記録ID: 8381804
全員に公開
無雪期ピークハント／縦走
白山
【白川郷】蓮如峠と三等・二重滝 ブナと湿原の秘境
2025年07月05日(土) [日帰り]
hillwanderer
- GPS
- --:--
- 距離
- 9.9km
- 登り
- 1,259m
- 下り
- 1,258m
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日帰り
- 山行
- 10:10
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 10:10
5:50
30分
横谷峠への登り口
6:20
30分
横谷峠
6:50
130分
横谷に降りる
9:00
210分
蓮如峠
12:30
110分
三等・二重滝のピーク（△1441.1m）
14:20
70分
横谷に降りる
15:30
30分
横谷峠
16:00
横谷峠への登り口
植生保護の観点から湿原の場所を伏せるべきか迷いましたが、そもそもこんなところまで来る物好きな人はいなかろう…と思い、ルート公開することにしました。
| 天候 | 曇りのち小雨 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2025年07月の天気図 |
| アクセス |
利用交通機関：
自家用車
|
| コース状況／ 危険箇所等 |
【馬狩谷〜横谷峠〜横谷】 ・ 横谷峠は、卒塔婆峠や蓮如峠とともに、加須良集落（現在は廃村）から鳩谷に至る古道を構成していた古い峠の一つ。馬狩谷沿いの林道のゆるいカーブのところにピンクテープがあり、そこが古道の登り口。ところどころ倒木があるものの、踏み跡は概ね明瞭でマーキングもあり、横谷まで問題なく歩ける。ただし、峠の横谷側に、峠から山腹を水平に伸びる関係ない踏み跡（仕事道？）があり、そちらに入り込みやすいので注意。正解の古道は谷沿いの右岸側を降りているが、降り口がやや藪っぽいので分かりにくい。 ・ なお、横谷峠の峠道の横谷側の登り口にはマーキングの類は全くなく、横谷側から来た場合、ちょっと見つけるのが難しいかもしれない。横谷を渡渉してから、横谷峠に通じる小さな谷の右岸側の斜面を探せば、明瞭な踏み跡とマーキングを見つけられると思う。 【横谷〜蓮如峠】 ・ 蓮如峠は、北陸布教の途上の蓮如上人が越えたという言い伝えがあり、この名で呼ばれている。峠の頂点に蓮如上人が座ったとされる「蓮如岩」があり、地形図にも記されている。 峠までの古道は、以下のfloatcloudさんの記録に詳しいので、是非こちらをご参照ください。 https://60cafab238.seesaa.net/article/201406article_15.html ・ 林道終点から谷沿いに進む序盤の区間が非常に藪が濃く、夏季は踏み跡を辿るのが非常に難しい（そのため、もし峠越えの古道を完全トレースしたいのであれば、晩秋など藪が枯れた時期をおすすめします）。正直、この区間は沢に降りて沢伝いに歩いてしまったほうが早いくらいであり、足元は沢靴がおすすめ。谷を離れて斜面に取り付いてからはマーキングも付いており、踏み跡も次第にはっきりしてくるが、それとて藪がかぶって分かりにくい箇所が多々ある。地元の方が時々整備に入っているようなので、入山のタイミングがその前になるか後になるかで難度が変わってくると思う。 【蓮如峠〜三等・二重滝ピーク（△1441.1m）】 ・ 完全な藪尾根で、踏み跡やマーキングは皆無（ただ、驚いたことに、ところどころ図根点の杭が打たれている。付けた人は本当にすごい）。三等三角点・二重滝のピークは、かの有名ながおろさんも積雪期にテレマークで訪問されており、「蓮如ピーク」と命名されている。 ・ ブナの森が素晴らしく、また今回、4箇所の湿原を見つけることができた。蓮如峠から見て最も手前側の湿原�，魯皀Ε札鵐乾韻侶架遒�すごい。また湿原��が最大の湿原で長辺150mくらいあるが、残念ながら乾燥化が進んでいる。湿原�い惑鬚げ屬侶伽犬蕕靴�ものが見られ植生が最も豊かそうだったが、水位が高くて湿原内に近づけず、遠目に観察しただけのため詳しい植生は不明。（湿原� 銑い離淵鵐丱螢鵐阿麓命人麕粗�の概念図に対応） ・ 藪はかなり濃くタフな藪漕ぎになるが、大きなブナが生えている箇所は藪が薄いので、そうした場所をつなぎながら歩けば多少はマシ。 ※ 今回、下山では往路の藪尾根を避けるため三等・二重滝ピークの東側の小さな沢を下降して横谷の林道に出た。この沢は単なるガレ谷で滝は全くなく下降には適しているが、下部は藪がひどくかなり不快。登りに使うことはおすすめできない。 |
写真
今回の山行の概念図。黄緑の点線が歩いたルート。（クリックで拡大できます）
トヨタ白川郷自然学校から馬狩谷沿いの林道を進み、地形図で標高点620mの記載がある緩いカーブのところに駐車。この箇所の山側にピンクテープがついており、そこから横谷峠越えの古道が始まっている。
トヨタ白川郷自然学校から馬狩谷沿いの林道を進み、地形図で標高点620mの記載がある緩いカーブのところに駐車。この箇所の山側にピンクテープがついており、そこから横谷峠越えの古道が始まっている。
横谷峠越えの古道は概ね明瞭。最初は植林混じりだが、しばらく登ると気持ちの良い自然林に包まれる。緩やかに山腹をめぐっていく道の勾配のやさしさに、古い峠道の風格を感じる。
横谷峠越えの古道は概ね明瞭。最初は植林混じりだが、しばらく登ると気持ちの良い自然林に包まれる。緩やかに山腹をめぐっていく道の勾配のやさしさに、古い峠道の風格を感じる。
横谷峠。峠の頂点には大きなミズナラが一本立っている。看板などは全くない。
横谷側に降りると、ぐっと自然度が増し、大きなブナも頻繁に見られるようになる。
横谷に降り立った。横谷の流れは非常に澄んでいて冷たく、水をすくって飲んでいると、手が痺れて痛くなってくるほど。おそらく、源頭部には大量の雪渓が残っているのだろう。水深は浅く、渡渉は容易。
横谷に降り立った。横谷の流れは非常に澄んでいて冷たく、水をすくって飲んでいると、手が痺れて痛くなってくるほど。おそらく、源頭部には大量の雪渓が残っているのだろう。水深は浅く、渡渉は容易。
横谷の対岸の藪を適当に突き抜けて（残念ながら、古道の踏み跡は残されていない）、地図にない林道に出る。
前衛芸術のオブジェのごとく唐突に林道に突き刺さった大木。冬の間にこの斜面を何度も襲う雪崩のしわざだ。
じきに林道は藪に飲み込まれる形で途切れるが、その箇所の谷側にピンクテープが付いており、そこから谷に降りる。
本来なら谷の中州沿いに踏み跡とマーキングが続いているはずだが、この時期はマント群落に飲み込まれてひどい藪で、トレースは困難。前回、蓮如峠越えの道を辿った際に苦汁を舐めた区間だ。
本来なら谷の中州沿いに踏み跡とマーキングが続いているはずだが、この時期はマント群落に飲み込まれてひどい藪で、トレースは困難。前回、蓮如峠越えの道を辿った際に苦汁を舐めた区間だ。
そのため、ハナから踏み跡を辿るのはあきらめ、ひとまず中州を越えて沢伝いに上流を目指す。この沢も藪っぽくて倒木も多く、沢登りの爽快さは全くないが、藪の中を進むよりはマシだし、地図上での現在地の確認も容易だ。沢足袋で来てよかった。
そのため、ハナから踏み跡を辿るのはあきらめ、ひとまず中州を越えて沢伝いに上流を目指す。この沢も藪っぽくて倒木も多く、沢登りの爽快さは全くないが、藪の中を進むよりはマシだし、地図上での現在地の確認も容易だ。沢足袋で来てよかった。
しばらく沢を辿ったあと、確かこの辺り…という箇所で左岸側の斜面をしらみつぶしに探すと、あった、踏み跡とピンクテープ！ 峠越えの古道に復帰成功。
この後は楽勝…と思いきや、何だか前回来た時より藪がひどくなってる？ 藪がかぶっている区間が多く、古道の踏み跡を辿るのに結構苦労する。頻繁にピンクテープがついていなかったら、すぐに道を外してしまいそうだ。
この後は楽勝…と思いきや、何だか前回来た時より藪がひどくなってる？ 藪がかぶっている区間が多く、古道の踏み跡を辿るのに結構苦労する。頻繁にピンクテープがついていなかったら、すぐに道を外してしまいそうだ。
蓮如峠に到着。これが地形図にも記載されている「蓮如岩」。蓮如上人が座って休んだとされる伝説の岩だ。2022年9月以来、2回目のご対面。
「蓮如岩」と書かれた標柱もあるが、ほとんど訪れる人がないためだろう、倒れたままになっている。
峠でしばらく休んだあと、今回の山行の主目的である、三等三角点「二重滝」ピーク（△1441.1m）へ向けて、蓮如岩の裏手から南西の尾根に取り付く。ここからは踏み跡の類はなく、完全な藪尾根だ。
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峠でしばらく休んだあと、今回の山行の主目的である、三等三角点「二重滝」ピーク（△1441.1m）へ向けて、蓮如岩の裏手から南西の尾根に取り付く。ここからは踏み跡の類はなく、完全な藪尾根だ。
この尾根は積雪期にスキーで辿ったことがあるので分かってはいたが、やはり素晴らしいブナの大木の森。
最初は藪が薄かったので、もしかしたら楽勝なのでは？ と思っていたが、急登を越えて台地状の区間に出たとたん、背丈を越える濃密な笹藪につかまってしまった。やはり藪山にうまい話はない。（時間の関係で、△1204.1mの四等・入谷の三角点探しはパス。根性のない奴ですみません）
最初は藪が薄かったので、もしかしたら楽勝なのでは？ と思っていたが、急登を越えて台地状の区間に出たとたん、背丈を越える濃密な笹藪につかまってしまった。やはり藪山にうまい話はない。（時間の関係で、△1204.1mの四等・入谷の三角点探しはパス。根性のない奴ですみません）
濃い藪を突き進み、池があるかも、と事前の読図で考えていたP1222の横の小さな窪地に来てみると…唐突に明るい草原が目の前に広がった。し、湿原だ！（冒頭の概念図でいうと「湿原� 廚亮掌供�
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濃い藪を突き進み、池があるかも、と事前の読図で考えていたP1222の横の小さな窪地に来てみると…唐突に明るい草原が目の前に広がった。
し、湿原だ！（冒頭の概念図でいうと「湿原� 廚亮掌供�
し、湿原だ！（冒頭の概念図でいうと「湿原� 廚亮掌供�
湿原の水位が高くて中まで踏み込めず（というか、植生保護の観点からも中に入るべきではないだろう）、こんなズーム写真しかなくて恐縮ですが、何となく全体的に赤く見えるの、わかります？ これ全部、モウセンゴケ！ かなりのモウセンゴケの群落だった。白いものもポツポツ見えるので、花も咲かせているっぽい。近づけないのが歯がゆい…
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湿原の水位が高くて中まで踏み込めず（というか、植生保護の観点からも中に入るべきではないだろう）、こんなズーム写真しかなくて恐縮ですが、何となく全体的に赤く見えるの、わかります？ これ全部、モウセンゴケ！ かなりのモウセンゴケの群落だった。白いものもポツポツ見えるので、花も咲かせているっぽい。近づけないのが歯がゆい…
湿原のふちに生えていたモウセンゴケを見つけて接写。残念ながら、この子は花を持っていなかった。
湿原�，鮓紊砲靴董△気蕕棒茲悄Ｂ腓�なブナが密生している箇所は藪が薄いので、そうした箇所をつなぐように進んでいく。
こんな藪尾根に無雪期に入り込む人は皆無だろう、と思っていたが、驚くべきことに藪の中にところどころ図根点の標識が打ってあった。これを付けた人、かなりの手練れと見た。
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こんな藪尾根に無雪期に入り込む人は皆無だろう、と思っていたが、驚くべきことに藪の中にところどころ図根点の標識が打ってあった。これを付けた人、かなりの手練れと見た。
ここにも池があるかも、と思っていたP1373の南側の窪地を目指して進んでいったところ、その手前の意外な場所にもちょっとした湿原（湿原�◆砲�あった。が、ここは乾燥化が進んでおり、あまり目ぼしい植物には出会えなかった。
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ここにも池があるかも、と思っていたP1373の南側の窪地を目指して進んでいったところ、その手前の意外な場所にもちょっとした湿原（湿原�◆砲�あった。が、ここは乾燥化が進んでおり、あまり目ぼしい植物には出会えなかった。
そして、本命のP1373南側の窪地に到着。かなり広い湿原（湿原��）となっていた。長辺で150mくらいはあるはず。
この湿原は規模は大きく、なかなか爽快な別天地となっていたが、残念ながら乾燥化が進んでおり、モウセンゴケなどの珍しい植物はほんの一部にしか見られなかった。
この湿原は規模は大きく、なかなか爽快な別天地となっていたが、残念ながら乾燥化が進んでおり、モウセンゴケなどの珍しい植物はほんの一部にしか見られなかった。
三等・二重滝のピークへと斜面を登りながら、先ほどの湿原��を振り返って見下ろす。
三等・二重滝のピークの周辺の台地は、ブナ巨木の宝庫。必死に藪を漕ぎながらも、思わず見とれてしまう。
と、山頂手前の予想もしなかったところに、何ともう一つ湿原が！（湿原�ぁ�
湿原の中央付近に、白い花がぽつぽつと咲いているのが遠目に見て取れる。この湿原は水位が高くて沼地のようになっているので近づくことができず、何の花か判別できないのがもどかしい。モウセンゴケの花だろうか？ それともイワイチョウ？
湿原の中央付近に、白い花がぽつぽつと咲いているのが遠目に見て取れる。この湿原は水位が高くて沼地のようになっているので近づくことができず、何の花か判別できないのがもどかしい。モウセンゴケの花だろうか？ それともイワイチョウ？
最後の湿原を後にして、二重滝ピークへの斜面を登っていく。湿原�い鮓�下ろしたところ。
三等三角点、点名「二重滝」（△1441.1m）。標石はしっかり出ていて、地形図に示されたとおりの場所にあるため、比較的見つけやすかった。ただ、濃い藪に包まれており、展望はない（積雪期は眺望絶佳のピークなのだが…）。
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三等三角点、点名「二重滝」（△1441.1m）。
標石はしっかり出ていて、地形図に示されたとおりの場所にあるため、比較的見つけやすかった。ただ、濃い藪に包まれており、展望はない（積雪期は眺望絶佳のピークなのだが…）。
標石はしっかり出ていて、地形図に示されたとおりの場所にあるため、比較的見つけやすかった。ただ、濃い藪に包まれており、展望はない（積雪期は眺望絶佳のピークなのだが…）。
下山は、当初は往路を引き返すつもりだったが、藪尾根を引き返すのがおっくうになり、二重滝ピークの真東の小さな谷を一気に下降してしまうことにした。この北隣の谷（がおろさん命名「蓮如シュート」）を冬期にスキーで滑降した時の経験から、おそらく大した悪場はあるまいと踏んでいた。
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下山は、当初は往路を引き返すつもりだったが、藪尾根を引き返すのがおっくうになり、二重滝ピークの真東の小さな谷を一気に下降してしまうことにした。この北隣の谷（がおろさん命名「蓮如シュート」）を冬期にスキーで滑降した時の経験から、おそらく大した悪場はあるまいと踏んでいた。
思った通り、谷は滝もなく、どんどん下降していける。ただし、ガレがひどく、落石注意。
雪渓が随所に残っており、沢登り装備として常備しているチェーンスパイクを効かせて慎重に通過していく。
しかしこの谷、滝が出てこないのはありがたいが、下部はひどい藪。おそらく、雪崩でガレが堆積して沢が埋まってしまっているせいだろう。さすがに辟易して左岸側の斜面を巻くように下っていく。
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しかしこの谷、滝が出てこないのはありがたいが、下部はひどい藪。おそらく、雪崩でガレが堆積して沢が埋まってしまっているせいだろう。さすがに辟易して左岸側の斜面を巻くように下っていく。
装備
| 備考 | ・ フェルトソール沢足袋使用。ロープや下降器など沢登りの基本装備も一応携行した。このルートは横谷など渡渉箇所があるうえ、濃い藪が続くため沢を代替ルートにできると精神的保険になるため、少なくとも足元は沢足袋or沢靴で臨んだ方が何かと便利（もちろん、普通の登山靴でも歩けるルートですが）。 |
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感想
三等三角点・点名「二重滝」のピーク（△1441.1m）は、白川郷の山奥、三方岩岳の北側にある、訪れる人も稀な藪山である。このピークには積雪期に2回訪れているが、そのたびに素晴らしいブナの森と、そのたおやかな地形に感嘆させられた。（なお、このピークは、かの有名ながおろさんもテレマークスキーで訪問されており、「蓮如ピーク」と命名されている。）
とりわけ気になったのは、地形図をよく見ると、このピークの台地に、窪地が2箇所も描かれていることだった。もしかしたらあの美しいブナの森の中に、人知れず静かな池が眠っているのかもしれない、しかし、そのことを確かめるには、藪漕ぎは覚悟の上で、雪のない時期に訪問するしか手段はない。これは是が非でも、このピークの北東側にある蓮如峠の古道（この道も一度辿ったことがある）もからめて、無雪期にも訪れてみなければならないと考えていた。
そして今回の山行と相成ったわけだが、窪地の正体は、池ではなく、池塘をちりばめた湿原だった。しかも、地形図上の2箇所の窪地のほかにも、意外な場所に2つの湿原が隠れていた。一部は乾燥化が進んでしまっているとはいえ、山頂のまわりに大小4つもの湿原が点在する山というのは、あまり見たことがない。ブナの大木の森に囲まれた円い湿原、群生するモウセンゴケに赤く染まって、点々とちらばる池塘に白い夏の光をたたえたそれらの空間は、山上の小さな秘境と呼ぶにふさわしかった。
今でこそ泥炭とミズゴケに埋もれつつあるこれらの湿原も、昔は満々と水を湛えた4つの池だったのではないだろうか。少なくとも、この山の山かげにある蓮如峠を蓮如上人が越えた数百年前は、きっとそうだったろう。峠の上にある4つの不思議な池と、それにまつわる古い言い伝えを道案内の古老が語って聞かせる声に、峠の岩に腰かけて休みながら、蓮如上人が静かに耳を傾けている。そんな光景が眼前に浮かんでくる気がする。しかし今は、古老の訥々とした物語の声もとうに絶えて、ブナの葉ずれの音だけが、昔日と同じように峠をさやさやと渡っていく。
＜関連記録＞
・ 積雪期に蓮如峠と三等・二重滝をスキーで訪れた際の記録（2022年2月）
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4036053.html
・ 蓮如峠を加須良川側から横谷側へと抜けた際の記録（2022年9月）
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4713263.html
・ 積雪期に三等・二重滝から三方岩岳を目指した際の記録（2025年4月）
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-8010452.html
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