山へ行っていたオッサンが、コロナのせいで山へ行かなくなった。ものを書くことも無くなったので、私が代わって書いてやることにした。と言っても、オッサンほどマメではない。ただ暇だから、暇に任せて書いてやろうと、それだけのことだ。
なんたって暇なのだ。これと言ってやりたいこともない。
「世間では、食えない人間がいっぱいいるというのに、全く能天気な阿保だよな」そんな声を聞くことがある。
そうはいっても、一日中ボーとしているわけじゃない。周りに目をやれば、煩わしいことばかり。ただ考えないようにしているだけ。本当は逃げてばかりいるのかもしれないが、実際には現実という魔物は逃げることなんか許さない。逃げても逃げきれないのが現実というものだろうし。
「早く、普通の日常に戻って欲しい」と思う。暇な巣ごもりでも、多少は楽しいこともある。でも話さない。話したくないから。
コロナのせいで、人が集まるところへは行かない。だが家にこもりきりでいると、時々外の空気を吸いたくなる。
誰もいない畑道を歩く。雲が流れていく。そんな雲を見ていると、腹の底にたまっているものを大声で吐き出したくなる。でも誰もいないからといって、畑道で大声を出すわけにはいかない。海岸で打ち寄せる波に向かって叫ぶとか、山のてっぺんで遠くの山へ向かって「バカヤロー」と叫ぶならできるけれども、どこかに人がいるかもしれない所で、大声で叫ぶなんてできるわけがない。変なところで、理性が働いてしまう。
仕方がないから歌を歌う。それも小声で、ちゃんとしたメロディーでなく、思い出せるフレーズだけを何度も繰り返し口ずさむ。少し憂さ晴らしした気分になる。そんなささやかな解消でいいのかと思いながら。
そんな風に一日が終わっていく。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する