沢から尾根へ…双六谷〜九郎右衛門谷〜三俣蓮華〜双六岳〜ワサビ平
- GPS
- 104:00
- 距離
- 50.8km
- 登り
- 3,335m
- 下り
- 2,712m
コースタイム
- 山行
- 7:48
- 休憩
- 1:13
- 合計
- 9:01
- 山行
- 7:30
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 8:10
- 山行
- 6:22
- 休憩
- 2:18
- 合計
- 8:40
- 山行
- 7:00
- 休憩
- 2:25
- 合計
- 9:25
天候 | 初日夕方に若干の雨があっただけで毎日晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
新穂高温泉・平湯温泉方面はコロナ関係で減便になっています。特に午後便。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・金木戸林道の土砂崩れ個所は現在工事中。高巻き道がつけてあるが現場作業者いれば断って通ること。 ・森林軌道跡は後半3分の1の桟道の荒れ方ひどく、上手に踏み跡を拾うこと。 ・本流は時期もあるが減水し、赤いヌメがひどかった。 ・九郎の30m巻き道は過去の記録で二通りあるが、きっとオーソドックスな方(蓮華谷側)を選択した方がいいだろう。 |
その他周辺情報 | 平湯の森 10時から いたるところマスク着用の指示。どうにかならないか… |
写真
感想
長かった梅雨が明けたものの、例の感染症で全国がすっきりしていない状況。これをどう考えるのか?1日おきに1時間以上の電車通勤をしていること、仕事柄そういう人たちに接触する可能性が多いことなどから『自分が感染している』恐れがないなんて一言も言えない。ではいつまでこんな自粛ムードを続ければいいのか?
受け入れてくれる側の体制や自分の公共の場での最低限のマナーを順守すれば問題ないという判断が、go toキャンペーンを始めた理由の一つでもあるのでは?だったら乗ってしまおうと…そして日程の半分は誰にも会わないだろうという場所を選択すれば…甘いのかもしれないが、とにかく山に行きたかった。
24日は深夜バスで平湯に入って寝不足のまま歩くのでは楽しくないと思い、前日に栃尾温泉まで入っておけばいいんじゃないかと、いつも通りの各駅停車で松本へ。新穂高がらみは交通費がかさむが、嫁も家から出て行ってくれることに大賛成、子供も大賛成とあれば宿泊費から交通費まで気持ちよく出してくれるのだった。
たまたま検索した『民宿 富久の湯』が例のキャンペーン対象で、朝食なし飛騨牛にイワナ塩焼き追加で5000円を切る価格。迷う理由がない。かけ流しの泉質は無色透明だったのが意外、やや熱めでも湯上りの肌感は温泉成分バッチリという感じ。これが最終日だったら…と思うくらいリラックスしてしまった。明日から平気だろうか?
25日、7時17分の神岡行きのバスで双六渓谷へ向かう。うすうす気づいていたが今日は荷物が重い。履物だけでアプローチ、らばー、フェルト、ビーサンと4セット…第1ゲートまでで何か捨てていきたいと思った。沢登りっていつもこんな装備だったっけ?渓谷沿いの道から双六川を見れば、子供を連れて遊びに来たらさぞかし楽しいだろう渓相が続く。これが最終日なら間違いなく荷物を置いて川に飛び込んでいただろう。
ゲートに着けばすごい数の看板、車上荒らしも出ているらしい。以前、群馬の沢登りでやられたことのある私は車で来なくてよかったと思った。休憩後、ダートに変わった林道を記憶をなくして歩く。日向はかなり暑い。でもこの天気を恨んではいけない。沢に入る身としては、昨今のゲリラ豪雨を考えればなんとも恵まれた条件ではないか。
第2ゲートから中ノ俣出合までの間に例の崩落箇所があり、途中会った作業員が『仮設作業道ができているからそれを通ればいい』と教えてくれた。現場は橋の基礎に配筋が入って正直通れなくはないという感じだったが、遊ばせてもらう身、しっかり巻き道を通り、トンネルで休憩していた職人さんに挨拶して通過。広川原の取水堰には以前、打込谷に来た時より時間がかかってしまった。ここからさらに1時間30分…今日は打込出合までと思っていたが、思いの外暗くなってしまったのとボサが増えた森林軌道跡で大バテしてしまったこともあり、補助ロープが増える後半、踏み跡がどんどん上がっていった後、壊れた吊橋を見たら『もうここでいいや』と、吊り橋先の右岸で泊まることに決めた。いい河原だがよく人が泊まっているのか流木が少ない。それでもなかなかいい焚火ができた。タープの設定が終わった後にパラパラときたが明日はどうなるのか?
26日、いい天気、積極的に水に入っていけそうな陽気だ。渡渉はおおむね腹からへそで渇水気味か水中のぬめりが強い。河原の乾いた岩はラバーでフリクションバッチリでも、打込谷出合まで30分かかってしまった。日影十根はガイド通り右岸なら水につからず抜けられる。帰ってきて写真を改めて見ると、川幅は50mくらいあり側壁も高いのだが黒部川のような迫力が伝わらないが、それでも北アの沢、スケールはでかく圧倒される。
大岩の河原を縫いながら、濡れること滑ることが苦でなければルートは自由自在な感じ。日面十根を過ぎれば右岸が多かったか?側壁高いのでまだ陽は差して来ない。右岸からの支沢が進んだ距離の目安となるが、はじめに入るセンズ谷は地形図には載っていないが上部にものすごいでかい滝が見えた。ここまでは大岩乗越系だったが、これ以後普通の河原歩きとなる。広河原は昔泊まったことがあるが(この頃は第2ゲートまで来るまで入ることができた)両岸にいいところがあり、頑張ってここまで来られれば良かったのにと思うくらい良い河原。ここで休憩。
この先もゴルジュになっても河原状で渡渉を繰り返す。記録で見た左岸のきわどいへつりは、残置があるもののラバーならではのムーブで越える。これを越えて河原歩きからなんとなく現れるのがキンチヂミ。初めて来たときよりも埋まった気がする。水中バンドを進んだ後、空身で登って荷揚げ。この先さらに明るい河原と時折現れるプール、素晴らしいスケール感に北アの沢に身を置いているんだという満足感を感じている。相変わらず支沢はでかい滝で合わさってくる。
今日はそれほど距離を稼いでいるわけでもないが、九郎衛門谷に入っていい河原があるという確証がないことから、慌てて天場まで登らなくてもいいように蓮華谷出合でやめることにした。出合は砂の台地で増水には耐えられるが、立木が頼りなくタープ設定に時間がかかった。樹林の中にも焚火跡はあったがすっきりしたところに泊まりたかった。薪も十分に見つかり今日もいい焚火となった。久々にビールとジャパ酒を持ってきていたが、身軽になれるように空けたのは言うまでもない。
27日 今日はいよいよ九郎衛門谷、はじめはしばらくゴーロで七ツ釜と呼ばれる4m程度の滝の連瀑帯になる。すでにドでかいものが先に見えておりやや緊張する。すぐに蓮華谷二俣、ルートは巻きでメインのコースは蓮華谷側のガレからが一般的。山行前にたまたま九郎衛門谷側からの巻きが『20分』で終了するという記事を見てきてしまった。前者は藪が確定、後者は基部がガレでも上部は階段状に見える。重荷に嫌気がさしていたことからすっきりした方を選択。足跡のようなものもあったし…これがまずかった。
途中から草付きバンドがあるように見えており、そうでなくても灌木帯までのトラバース距離が大したことないと思っていたが、思いのほか草付きの傾斜がきつく、涸れ棚状をさらに上がり高く巻きすぎた感が出てしまい、早くトラバースしたいという思いが強くなった。踏み跡状があったので進んでみたがなくなってしまい、仕方なく足元の草付きをバイルでつぶしてポキポキ折れる草をつかみながら、さらにピックで刺して滑落保険をとりながら、なんとか灌木帯手前の沢状に入ることができた。ところがまたここが大変で、土に半分埋まった木の根をバイルで掘り出す、ピックで刺して手掛かりにする等の泥臭ーい総合力を駆使してなんとか灌木帯に突入。身の丈ほどの笹藪を下り、1時間かかって懸垂なしで滝頭に降りることができた。オーソドックスなルートの方がよかったのだろうか?危機的な状況のたびに半沢直樹のテーマが頭をよぎっていたことは言うまでもない。
やや長めの休憩後、冷静に上流を見ると右岸から枝沢が落ちており、涸れ棚をさらに登り切ってからこの枝沢に入って下降すれば、それほど危ない思いをしなくてもよかったのではないか?そして上流はミニ赤木沢のような(言いすぎか?)階段状滝の渓相に変わる。フェルトシューズに変更していたいたので、悪路場チックな動きをしなければ問題なし。暑いので流水を浴びながら登ったり、滝行的なことをしたりと楽しんで登れる。振り返ると笠ヶ岳が視界に飛び込んできた。
上部はゴーロ上の滝が多く、傾斜が落ちてくると日本庭園のようになる。三俣状の真ん中をいけばハイマツの先に五郎小舎の天場に出る。なかなか珍しい終わり方だ。
本来の計画は黒部源流に下り、祖父沢を上がって雲の平の天場で泊まる予定。疲れ切ってしまったのと源流での幕営禁止等、確実に天場まで上がらなくてはならないことから三俣の天場を目指すことにした。天気はすでに曇り、五郎のカールもほとんど見えない。小舎で装備替え。当然のように登山客がいるが、皆マスクをしている。小屋についてもコロナ対策セキュリティは過剰なくらいだった。さらにくそ重くなったザックを担ぎ、三俣蓮華の巻き道経由で三俣小屋へ。
ツェルトかタープか…ここまで来たらタープで通したいと思い、風の影響のない場所を探したが、混んでいるわけではないのにいいところは取られてしまっていた。何とか見つけたところがいい感じで、濡れ物を乾かしながらタープを設定し、夜は風がなくなり稜線で開放感のある一晩を過ごした。
28日 起床すると満天の星空、最高の眺めも提供してくれている。ところが出発するころには結構雲が多くなってきていた。いつも思うがこの三俣蓮華、思いの外でかい。定番の槍方面の眺めは相変わらず素晴らしいが、もうここまでくると次のGWのスキーコース下見でしかない。稜線経由で双六へ向かうと蓮華谷や九郎衛門谷がばっちり見えて、歩いてきた場所の復習ができた。改めて思うけれど双六谷は長い。雲が湧く前に双六Pに到着できた。
今日のうちに帰宅することができるのか?やっと電波が入ったのでバス時刻を検索すると、な、な、なんと新穂高発の午後便はすべて運休!これで焦って下山しなくて済むようになった。双六野球場ではうまいこと雲も取れ、あの雄大な景色を見ることができ、通りかかった大阪の同い年男性と会話が弾む。何日ぶりかで人としゃべったのでつい話過ぎてしまった。
さすが週末の人気コース、小池新道に入るとものすごい人の数が登ってくる。弓折岳からの下りは長かった…ここは無雪期に登ったことがないくらい避けていたコース。よく登ってくるなと感心してしまう。ゴールはワサビ平なので鏡平からは緊張感もなく暑い斜面をダラダラと歩き、これが余計に疲れを助長させているんだろう。鏡平では当たり前のように逆さ穂高を見ることができなかった。これで何連敗だろう?
左俣橋で服のまま水に入りたいという衝動を抑え、ようやくワサビ平に到着。ここもコロナセキュリティが高かった。いつになったらこの状況はなくなるのだろう。
ワサビでもタープ泊、ここが大きな木が多く、一番いい感じでタープが張れた。蚊が気になるところだが、林業用蚊取り線香の強力さにそれほど被害なし。ここの天場落ち着くんだよなぁ…でも関係車両が結構多かったのが残念だった。
29日 とにかく早く風呂に入りたかったので、平湯の森の10時開店に間に合うバスを狙って歩く。林道は昨日にもまして人の数がすごい。快晴の空をバックにした笠ヶ岳東面の壁に感動しながら新穂高着。発射直前のバスに飛び乗り、行きに泊まった宿の裏をバスは通過、ぐるり一周したことに。まるで雨に降られることもなく5日間の山行を終えた。終わり良ければ総て良し。今年の夏の休暇は終わりを告げた。
しかし、温泉施設の脱衣所までマスクで、入浴時は外す…予防のためなのか人のためのマナーとしてなのか。相手との距離が2m以上の屋外なら装着しなくてもいいのではなかったか?マスクについて何が正しいのかよくわからないことが多すぎるなぁ。
2年前のレポに今更の質問で申し訳ありませんが、広河原から森林軌道跡を進んで打込谷出会いの傾いた吊橋付近は平水時の渡渉でどれくらいの水深なのでしょうか?
沢屋界隈では有名な沢と思いますが、門外漢には自分的核心となるアプローチすら情報が不足している状態故、不躾ながらコメントさせていただきました…
ここから板戸岳へと登り、秩父平に抜けられるか検討中なので、よろしければお教えいただきたく…
勿論、現況把握の為一度下見に行くつもりではあります…
初めまして。記録を読んでいただきありがとうございます。
また、返信が遅くなり申し訳ありません。
ずいぶんマアニアックなコースですね。いわゆるこの吊り橋からつけられていた古道のことなんでしょうか?昔の25000図には途中までルートが記載されていましたが、その道のことですか?小倉谷出合からもどこか稜線にルートがあったようですが、調べてはいません。もしくはただひたすらに藪をこぐという登り方なんでしょうか?興味がありますね。
本題に戻りまして、渡渉点ですが水深あって腰だったと記憶しています。上流側に向かって浅いところを探していけば、そこまで深くないかとも思います。集水面積が多い沢なので、増水時は手が付けられないと思いますので注意してください。今年のGWの双六谷源流部の残雪は例年より少なかったので、渇水ならば問題なしです。
ただ、下見でもあの林道を往復するのは記憶がなくなったころにしたいです。自転車があると便利ですね。帰りはほとんど漕ぐことがないと思います。ダム管理の車も通りますので、自転車利用時、小言を言われるかもしれません…注意してください。
あと、ゲートのところに『車上荒らし注意』の看板もありましたので、こちらも注意してください。
では、お気をつけて。
あの後、廃吊橋まで行きましたが、覚悟と装備が足りず、平水であれ斯くの有様で御座いました…
林班図を参照し、やはり吊橋からは笠ヶ岳へ延びる支尾根は問題なさそうでしたが、打込谷出合の板戸岳への尾根は地形記号的に現地確認は必須ですね…
藪尾根は取り付きが成否を分けるので実施検証に勝るものはありませんでした…
下らない質問にお答えいただき、まことに申し訳ありませんでした。
記録拝見しました。私が返信をした後に記録があるのに気づき、何の参考にもならない返信となってしまったことを反省しております。申し訳ありませんでした。秋に打込谷遡行をしたことがありましたが、この時は、本流渡渉も気にならないくらいだったような気がしました。よろしければ私の過去の記録を見てください。
是非、成功させてください。お気をつけてください。
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