短歌トムラウシ登山
2012年8月、2泊3日でトムラウシを登る。ヒサゴ沼の避難小屋2泊
(1日目)
この山に挑んだ証登山届無事帰ること祈りつつ書く
トムラウシ登山口きていよいよと覚悟を決めて一歩踏み出す
取り付けば九十九折れなる急な道息きれぎれにほれがんばれよ
岩を裂き流れ下れる羽衣の瀑音聞かん尾根の道
「化雲岳へ」
目を遣れば間近に高き旭岳雲ひとつおきわれに付き添う
湿原にうんざりするほど続く道ただただ抜ける空青し
いくつかの小さな雲が浮かんでる湿原の原につづく木道
空高く旭岳がのびのびと裾を広げているではないか
木道にリス二匹現れてわれをからかうひとときに笑う
その太古山ふっとんで残りし跡の大雪山か
振り返る登り来た道輝ける原の広がり一条の道
われ名づくベトコン道は藪漕ぎの道泥水の道
案内書いくども読みて長靴が此の山のぼる勝負靴
千メートル越えて広がる這松の原現れて森林限界
口に出た天国平らと名付けした原に寝転び空に溶こむ
困難を乗り切る勇気身につけて山に学べる人の一生
化雲からトムラウシの山間近なりここまできたかよくがんばった
ヒサゴ沼眼下に見えて歩が緩み顔もゆるんでつく一息
「ヒサゴ沼」
テント張るヒサゴの沼を囲む山夕日が添える茜雲かな
暮れゆけばヒサゴの沼に茜雲静寂の中夜にそなえる
雪渓の水汲み終えて振り向けば風雪耐える避難小屋みる
(2日目)「トムラウシへ」
ヒサゴ沼陽が昇りきて水面の青くひかれる静寂のなか
ヒサゴ沼陽が昇りきて水面の青くひかれる静けさにいる ○
いまもなお厚く残れる残雪を越えねば行かぬトムラウシ山
トムラウシ一つ離れて奇怪な岩積み上げてできた山なり
数多く山をめぐればトムラウシ変化(へんげ)の様は日本随一
トムラウシ、ロックガーデン分け入れば目印求め写真もとらず
岩の庭抜け出て至る丘の上明るい空に足も軽やか
北沼のほとりに立てる道標にトムラウシ0.6kとあり
ごつごつの大きい岩を乗り越えて頂きめざすめんどい登り
トムラウシその山頂に至れば99座の山となったぞ
雲海を越えて大雪稜線をながく広げて真向かいにあり
トムラウシその三角点にタッチする来たものだけができる喜び
出会いたる若者二人山頂にエール交わして我下りゆく
縦走路戻りくだれば晴れていたヒサゴの沼に雲おしよせている
見下ろせばロックガーデン広がって霧雲(ガス)の覆えば死の庭となる
太古にも芸術家はいたのかも巨石の作品探して歩く
無事戻るわれをむかえて微笑むかエゾコザクラの淡いむらさき
チングルマ綿毛となりて秋きたる静まり返るヒサゴ沼にて
茜さす西の空みて妻を思う携帯とどかぬ山の上にて
雲湧けど雲より高く月ありて照らしているか小屋の孤独を
(3日目)「下山」
二晩を過ごせし小屋を掃除してヒサゴの沼にさよならを言う
化雲から返り見すればトムラウシ別れ惜しむか姿みせない
トムラウシン登りて帰る下り道花を愉しむわれを笑える
来る時と違う景色を眺めつつ気持ち違えばのどかなる道
ベトコン道も長い道一人であればなおさら長い
天人峡4.5キロの道標が草に寝ているまだ遠い
黙々と一人歩きしこの時間空なる境地にわれはいたかも
下山届年齢書けばわれ一人最高齢のトムラウシかな 《67歳》
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もし、私にとって忘れられぬ山、と言うものがあれば、このトムラウシ行と、5泊6日で北アルプスを御堂から針ノ木峠へ縦走したことかもしれない。それほどにこの山は私にとって一大事業であったと言える。
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