叫ぶ。
次に少なそうな藤田も叫ぶ。私は...
旭岳から間宮岳へ向かう下りは雨と砂礫でよく滑る。
このあたりから「本州の山とはちょっと勝手が違うな」と思い始める。
北海岳の稜線に至っては西からものすごい風雨が否応なしに顔の右半分を凍らせた。
まるで2年前の台風の中の白馬岳みたい。
風を避けて休む場所もなくただひたすら歩く歩く。
白雲岳に近づくあたりでは高山植物がそこらじゅうに咲いていたのだが寒くてそれどこ
ろではない。
やっとの想いで白雲岳避難小屋に駆け込む。
この小屋、避難小屋と呼ぶにはしっかりしており広い。
夏季のみ在駐している管理人のお兄さん曰く
「今日は混み合うと思いますんでテント持ってるんでしたらなるべくそちらを利用して
もらえませんか」
「えっ?」いかにも体はもうボロボロと言わんばかりに唇を震わせ困惑していたような
表情でお兄さんを見つめる。
「...。それでは2階角の○○番から○○番へどうぞ」
1人1泊600円。しめしめであった。


8月19日 白雲岳避難小屋〜高根ケ原〜五色岳〜化雲岳〜ヒサゴ沼避難小屋

”クマ出没のため三笠新道は通行しないで下さい”山小屋に掲げてある
プレートが言っている。そういえば初日に入った旭岳温泉・勇駒別(ユコマンベツ)
荘の親爺がこんなことを言っていた。「今年はクマが例年より多いんだよ。
登山者はさ、みんなクマ避けと思って鈴つけるでしょ。アレはダメなの。
大人のクマはともかく、何も知らない子グマは興味本位で近づいてくるのよ。
当然そのそばには一番おっかない母グマがいるわけさ」
「...。」そのとき私のウエストバックには、やはり鈴がつけてあった...。
小屋の外に出ると幾分風雨は弱くなっていたが相変わらずのガスの中。
本日遭遇する高根ガ原はどうやら大雪山系でも指折りのヒグマの通り道だそうだ。
恥ずかしいなんて言っていられない。
背の高いハイマツ帯に入ると先頭の私は後続の二人の冷たい視線も省みず「ホー!ホッ
ホー!」と
雄たけびをあげる。
鈴もこうなりゃ頼りである。
途中で踏み跡を見失いそうなくらいだだっ広い稜線を歩く。
そんな恐怖の中、我々に新鮮な驚きを与えてくれるものがあった。
道の真ん中に見覚えのある赤い花。なんと高山植物の女王コマクサだ。
よく見るといたるところに咲いている。
白馬なんかでは植生地にロープが張って近づけもしないのに。
ここでは「どうぞ踏んでください」とばかりにまるでタンポポの如く咲いているのだ。
さらに追い討ちをかけるように目の前のガスがさぁ〜っと切れる。
そこに現れたものは真黄色の絨毯を敷き詰めたように咲き乱れるエゾゼンテイカ(ニッ
コウキスゲの類)の大群落。
そして高原のオアシス忠別沼。
大自然の織り成すドラマにしばし息を呑んだ。スゴイ
ゆったりとしたアップダウンをくぐりぬけて五色岳へ。
この辺りから天気は一気に好転する。
化雲岳へ着く頃これまで出し惜しみしていたように北海道の大パノラマが広がってい
た。
8月も後半だというのに咲き乱れる高山植物の数々。
紅に黄色に白紫...。
なだらかに続く野原がそんな色で果てしなく染まっている。
そして紺碧の空の向こうには大きな要塞のようなトムラウシ。
本州で生まれ育った我々にとって未知の風景が静かな感動を呼ぶ。
化雲岳と呼ばれる金峰山の五丈岩のような場所でしばらく遊び今宵の宿泊地ヒサゴ沼
避難小屋へ下る。


8月20日 ヒサゴ沼避難小屋〜日本庭園〜トムラウシ〜トムラウシ温泉

オイあれ! いかにも避難小屋らしかったヒサゴ沼からトムラウシの稜線へ出るガレ場
を登っているとき誰かが指を指した。ナキウサギである。
声は聞こえどその姿はなかなかみせないといわれるナキウサギが岩の上からこちらを
伺っているのだ。
これをラッキーと言わずして何をラッキーというのか!
トムラウシの登りはガレ場を幾つも乗り越していく。
途中にある日本庭園はこれまた素晴らしい場所だ。
岩とハイマツといけが織り成すバランスはその名にふさわしい。
北沼から最後の岩稜を登りつめトムラウシ山頂に着く。
今回の目的で一番大きな位置をしめていたのはこの山であっただけにとにかくうれしか
った。
ここではシマリス君が我々を出迎えてくれた。
西方にはイワイチョウが1km四方敷き詰められたまさにその名のとおりの「黄金が
原」目を落とせば日本一美しい沢といわれるクワウンナイ川の源頭「神々の庭」
東方には遥か石狩連峰を眺めつつコンロで紅茶を沸かす。
至福のひとときだ。
しかし天気は再び下り坂。
雨を懸念して十勝岳への縦走は諦めトムラウシ温泉への下山路に歩を向ける。
その途上のトムラウシ公園もきれいだった。
雪渓もお花畑もよかった。
このときこの後に襲う事態を我々は予測できずにいたのだった。
前トム平からコマドリ沢の岩石帯をトラバースしカムイサンケナイ川を何度も徒渉する
沢道となる。
トムラウシ公園の下り道でこけた私は足の調子が思わしくなくまずは下りに強い藤田に
先に行ってもらう。
続いて福山にも先行してもらい三者別々の行動となった。
いつのまにか雨も本降り。
おまけにガスも出てきた。
沢の岩影で休んでいると何だか後ろから「グオー!」という山の親爺の声が聞こえてき
そうであな恐ろしや。
福山と抜きつ抜かれつを繰り返しながら道は沢を離れ尾根道へと登っていく...のだ
が!
ここからトムラウシ温泉までの数時間は過去最悪の悪路になってしまった。
いやこんなのは登山道じゃない!
夏の間中降っていた雨が道をすべて泥沼化してしまっていた。
道の端から端まで泥水がずーっとたまっており
水に浸かるのを余儀なくされる。
しかもこの泥沼、深ければ「グチョー」と腿まで埋もれ足を抜くことすらままならな
い。
ちょうど春に耕したばかりの田んぼに川から水を引いた状態が延々と続いた状態。
しかもそれが勾配のある山道なのだ。
よって急な下り坂になれば全身どろどろになるくらいよく滑る。
もーどーにでもして!と叫びたくなるほどであるが精神的にも肉体的にも疲れていて足
が前にでない。
福山と私がこの悪路と悪戦苦闘している間に一人先行した藤田は尾根の分岐を別下山路
である林道方面へ下ってしまっていた。
彼曰く「林の至るところに”クマ注意”の看板が出ていて生きた心地がしなかったよ」
だったそうである。
「どうしたんだよその顔!」藤田に遅れること1時間半
やっとの思い出着いたトムラウシ温泉国民宿舎「東大雪荘」の前で藤田が私を見て叫
ぶ。
「えっ?」手で顔を拭うと思いっきり「血...」あまりの疲れと雨とザックの重みで
鼻血を流していたのだった。
「北海道って厳しい」
地図に記されているコースタイムというものがあるが
私の場合本手の山では普段休憩を入れても幾分このコースタイムより早く歩ける。
しかし北海道においては同じペースでは記されたコースタイム通りに歩けない
(今後行く人は気をつけて計画を立ててくださいね)
東大雪荘は一泊二食付き¥6640とリーズナブルであるが施設料理温泉ともものすご
くよい。
ここに泊まりにくるだけでも価値がある。


8月21日 トムラウシ温泉〜新得駅〜上富良野駅〜十勝岳温泉

朝目が覚めると膝が曲がらないほど痛い
(後日の診断ではやはり関節炎であった)
新得駅までバスで降り上富良野駅まで電車を乗り継ぎ十勝岳温泉へ。
ここで宿泊したカミホロ荘は施設はたいしたことないが料理がフルコースで大感激であ
った。
もう山登りというより温泉旅行に徹することにする。


8月22日 十勝岳温泉〜吹上温泉〜旭川〜羽田

今回登れなかった十勝岳を見に村営バスで登る。
その帰り白金台方面の道を北の国からのロケで宮沢りえも浸かった吹上温泉に向けて歩
いてみた。
絵に描いたように一直線にのびた舗装道路の向こうからキタキツネが走ってくる。
あーあー、あああああ〜あ〜♪♪ さだまさしのハミングをいつのまにか口ずさんでい
た。

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利用交通機関:
技術レベル
2/5
体力レベル
4/5

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