瑞牆山荘〜金峰山〜富士見平テン泊〜瑞牆山〜瑞牆山荘


- GPS
- 32:00
- 距離
- 14.8km
- 登り
- 1,715m
- 下り
- 1,698m
コースタイム
11月21日 07:05富士見平小屋-08:00瑞牆山08:10-09:10富士見平小屋-10:50瑞牆山荘
天候 | 快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
復路 瑞牆山荘からバスで韮崎駅(2,000円) |
コース状況/ 危険箇所等 |
金峰山への北側で岩の表面に細かい氷粒が乗っていて滑りやすい。 |
写真
感想
4時40分に家を出る。
これから韮崎までの遠い道のりではあるが、普段奥多摩に行くときよりは若干遅めの出発だ。
八王子で中央本線に乗り換えるときキオスクで菓子パン、ペットボトルのお茶と水を買い、ホームにてしばし電車待つ。
ふと気がつくと後ろに六人ほど並んでいた。
電車に乗りザックを棚に載せ、昨夜買っておいたおにぎりを食べて一息つく。
朝6時の中央線下り各駅停車。
乗客も様々だ。
日帰りか一泊の温泉旅行と思われる軽装の老夫婦、朝練の高校生、朝帰りの酔客、これから出張のサラリーマン、そして登山客。
皆どこの山へ行くんだろう。
この内何人が韮崎で降りるだろう。
そんなことを考えつつ車窓を流れる山々を眺めていた。
時おり先週の辛い天祖山登山が思い出される。
今日は大丈夫だろうか?
などと少し不安になるが、体調は先週よりずっといいし、何よりも実家に近い山へ行くのだと思うと不思議に落ち着いた。
途中塩山で多くの登山客が降りて行った。
二割くらいが山ガール、しかも結構ハードにローディングしたザック(おそらく50L以上)を背負っていた。
大菩薩嶺だろうか。
8時20分頃に韮崎駅に降り立つ。
瑞牆山荘行きのバスは8時50分なので30分待ちである。
バス停に向かうとベンチのところで一人の若い登山客とタクシーの運転手が話していた。
どうやら乗り合いで行かないかとオファーを出しているらしい。
近づくとタクシーの運転手が懐かしい山梨弁で声を掛けてきた。
他にも二人加わり一人頭2千円で瑞牆山荘まで行くことになった。
まさに乗り手に船である。
瑞牆山荘前に9時20分頃到着。
大分時間の短縮できたのと曇の天気予報が外れ快晴になったので、コースを予定の
瑞牆山→大日小屋泊→金峰山
から
金峰山→大日小屋泊→瑞牆山
に急遽変更する。
準備運動をし靴紐を締めている間に私が最後になっていた。
9時27分に瑞牆山荘前を出発。
既に先行の皆さんの姿は見えない。
30分ほど歩くと水場という標識が立っていた。
水場は富士見平小屋のすぐ下のはずだから、CT50分のところを30分できてしまったらしい。
水場で2.5Lほど補給し1、2分上がると富士見平小屋に出た。
その暗い過去など嘘のように透明な秋の木漏れ陽の中に静かに佇んでいた。
水を補給したためザックは22Kg程になっているはずだがさほど重く感じられない。
ペースも速からず遅からず、自分のペースで登っていく。
大日小屋を過ぎたあたりから少しづつ坂が急になり、大日岩を登り詰めるところでは石や木の根に掴まりながらの急登となる。
大日岩では大展望が開けていた。
しばし時間を忘れて眺望する。
振り返ると金峰山へ続く稜線が眼前に続いていた。
砂払いノ頭から金峰山までは岩場を行くのだが、表面に細かい氷粒(おそらく水蒸気が結露したプチ霜柱)があり砂埃とあいまって滑りやすい。
掴まるところがなく越えるのに少々苦労した岩が1、2あった。
45分ほどで五丈岩にたどり着く。
想像していたより巨大な、石でできた積木であった。
およそ人工物のあろうはずのない森林限界を超えた山頂に、まるで計算して角を削ったかのように重なりあう巨大な石が積み重なっているのである。
信仰の対象だったのが理解できる。
金峰山の山頂東側は開けていて、岩のごろごろした威圧的な西側に比べて安心感がある。
暖かい陽射しと風のない小春日和と言って良いような陽気で、何度も金峰山に登っているという年配の方が「こんなに良い日和は一年に何度もない」と教えてくれた。
朝キオスクで買った菓子パンを食べる。
しばし時を忘れて散策するが、ふと時計を見ると13時30分になろうとしていた。
ここまで標準CTが4時間10分であるところ3時間30分ほどで来てしまっている。
22Kg背負っていることを考えると若干オーバーペースかもしれないが体調はすこぶる良い。
昭文社の地図を取り出してCTを確認すると富士見平まで2時間と30分である。
この調子であれば16時までに富士見平まで行けそうなので、明日瑞牆山に登るのに有利な富士見平に幕営地を変更することにした。
下山では先ほど通った道なので難所も判っているため快調に下っていったが、大日岩の直下で15分ほどロスしてしまった。
登るときにちょっと大きな庇状の石を乗り越えるところで取り付きが判らず踏み跡のない右(南東)側斜面に巻いてしまったため、登山道へ出るにはどこで北西にターンするか判らず15分ほど迷ってしまったのである。
もう一度大きな石の庇のところに戻り先を覗いてみるとロープが張られていたので、ようやくそこが正規の登山道であることを理解した。
よく見ると石にペンキで印がしてあったが先ほど見落としていたようだ。
大日小屋のテント場を15時30分頃に通過する。
すでのかなりの数が張られていた。
富士見平のテント場の状況が気になるので、ここから少々急ぐことにした。
富士見平小屋前に16時5分に到着。
なんとか日が暮れる前に設営を完了。
これで明日は空身で瑞牆山に登れる。
ラーメンとコンビーフを食べ終わる頃にはもう真っ暗になっていた。
しばらくウォッカを飲みながら状況を考えてみた。
今日は22Kg担いだまま距離10Km、高低差1,000mを歩いたがほとんど疲れていない。
先週も同じような距離、高低差である。
違いはなんだろう。
一番の違いは食生活である。
普段夜は炭水化物を一切摂らないようにしているが、先週山から帰ってきてから体の要求のままにラーメンライス+餃子、炒飯、カレーライスなどを好きな時に好きなだけ食べた。
そのため体重は一時的に1Kgほど増えてしまった。
しかし持久力は増したようだ。
これがカーボローディングと言うものかも知れない。
などと考えているうちに19時を回り、辺りも静かになった。
皆眠りについたようだ。
自分も寝ることにした。
明け方気温は0℃位まで下がったようだが、聞くところによると前日は-5℃まで下がったということなのでこの時期にしては暖かい日だったのだろう。
何度か近所のイビキに安眠を妨害されたが概ね熟睡できた。
5時に起床し着替えてコーヒーをいれる。
何を食べるか迷ったがチーズリゾットにした。
チーズリゾットを食べながら瑞牆山へのコースを確認。
迷いようがなさそうなので、余計なものは一切持たないで行くことにした。
ザックの天蓋は外すとヒップバッグになるので、そこに携帯、財布、家の鍵、カロリーメイト、ブドウ糖、手袋、ニット帽、ペットボトルを入れて2Kgほど。
ほぼ空身である。
ストックも昨日ほとんど使わなかったので置いていくことにした。
7時5分に出発。
とにかく身が軽い。
勾配的には結構きつい瑞牆山だが、ほとんど休むことなく1時間ほどで登りきってしまった。
ストックは持っていかなくて正解。
むしろ両手が自由な方が瑞牆山は登り安いと感じた。
勾配がきついため逆に手を使い易く、さらにまるであつらえた様に木の根や石が要所要所で良い具合に出ているので、それらを掴みながら登ると非常に楽なのだ。
瑞牆山山頂でもまた絶景にありつけた。
褒美のない登山はただただ苦行なのだと思う。
遠くに昨日行った五丈岩が見える。
たかだか1mちょっとの歩幅の積み重ねがこの小さい生き物を1日でこの距離を移動させてしまうのだ。
しばらく絶景を堪能した後、後ろ髪を惹かれる思いで山頂を後にする。
富士見平まで1時間で下山し撤収開始。
そのころから風が出始め、テントやグラウンドシートを畳むのにてこずった。
10時50分頃瑞牆山荘に下るとちょうどバスが来ていて11時20分発だというので、瑞牆山荘でカレーライスを食べることにする。
カレーライスを食べていると一人の青年がやってきて、今年の2月に富士見平小屋に泊まったとき手持ちのお金が1,800円しかなかったためその金額を置いていったのだが、今回その差額を払いにきたのだという。
そして昨夜も泊まったのでその分もあわせてと言うと、瑞牆山荘のおやじさんは昨日の分だけでいいと言う。
すると青年は今回このためだけに瑞牆山に来たので受け取ってくれと言って置いて行った。
最近テレビでは暗い話ばかりだが、山でこのような温かい善意と善意が普通に交わされる光景に出会い、忘れてしまっている何かを取り戻したような気がした。
そしてこの国にも何か明るい未来が待っているような気持ちにさせてもらった。
人間満たされていると、不感症になってしまうのかもしれませんね。ハングリーなときこそ、本来の人間性を回復できるのかも。
「良い青年ですね」というと「ああいう人ばっかりだったらいいけどね…」っておやじさん言ってたよ。払わない人もいるんじゃないかな。
ちなみに富士見平小屋は県のもので瑞牆山荘が代理で窓口になってるだけらしい。
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