石転び沢大雪渓から飯豊山(想い焦がれて十余年)


- GPS
- 23:49
- 距離
- 45.4km
- 登り
- 3,500m
- 下り
- 3,505m
コースタイム
- 山行
- 10:02
- 休憩
- 0:58
- 合計
- 11:00
- 山行
- 10:46
- 休憩
- 2:00
- 合計
- 12:46
天候 | 快晴ときどきガス |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
5時前なら路駐せずに済む感じ? |
コース状況/ 危険箇所等 |
・石転び沢:雪渓に乗るのは意外にスムーズ、登山道が小さな沢をまたいだら雪渓が出現これはすぐに割れるが再度登山道を進むと真横の雪渓に移れた。 北股沢からの土石流の跡はあるものの落石には見舞われず。 登れば登るほど傾斜は強く、ほん石転び沢出合を越すと草付き以外にザックを下ろして休めるところはない。落ちると果てしなく落ちていきそう。 ・梅花皮小屋〜御西小屋:烏帽子岳南の鞍部から先は時々雪渓が道に被っている。落ちるとただではすまないのでチェンスパくらいはあったほうがよいだろう ・御西小屋〜本山:特に問題なし ・梅花皮小屋〜北股岳:道は雪渓から外れているがガレ場 まあ、普通に通行できる ・北股岳〜門内小屋〜扇の地紙:素晴らしき稜線歩き ・梶川尾根:もはや拷問 ・全体にアブ、ブヨの類は全然いなかった。トンボがめっちゃ多かったので食べてくれていたのかもしれない。 ・水場は 梅花皮小屋→◎ すぐそこでジャバジャバ出ている 御西小屋→△ 雪渓から出てはいるが雪渓の登降が必要らしい めんどくさいので雪渓を溶かした 門内小屋→○ 少し降りると雪渓の水が得られるらしい いちおう各小屋でCCレモンとかコーラ、ビールあたりは売っていた |
その他周辺情報 | 飯豊温泉:シャワーが1個しかなく大人数で押しかけると大変そう |
写真
(なおこのチームはこの日もあっさり負けている。ダメそうですね……)
この登りの途中で嘔気、生あくび、ふらつきなどがいっぺんに襲ってきてグロッキーになった。たぶん熱中症。
そういえば梶川峰以降くらいから尋常でなく汗をかいている。
感想
いよいよ夏本番。新潟にいる間に絶対に登っておきたい山が飯豊山、そして石転び沢雪渓だ。自分がこの山を知ったのは、中学生頃ヤマケイの登山地図を立ち読み(迷惑……)していたとき、裏面に「石転び沢」の詳細な解説が書いてあったのだ。時期とともに刻々と姿を変える雪渓の姿と注意事項が書いてあり、その恐ろしげな雰囲気と特別感に中学生ながら夢中になり、行ったことすらない遥か彼方の新潟の山に思いを馳せるようになった。そこから十余年の年月が流れ、まさか新潟で働くことになるとは思わなかったが、遠くに山の行き先を考えれば常に頭の片隅にあったこの山と雪渓をついに踏みに行く時が来たということなのだろう。快晴の天気予報の中、一路山形県の奥地へと向かった……
朝5時ごろ、飯豊山荘を出発。ひさびさのテント泊縦走装備がずっしり肩に食い込む。家の時点で19kg越えだったので最後に詰め込んだ食料とか衣服を入れると20kgは越えているだろう。山荘付近で小国町の遭対協の方?に声をかけられ、石転び沢から御西小屋まで行きますと返答。数日前に行きましたが、落石に注意してくださいねとのお言葉と、アミノバイタルとか飴ちゃんの小袋を頂いてしまった。休日の朝早くからお疲れ様です(というか、実際に登ってはるんですな……)。
ブナの林を進んで温身平、飯豊の山々を遠く眺める。青空の下にそびえるこの大雪渓をついに進む時が来たのかと感慨もひとしお。しばらくは川沿いの道を進む。途中崩壊斜面があったり存外急な上り下りがあったりしたが進むに困る所はなく、小さな沢を渡るとその先で雪渓が現れる。この雪渓は一瞬で切れてしまうが、しばらく進んだ先で道のすぐ隣に雪渓が現れた。今度は奥まで間違いなくつながっている、ついに石転び沢雪渓に乗った。
しばらくは緩傾斜の雪渓をすすみ、門内沢出合。ここから梅花皮の鞍部まで一直線に続く石転び沢に正対する。最初は緩い傾斜でザックを下ろして休んだりもできるが、1200mのほん石転び沢あたりからはどんどん傾斜が増す。ここから草付きまで標高差にして400m以上、「落石があるので休んではいけない」と書かれていたエリアになる。なるほど目の前には北股沢からの土石流や散乱する石屑、明らかに巨大な石が跳ねながら流れていったであろう跡とかもあり非常にいかつい景色だ。ズルっといってもピッケルで制動しきれる自信もない。慎重に一歩ずつ亀の歩みを進める。幸い雪渓上はなんか常にゴウゴウと風が吹いていて全然暑さや渇きで困る感じでもないし落石が落ちてくる気配もなく(いやそんなん分かるんかと言われると困るが)、ひときわ狭まった黒滝の先の斜面を無心に登り草付きにたどり着いた。小屋の人?がピンクの布の着いたポールをつけにきてくださっていた。
草付きをしばらく登った後、ほんの10mくらいだが「傾斜45°のトラバース」をこなし、再度夏道を上ると(このへんアイゼン着脱が多くてめんどくさかった)ついに小屋の直下に出る。この空間は設計の雪解け水がとうとうと流れる小さな広場になっていて非常に楽園チックであった。再度少しだけ雪渓を登って11時20分、ついに梅花皮小屋に辿り着いた。石転び沢雪渓、踏破!!
さて、これで終わって帰るわけではなく本山方向へ歩みを進めないといけない。御西小屋の水場が使えるか微妙なのでその分の水を補給、+2.0kgの重荷を背負って烏帽子岳方向へ歩みを進める。ただ天気と景色は最高で苦にならない。風も吹いていて涼しめ、アブとかブヨみたいな虫もトンボが捕食してくれているのか全然いない。烏帽子岳の下りの景色なんかはもう最高であった。
しかし、地形図上P1850あたりの池で一休みしてから出発するとどうにも雲行きが怪しい。雪渓が路上にはみ出していて落っこちるとちょっと大変そうというので12本爪アイゼンを再度着用(12本爪アイゼンは明らかに過剰だったが、チェンスパくらいは持ってくるべし)。次のとか次の次のは上を小さく巻こうとしたがちょっとスリッピーな草付きだったので以降は自重、一応持ってきていたチェンスパの存在を思い出しこの後はチェンスパで歩く。でまあ、こういう雪渓の処理とか、あとはこの区間普通になだらかな稜線をスキップしながら歩ける区間だと思っていたら大間違い、稜線のちょっと下を細かいアップダウンを繰り返しながら進む区間でありなんか消耗が激しい。ヘロヘロになりながら1800mの最低鞍部から御西小屋への最後の登りにかかる。このへんからガスも出てきておりまるで心象風景のようだ。途中追い抜いていった人から見れば巨大ザックに取り付かれたゾンビのように見えたかもしれない。小屋の手前で一瞬ガスから抜けた飯豊本山に励まされながら16時、ついに本日のお宿、御西小屋に到着した。
このまま荷物だけ置いて本山を目指そうかとも思ったが、テント泊の受付(2000円は高いなぁ……)を済ましてCCレモン(600円)を購入して飲み干すともう本山まで行く気は消し飛び、テントを設営し持ってきたビール・日本酒を雪渓に冷やしに行き、カレーとソーセージを食べてだらだらする時間に入ることにした。雪渓で近々に冷えた新潟地ビール「風味爽快二シテ」は美味いことこの上なし!このクソ重い中0.5kgを増やしてきた甲斐は…… ……(小屋で800円で売ってるのを見ながら)
日没が近づくとガスも引いていき、皆が日本海に沈む夕陽と、夕焼け空のキャンパスに描かれるいろんなアートを思い思いに楽しんでいたのでしたとさ。こういうテント村で自然発生的に始まる交流も久々でとても楽しい。沢中で一人孤独に震えるのもよいですがこれもよいですね。
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2日目、深夜2時に起き出してソーセージの残りを頬張ったのち、2時半くらいに本山に向かって出発する。夜景や星空がよく見えている。ちなみに今回初の試みとしてGoPro11の「スタートレイル」機能を使ってみたのだが存外よく撮れていた。
朝(夜?)露に湿ったトレイルを進むとズボンと靴はあっというまにびしょびしょになってしまった。ズボンはいいが靴は困る。実際最後の下山で靴擦れの恐怖にさいなまれることになるのだった。しかしこの区間はいままでの御西小屋への道のりを考えると非常に歩きやすい広い稜線で、駒形山を乗り越え3時半、ついに飯豊本山山頂に立つ。これが一度は立っておきたいと焦がれ、朳差岳からなんとか見えたことにした飯豊山か……と感慨にふけるがこの時間なので周りには誰もおらず、30分くらい粘れば夜明けも見られたかもしれないが先も長いので御西小屋へ引き返す。しかし夜闇の風吹き付ける稜線歩きは非常にたのしいなぁ……
小屋に戻り半分くらいになったテント村を撤収する。出発するころにはガスガスになっており、昨日の道のりを思い出すとどう考えても苦しい梅花皮小屋までの道を無心で進む。ガスのおかげで涼しく、余計なことを考えずに済む?ので粛々と進み、気づけば梅花皮小屋手前の下りの区間でガスがサーッと晴れてきた。
梅花皮小屋で水を+3.5L補給(門内小屋で補給できたみたいなので、アホですな……)。ずっしりと重くなったザックを背負い、この日一番の急登である北股岳への登りをこなす。ガスは完全に晴れて暑くなってきた。雪渓際のガレ場を登り2024mのピークを踏む。今日はもうこれ以上高い場所には行かない。
門内岳へ歩みを進めると、左手に二王子岳の裏側が見える、そして眼前の門内岳から二王子までつながる尾根道が見える。こ、これが名に聞く二王子門内クラシックルートというやつか。これは……昔こんな所を歩いていた人がいるというのが信じられませんな。快晴の高山稜線歩きのロケーションはすごく良いものの、もういい加減重荷でへばってきており門内岳を越えて門内小屋で大休止。小屋番さんと談笑し、私よりよっぽど焼けるはずのシチュエーションの方に「よく焼けてるね〜ハハハ!」といわれてしまった。うぅ、顔も首も痛い……
さて、もうあとは早く帰りたいというのが本音であり、丸森尾根と梶川尾根どっちがお勧めかと聞くと、微妙に梶川峰寄りの返答が帰ってきたのでそうすることにする。梶川峰分岐について地神山への登りをやる気もなく、満を持して梶川尾根へ逃走。しかしこの尾根はまあ、ハード縦走の下山路として使うには拷問のような何かであり、まず急降下からしてこの重荷ではしんどい。さらには途中に湯沢峰という空気を読まない60mの登りを強いる小ピークが存在しており、この登りをこなしている途中に急にめまい吐き気生あくびなどが一気に襲来、これは熱中症だヤバい、と思って湯沢峰で急遽大量の塩飴と水分補給、大休止。たしかに梶川峰を過ぎたくらいから風がなくなったのもあってか尋常でなく発汗していた。Tシャツは絞れるくらいだ。そうこうしているうちになんとか行動可能になったので、こまめに休止を取りながらゆっくり歩みを進める。ここまで追い込まれたのは初めてだ、まったくダイグラ尾根が使えればこんなことには……いや、ダイグラ尾根で同じことになっていただけか?
最後の最後まで足を踏み外せば危険な傾斜の尾根は続き、気力と体力はとっくに尽きた中、温存してきた脚力と自制心で亀の歩みを続けてついに15時、飯豊山荘に帰ってきた。
もうヘロヘロだったが、飯豊山荘の温泉でサッと汗を流し(温泉より、冷水を浴びている方が気持ちよかった……)、500mlの炭酸飲料を一瞬で飲み干したりしていると徐々に元気が出てきて、新潟への帰路へついたのだった。
☆飯豊山、石転び沢雪渓、中学生の時から憧れ続けた山をついに踏んだ。これにて新潟の夏山はとりあえず思い残すことなし……かな?
久々のテン泊縦走装備でこの時期に歩くのは春秋の1.5倍はしんどいな。でも、天気にも恵まれてそのぶん充実の山行だったのは間違いない。
ちなみに、下山後しばらく耳管開放症になっていた、といえば今回のハードさと脱水具合が伝わるでしょうか笑
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