天狗岳〜夏沢峠から厳しい稜線を
- GPS
- 34:45
- 距離
- 23.0km
- 登り
- 1,849m
- 下り
- 1,849m
コースタイム
- 山行
- 5:49
- 休憩
- 1:50
- 合計
- 7:39
- 山行
- 7:11
- 休憩
- 2:59
- 合計
- 10:10
天候 | 26日:雪 27日:雪のち晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2017年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
この日は積雪が多く稲子湯から上の道は4駆+スタッドレスでやっと登れました。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
この日は新雪が降り積もり私が今まで経験した中ではもっとも厳しい状態となりました。 気軽に登れるイメージの有る天狗岳でも天候と積雪の状態では「難しい冬山」になることを改めて痛感しました。 【みどり池入口駐車場〜みどり池】 ずっと積雪が有りますが、歩く人が多いため降雪直後でもトレースが完全に消えることは少ないと思われます。 唐沢橋を渡ってすぐに林道のショートカットが有りますのでここから入ります。途中もう一度林道のショートカットが有りますので見落とさない様注意してください。2度目のショートカットの先に登山口が有ります。 登山口からは樹林帯の緩やかな登りがコマドリ沢まで続きます。 コマドリ沢からひとしきり急登をすると平らな道(旧トロッコ軌道)となり、みどり池湖畔のしらびそ小屋に着きます。 【みどり池〜本沢温泉】 しらびそ小屋(みどり池)で帰る人も多いため、この先は状況によってはラッセルとなります。 みどり池湖畔を左に回り込み中山峠・本沢温泉方面に進みます。池の側は雪が吹き溜まっています。 程なく中山峠方面の道を右に分け本沢温泉への道に入ると、一気にトレースは薄くなります。この日はここからトレースが無くなりスノーシューでのラッセルとなりました。 トレースが無くても樹林帯の伐採後や、標識がこまめにありますので、ルートファインディングは比較的容易です。 途中小尾根を乗越までは緩い登り、その先は緩い下りです。 松原湖方面から来る道(本沢温泉のメインルート)と合流すると一気に道は広くなり、トレースも期待できます。 キャンプ指定を過ぎひと登りすると本沢温泉です。 【本沢温泉〜夏沢峠】 積雪期に夏沢峠道を通る人は少ないため、トレースは期待できません。 小屋のすぐ先で白砂新道(冬季閉鎖)と別れと左の本沢温泉野天風呂への道を進みます。 数分で野天風呂の道を左に分けここから峠への登りとなります。樹林帯の急登となり右の主稜線から張り出した小尾根にとりつきます(国土地理院の地図では沢状の地形を峠まで詰めることになっていますが実際は違います)小尾根を主稜線直下まで登りその後夏沢峠に向かって南にトラバースしながら高度を上げて行きます。トラバース中に小沢を数回渡りますが、この日2カ所に雪崩の跡が有りました。小さな沢ですが雪崩には厳重に注意が必要です。 登りついた夏沢峠には主稜線の縦走路が走り道の両側に小屋が有りますが、共に冬季閉鎖で冬季避難小屋も有りません。 【夏沢峠〜硫黄岳】 峠から南に主稜線を進みます、樹林帯に崩落地が有り迂回路が有りますので、トレースがなくても迂回してください。 迂回路の先ひと登りで森林限界となりガラ場の登りとなります、いつも強い風が吹いていますので積雪はほとんど有りません。 この先はアイゼンとピッケルの世界となります。 山頂へは広い稜線を進みますので特に危険は有りませんが、視界不良の場合は左の爆裂火口壁に近づかない様注意が必要です。(私は途中で降雪が激しくなったため登頂は断念しました) 【夏沢峠〜根石岳山荘】 主稜線縦走路を北に進み箕冠山に向かいます。なだらかな樹林帯ですが冬季は通行する人が少ないためトレースは期待できません。この日はまったくトレースがなく、膝までの厳しいラッセルとなりました。標識(赤布など)は少なめでルートファインディンが必要です。 箕冠山(標識だけで山頂らしくはありません)で道はオーレン小屋方面と主稜線縦走路に分かれ大きく右に曲がります。どちらの道もトレースが無いと思いますので、間違って直進しない様注意してください。 分岐後は直下の根石岳山荘(平日は冬季閉鎖中)まで広い稜線を降下します。根石岳山荘の有る鞍部はいつも強い風が吹いていますので、積雪はぐっと少なくなります。小屋は土日以外は閉鎖され冬季避難小屋もありません。 【根石岳山荘〜天狗岳】 小屋の前に有る根石岳に向かって広い稜線を登ります。冬季は特にルートはなく好きなところを高いところに向かって登ればOKです。ここも非常に強い風が吹いていますので積雪は少なくクラストした斜面です。 根石岳からはこれから向かう天狗岳がよく見えます。 一旦、鞍部(白砂新道分岐)まで下りそこから天狗岳の登りとなります。 夏なら根石岳から鞍部までは稜線の左(西)側をトラバースする楽な道ですが、この時期は嫌なトラバースとなります。特にこの日は新雪が積もり相当難しいルートでした。滑落すると面倒なことになりますので、くれぐれも慎重に進んでください。 嫌なトラバースを終えると広々とした鞍部に出てほっとしますが、ここも強風が吹き荒れています。白砂新道は夏は本沢温泉へのエスケープルートとして使えるのですが、この時期は閉鎖です。(以前一度初冬に下りましたが、地形が複雑で標識もなく苦労しました) 鞍部から目の前に見える天狗岳にとりつきます。 夏ならば30分足らずで登れる簡単な稜線の道ですがこの日は最悪でした。凍った斜面の上に新雪が積もり今にも雪崩れそうな状態でした。そのため雪の繋がりを切らないため稜線の頂上を直登する以外ルートの取り様はなく、稜線の右(東)側に出ている雪庇に注意しながら、困難なルートをよじ登りました。特に頂上直下は直登困難な岩を巻いたり、最後は両側が切れ落ちた細いナイフリッジとなり、ザイルで確保がほしい様な状態でした。最後は山頂から出ている雪庇を切り崩して頂上(東天狗)に立ちます。 【天狗岳〜中山峠(黒百合平)】 冬も大人気の山で平日でも必ず登山者が居るのですが、この日は誰も登っておらずトレースもありませんでした。 東天狗岳山頂から主稜線を北に天狗岩目指して進みます。ほぼ稜線上を進みますが、天狗岩は頂上は通れず左(西)側を巻きます。トレースが無いとルートファインディングとなりますが、過去に通ったことが無いと難しいかもしれません。 天狗岩の先で左に天狗の奥庭方面の道を分けます。トレースが有ればどちらを通っても良いのですが、トレースが無い場合はそのまま稜線を中山峠方面に進んだ方がルーファイが必要無い分楽です。 稜線の道は中山峠までほぼ稜線上を進みます、右(東)側は切れ落ちていますので視界が悪いときは注意が必要です。 樹林帯に入るとすぐに中山峠です。峠を左(西)に進むと数分で黒百合ヒュッテ(通年営業)。右(東)に急降下するとみどり池(しらびそ小屋)です。 【中山峠〜みどり池】 中山峠から東に向かって急降下します。夏ならば鎖のある斜面ですが積雪期は鎖は埋まっています。正攻法なら後ろ向きになってピッケルとアイゼンでクライムダウンするのですが、この日は新雪がいい感じに積もっていましたので尻セードで一気に滑り降りました。 急下降が終わると後は樹林帯の歩きやすい道となります。この日はトレースが有りましたが、無くても標識が多くありますので、ルーファイは容易だと思います。 左に稲子岳南壁がよく見える様になると右から本沢温泉からの道を合流し、みどり池に到着します。 |
その他周辺情報 | 八峰の湯に入りました。この日一部故障の為400円でした(通常は500円) |
予約できる山小屋 |
黒百合ヒュッテ
|
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
長袖インナー
ハードシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
アウター手袋
予備手袋
防寒着
ゲイター
ネックウォーマー
バラクラバ
毛帽子
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
アイゼン
ピッケル
昼ご飯
行動食
非常食
飲料
水筒(保温性)
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
針金
常備薬
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ツェルト
ナイフ
カメラ
|
---|
感想
毎年冬に本沢温泉に行くのを楽しみにしているのですが、今年は何となく行きそびれてしまい気がつけば3月も終わりに近づいてしまいました。
今年の冬の八ヶ岳の締めくくりとして、のんびり本沢温泉に浸かり天狗岳でも登って来ようと気軽な気持ちで出かけました。
結果としてこの冬一番の厳しい山行になるとは、この時想像も出来ませんでした。
当日は生憎悪天候の予報、南岸低気圧で太平洋側でも雨か雪とのこと。それでも慣れた山ですので全く心配はせず出かけました。
高速道路を走っているうちから雪が降って来て稲子湯につく頃は路上の積雪も増え、みどり池入口の駐車場まで登れるか心配しましたが、古い轍が有ったため何とか強引に登りました。日曜日ですので駐車場には10数台の車がありました。
出発するときも雪は強くなることもなく降り続いていました。
新雪を踏みしめながらなごり雪だな〜と思いながら、頭の中で「なごり雪」歌いながら登って行きました。
しらびそ小屋では残念ながらリスは現れず、先に進みました。
中山峠への道を分けるとトレースは無くなり、本沢温泉まではラッセルとなりましたが、この冬手に入れた「新兵器」スノーシューを持ってきたため、楽々と進めました。
本沢温泉には昼前に着きましたので、明日の為に夏沢峠までトレースを付ける為に上がって見ることにしました。
幸い、薄いトレースが有ったため難なく夏沢峠まで登れました。まだ時間が早かったので硫黄岳を目指しましたが、途中から急に降雪が激しくなり視界が無くなってしまったため、山頂は断念して下山しました。
午後はゆっくり温泉に浸かり、たまたま同宿した海外登山経験も豊富な女性の方と談笑しながら楽しい時間を過ごしました。この方は私よりもずっと高齢なのに現役で冬山も登り続けており、私も大いに励みになりました。
翌日、天気は相変わらず雪でしたが、次第に回復との天気予報を期待して予定通り天狗岳目指して出発しました。
前日スノーシューでしっかりトレースを付けたため、ルーファイは問題なかったのですが、新雪が思いの外沢山積もっていて意外に時間がかかりました。途中の小沢では2カ所で雪崩れも起こっており、短いながらも緊張して通過しました。
夏沢峠から北上する主稜線には一切のトレースは無し。ルーファイしながらラッセルで進みましたが、夏・冬何度も歩いたことのある稜線ですので、特に困難は無く進めました。
但し、相当時間がかかってしまい根石岳山荘で昼食、この時点までは多少雪が有るが決して困難だとは感じていませんでした。
昼食後根石岳を越えると状況は一変、新雪の積もった斜面は極めて困難な状態になっていました。
特に天狗岳への最後の登りの斜面では新雪が嫌な感じに積もって、今にも雪崩れそうな状態。撤退しようかとも考えたのですが、来た道を引き返すのは時間的に厳しいため、先に進むことにしました。
今考えてみるとやはりここで撤退すべきだったと思います。時間が無いから先に進むのは遭難の常套です。
天狗岳の登りは新雪雪崩を避けるため斜面を横切ることは避け、忠実に稜線の上を進みましたが右側は切れ落ちて雪庇が張り出しているため気を遣い、直登できない岩は不安定な雪の斜面をトラバースする等、持てる力を最大限発揮する「厳しい冬山」でした。特に頂上直下は10m程ですが完全にナイフリッジになっており、不安定な新雪の為アイゼンも効かずにザイルでの確保が必要だと思いました。一人ですのでもちろん確保は無く、「落ちたらおしまい」と思ったら意外に肝が座って落ち着いて通過できました。
幸いこの頃になると雪もやみ青空も出てきたのが精神的に大いに助けられたと思います。
雪庇を突き崩して天狗岳山頂へ、何度も天狗岳には登っていますがこんなに感動した天狗岳登頂は初めてでした。
山頂では急速に天気が回復、展望などは完全に諦めていたのですが何と赤岳まで見える大展望に改めて登頂の感慨に浸りました。
いつも人気で登山者が絶えない天狗岳ですがこの日は誰もおらず、全てのルートにトレースも全く無く今日は誰も登って居ない様でした。
誰も居ない山頂をゆっくり満喫したかったのですが、予定時間を大幅に超過してしまい急がないと明るいうちに下山できなくなる可能性も出てきたため、早々に山頂を後にしました。
いつもはトレースだらけで、走る様に下りられる天狗岳ですが、この日はトレース無しその上不安定な新雪が積もっており嫌な状態。慎重にルートを選びながら、時間をかけてゆっくり下らざるを得ない状況でした。
黒百合平に下りてくると高校山岳部の合宿テント村が出来ており大賑わい。今までの緊張が一気に解けました。
時間は無かったのですが、安心したら急に空腹になり思わずラーメンを注文してしまいました。
その後、一気にしらびそ小屋に下山、走る様に駐車場まで下って何とか暗くなる前の18時に車まで戻って来られました。
雪崩・ラッセル・ルーファイ・ナイフリッジ、思わず厳しい冬山を経験することになりました。時間はかかりましたが、自分の持てる冬山技術を最大限に発揮して、偶然ではなく必然として安全に登って下りて来られたと、自負しております。疲れましたが非常に満足度の高い山行になりました。
yamayaさん、おはようございます。
そろそろ何処かの山に行かれているだろうと思っておりましたが、今週歩かれていたんですね。
そして3月下旬としては北八もかなりの積雪があったようですね、感想を読んでいると両日とも厳しい山歩きなんじゃないかと想像しています。多分雪山経験が浅い自分であれば、根石岳で撤退ですね。ホント感想を読み、写真を見ていると「yamayaさん、凄いな」と思うばかりです
沢山の山歩きされている中でも、今回は厳しかった分、天狗岳山頂からの展望は特に忘れられない山行の一つになったんじゃないかと思っております。
自分も経験を積んで、toughな心を持ち、yamayaさんのような満足度の高い山行を目標に春の残雪歩きを計画しなくちゃなりませんね
と、思っていても今週末も「 」マークに踊らされています
遅くなりましたが丸沼高原ゲレンデ滑走レコにコメントいただき、ありがとうございました<(_ _)>
opiroさんこんばんは。
今回はゆっくり温泉につかって雪見をするはずだったのですが、予想外にタフな山になってしまいました
2日目の朝、新雪が相当積もっていて嫌な感じがしたのですが、根石岳の先がこんなに悪い状態になっているとは、完全に甘く見ていました。
久々に雪崩の恐怖を味わいました。
幸い夏冬通して何度も歩いたことの有るコースでしたので、冷静に対応できました。
1月の赤岳に続いて今年の八ヶ岳はなかなか厳しい顔を見せてくれました
何だかこの週末も新雪が来そうですね opiroさんのスキー納めはまだ先かな
いつもコメントありがとうございます
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する