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記録ID: 8010452
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積雪期ピークハント/縦走
白山

【白山北部】三等・二重滝(△1441.3m)から三方岩岳

2025年04月12日(土) [日帰り]
情報量の目安: S
都道府県 石川県 岐阜県
 - 拍手
GPS
--:--
距離
13.9km
登り
1,569m
下り
1,569m

コースタイム

日帰り
山行
9:50
休憩
0:30
合計
10:20
5:30
90
駐車地
7:00
160
三等・二重滝の直登尾根への取り付き
9:40
10:10
190
三等・二重滝(△1441.3m)
13:20
50
白山北方稜線
14:10
100
15:50
駐車地
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2025年04月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
トヨタ白川郷自然学校付近の四差路の駐車スペース(登山届ポストあり)に駐車。白山白川郷ホワイトロードは馬狩料金所まで除雪されている。
コース状況/
危険箇所等
・ 三等・二重滝のピーク(△1441.3m)から、そのひとつ南西にあるP1410までは、穏やかな尾根に立派なブナの森が続き、素晴らしい。加須良川右岸尾根のひとつのハイライトといっていい区間。
・ P1410から白山北方稜線までの間が核心部。全体的に尾根が瘦せており断続的に急斜面も現れる。特にP1318の前後はガレた岩峰が続き、厳冬期は完全なナイフリッジを形成していると思われる(今回は既に地面が露出しはじめていたため比較的容易に通過)。また、北方稜線への最後の登りは岩が出ており、今回は一部雪が落ちて直登が難しそうに見える箇所があったため、横谷の谷底に降りて巻いた。
・ 雪は締まっておりツボ足でも十分歩けるが、今回は気温が高く雪がかなり緩んで歩きにくかったため、ワカンを使用した。アイゼンは携行したが雪が緩んでいたので使用場面なし(ただし急斜面が多々あるので必携)。
・ ロープは携行したが使用場面なし。ただ、上記の区間を厳冬期に登る場合は持っていたほうがいいかもしれない。
今回の山行の概念図。赤字の「未踏区間」を歩くことが主目的。黄緑の点線が実際に辿ったルート。
(クリックで拡大できます)
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今回の山行の概念図。赤字の「未踏区間」を歩くことが主目的。黄緑の点線が実際に辿ったルート。
(クリックで拡大できます)
登山届ポストのある、いつもの駐車スペースに駐車。大した標高でもないのに、いまだに背丈くらいの雪の壁が残っていることに驚く。
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登山届ポストのある、いつもの駐車スペースに駐車。大した標高でもないのに、いまだに背丈くらいの雪の壁が残っていることに驚く。
白山白川郷ホワイトロードの両脇も、背丈を越える雪の壁。この時期でもこんなに残雪があるのは、初めて見るかもしれない。
白山白川郷ホワイトロードの両脇も、背丈を越える雪の壁。この時期でもこんなに残雪があるのは、初めて見るかもしれない。
除雪は馬狩料金所まで。ここからは雪道を歩く。雪は締まっているが、気温が高くて雪面がグズグズで歩きにくいので、ワカンを履く。
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除雪は馬狩料金所まで。ここからは雪道を歩く。雪は締まっているが、気温が高くて雪面がグズグズで歩きにくいので、ワカンを履く。
鞍部に登り上げたところでホワイトロードを離れ、北側の横谷の谷底に向けて急降下。秘技・ワカングリセード(秘技というほどでもないけど…)で、あっという間に谷底が近づく。
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鞍部に登り上げたところでホワイトロードを離れ、北側の横谷の谷底に向けて急降下。秘技・ワカングリセード(秘技というほどでもないけど…)で、あっという間に谷底が近づく。
横谷の谷底では、地図にない橋を渡って三等・二重滝への尾根取り付きへ。
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横谷の谷底では、地図にない橋を渡って三等・二重滝への尾根取り付きへ。
ここ、数年前にスキーで滑った谷(がおろさん命名「蓮如シュート」)だけど、なんか様子がおかしい?
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ここ、数年前にスキーで滑った谷(がおろさん命名「蓮如シュート」)だけど、なんか様子がおかしい?
ひええ、樹木が一方向になぎ倒されてる…。どうやらこの冬の間に大きな雪崩が出たらしい。けっこう太い木も根元から見事にヘシ折られている。雪崩の威力に慄然。
ひええ、樹木が一方向になぎ倒されてる…。どうやらこの冬の間に大きな雪崩が出たらしい。けっこう太い木も根元から見事にヘシ折られている。雪崩の威力に慄然。
三等・二重滝への直登尾根を登る。とにかく急で喘ぎ登る。最初はガスっていたが…
三等・二重滝への直登尾根を登る。とにかく急で喘ぎ登る。最初はガスっていたが…
ようやく霧が晴れ、青空が現れた。
ようやく霧が晴れ、青空が現れた。
眼下を埋め尽くす雲海
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眼下を埋め尽くす雲海
ナタ目発見。こんな尾根にも、かつては人が入っていたんだなぁ…。おそらく猟師の方ではないだろうか。
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ナタ目発見。こんな尾根にも、かつては人が入っていたんだなぁ…。おそらく猟師の方ではないだろうか。
三等・二重滝の山頂直下の台地は、相変わらず素晴らしいブナの森がひろがる
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三等・二重滝の山頂直下の台地は、相変わらず素晴らしいブナの森がひろがる
いいところだなー
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いいところだなー
言葉もないです
三等・二重滝(△1441.3m)に到着。人形山や猿ヶ馬場山などを望む、静かな好展望ピーク。あまりにぽかぽか陽気で、20分くらいうたた寝してしまった。
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三等・二重滝(△1441.3m)に到着。人形山や猿ヶ馬場山などを望む、静かな好展望ピーク。あまりにぽかぽか陽気で、20分くらいうたた寝してしまった。
三方岩岳も間近に見える。あそこまで無事歩き通せるだろうか。
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三方岩岳も間近に見える。あそこまで無事歩き通せるだろうか。
さて、三等・二重滝を後にして、白山北方稜線へ向けて尾根を南西へ辿っていく。ここからは未踏区間で、今回の山行の目的となる区間。
さて、三等・二重滝を後にして、白山北方稜線へ向けて尾根を南西へ辿っていく。ここからは未踏区間で、今回の山行の目的となる区間。
おおー、ええとこやん!
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おおー、ええとこやん!
穏やかなブナの回廊が続く。
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穏やかなブナの回廊が続く。
三方岩岳を望みながら。
三方岩岳を望みながら。
なかなか太いブナも多く、見ごたえあります。
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なかなか太いブナも多く、見ごたえあります。
三等・二重滝を振り返る。豊かなブナの森に包まれていることがよくわかる。
三等・二重滝を振り返る。豊かなブナの森に包まれていることがよくわかる。
P1410に到着。地形図ではここから急に地形が険しくなる。問題はこの先だ。
P1410に到着。地形図ではここから急に地形が険しくなる。問題はこの先だ。
ここまではブナだったが、急に天然ヒノキの巨木やゴヨウマツが増える。尾根が痩せていて、岩が出ている証拠だ。
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ここまではブナだったが、急に天然ヒノキの巨木やゴヨウマツが増える。尾根が痩せていて、岩が出ている証拠だ。
P1410の先に足を踏み出すと…ぬおっ、いきなり急斜面。しかも尾根筋は痩せているせいか、すでに雪が消えて藪が出てしまっている。
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P1410の先に足を踏み出すと…ぬおっ、いきなり急斜面。しかも尾根筋は痩せているせいか、すでに雪が消えて藪が出てしまっている。
ここは横谷側の斜面がちょっとだけ緩く、比較的容易に巻くことができて助かった。
ここは横谷側の斜面がちょっとだけ緩く、比較的容易に巻くことができて助かった。
尾根筋はこのとおり。しかし立派な天然ヒノキやブナが多いなぁ。
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尾根筋はこのとおり。しかし立派な天然ヒノキやブナが多いなぁ。
コダマが棲んでいそうな老ブナ
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コダマが棲んでいそうな老ブナ
P1410のひとつ南の小ピークは藪が露出していたので、初めは巻こうと思っていたが、あまりに立派な天然ヒノキやオオシラビソが多く、スルーするのはもったいないので、尾根通しに歩くことにした。あまり人の手が入っていないエリアに違いない。
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P1410のひとつ南の小ピークは藪が露出していたので、初めは巻こうと思っていたが、あまりに立派な天然ヒノキやオオシラビソが多く、スルーするのはもったいないので、尾根通しに歩くことにした。あまり人の手が入っていないエリアに違いない。
尾根は痩せているが、樹木が密生しているので通過は苦労しない。ご近所にある仙人窟岳の北東尾根の雰囲気によく似ているな。
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尾根は痩せているが、樹木が密生しているので通過は苦労しない。ご近所にある仙人窟岳の北東尾根の雰囲気によく似ているな。
根っこが潜れそうな異形の大ヒノキ。
根っこが潜れそうな異形の大ヒノキ。
さあ、問題はこの下りだ。地形図では等高線がかなり詰まっており、断崖になっている可能性もある。無事降りられるだろうか。
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さあ、問題はこの下りだ。地形図では等高線がかなり詰まっており、断崖になっている可能性もある。無事降りられるだろうか。
が、ふたを開けてみると、あんがい普通の急斜面で普通に降りられた。何だか拍子抜け。ここのためにロープも持ってきたのに…
が、ふたを開けてみると、あんがい普通の急斜面で普通に降りられた。何だか拍子抜け。ここのためにロープも持ってきたのに…
しかし、どうやら真の核心はここからのようだ。明らかに痩せてて雪庇が崩壊し始めている手前の小ピークも気になるが…
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しかし、どうやら真の核心はここからのようだ。明らかに痩せてて雪庇が崩壊し始めている手前の小ピークも気になるが…
問題はここ、白山北方稜線に登り上げる部分。雪が消えて岩が露出してしまっている。さて、どうするか…。とりあえずもう少し近づいてみることにした。
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問題はここ、白山北方稜線に登り上げる部分。雪が消えて岩が露出してしまっている。さて、どうするか…。とりあえずもう少し近づいてみることにした。
P1318のあたりは樹木がなく、荒れた尾根筋が残雪の間から露出している。無雪期はガレた岩峰が続くようだ。
P1318のあたりは樹木がなく、荒れた尾根筋が残雪の間から露出している。無雪期はガレた岩峰が続くようだ。
気づけば、右手には仙人窟岳・笈ヶ岳・大笠山がそろい踏み。
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気づけば、右手には仙人窟岳・笈ヶ岳・大笠山がそろい踏み。
荒涼とした痩せ尾根が続く。
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荒涼とした痩せ尾根が続く。
一部の急斜面は完全に雪が切れてしまっていて、藪を掴んで強引に這い上がる。
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一部の急斜面は完全に雪が切れてしまっていて、藪を掴んで強引に這い上がる。
北方稜線への急登の手前は、おそらく厳冬期には完全なナイフリッジになっていただろう。今は既に一部地面が露出していて、通過はそれほど難しくない。
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北方稜線への急登の手前は、おそらく厳冬期には完全なナイフリッジになっていただろう。今は既に一部地面が露出していて、通過はそれほど難しくない。
さて、問題の雪切れ急斜面の下にやってきた。やはり岩が出ているが、薄くブッシュが茂っているのが視認できる。あんがい行けるかもしれないとも思ったが、突っ込んで途中で悪場にぶつかったら面倒なことになる。大事をとって巻くことにした。
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さて、問題の雪切れ急斜面の下にやってきた。やはり岩が出ているが、薄くブッシュが茂っているのが視認できる。あんがい行けるかもしれないとも思ったが、突っ込んで途中で悪場にぶつかったら面倒なことになる。大事をとって巻くことにした。
左手に落ち込む横谷の源頭部は、見たところ滝も露出しておらず、問題なく登高できそうだ。ここから巻こう。もちろん雪崩の恐れがあるので、スピーディーに行動しないといけないが…
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左手に落ち込む横谷の源頭部は、見たところ滝も露出しておらず、問題なく登高できそうだ。ここから巻こう。もちろん雪崩の恐れがあるので、スピーディーに行動しないといけないが…
横谷の谷底に向けて急降下。初めはバックステップで慎重に、途中からグリセードで一気に。
横谷の谷底に向けて急降下。初めはバックステップで慎重に、途中からグリセードで一気に。
横谷の谷底。隠れた険谷として沢マニアの間で有名(?)なだけに、この時期に谷底にいられることが不思議な感じがする。
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横谷の谷底。隠れた険谷として沢マニアの間で有名(?)なだけに、この時期に谷底にいられることが不思議な感じがする。
登っていくと、じきに壁のような急斜面が現れる。おそらく滝が埋まっているのだろう。雪渓が薄い可能性がある中央部は避け、斜面側をキックステップで登っていく。
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登っていくと、じきに壁のような急斜面が現れる。おそらく滝が埋まっているのだろう。雪渓が薄い可能性がある中央部は避け、斜面側をキックステップで登っていく。
巻いた尾根を見上げる。やはり岩が続いており、かなり険しい眺めだ。
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巻いた尾根を見上げる。やはり岩が続いており、かなり険しい眺めだ。
横谷を詰めていく。
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横谷を詰めていく。
途中、対岸にホワイトロードの三方岩隧道を視認。トンネル坑口はほぼ埋まっており、扁額だけが露出していた。改めて積雪量の凄さを実感する。
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途中、対岸にホワイトロードの三方岩隧道を視認。トンネル坑口はほぼ埋まっており、扁額だけが露出していた。改めて積雪量の凄さを実感する。
そのままトラバース気味に稜線へ。
そのままトラバース気味に稜線へ。
白山北方稜線に立った。最後の雪切れ箇所は巻いてしまったが、とりあえず加須良川右岸尾根を北方稜線まで抜けることができたので、良しとしますか。
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白山北方稜線に立った。最後の雪切れ箇所は巻いてしまったが、とりあえず加須良川右岸尾根を北方稜線まで抜けることができたので、良しとしますか。
三方岩岳の岩場。
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三方岩岳の岩場。
少しの登りで、三方岩岳山頂。なぜかこの山の山頂だけ、きれいに雪がなかった(本当はひとつ南のピークのほうが標高が高いけど、まあどうでもいいや)。この山まで来れば誰かいるかなと思ったけど、今日は誰も登っていないようだ。
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少しの登りで、三方岩岳山頂。なぜかこの山の山頂だけ、きれいに雪がなかった(本当はひとつ南のピークのほうが標高が高いけど、まあどうでもいいや)。この山まで来れば誰かいるかなと思ったけど、今日は誰も登っていないようだ。
はるか北へと打ち連なる、北方稜線の眺め。
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はるか北へと打ち連なる、北方稜線の眺め。
この時期にしては、笈ヶ岳はまだ白さを保っている。
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この時期にしては、笈ヶ岳はまだ白さを保っている。
そして白山。先週登ったばかりとはいえ、やはりその美しさに、いつまでも眺め入ってしまう。
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そして白山。先週登ったばかりとはいえ、やはりその美しさに、いつまでも眺め入ってしまう。
野谷荘司山方面は、点々とオオシラビソをちりばめて、なんとなくメルヘン。
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野谷荘司山方面は、点々とオオシラビソをちりばめて、なんとなくメルヘン。
眼下には辿ってきた尾根も見える。厳冬期に辿ったら、かなり面白いルートになりそうな気がする。
眼下には辿ってきた尾根も見える。厳冬期に辿ったら、かなり面白いルートになりそうな気がする。
さあ、帰りましょう。途中で山岳会らしきパーティにお会いした。ロープでやや痩せた箇所を登下降されており、雪上訓練をされているようだった。
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さあ、帰りましょう。途中で山岳会らしきパーティにお会いした。ロープでやや痩せた箇所を登下降されており、雪上訓練をされているようだった。
白谷(右俣)はかなりデブリが出てしまっている。快適に滑降できる斜面は限られそうだ。
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白谷(右俣)はかなりデブリが出てしまっている。快適に滑降できる斜面は限られそうだ。
白谷の出合まで降りてきました。堰堤は既に露出しており、谷の奥にはデブリが多く見受けられる。そのデブリを避けるように、一筋だけスキートラックが降りてきていた。
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白谷の出合まで降りてきました。堰堤は既に露出しており、谷の奥にはデブリが多く見受けられる。そのデブリを避けるように、一筋だけスキートラックが降りてきていた。
気持ちの良い春風の中、雪の壁を飛び降りるようにして車道に着地。
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気持ちの良い春風の中、雪の壁を飛び降りるようにして車道に着地。

感想

 白川郷の加須良川右岸尾根は、けっこう長大な尾根なのだが、訪れる人は稀である。この尾根の最も奥まったところにある三等三角点「二重滝」のピーク(△1441.3m)には、2022年2月に蓮如岩のある蓮如峠と併せて山スキーで訪問し、その美しいブナの森に感嘆した。ちなみに、三等・二重滝は、かの有名ながおろさんも訪問され、「蓮如ピーク」と命名されている。
 今回の山行の目的は、この時に時間切れで辿れなかった三等・二重滝ピークの先の区間、つまり三等・二重滝から白山北方稜線までの区間を歩くこと。この区間、隠れた険谷としてマニアックな沢ヤの間で有名(?)な加須良川本流と横谷に挟まれており、地形図上でも如何にも険しそうな雰囲気を漂わせている。さらに、ネットで航空写真をチェックすると、明らかに岩や断崖と思われる地形が断続的に映り込んでおり、どうやら一筋縄ではいかなさそうである。調べ方が悪いせいか、ネット上ではこの区間を辿った過去の記録を見つけることができなかった(まさか白山に未踏の尾根はないと思うので、誰か歩かれているとは思うのだが)。事前情報もなく、半ば不安、半ばワクワクしながら当日を迎えた。
 三等・二重滝からP1410までは穏やかなブナの回廊が続き、たおやかな二重滝ピークの延長といった感じで、素晴らしいところだった。加須良川右岸尾根の植生的ハイライトと言ってもいいと思う。しかし、P1410から先は予想通り雰囲気が一変、尾根が狭まり、急斜面が断続的に表れる険しい地形となった。残念ながら痩せた尾根は雪が消えるのも早く、藪が出てしまっている箇所も多かったが、ブッシュを頼りに岩混じりの急斜面をクリアしていくのも、いかにも藪の北部白山というたたずまいで面白い。おそらく手つかずと思われる天然ヒノキの巨木も印象的。雰囲気的には、ご近所の仙人窟岳の北東尾根にとても良く似ている。
 P1318の前後は植生もない荒涼としたガレの痩せ尾根となっており、厳冬期は完全なナイフリッジを形成していたと思われる鋭い雪の残骸をそろりそろりと辿る。そして真に問題となる箇所はその先だった。白山北方稜線への最後の急登区間に、一部雪切れしてしまっている箇所があり、黒々とした岩が出ているようだった。直下まで行って観察すると、ブッシュを頼りに登れなくもなさそうに見えたが、大事をとって巻くことに。左右の斜面はかなりの急斜面なうえ、全層雪崩の前兆のクラックとシワが多数入っていてとても立ち入る気になれない。結局、眼下の横谷まで滑り降り、谷底から巻くことにした。険谷として知られる横谷、雪崩と雪渓崩壊を警戒しながらそそくさと登る。せり上がるような急斜面をおそるおそる登る途中、雪の割れ目からかすかに水しぶきの音が響いてきた。おそらく滝だろう。
 白山北方稜線に立つと、はるか北に笈ヶ岳は白さを保っていた。一部巻いてしまった箇所もあるが、無事に目的の区間を稜線まで抜けることができた。蓮如峠もからめて厳冬期に辿れば、けっこう面白い周回ルートになりそうな気がする。もちろん、加須良川右岸尾根を末端から白山北方稜線まですべて辿るのも楽しいだろう。
 ワカンを脱ぎ、雪の壁を飛び降りるようにして、車道に降り立つ。強い日差しで早くからアンダーシャツ一枚になってしまった肌に、春風が心地よい。これから雪はどんどん解けていくだろう。嬉しいようでいて、登山者にとってはやっぱり寂しい春が、今年もまた繰り返されていく。


<関連記録>
 2022年2月に三等・二重滝を訪れた際の記録はこちら。北側にある蓮如峠や二等・加須良のピークも一緒に訪れています。
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4036053.html

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