剱岳 - 早月尾根から室堂へ・スキーヤーも行く -
- GPS
- 14:10
- 距離
- 17.2km
- 登り
- 3,245m
- 下り
- 1,584m
コースタイム
- 山行
- 12:17
- 休憩
- 1:53
- 合計
- 14:10
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2018年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
この時期は残雪のいやらしいトラバースも多く、登山道が雪で崩壊していたりしますので、難易度はかなり高いです。プロのガイドでも経験の浅い人を連れてくることはしないでしょう。(m) |
予約できる山小屋 |
剱澤小屋
|
写真
感想
2009年から2016年まで、毎年1度以上剱岳に登っていたのに、去年2017年は途切れてしまった。今年はいつから登ろうか、登れるかとうずうずしていて、6月中に1泊できれば長次郎から登りたいと思ったが、諸般の都合でままならない。日帰りで早月尾根から行こうか、しかし膝の治癒が完璧ではないので早月の登りは良いが下りたくない。ということで山頂から室堂に下りることを考えた。そうするとアクセスとして車をもう一台使うか、タクシーに大枚叩くか、チャリ併用とする必要がある。取り合えず仲間を募ると、モモちゃんが乗って来てくれた。しかしモモちゃんスキー持って行くと言う。雷鳥沢の一部でも滑れれば良いと、シートラ大王の面目躍如だ。
本来僕も山スキーヤーの端くれだから、モモちゃんと共にスキーで行かなくては面白くない。でもしかし、それでは僕の膝は持つのか。そして、完全無雪期より厳しい筈の早月尾根をスキー担いで登ることにもビビった。多少葛藤はあったが、僕はスキーなしで勘弁してもらうことにした。スキーがもっと楽しめるように、剱岳からは平蔵の雪渓を下りる計画にした。そのため別山尾根軽油よりも累積登行標高差はさらに大きく、3000mに達する日帰り計画となった。
実際は、予想よりもさらに厳しかった。早月尾根の登り、早月小屋までは最後に雪が出て来たが状況もベースも概ね予想通り。小屋から上が、2人ともアイゼン着けて小屋前を出発、夏道が出てまた雪上と入れ替わる。2600m標識手前の雪渓トラバースでは、滑落してはいけない傾斜だが雪の表面近くは緩んでいてガバッと崩れるのが怖い。大緊張で上に抜けて、ここは下りたくないねと2人で話し合った。先行者はここを雪上でなく稜線の岩場を行ったと後で気づいたが。そんなこんなで早月小屋から剱岳山頂まで3時間半を要した。無雪期の軽装では1時間40分〜2時間程度、テント装備でも3時間以内で登っていた区間だ。
山頂からカニのヨコバイはシートラモモちゃんも無難にこなし、平蔵の頭から雪渓を下りる。さっさとスキーで下りていったモモちゃんを僕はアイゼン歩きで追いかけるのだが、ここも足元不安で滑落が怖く、慎重確実に下りていかなくてはならなかった。しばらく下りて傾斜が緩んで来たところで真っすぐ前向いて下りられるようにはなったが、なかなか踵のキックステップで、大股でずんずん下りていけるようにならない。時間的には、剱沢に出て靴を登山靴に履き替え、シートラ登りの準備を整えたモモちゃんに対して大きな遅れではなかった様だが、足はかなり疲れた。これが後で響く。
剱沢の、平蔵出合から剱御前小屋まで標高差630mを登る。5月19日に真砂沢を滑って登り返した標高差1000mより短いが、今回の方が辛かった。早月尾根2200mの登りと、平蔵谷700mの力を使った下りの後、モモちゃんと同じ歩幅を保つのも難しくなり、遅れるようになって行った。手にはピッケルで、登るために腕力を使っていなかったが、途中で両手にストックに持ち替え、脚力を腕で補助することでどうにかペースを合わせられるようになった。モモちゃんとても疲れていないわけではなかったからだが。
剱御前小屋では2人して溜息。しばし休んでから、「行きましょうか」「行かないとね」「バスに間に合わないとね」との有様。最初は夏道を下り、雪渓が出てモモちゃんはそちらに、僕は夏道を下り続ける。雷鳥沢の下半分は夏道を雪が隠し、その後夏道と雪渓が並行してどちらでも行ける。雪渓を選んで靴スキーで加速した下りを僕も出来た。雪上を渡れる称名川の上でモモちゃんと再会。室堂までの最後の標高差150mを辛抱の歩きで、16時過ぎて室堂に着いたのだった。
ニシデンさんが馬場島から剱岳に登って室堂に抜ける山行の同行者を募っていたので、この週末は白山連チャンにしてもそろそろ滑る斜面のネタが切れてきたなぁ〜と思っていたところ、せっかくのチャンスなので興味ありますと返信しました。
そして行くならやはりスキー背負ってシートラ、雪があれば滑るというスタイルとなるので、興味ありますと言いつつも早月尾根をシートラで問題ないペースで登れるのか、しかも前日に白山で山スキーした翌日にって〜と我ながらやや不安でした。
前日の白山は朝一のシャトルバスに乗って、お昼前には下山。永井旅館の温泉で汗を流して(いいお風呂でした)、金沢で法事のニシデンさんと待ち合わせ。ニシデンさんは車を立山駅にデポして電車で金沢まで来るという前日から準備がすばらしい。
前夜はヒュッテニシデンにてプチ宴会。日本酒「剱岳」を嗜みながら明日の山行に想いを馳せる。日本酒の剱岳を呑んで逆に山に呑まれるかも・・・という不安も隠せないまま、まだ明るい19時に就寝。
翌朝は0時起床。準備をしていざ馬場島に向かいます。さすがにこの時期馬場島の駐車場もかなり空いてます。外気温は18℃とそれほど涼しくもなく、早月尾根の急登を歩き続けていると汗が吹き出てきます。
前日に白山登って今日はシートラ早月尾根、という異常なコンディションにもかかわらず歩く速度はまあまあ普通。ニシデンさんもペースを配慮してくれてちょうどいい感じで登れました。
早月小屋はまだオープン準備中。飲み物の販売もまだ始まってません。小屋のスタッフの方々はスキーを持っていても別に驚きもされません。どこ滑るの〜とは聞かれましたが、やはりここは強者の来るところなのでしょう。
小屋までも雪渓が何度か現れて緊張を強いられましたが、私はピックストック2本体制でアイゼンなしでピック2本刺しでクリアしてました。しかし小屋から先の雪渓はミスは許されなく、アイゼンを装着します。今回は軽量化のためにテックビンディング用の軽量10本爪アイゼンを、登山靴にも装着できるように紐でしばったものにしました。これが何の問題もなかったのですが、もしアイゼンに不具合があれば敗退せざるを得なかったでしょう。これほど厳しい雪渓横断と登りがあると知っていたら、ちゃんとしたアイゼンを持ってきていたと思います。
何度もやってくる雪渓。その斜度は一度滑ったら雪渓の斜度が緩むところまで止まらないか、そのまま落ちるだけという危険さでした。雪はザラメで柔らかいところが多く、そうするとキックステップでアイゼンを切り込んでも滑ることがあります。もし両足とも滑ったら、手のピッケルだけで耐えないといけませんが、果たして耐えられるのかどうか・・・表面だけ緩んで下は氷の硬さの残雪というのはやはり特別な難しさがあると思います。
実際途中で何度か「撤退」ということを考えました。安全のためにはきちんとした確保をすべきですが、都度そうしていると倍くらい時間がかかります。それはイコール撤退という選択肢になりますし、我々はプロではないので命をかけてまで行くような山行はすべきではないでしょう。この判断の難しさはいつも悩まされるところですが、少なくともニシデンさんとロープをつなぎあって、どちらかが滑落すれば一蓮托生で一緒に滑落するということはやりません。自分でそのリスクを感じてどう行動するか判断できる人としか一緒に行ってはいけない場所、決して「憧れ」で連れて行ってもらう場所ではないというのがこの日の早月尾根でした。
私のシートラはザック下部にスキーを2箇所でぶらさげる方式ですが、これは縦型シートラのように薮に引っかかりにくい利点があります。それでもやはり、雪渓をよじ登る際には雪渓にスキーの先端が当たって邪魔をしますし、登山道の脇にスキーが当たってバランスを崩します。そういう不安定要素がただでさえ危険なルートの通過の緊張感を高めます。
それでも一歩一歩進めばいずれ山頂に到着します。無雪期であれば(シートラではありませんが)6時間少々で登っていた早月尾根も、この残雪の多さに山頂まで8時間を要しました。そろそろ室堂発の最終バスの時刻が気になりだします。
なにせハードですから標高200m差の道標、山頂での休憩はしっかり取ります。というかずっと休憩していたいくらいです(笑)。ただそれでは帰れなくなりますから、重い腰をジャッキで上げて下山開始しました。
実は私はカニのヨコバイは初めてです。つまり別山尾根からのルートは初めてで、2回の剱岳にはいずれも早月尾根からでした。先導するニシデンさんに導かれていよいよカニのヨコバイに入ります。実際にヨコバイなところは特定の部分だけで、それ以外は鎖場の縦方向の下降が中心です。いずれも落ちたら絶対助からない、ヘルメットも気休めと言えるような絶壁です。幸い誰もいないので自分たちのペースで歩けました。
無事にカニのヨコバイを終えると平蔵の頭です。ここはすぐ雪があり、登山靴を脱いで早速スキーに履き替えます。ニシデンさんはアイゼンなので上部はバックステップで下降されました。実際結構な急斜面です。平蔵谷の上部はまあまあ快適、標高が下がると雪の汚れや落石が多数あり、義務感で滑っているような感じです。途中でニシデンさんが水場を見つけられたので私も雪解け水を補充します。
剣沢の平蔵谷の出合まで滑れば、また登山靴を履いてシートラに戻ります。剣沢の登り返しがまた長い。土の道ならまだ早いのですが、ステップのない雪道の登りはかなり体力を消耗します。山頂あたりから少し頭痛がしていたのでそれが響いている、というよりは山行時間が長すぎという噂もあります。ドーピングですが頭痛薬を一錠飲んでしばらくすると頭痛も消えました。
雷鳥沢を下ってしばらくすると登山道の近くから雪渓が残ってました。下降のペースは快調だったのでスキーで滑るかどうか悩みましたが、やはり山スキーヤーが雪が残っているのを無視して歩くのもどうでしょう。またスキーに切り替えて滑りましたが、雪質は平蔵谷のような落石も少なく、なかなかこの時期にしては雄叫びの出る快適なスキーが楽しめました。
最後は整備された登山道の登り返しが何度かありますが、最終バスには余裕で間に合うということも分かり、ミクリガ池やつがいの雷鳥の写真を撮ったりしながら帰る余裕まで生まれました。
室堂についたら専用の袋にスキーとストックを入れ、発車間際の16:20のバスに乗り込むことができました。ケーブルカーに乗り換えて立山駅には17:30、ここからデポしてあったニシデンさんの車で馬場島まで戻りましたがこれがまた1時間15分くらいかかるもので、馬場島を出た頃には19時近くになってました。
常識では考えられないスキー担いでの早月尾根、そして平蔵の頭からのスキー滑降、剣沢を登り返して雷鳥沢をまたスキーで滑るという貴重な体験をさせていただきました。正直、シートラ早月尾根は二度とないと思いますが、長次郎谷の滑降はいつかチャンスがあればやってみたいなと思いました。白山とはまた次元の違うすごいものを見せつけられた、そんな山行でした。
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