笠ヶ岳〜槍ヶ岳 （播隆上人の足跡を追って）
長野県
岐阜県
sada
- GPS
- 77:30
- 距離
- 46.9km
- 登り
- 3,354m
- 下り
- 2,942m
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新宿23:00→6:00上高地7:30→7:45平湯温泉8:10→8:45新穂高温泉9:00⇒9:50笠新道登山口10:15⇒13:50杓子平14:00⇒15:20抜戸岳分岐⇒16:00抜戸岩⇒16:30笠ヶ岳山荘（泊）
8/27（水）
笠ヶ岳山荘4:40⇒4:55笠ヶ岳山頂5:35⇒8:00秩父平⇒10:00弓折岳⇒11:10双六小屋（昼食＆泊）
8/28（木）
双六小屋5:30⇒6:00縦沢岳⇒8:10千丈沢乗越⇒9:15槍ヶ岳山荘9:45⇒10:10槍ヶ岳山頂10:25⇒10:50槍ヶ岳山荘（昼食）11:45⇒12:30播隆窟12:40⇒14:10大曲⇒15:00槍沢ロッジ（泊）
8/29（金）
槍沢ロッジ6:30⇒7:35横尾7:40⇒8:40徳沢8:50⇒9:40明神9:50⇒10:45河童橋⇒11:00五千尺（昼食）11:30⇒12:00ウェストン碑⇒12:10上高地温泉ホテル（入浴）14:00⇒14:30上高地バスターミナル16:00⇒20:30新宿
| 天候 | 8/26（火）晴れ 8/27（水）晴れ 8/28（木）曇り→雨 8/29（金）晴れ→雨 |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2008年08月の天気図 |
| アクセス | |
| 予約できる山小屋 |
横尾山荘
|
写真
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急にガスが出てしまいました
大キレットは見えます
感想
新田次郎シリーズ第２弾は「槍ヶ岳開山」である。
槍ヶ岳、あまりにも有名で今さら書くのも恥ずかしい。
開山は播隆上人、中田又重郎と共に初登攀を成し遂げた。
１８２８年であるから１８０年前のことである。
播隆は笠ヶ岳再興を成し遂げ、その頂から槍の峻峰を見て開山を決意したという。
浅い知識ではあるけれど、槍の前に「笠ヶ岳」に登るべきと感じ計画を立てた。
８月２６日
新穂高温泉から笠ヶ岳山頂が良く見える。
標高差は１８００ｍだが、手を伸ばせば届きそうなくらいだ。
９：００、その頂を目指し林道を行く。
１時間ほど歩くと笠新道登山口に着く。
水場で食事をしていると鏡平山荘に向かうオジサン３人と出会った。
彼らは明日、笠ヶ岳へ登るそうだ。
【鏡平のオジサン３人】と明日の再会を約束する。
笠新道は極めて人の少ない登山道である。
しかし良く整備されており危険箇所は無いと言える。
延々と続く登りは高度を稼ぎ、穂高連峰から槍ヶ岳への山容が見事に望める。
何度も休憩しては、槍・穂高の険しい峰々を眺める。
単独登山は時間の経過をも忘れさせる。
一心不乱になることを説いた播隆の教えを思い出す。
14:00、杓子平に到着した。
そこに風は無く、鳥の鳴き声だけが聞こえた。
美しいカールには無数の花々が咲いている。
それらの守護神のように笠ヶ岳が存在する。
極楽浄土なカールを行くとキツイ登りになった。
15:00、ついに稜線に出るが、ガスが多く見晴らしは無い。
疲労のため今日のゴールは山荘までと決める。
山頂部に近づくと幅１ｍほどの岩が無数に重なりあっている。
巨大な山塊である笠ヶ岳に感動する。
１６：３０、笠ヶ岳山荘に到着。
１７：００の夕食では隣のオジサンと会話が弾んだ。
「到着してすぐに晩飯で大変だね。」
「双六小屋の天ぷらも美味かったけど、ここの食事もいい。」
【隣のオジサン】は良く喋る。会話は食後も続いた。
山の話から、登山道具、酒の話になった。
自分も結構良く喋る。
【隣のオジサン】からウイスキーを御馳走になる。
消灯時間が迫っていた。
８月２７日
わずかな光が差す頃、静かに山荘を出る。
５：００、笠ヶ岳山頂に立った。
山頂から見る槍ヶ岳は、小槍が良く見える。
それは子供を抱いている親子にも見え、祈りのカタチにも見えた。
播隆上人も同じ光景を目にした事だろう。
ガスが多く槍は隠れたり現れたり忙しい。
御来光はガスのカーテン先に現れる。
私と笠ヶ岳はオレンジ色に包まれた。
目指す槍ヶ岳を憧憬し笠ヶ岳を後にする。
後ろ髪を引かれるように振り返れると播隆平が見えた。
小さな池を持つオアシスである。
美しい自然を与えてくれた飛騨の名峰に感謝する。
天気は上々。
しかし楽しい稜線歩きを筋肉痛が襲う。
”左足が痛い”
昨日の登りに無理があったようだ。
”槍ヶ岳山荘まで行くのは無謀だ”
今日のゴールを双六小屋と決める。
ペースを落とし北アルプスの山気を楽しむ。
黒部五郎岳、三俣蓮華岳が良く見える。
抜戸岳を降りる途中で【鏡平のオジサン３人】と遭遇。
笠ヶ岳の素晴らしさを彼らに伝えた。
９：００、緑豊かな秩父平で休憩。
【隣のオジサン】から頂いたアミノバイタルを飲む。
”今頃は杓子平で感動していることだろう”
１１：００、双六小屋に到着。
まだ早いが脚が痛むためチェックイン。
昼食はカレーライスと生ビール。
冷えたビールが身にしみて昼寝をする。
長嶋茂雄に似た方と一緒の部屋になった。
彼は水晶岳と鷲羽岳を登ってきた。
明日は笠ヶ岳に行くらしい。
食事は【ナガシマシゲオさん】と御一緒した。
双六小屋は北アルプスのターミナル駅のようだ。
雲ノ平、黒部五郎、鷲羽岳、笠ヶ岳、そして槍ヶ岳。
様々なルートを行き交う人々が出会い別れる。
８月２８日
５：００の朝食後すぐに出発。
笠ヶ岳へ行く【ナガシマシゲオさん】に手を振り槍ヶ岳を目指す。
脚の調子は良いが天候は悪い。午後は雨予報。
少しでも早く槍に着きたいのでペースを上げた。
展望の無い西鎌尾根ではあるが、時々視界が開ける。
しかし槍は全く見えなかった。
尾根を行くとある人と巡り合った。
「生憎の天気ですね」と声をかけられたが、「本当ですね」としか返せない。
これが後に仲間になる【Ｙさん】との出会いである。
自分は彼を抜き先を急いだ。
岩場、鎖場を過ぎるとかなりの勾配になる。
標高３０００ｍを越えれば既に槍ヶ岳主峰にいる実感がわいてくる。
９：１５、槍ヶ岳山荘に到着すると同時に雨が降ってきた。
山荘に入ると韓国語が飛び交っている。
”日本人は自分だけのようだ”
初めての槍ヶ岳。もちろん登る自信はある。
剱岳も雨だった。あの時も単独だった。
”でもなぜ、いつも雨の中を登らなければならないのか”
ブルーな気分のなか準備をしていると【Ｙさん】が到着した。
彼は同じメーカーのレインウェアを着ている。
とても親近感がわいた。
「一緒に登りましょう」
お互い声をかけていた。もちろん日本語で。
【Ｙさん】は室堂から上高地まで縦走する。
立山を越えて黒部五郎、昨夜は同じ双六小屋だった。
すごい長距離縦走である。
また、彼は穂高の殆んどのコースを制覇しているという。
西穂〜奥穂を３回も縦走したベテランである。
頼もしいかぎりだ。
”小雨になりそうもない”
我々は荷物を山荘に置き、鉾先を目指した。
しばらく緩やかな岩場を登るとすぐに鎖が現れる。
”剱の鎖はステンレスだが、槍は鉄で滑りにくいな”
そんな事を思いながら登った。特に難しい場所は無い。
上りと下りのコースが少々識別し難いくらいだ。
梯子を登ると急に高度が増す。
杭だけの場所が存在し、滑らないよう慎重になった。
最後の梯子を登れば頂上から賑やかな声が聞こえてくる。
１０：１０、槍ヶ岳山頂に立つ。
有名な小さい祠を見て実感がわく。
”この祠は播隆上人が開山した後、何代目になるのだろうか”
悪天候で眺望は無いが険しさと高度感はわかる。
梯子が無かったら私は絶対に登れない。
播隆と又重郎の偉大さを実感した。
彼らはクライミング技術や最新鋭の道具を備えてはいなかった。
おまけに登るだけのクライマーとは違う。
開山後に鎖を設置し、誰もが登れるよう尽くしたのである。
”播隆上人は幾多の苦難をのり越えた高僧であり、中田又重郎は日本登山史に残るシェルパである”
そう槍ヶ岳が教えてくれた。
下山後、【Ｙさん】と昼食を取る。
共に槍沢ロッジに泊まることにし、槍沢を降りる。
”槍が遠く離れていく”
最後の槍ヶ岳になると確信した播隆は、ここを何度も振り返った事だろう。
そんな気持ちが伝わり自分も振り返える。
しばらく下ると有名な播隆窟がある。
地図には坊主岩小屋となっているが、「播隆」の２文字を見て嬉しくなった。
英文の説明もある。韓国語ができる日も近いのではないか。
途中、【Ｙさん】がバテ気味の青年に声をかけた。
彼は燕岳から縦走してきたという。
その青年【Ｔくん】も仲間に加わり３人で槍沢ロッジを目指す。
【Ｔくん】は松本在住でスキーの名手である。
富士山を滑降した経験の持ち主で雪山登山もする人だ。
槍沢を降りていると再び脚が痛みだした。
延々と続く下りで左足が棒のようになってくる。
”播隆はもっと苦労したのだ”と思い我慢する。
１５：００、槍沢ロッジに到着。
完全に単独登山ではなくなっていた。
消灯まで３人で宴会である。
８月２９日
６：３０、上高地を目指し出発。
横尾、徳沢、明神と続けば今回の山旅の終わりを感じる。
河童橋で昼食後、【Ｔくん】と別れた。
我々は温泉に向かう途中、ウエストンの碑を見つけた。
記念写真を撮る観光客でいっぱいである。
もちろん彼の功績は認めるが、”なぜ播隆の碑がないのか？”疑問に感じた。
上高地温泉ホテルの湯はとても良い。
我々は時間を忘れリフレッシュできた。
次回もまたお世話になるであろう。
再会を誓いバスターミナルで【Ｙさん】を見送る。
「本当に２日間ありがとうございました。」
山で連絡先を交換したのは初めてである。
今回も多くの人と出会い、素晴らしい自然に恵まれた山旅となった。
整備された登山道を四日間歩いただけだが、播隆上人が見たものに接することができたと思う。
それは、北アルプスというよりも、槍ヶ岳を中心に険しい峰々をもつ「播隆山脈」であった。
帰路の途中、松本駅にある播隆像を思い出した。その碑にある記述をもって今回は完結としたい。
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建立の主旨
槍ヶ岳開山の祖 播隆上人（一七八二年〜一八四○年）は幾多の苦難をのりこえ一八二八年に槍ヶ岳登頂を極めた
日本アルプスの命名者の英人ガウランドの登頂（一八七八）に先きだつこと五十年
まさに近代アルピニズムの黎明を開く不滅の業績を残した ここに岳都松本の駅頭にその像を建立し偉業を永く讃える
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yarukigenki さん
こんにちは。相変わらずすごい行程で登ってますな
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