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槍ヶ岳(やりがたけ)

天を衝く北アルプスの象徴

"槍ヶ岳"
"槍ヶ岳"

槍ヶ岳は長野県松本市と大町市、岐阜県高山市の境界に位置する標高3180mの山で、日本百名山に選定されています。
ピークは「槍の穂先」と称される岩峰で、どこから見てもピラミダルな形です。その鋭さから厳冬期もあまり雪が積もらず、黒々と目立ちます。威厳のある佇まいは人々を惹きつけ、北アルプスのランドマーク的存在です。

氷が鋭く削った山容

"槍沢:U字谷"
"槍沢:U字谷"

この山容は氷河活動により生まれた「氷食尖峰(ひょうしょくせんぽう)」です。山頂部は非常に硬い火山岩「凝灰角礫岩」で構成されており、氷河の浸食作用と風化に耐え鋭く削り残されました。
尾根は東西南北に4つ伸びており、東鎌尾根、西鎌尾根、南の穂高岳へと続く主稜線、北鎌尾根です。尾根と尾根の間は、U字形にえぐられた氷河谷で槍沢、飛騨沢、千丈沢、天上沢です。

「アルプス一万尺」の山

"小槍"
"小槍"

槍の穂先は「大槍」とも呼ばれます。大槍の北西には「小槍」「孫槍」「曽孫槍」という名の岩峰が連なります。
小槍はクライミングスポットです。また、児童の手遊び歌「アルプス一万尺」の歌詞に登場します。一万尺は3030mで小槍の標高と同じです。

開山の立役者・播隆上人

"松本駅:播隆上人像"
"松本駅:播隆上人像"

開山者は越中(現在の富山県)の修行僧・播隆上人(ばんりゅうしょうにん:1786-1840年)です。
彼は笠ヶ岳登頂の際、槍ヶ岳の神々しい姿に魅せられ登ることを決意します。1828年に初登頂を果たし、阿弥陀如来、観世音菩薩、文殊菩薩の三尊を安置しました。
その後も、誰もが安全に登拝できるようにと登山道を整備し、山頂に祠を設置しました。また「善の綱」と名付けた綱や鉄鎖を掛けることにも尽力しました。

"播隆窟"
"播隆窟"

槍沢の登山道には播隆窟(ばんりゅうくつ)、別名「坊主岩小舎(ぼうずいわごや)」という岩屋があり、播隆上人が53日間籠って念仏を唱えた場所だそうです。

「日本のマッターホルン」と称された山

"上高地:ウェストンレリーフ"
"上高地:ウェストンレリーフ"

外国人で初めて頂上に至ったのはウィリアム・ガウランド(1842-1922年)で、1878年のことです。以降は宗教目的以外の登山が盛んになり、槍ヶ岳は日本のアルピニズムの中心地へと移り行きます。
また、イギリス人宣教師のウェストン(1861-1940年)は、著書で槍ヶ岳を「日本のマッターホルン」と紹介し世界に広めました。ウェストン夫人は、女性で最初の登頂者です。

岩をよじ登り山頂へ

"槍の穂先"
"槍の穂先"

槍の穂先には鎖と梯子が設置されており、登るためには岩登りの基礎的な技術が必要です。
上りと下りで道が分かれている箇所があります。誤らないようペンキ印に従い、石を落とさないよう慎重に登ります。頂上直下の鉄の梯子は傾斜が約80度あり、一層の緊張感があります。
登山シーズンは混雑し、長い行列ができることもしばしばです。

"槍ヶ岳山頂"
"槍ヶ岳山頂"

山頂部は狭く、小さな祠があります。360度の見晴らしは圧巻で、北アルプスの峰々はもちろん、南アルプス、八ヶ岳、時には富士山も見えます。

肩に建つ槍ヶ岳山荘

"槍ヶ岳山荘"
"槍ヶ岳山荘"

槍ヶ岳山荘は槍ヶ岳の肩に建つ大きな山小屋です。
喫茶室では焼きたてパンを頂くことができ、手ぬぐいをはじめとするオリジナルグッズが豊富です。また、標高3000mを超えるテント場があることでも知られています。
絶好のロケーションで、夕刻に赤く染まる大槍や、御来光との共演は見どころです。

ポピュラーな沢筋ルート「槍沢」と「飛騨沢」

槍ヶ岳に至るルートは複数あります。
4つの尾根筋(東鎌尾根、西鎌尾根、南の穂高岳へと続く主稜線、北鎌尾根)と、沢筋の槍沢ルート、飛騨沢ルートです。
沢沿いのルートは、初めて槍ヶ岳に挑戦する登山者によく選ばれています。

"槍沢ルート・飛騨沢ルート"
"槍沢ルート・飛騨沢ルート"

"槍沢:グリーンバンドを望む"
"槍沢:グリーンバンドを望む"

槍沢ルートは上高地から梓川に沿って進み、槍沢を遡上します。
大曲を越えると徐々に傾斜がきつくなりますが、展望が良くなりお花畑が広がります。
槍沢には、氷河に運ばれた石や岩の堆積物であるモレーンが点在します。ハイマツや草本に覆われたモレーンはグリーンバンドと呼ばれ、ここを越えると槍の穂先を捉えるようになります。さらに岩のごろごろした道を詰めると、槍ヶ岳の肩に着きます。

"滝谷出合"
"滝谷出合"

新穂高温泉からの「飛騨沢ルート」は、蒲田川の右俣谷を詰めるルートで、最も早く登頂できるとされます。右俣谷は白出沢や滝谷の支流が流れ込んでおり、増水時の通行は見極めが必要です。
蒲田川の左俣谷からも登頂可能で、より長い行程を希望する登山者に好まれています。

縦走コースの代表格、表銀座・裏銀座

「表銀座縦走コース」「裏銀座縦走コース」は東鎌尾根、西鎌尾根をそれぞれクライマックスに槍ヶ岳を目指します。

"表銀座縦走コース・裏銀座縦走コース"
"表銀座縦走コース・裏銀座縦走コース"

"東鎌尾根"
"東鎌尾根"

表銀座縦走コースは、中房温泉を起点とし燕岳大天井岳、喜作新道、東鎌尾根を経て槍ヶ岳へ向かいます。
小林喜作(こばやしきさく:1875-1923年)が開拓した「喜作新道」は、かつては槍ヶ岳のメインルートとして賑わいました。「銀座」の名の由来は、その栄えた様子を表したからと言われます。一方で、小林喜作が銀座を闊歩するかのように、身軽に山を駆けていたからという説もあります。現在も人気は健在で、常に槍ヶ岳を見遣りながらの稜線歩きが満喫できます。

"野口五郎岳より、槍ヶ岳へ続く稜線"
"野口五郎岳より、槍ヶ岳へ続く稜線"

裏銀座縦走コースは高瀬ダムより入山し、
烏帽子岳野口五郎岳鷲羽岳双六岳、そして西鎌尾根と辿ります。
比較的のどかな雰囲気を楽しめますが、長丁場のため健脚が求められます。

憧れの槍・穂高連峰縦走

"槍・穂高縦走路"
"槍・穂高縦走路"

"南岳より穂高連峰を望む"
"南岳より穂高連峰を望む"

"大キレット"
"大キレット"

槍ヶ岳と穂高岳の二峰を結ぶ主稜線の縦走ルートは、多くの登山者がいつかはと憧れます。
北穂高岳から南岳の間には、大キレットと呼ばれるV字に切れ込んだ岩稜帯があります。難易度が高く、越えるためには十分な技術と体力を要します。

高名なクラシックルート・北鎌尾根

"北鎌尾根"
"北鎌尾根"

"北鎌尾根:山頂近くのチムニー"
"北鎌尾根:山頂近くのチムニー"

北鎌尾根はバリエーションルートで、上級者のみが踏破できる難路です。
山頂や喜作新道、裏銀座縦走コースからはその険しさがよく窺え、見る人を痺れさせます。
かつては孤高の登山家、加藤文太郎(かとうぶんたろう:1905-1936年)が冬期登攀に挑み命を落としました。また、先鋭クライマー松濤明(まつなみあきら:1922-1949年)が遭難死した地でもあります。「風雪のビバーク」は彼の遺書となった壮絶な手記として有名です。

どこから見ても良しの雄峰

"逆さ槍ヶ岳"
"逆さ槍ヶ岳"

特徴的な山容はどの方向からも尖って見え、遠方からも一目瞭然です。
中でも槍沢の天狗原は、槍ヶ岳を見るために立ち寄る人が多い場所です。「氷河公園」の別称を持つ圏谷で、天狗池に映る逆さ槍ヶ岳は一見の価値があります。特に紅葉の時期の美しさは評判です。

槍ヶ岳の難易度(信州 山のグレーディング)

21. 縦 裏銀座(高瀬ダム・上高地) 難易度C ★★★☆☆(3)
27. 縦 表銀座(中房温泉・上高地) 難易度C ★★★☆☆(3)
65. 周 大キレット(上高地)<北穂→槍> 難易度E ★★★★★(5)
98. 槍ヶ岳(上高地) 難易度C ★★★☆☆(3)
登山口 上高地バスターミナル
中房温泉登山口
新穂高温泉駅
周辺の山小屋 槍ヶ岳山荘
殺生ヒュッテ
ヒュッテ大槍
槍沢ロッヂ
南岳小屋
ヒュッテ西岳
基本情報
標高 3180m
場所 北緯36度20分31秒, 東経137度38分52秒
カシミール3D
・日本で5番目に高い山、北アルプスのスカイツリー。山頂にあった2等三角点は、『成果使用不能』扱いになっている。狭い山頂の北端に祠がある。
・1828年に、播隆上人が初登頂し、開山したとされる。
・山頂直下の南肩に槍ヶ岳山荘(収容650人:北アルプス南部最大規模)がある。
・槍ヶ岳山荘から頂上までは夏山、紅葉シーズン中は特に渋滞必至。鎖場やハシゴ場の手前で待つことも。下りは岩のトラバースあり。落石にも注意を。ヘルメット着用を強くお勧め
山頂
危険個所 垂直な長い鉄のハシゴ、クサリ、ペイント、一方通行箇所あり ★平成25年ゴールデンウィーク中、遭難2件(滑落・1名重傷、発病・1名無事救出)★平成24年度ゴールデンウィーク中、遭難3件(転倒・1名重傷、落雷・1名軽傷、ほか)ー長野県山岳遭難防止対策協会 提供ー
展望ポイント ★★★360度(富士山、白山、劔岳などほとんどの高い山が見える)

山の解説 - [出典:Wikipedia]

槍ヶ岳(やりがたけ)は、飛騨山脈南部にある標高3,180 mの山である。山域は中部山岳国立公園に指定されており、日本で5番目に高い山である。長野県松本市・大町市・岐阜県高山市の境界にある。初登攀は僧の播隆上人。日本百名山、新日本百名山及び花の百名山に選定されている。通称「槍」。
名前の如く天に槍を衝く形が特徴的な高山であり、登山者でにぎわい、穂高岳などと共に多くの登山者の憧れの的となっている。深田久弥は、『日本百名山』の中で
と述べている。
開山者は、播隆上人(1786年 - 1840年)である。開山と登山道整備の歴史は当該項目を参照されたい。宗教目的以外での初登頂は1878年のウィリアム・ゴーランドで、1892年のウォルター・ウェストンがそれに続いた。
槍ヶ岳は四方に尾根と沢を伸ばしている。尾根は東西南北に、東鎌・西鎌・槍穂高・北鎌の四稜、沢は東南に槍沢、南西に飛騨沢(槍平)、北西に千丈沢、北東に天上沢の四沢である。梓川源流部の槍沢上部標高2,500 m付近の天狗原に天狗池があり、周辺は氷河公園と呼ばれている。周辺は圏谷(カール)地形となっている。

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